「デビンちゃん」という名の由来

(昨日の続き)
 やせ細ったデビンちゃんは、ふっくらした日本猫の体型とは程遠くて、まるで猫の図鑑に載っているオリエンタルショートヘアーにそっくりだったから、もしかしたらそういう東洋系の猫かもしれないと思ったのだが、毎日しっかりご飯を食べて、数週間後には、真ん丸い顔と白いおでこが愛らしい正真正銘の雑種猫となった。ばさばさだった毛並みも、黒光りするほどつややかになって、家猫の中の誰よりも手触りがよくなった。
 次の年の夏には、夜の窓明かりに集まってきた蝉を、食べる目的ではなく捕まえること自体を楽しんで捕まえたり、アマガエルを部屋の真ん中に運んできて、カエルが跳ぶ様子を眺めたり、びっくりしたけれど巨大なカマキリを私にプレゼントしてくれる余裕も出来た。ようやく飢餓の記憶から解放されたデビンちゃんが、蝉を食べずに捕まえて遊ぶ姿を見て、どんなにほっとしただろう。(もっとも、蝉に関して言えば、その後、今度はおそらく珍味のひとつとして、食するようになった。)
 ちなみに、デビンちゃんという名前は、やせ細っていたときの猫離れした細長い顔が、映画界の奇才デビッド・リンチ監督のデビュー作「イレイザー・ヘッド」に出てくる奇妙な生き物に似ていたので、監督の名前をとって「デビちゃん」、それがなまって「デビンちゃん」となったのだが、今から考えると、ひどい命名だと思う。
 先日、実家の裏に現れた子猫だけれど、こちらが用意した餌を食べている様子もなく、あれから姿を見せないという。頼りない子猫が、どこでどうしているのか、考えると不憫でならない。どこかいい家を見つけたのならいいけれど、もしそうでないのなら、終身ご飯とベッド付き、少々自由は制限されるけれど、決して悪い話ではないと思うので、ぜひうちに来てもらいたい。


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子猫の頃のデビンちゃん

(昨日の続き)
 デビンちゃんも、子猫の頃、まったく同じ、この駐車場に捨てられていたのだった。季節もほぼ同じ、1999年の5月26日である。
 にゃーお、にゃーおと鳴く声が聞こえるから、そのときは母と一緒に見に行ったら、小さな白黒の子猫が、やっぱり同じように走って逃げていった。
 捕まらないから、家の裏庭の、駐車場に接するあたりに缶詰の餌を皿に入れておいたら、何度か来て食べていたけれど、一日中、にゃーお、にゃーおと鳴いている声が、だんだん移動していって、やがて、どこかへ行ってしまった。
 食べるものがあるのに、それすらも捨てて、引き離されたのであろう母猫を探しに行ってしまったのだと思う。子猫だったデビンちゃんの、そのときの不安や、お母さんを恋しく思う気持ちを想像したら、たまらなく心が締めつけられるような気がする。
 そして、デビンちゃんがふたたび姿を現したのは、それから約二ヵ月後の7月18日だった。骨と皮ばかりに痩せていた。
 放っておけば餓死してしまうのは明らかであると思われた。保護しようということになったが、いまだ人には馴れていない。捕まえられるチャンスは一度だけ。失敗すれば、もう人の前に姿を現さないかもしれない。
 父が捕獲の大役を担うことになって、隣家の軒下で疲れ果てたように座るデビンちゃんに、捕獲用の捕虫網を後ろ手に隠して、じりじりと近づいていった。
 警戒して、少し腰を浮かしたデビンちゃんに、父が安心させようと「にゃあ」と呼びかけると、デビンちゃんも「にゃー」と応えた。みんな、遠巻きにして、固唾を飲んで見守っている。
 ぱっと捕虫網が翻って、全員が駆け寄った。白い網の中で、デビンちゃんが責めるような鋭い目をしてこっちを睨んでいた。
 父が捕まえられるほどに弱っていたともいえるけれど、「これを失敗したらもうこの猫は死んでしまうと思ってものすごく緊張した」と父は後から言っていた。
 最初は網の中でもがいていたデビンちゃんだが、すぐに観念したのか大人しくなった。家に連れて帰って、すぐに缶詰の餌をやると、一生懸命食べた。そして安心したのか、撫でるとうれしそうに目を細めて、ごろごろと喉を鳴らした。
 安心できる場所だとわかったのか、デビンちゃんはすぐに懐いた。がりがりに痩せている上に、疥癬に罹っていたから、外の猫とは隔離して、しばらく父の部屋で暮らしていた。
 あるとき、部屋の床の上を一匹の小さな蜘蛛が這った。それを見たデビンちゃんは、普段からは想像できないようなすばやい動きで蜘蛛を捕まえて、あっというまに食べてしまったという。十分にキャットフードをあげているのに、2ヶ月の飢餓生活で身についたくせがまだ抜けないようであった。そんなデビンちゃんを見ると憐れを催されると父は言っていた。

