みゆちゃんの「ちょっとちょっと」

 みゆちゃんは、一日に何度も、引き出しの中のおやつをくれと私の机に上がってくるのだが(あんまりしょっちゅうあげるくせをつけてしまったので、最近では主食化している)、それは夜中であってもお構いなしで、毎晩一回か二回、起こしに来る。
 私が眠たい頭を持ち上げてふらふらと起き上がると、みゆちゃんは本当に嬉しそうな顔をしてのどを鳴らすので、眠くても頑張って起きてよかったと心底思う(もっとも、近頃は寒くてなかなか布団から出られず、申し訳なく思っている)。そして尻尾をぴんと立ててこちらを見上げながら、私のぴったり横を一歩進んで、廊下を居間に向かって歩く。居間に着くと先回りして、机の上に行儀よく座って待っている。私は椅子に座って、机の一番下の引き出しに入っているおやつ用カリカリの小瓶を取り出すのだが、ときどき、あんまり眠いと、椅子に座ったところで力尽き、頭を前に傾けて寝てしまうことがある。
 そんなとき、机の上のみゆちゃんが、ちょっとちょっとと前足で私のおでこを優しくなでて、はっと目が覚める。その「ちょっとちょっと」がたまらなく可愛い。
 こないだ、やっぱりみゆちゃんが机の上で待っていたときに、私が本を読みながらおやつは出さずに片手でみゆちゃんの頭や首をなでていたら、また「ちょっとちょっと」とおでこを掻かれた。私が一所懸命みゆちゃんのほうを見てなでていれば、「そうじゃなくておやつだよ」と迷惑そうな顔はするけれど「ちょっとちょっと」とはしないので、この「ちょっとちょっと」はおやつを出せ、というよりもまず「こっちへ向け」ということらしい。
 この話を嬉しそうに両親に聞かせたら、「猫に頭を叩かれて喜んでいるのか」と呆れ顔をされたけれど(しかし彼らだって、とくに父は、キキやハルの小さな前足でとんとん叩かれたら、きっと嬉しがると思うのだが)、なんであれ、みゆちゃんがその可愛い前足で自分から触れてくれるというのは、とてつもなく嬉しいのである。
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