杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

宮廷画家ゴヤは見た

2009年06月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年10月4日公開 アメリカ 

18世紀末スペイン。ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は国王カルロス4世(ランディ・クエイド)の宮廷画家に任命される一方、権力や社会を風刺する作品も描いていた。ある日、彼のミューズであるイネス(ナタリー・ポートマン)が、ロレンソ神父(ハビエル・バルデム)が指揮する異端審問所に捕われてしまう。そして彼女を救おうとしたゴヤが見たものとは……。(シネマトゥデイ)

ゴヤの生きた時代は、異端審問、フランス革命とその後のナポレオンの台頭といった波乱激動の時代でした。彼の描いた2枚の肖像画の二人、イネスとロレンソに起こった出来事をゴヤは運命の証人・傍観者として見つめ続けます。

過酷な拷問により無実の罪を着せられたイネスは、家族と引き裂かれ、ロレンソに孕まされた娘を取り上げられ、長い年月の幽閉で精神を病みます。一方異端審問強化の先鋒だったロレンソはイネスの件で失脚し国外逃亡するのですが、ナポレオン政府に食い込んで凱旋帰国をするのです。

無垢な魂でロレンソを慕い、娘の行方を捜すイネスの姿は哀れさと同時に気高さもあり、複雑な想いに駆られます。
ロレンソはそんな彼女と、売春婦に堕ちている娘の両方を遠ざけようと画策するのですが、やがてナポレオン軍の失脚により彼もその地位を追われ、自身が異端者として処刑されるのです。

映画の冒頭のゴヤの描いた教会批判の風刺画が聖職者一同に回し見されるシーンと、ラストで処刑されたロレンソの手を握り、拾った赤ん坊を腕に抱いて幸せそうに歩くイネスの姿がとても印象的でした。

ゴヤの目を通して見えるのは、王や聖職者たちの権力に執着する愚かしさや、どんな状況下でも逞しく生きる人々の強さです。
彼自身は自らイネスを救おうと積極的に働きかけたわけではなく(その辺は少々物足りない思いがしますが)あくまで傍観者の役割で控えめなだけに、イネスとロレンソが強烈な個性を持って観る者の目と心に迫ってきました。

ナタリーとハビエルだったんだ~~☆☆
それにしても「家政婦は見た!」じゃあるまいし、この邦題、もう少し何とかならんもんでしょうか?

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