(デビンちゃんの話はあしたまで続きます。今しばらくお付き合いください)

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白黒の子猫

 実家の裏のほうから子猫の鳴き声が聞こえると父が言うので、外へ出て耳を澄ますと、確かに、母猫を探しているのだろうか、子猫らしい「にゃあ、にゃあ」と呼びかけるような声が聞こえてきた。
 声は、どうやら実家の裏にある駐車場から聞こえてくるようであった。そこで、キャットフードと、保護する場合のためのキャリーバッグを抱えて、急いで裏の駐車場へ回っていった。
 先に行っていた父が、白黒の子猫がいる、でもすごい速さで車の後ろへ走って逃げてしまった、大きさはこれくらい、と両手でりんご二つ分くらいの空間をこしらえて言った。
 どこへ行っただろうと、止めてある車の下を順番に覗いて行ったが見つからないでいるうちに、今度は反対側の、駐車場の出口の方へ走っていく小さな白黒が、止まっている車のあいだにちらっと見えた。交通量の多い車道の方へ出てしまうとまずい。急いで先回りしたら、また駐車場の奥の方へ戻っていくのがフェンスの横の茂みの陰に見えたが、その後、姿を隠してしまった。
 どちらにしろ、今の状態では、捕まえて保護することは無理なようであった。こちらが助けたいと思っているのに、それが伝わらないで、逆に子猫を怯えさせてしまっていることが、とてもじれったい。とりあえず、車道の方へ行ってしまわないように、裏庭と駐車場との境界あたりに餌を置いておくことにした。
 子猫が消えたあたりを見つめていた父が、「ポチが子猫になったみたいだな」、いつになく感傷的なことを、ぽつりと言った。
 そういわれると、こちらも感慨深く思ってしまうけれど、私の中ではむしろ、白黒の子猫はデビンちゃんと重なっていた。

(デビンちゃんのことを書き出したら、話がちょっと長くなってしまうので、つづきはまたあした書きます)

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散歩道の猫

 久しぶりに鴨川へ散歩に出たら、川岸の小道の両側にはもう青草がびっしりと生えていて、シロツメグサとかぺんぺん草とか、そのほか、子供の頃からなじみがあるけれど名前の知らないいろいろな草花がいっぱいに生えていて、驚いた。
 梅雨の前触れとなる雨を控えて、今日は蒸し暑くなるでしょうという気象予報士の言葉だったけれど、川べりは緑色の風がぐいぐいと吹き抜けていって、気持ちがよかった。
 川を離れて、小さな路地へ入り、歩いて行った。月極駐車場の横を通ったとき、三輪車に乗って前を進んでいた息子が、「いま、くるまのうしろにねこちゃんがいたよ」と言ったので、通り過ぎたところを数歩戻って見てみたら、止めてある車のうしろの日陰に、デビンちゃんによく似た小柄な黒白猫が、手足をだらりと伸ばして気持ちよさそうに眠っていた。私たちがバックして戻ってきても、頭を向こうにしてちっとも起きないで眠っているから、携帯電話のカメラで写真を撮ろうと思って驚かさないようにゆっくり近づいたら、なんだというふうにちょっと頭をもたげて、濃い緑色の目で迷惑そうに見た。
 三輪車の息子は、大人よりも目の高さがずっと低いぶん、それだけ猫目線にずっと近いのだろう。私も見習わなくてはと反省した。


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愛すべき猫らしさ

いま履いているスニーカーのゴム底が磨り減って穴が開いてしまったので、新しいのを買いました。
家に帰ってさっそく箱から出して紐を結わえていると、空いた箱の中にはもうみゆちゃんが。非常に猫らしいです。(そして注視しているのは、ゆらゆら動く靴紐の先です)


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猫も保護色?

