ミケ騒動

 私の実家は、今年、猫の当たり年で、もうすっかり家族の一員となったキキとハルのほかにも、何匹かの猫が訪れた。
 新緑の五月はじめ頃、新しい猫が来ている、と母から連絡があった。三毛猫だけれど、洋猫の血が混じっているようで、少し毛が長く、顔が平たかった。
 容姿の点でも私たちにとって珍しかったが、さらに特筆すべきところは、抱っこされるのが好きだということである。今まで、10匹以上の猫と付き合ってきたけれど、いずれも抱っこが嫌いな猫ばかりで、抱き上げると、すぐに暴れて逃げ出した(みゆちゃん、ふくちゃんも例に洩れない)。
 新しく来たふさふさの尻尾のミケは、抱っこされると心地よさそうにじっとしている。たまに、ペルシャ猫のような長毛の猫を肩に乗せて散歩している人を見かけるけれど、このミケならばそれも夢じゃないかもしれない、とみんな期待した。
 しかし、これだけ人に慣れているので、もしかしたら迷い猫で誰か飼い主が探しているかもしれないと思い、誰も現れてくれるなと念じながら、「迷い猫預かっています」という写真つきの張り紙を門の前に掲げた。
 初めてうちに来た人懐っこい猫、というもの珍しさから、父は「いい猫だ、可愛い猫だ」と相手をしていたが、母が家の前で立ち話をしていた近所のおばさんや、手紙を届けに来た郵便配達の人にまでミケが擦り寄っていくので、誰でもいいのかとミケの八方美人な性格に少し興ざめがした。(もっとも、考えてみれば、初対面の私たちにも親しくしてきたのだから、もともとそういう性格は予想できたはずだった。)またミケには、怒りっぽいところもあった。
 結局、門の前の張り紙を見て、飼い主が現れた。私の小学校のときの同級生であった。
その同級生がどのへんに住んでいたか正確な場所は忘れたけど、だいたいうちから1キロメートルくらい離れたあたりだったと思う。ミケは、近所のオス猫と喧嘩になって追いかけられ、家に戻れなくなったらしい。可愛がっていた猫だから、探していたそうである。
ミケはちょうど二週間、私の実家で過ごし、飼い主のもとへ帰って行った。
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