ちょびひげのデビンちゃん

 デビンちゃんは、きれいなハチワレの女の子でしたが、ピンク色の可愛い鼻の下に、ちょうど「ちょびひげ」のような黒いブチがついていました。
 デビンちゃんがうちに来たのは90年代の半ばで、ちょうど家庭向けのデジタルカメラが市場に出始めていた頃だと思います。新しい機械が好きな(しかしある程度値下がりしないと買わない)父が、ある日フジフィルムのfinepixを買ってきました。
 デジカメで撮った写真を画像処理ソフトで加工するという、今までになかった楽しい遊びに、私はすっかりはまっていました。家の車の運転席にやんちゃな茶トラのネロを乗せてみたり、ソファに座っている父の写真を切り取って、電信柱のてっぺんに座らせてみたり。
 デビンちゃんのちょびひげについて、母は、このブチさえなければもっときれいなのにねえ、と言っていたので、私は早速デジカメでデビンちゃんの写真を撮って、画像ソフトでちょびひげを消してみました。どんなにか美猫になるだろうと思いながら、鼻の下の黒いブチを白で隠していったのですが、それがどうもおかしいのです。
 「エステ for キャット」と題して、ちょびひげをとる前と後の写真を「before」「after」で並べてみると、 エステ後のデビンちゃんの顔はなんとなくのっぺりとして、しまりがなく落ち着かない感じでした。
 こうして、一見余計なように思えるちょびひげやしょうゆのシミ、ハナクソのような模様も、その猫のチャームポイントになっているのだということを、当時まだ猫歴の浅かった私たちは知りました。どの猫も、その子が最大限かわいく見えるような柄をつけて、生まれてきているのでしょう。
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