 一枚の写真がある。ネロが一歳くらいの頃の写真で、同い年のちゃぷりの兄弟「こぷり」と「あにちゃん」もまだ家にいて、三匹が何となく集まって寝そべっている。人間でいったら、高校生くらいの男の子の友達三人が輪になっているような感じかもしれない。
 この写真を見ると、猫は保護色を意識しているのかしらという想像が、ふと頭に浮かぶ。ネロは茶虎、こぷりはサバ猫、あにちゃんは黒猫なのだけれど、ネロはからし色のカーペットの上で横になっているし、こぷりは白と黒の織り糸の座椅子の上で香箱を作っている。黒猫のあにちゃんとはといえば、ネロと同じからし色のカーペットの上でだらりとのびているのだが、あにちゃんはちょっとぼんやりしたところのある猫なので、保護色にまで頭が回っていないというのも頷ける。
 いったい猫は自分の毛色をちゃんと知っていて、その色に馴染むようなところをわざと選んでいるのかしら。それもまた猫の知られざる能力なのかしらなどといろいろ考えるのは面白いけれど、まあおそらくたまたまなのだろう。黒白猫のデビンちゃんは、黒と白が市松模様になった座布団で寝ているし、みゆちゃんは、ベージュが基調になった格子縞の毛布が好きだけれど、そういう特別な組み合わせが目につきやすいだけで、毎日観察していたら、全然毛色と関係のないところで寝ていることの方が多いかもしれない。
 みゆちゃん色の毛布と、そうでない毛布を二つ並べて、みゆちゃんがいったいどちらを選ぶか実験してみたいと前から思っているのだけれど、まだやってみたことはない。


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今夜はお好み焼き

今夜は、お父さんが唯一作れるメニュー、お好み焼きなのニャ!
かつお節いっぱいかけて食べるのニャ~!
(フライパンで作って、ひゅっと裏返すのが得意技。
イラストのお父さん猫は、ちょっと高く上げすぎだけど…)

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夏用猫座布団

 父が、ちゃめの夏用座布団を買ってきたついでに、みゆちゃんにもどうかと一枚余分に買ってきてくれた。これからの季節に心地よいような、さらりとした綿の座布団で、ちゃめはこういう感触のものが好きらしい。
 青系の色のと、白とベージュが組み合わさったのと、どっちがいいと聞くので、保護色の方が落ち着くだろうと思って、みゆちゃんの毛の色に近い、白とベージュの座布団をもらった。
 もっとも、犬猿の中の二匹であるから、敷物に対する嗜好も違って、たとえば冬場の毛布では、みゆちゃんは毛足の長いふわふわしたものが好きなのだが、ちゃめは絶対にそういう毛布の上で寝ることはない。
 だから、もらったものの、みゆちゃんの気に入るだろうかという懸念もあったけど、家に帰って、みゆちゃんに、ほら、おみやげだよと差し出すと、さっそくくんくんにおいを嗅いだあと、新しい座布団の上にごろんと転がってからだをすりすり擦り付けたり、起き上がって、前足で、たっ、たっと踏み込むように座布団の上ではしゃぎ回ったりしたので、さすがは、猫おやじ、猫の気持ちがよくわかる、と思ったのだが、そうやってひと通り遊んだあとは、もとの、いつもの毛布の上で寝てしまった。
 その夜は、少し冷えたからかもしれない。次の日からは、気温がどんどん上って夏日になり、みゆちゃんは気持ちよさそうに新しい座布団に頬っぺたを押しつけて眠っている。
 猫おやじの面目はどうやら保たれたようである。


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本が出ま~す!「ねこに教わる 快眠レッスン60」


私がイラストを担当させていただいた
ねこに教わる「快眠レッスン60」という本が、
PHPから今週末に発売されます。
著者は快眠セラピストの三橋美穂さん
三橋さんちの二匹の猫ちゃん「ミーとケイ」が主人公の、
猫イラスト満載の本です(60項目すべてにイラストがついています)。
24日か25日くらいから本屋さんに並ぶようです。
アマゾンにも出ています→ねこに教わる「快眠レッスン60」
ぜひご覧ください~♪

裏表紙はこんな感じ…表紙の続きになっています。



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猫の訴え「かご出してニャ~」

 朝ごはんを食べていると、何となく視線を感じるので、振り向いたら、案の定、私の椅子のうしろにみゆちゃんが黙って座っていて、じっとこっちを見つめていた。
 この季節、東向きの家の台所は午前中日の光が入るから、その窓辺でうたた寝するのがみゆちゃんの日課なのである。朝のあいだだけであるから、そのための専用ベッドというものはなくて、脱衣かごを代用している。朝、窓辺にかごを置いてみゆちゃんがそこで居眠りし、日が差さなくなってみゆちゃんが寝場所を変えたあと、脱衣かごを風呂場に戻すのである。
 そのかごがまだ出ていないと、みゆちゃんは無言の訴えをする。椅子のうしろに座ってじっと見つめられると、無視して朝食を続けるわけにもいかない。仕方ないので立ち上がって脱衣かごを取ってきて、日が一番よく差し込むような角度にかごを倒して置いてやると、みゆちゃんはのそのそと入っていって、にこにこしながらまず毛繕いをし、そして、朝の日を楽しむように、かごの中に長々と寝そべって、朝寝をするのである。


かご、出た出た~。


べろべろ。


おひさまが、いい気持ちなのニャ。


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