ねこ絵描き岡田千夏のねこまんが、ねこイラスト、時々エッセイ
猫と千夏とエトセトラ
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黒猫雨宿り
2011年04月27日 / 猫
昼から買い物に出かけようと思っていたから、しばらくして、もう止んだかしらと窓を開けて、すっかり葉桜になった桜の木の若葉に降りかかる細い雨が見えるかと目を凝らしていたら、斜向こうの家の一階の屋根の上に、見慣れない黒い塊が見えた。
何だろう、あんなの前からあったっけと思って焦点をあわせたら、近所の黒猫が雨宿りをしているのだった。そこは斜向かいの家の北側の窓の下で、小さな庇しかなかったけれど、きょうの雨は南風に吹かれていたから、雨が当たらないのだった。
止んでいるかと思って外を見たのだけれど、雨は止んでいるところかどんどん強くなっていて、雷まで鳴り出した。雷が鳴るのは久しぶりだったので、おやと思った。はじめは小さく聞こえたけれど、段々近くなって、そのうち空の西から東までごろごろと広く鳴り響いた。
猫はうずくまっているかと思えば、雨のかからない限られた範囲でときどき居場所を変えて、落ち着かない様子だった。わざわざそんなところに雨宿りに来たとも思えないから、屋根の上を移動中に雨に会って、足止めされたのだろうと思う。
気の毒なので、はやく雨が上がらないかと暗い空を眺めてみたら、西の空が少し明るくなっていたけど、まだだいぶ遠いようだった。窓のこちら側では、乾いた暖かい部屋の中で、みゆちゃんがベビーベッドの上で丸くなっている。外の野良の猫は大変だなあと思う。
雨宿りの猫の絵を描いておこうと思って、カーテンの隙間からスケッチをはじめたら、私の視線に気がついて、じっとこちらを見返してきた。全身真っ黒な上に薄暗いから体の重なった部分の輪郭ははっきりしなくて、黒いシルエットにそこだけ白く抜けたような目で見つめている。私のことを警戒するあまり、雨の中に逃げ出してしまっては可哀想だから、できるだけじっとして、ペンを持つ手だけ動かした。猫が少しでも逃げようとしたら、スケッチは諦めて部屋の中に引っ込むつもりだった。
屋根瓦をこまごま描いて、顔を上げたら、猫はいなかった。猫が去っていくところを見なかったから、突然、何の変哲もないいつもの家の裏の景色に戻って、化かされたような感じがした。いつのまにか西の空の明るい部分が頭の上のほうまで広がっていて、小降りになったらしかった。そのあとすぐに雨は止んで、また青空が出て日が差してきた。
* * * * *
次の日もまた同じようなおかしな天気で、昼過ぎに雷が鳴って雨が降った。用があって外に出たら、隣家との境を区切る塀の上をそそくさと越えていく黒いしっぽとうしろ足が見えた。昨日の黒猫が、きょうはうちのガレージで雨宿りをしていたのだろう。それを驚かせて追い出してしまって、悪いことをした。
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モンシロチョウ
2011年04月21日 / 虫
本当に春になったら蝶が出てくるのかしら、途中で死んでしまってはいないかしらとときどき蛹が入っているケースを覗いていたけれど、少しずつ春の気配が感じられてきた頃、蛹の中で、もう蝶の姿になっているのが透けて見えた。一見何の変わりもないようでいて、じつは内部では着実に準備が進んでいたらしくて、自然の不思議がキッチンにもちゃんとあった。
それから一週間くらい経った3月18日の朝、モンシロチョウは羽化してしまった。
暦の上では春とはいえ、その前日から夜にかけて雪が降って、窓の外は冬に戻ったような雪景色の朝だった。
それから気温はどんどん上がって、お昼には、雪はすっかり解けてしまったけれど、まだ蝶が舞うような春の陽気とまではいかなかった。もう少し暖かくなるまで、家の中で飼わなければならないと思った。
成虫を飼うとなると、花の蜜をやらなければならない。以前、冬のあいだに羽化してしまった蛾を飼っていたときに、切花の上に乗せてやると、すぐにストローのような口を伸ばして、せわしなく蜜を探ったから、同じように、ちょうど部屋にあったフリージアの花に乗せてみたけれど、モンシロチョウはただ花びらの上につかまるだけで、ストローが伸びる様子はない。
花が気に入らないのかしらと思い、図鑑の写真にモンシロチョウがヒメジョオンにとまっているのがあったので、同じキク科のマーガレットを買ってきて乗せてみたけれど、それもだめ、道端に咲いていたタンポポや、庭に生えていた名前の知らない小さな野の花を摘んできてみたけれど、だめだった。
