暑中お見舞い申し上げます

 梅雨が明けた日の早朝、今年はじめてのセミの声を聞いた。
 重く掛かっていた雨雲がさっと退けたようになくなって、天のすみからすみまで、塗り替えたような夏空が広がった。
 雲を見るのが好きだけれど、夏の雲はとくに好きだ。かたちのでこぼこがはっきりしていて、太陽のそばの雲は白くよく光る。街の中で自転車をこいでいて、ふと空を見上げたら、子供の頃に連れていってもらった海や山の雲と同じであるように見えて、懐かしい感じがする。

 暑中お見舞い申し上げます。
 連日の猛暑、いかがお過ごしですか。
 みゆちゃんふくちゃんは、床の上にべたりと伸びて寝ています。と思えば、押入れの戸を勝手に開けて入り込んで、赤ちゃんの冬のコートの上で寝ていたりするから、毎夏のことながら、猫のやることはよくわかりません。
 伸びてはいますが、絵に描いたようにへたばってはいませんのでご安心ください(お茶をがぶ飲みしてアイスクリームを手離せないのは私です)。
 皆さんも、どうぞご自愛ください。
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かめのさんぽ

 梅雨の晴れ間に外に出たら、疎水近くの道を、女の人がたたずんだりゆっくり進んだりしていた。
 斜め下のほうを見ているので、視線の先を追ってみたら、少し離れた足元にいるのは亀である。
 亀の散歩をしているのか、と驚いたけれど、亀の散歩なんてみたことがないから、疎水の水から上がってきた亀が道に迷って歩いているのを、通りがかりの人が見つけて、車道など危ないところへ行ってしまわないかと心配して後についているのかしら、とも思った。
 だけどやっぱりそうではないようで、女の人に困ったような様子はないし、目や口元に優しい感じの笑みを浮かべて、明るい日の中をのんびり亀についていっているから、最初に思ったとおりに散歩なのだろうと思って、「亀を散歩させているのですか」と聞いてみたら、そうだと言った。
 「一日に一回は日に当ててやらないといけないんですよ。それに亀って結構歩くの早いんですよ」と教えてくれた。
 猫にリードをつけて散歩をしているのはたまに見かけて羨ましいと思うけれど、亀の散歩は初めて見たのでびっくりした。
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