こまるぼん

 無邪気で可愛くてたまらないまるとぼんだが、困ったことがある。
 ひとつは、ふたりとも食いしん坊すぎるということである。上品な顔立ち(と、私が言うのもなんですが)からは想像できないくらい食い意地が張っていて、いろんなものを食べる。朝起きたら、食パンの袋が破られて、噛みあとのついたパンが引っ張り出されていたり、ふりかけの袋がぼろぼろになっていたり、ピザのエビを掠めていったり、いちいち挙げていたらきりがない。人間の食後、食卓を片付けるまでの隙に、お皿に残ったかぼちゃを食べたり、菜っ葉とお揚げを炊いただし汁を飲んだり、枝豆の皮を舐めたりする。食後に限らず食事中にもやってくるし、台所で食事の用意を始めた途端、カウンターの上に登ってきて、料理を盛りつけようと並べたお皿を踏みつけたり、まな板の上を歩き回ったり、何度抱き上げて下ろしても、しつこく戻ってくる。これが魚料理になるともっと大騒ぎである。猫のご飯しか食べない品行方正なみゆちゃんふくちゃん(ふくちゃんは一部例外あり)とは大違いだ。まるもぼんも、もっと小さい頃に人間の食べ物を与えられて、味を覚えてしまったのかもしれない。人間の食べ物は猫にとっては塩分が多すぎたりしてからだによくないだろうから、可哀想だけどあげないようにしている。おかげでいままで平和だった台所や食卓は、戦場のようになったし、食べ物は全部、戸棚の中に仕舞っておかなくてはならなくなった。
 もうひとつはまるだけだが、聞かん気が強く、たとえば、入ってはいけない部屋や玄関のドアの前で、みゆちゃんやふくちゃんなら、「だめよ」と言うとちゃんとそこで立ち止まるのだが、まるは聞かずに突進してくる。部屋に入るくらいなら構わないけれど、外に出てしまっては困るので、重々に注意が必要である。
 まるという名前は、人懐っこいイメージからつけたのだけれど、あんまりやんちゃをされると、本当は「困る」の「まる」だったんじゃないのと思ったりもする。
 が、どんなにやんちゃをしても、抱き上げると、信頼しきって目を閉じて、ごろごろとのどを鳴らすこのふわふわの子猫、これを許さずにいられるはずがない。ずるいイキモノである。



カウンターでくつろぐまる
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