インターネットで調べたところ、8倍から10倍に薄めた蜂蜜を脱脂綿などに含ませてやるといいとあったので、さっそく作って綿棒に染み込ませて口元に持っていったけれど、やっぱり反応がなく、ぐるぐるときれいに巻いてあるはずのストローも白い顔の毛の下に隠れてちっとも見えないので、本当に口があるのかしら、越冬の途中で何か不都合があってストローが欠落してしまっているのではないかしらと心配になるほどだった。
ともあれ、ちっとも蜜を吸ってくれないので、これは家で飼うのは無理なのかもしれないと思い、植物園へ連れて行ってみることにした。ちょうど毎年この時期に、エントランスの広場に温室を設けて、春の花をいっぱいに植えて展示しているのである。去年見に行ったときには、ミツバチが菜の花にたくさん集まってせっせと蜜を集めていたから、もしかすれば仲間の蝶もいるかもしれないと思った。
実際に行ってみると、やっぱり蜂はいたけれど、蝶は一匹も飛んでいなかった。日中はぽかぽかしていたけれど、もう日が少し落ちて、空気がひんやりして来ていた。そういうところへ放すのも心配で、また連れて帰った。結局寒い思いをさせただけだった。
蜜を飲まないのは、まだお腹が空いていないのかもしれない。そう思って、もう空いたかと何時間かおきに花や蜜入りの綿棒を口元に勧めてみたが、知らん顔をしている。
二日目の夕方、ようやく綿棒の先にストローを伸ばして蜜を吸ってくれたときには、本当にうれしかった。ストローがどく、どくと振動して、いかにも飲んでいるような様子だった。それにしても長い口で、花弁の奥まったところにある蜜にでも届きそうだった。飲み終わると、几帳面にストローを巻いて、猫がやるように、前足で顔の辺りをこすっているのが可愛いと思った。
そんな調子で、毎日2回ほど、綿棒で蜜を与えた。生花も入れてみたけど、こちらは見向きもしなかった。
外はなかなか暖かくならなかった。ほかの蝶が飛ぶのを見つけたら、すぐ放してやろうと思って見ていたけれど、小さな羽根の生えた虫はいても、蝶はまだ見なかった。しばらくすると、狭い飼育ケースの中で飛んでプラスチックの壁に羽を打ちつけたためか、あるいは猫か子どもがケースをひっくり返したためか(彼らはケースの中の蝶に興味津々である)、片方の羽が折れてしまった。それでも、一番暖かい窓辺の日のあたる場所に置いておくと、ぱたぱたと飛び回って、そのために余計羽は破れて、もう高いところへは飛べないだろうと思われた。夜は、明るい電灯の下に置いておくと早死にするらしいので、日没の頃に、電話台の下の物入れにケースごと仕舞った。
そして、4月4日、昼間いつものように明るい窓辺でぱたぱた羽を動かしていたと思ったら、夕方帰宅すると、ケースの隅っこで死んでいた。桜が段々咲いてきて、ようやく明日くらいから春らしくなるという予報だった。
モンシロチョウの成虫の寿命は2週間ほどだというから、17日生きたのはまずまずだとは思うけれど、好きなように外を飛ばせてやれなかったのが、なんとも残念だった。
次の日に、桜の木の下に穴を掘って、桜の花と一緒に埋めてやった。息子にも花を取っておいでというと、小さな蝶の墓穴には大きすぎるような椿を折ってきたので、埋めたあとの地面に挿しておいた。
いいお天気で、青い空の下の菜の花畑に、モンシロチョウが二匹、三匹、ひらひら飛んでいた。
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猫おばけバッジ
年少はふくちゃんのバッジ、年中はちゃめ、と来たので、年長の今年こそはみゆちゃんかな、と思ったら、なぜか「おばけを作ってほしい」とリクエストされ、猫おばけバッジに…
しかし白いので、すぐにズズ黒くなってしまいそうです。
↓ディテールにもこだわり(自己満足)。
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猫用段ボールハウスその後
2011年04月02日 / 猫
そのあと、外出から帰ってきて、ふたりの姿が見えないと思ったら、箱の中でぎゅうぎゅうになって眠っており、その夜も、そこで眠っていたらしく、朝起きてみたらやっぱりぎゅうぎゅうになっていた。
紙袋とか、ひもの切れ端とか、しばらく愛用して寝床にしたり遊んだりして、その後ほうったらかしにしているから、もうそろそろいいかと思って捨てようとすると、すっかりぼろぼろになった紙袋にまた突進したり、ひもに飛び掛ったりするから、なかなか捨てられず、部屋が片付かない。
段ボールハウスも、それでまた再び使い続けてくれているならそれで結構なのだけれど、気まぐれで使ったのはその一日だけ、また知らん顔なので、もう片付けてもいいものか、悩まされている。
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