歯ブラシマッサージ

 少し前のことだけれど、朝、子供を小学校へ送り出して一息ついているときに、母から電話が掛かってきた。用件は、「いまNHKのアサイチで、猫の特集やってるよ」ということであった。母はこのように、ときどきメールや電話で猫関連情報を教えてくれるのである。
 番組は猫と暮らす上でいろいろ役に立つ知識を紹介する内容で、その中に、猫の針治療士さんが伝授する歯ブラシを使ったマッサージ方法というのがあった。
 歯ブラシは毛先のざらざらした感じが猫の舌に似ているので、ちょうどよい刺激を与えられるらしい。まず背中を上から下へとんとんと歯ブラシで軽く叩いてツボを刺激し、次にお腹を毛の流れと逆の方向になでる。
 モデルになっていた黒猫は、治療台の上でうっとりとした表情で伸びていたので、本当に効くのかしらとさっそく買い置きの歯ブラシを一本持ってきた。
 みゆちゃんの背中をとんとんと叩いてみたがいまいち反応はなし。が、歯ブラシでおでこをなでてあげると、これはかなり気持ちがよかったようで、頬や口、鼻を歯ブラシにこすり付けてきた。あごをかいてやると、もう幸せでたまらないという、こちらもたまらなくなるような顔をして、あごを突き出してごろごろと小さくのどを鳴らしている。やっぱり歯ブラシは効くらしい。
 私の立場からすると、歯ブラシよりも自分の手で直接みゆちゃんをなでて(それに、できれば頬ずりなんかもして、結局嫌がられるのだが)、スキンシップしたいところだけれど、これほどまでに喜ぶのなら仕方がない。それに、口の端をめくれ上がらせて奥歯もこすり付けてくるから、猫に多い口の病気を予防するための歯磨きトレーニングになるかもしれない。そんなこんなで、私の狭い机の上に、新たに歯ブラシが常設されることになった。
 ところで、最近やっとブラッシングに慣れたふくちゃんに(今まではブラシをかけようとすると、ブラシにじゃれてかけられなかった)歯ブラシも試そうと肩の辺りに近づけたところ、ぱっと振り向き歯ブラシを見ると、なに、なに、それなに?とちょっと怖がったような顔をして、あっちへ跳んで逃げてしまった。
(また、番組を教えてくれた母に、「歯ブラシ試してみた?」と聞いてみたら、「試したけど、あんまり…」という答えだった。)
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