日向 夏 (著), しの とうこ (イラスト) ヒーロー文庫
後宮女官を解雇させられた猫猫(マオマオ)は、花街に戻ってきた。しかし、戻るや否や、今度は超美形の宦官壬氏(ジンシ)のお付として、外廷に出仕することになる。壬氏への嫉妬から他の官女たちにからまれ、倉庫の小火、官僚の食中毒、腕利き職人が残した不変な遺言の調査など奇妙な事故や事件が多発する。いろいろな事件が重なりあう中、それらはある一つのことに収束することを猫猫は知る。そこにはある人物の思惑があった。そしてそんな中、壬氏に付きまとう武官羅漢が現れる。変人として有名なこの男は、何かにつけて壬氏に問題を持ってくるようになる。それは、羅漢が古い緑青館の馴染みで猫猫をよく知っていたためであった。猫猫に対してただならぬ執着を持つ羅漢に対して、猫猫の態度は普段と少し違っていた。いつもの飄々とした雰囲気と違う猫猫を気づかい、羅漢から守ろうとする壬氏であるが――。羅漢の本当の狙いとは一体?型破りな薬屋の娘と超美形だがどこか残念な宦官、それに巻き込まれる人々。薬と毒、宮廷と花街、官と妓女、そして過去と現在が交わる中で、物語は紡がれていく。(あらすじ紹介より)
アニメ放送を先に視聴しているので、内容はほぼ原作通りなのだと改めて感じました。羅漢と鳳仙の関係は一方的なものではなく、互いに想い合った末の掛け違いが悲劇となっていること、羅漢の猫猫への執着の強さが逆に娘に嫌われる原因となったことについてはアニメでは描かれなかった部分もあって、猫猫が羅漢を嫌う理由になるほどな~~と納得してしまったぞ。😊
序話
壬氏が帝から何やら頼まれごと。この件はどう繋がったんだっけ?💦
猫猫は梅梅や養父に送られ再び出仕します。
一話 外廷勤務
後宮ではなく外廷で壬氏の侍女として働くことになった猫猫。官女試験に落ちたのは興味のあること以外は並以下の彼女らしい結果。
二話 煙管
李白と出会った猫猫が小火騒ぎの原因を推理
三話 後宮教室
上級妃への妃教育を依頼された猫猫は本気(マジ)出して臨みます。上級妃たちの4者4様の反応が面白い。あ‼序話の帝の頼み事ってこれだったか。
四話 膾
膾を食べて意識不明となった高官は事故かそれとも?猫猫の推理が冴えます。
五話 鉛
こちらは秘伝を息子に伝えず亡くなった職人の遺言の謎解きです。
六話 化粧
壬氏のお忍びの外出のための変装を受け持った猫猫。悪戯心で彼に紅を差した猫猫とそれを見ていた高順、水蓮の反応描写が楽しい。
七話 街歩き
里帰りのついでに壬氏に同行させられた猫猫はお嬢様の恰好をさせられています。
浮き浮きな壬氏の無邪気な様子と猫猫の不愛想さの対比が面白いです。
八話 梅毒
病人が猫猫を産んだ女であり、母娘の関係が過去に起因していることを匂わせます。
九話 羅漢
羅漢が壬氏に絡むようになった理由がわかってきます。
十話 翠苓
外廷で何度か出会っている二人ですが、翠苓に対して猫猫が感じた印象が書かれます。
十一話 偶然か必然か
これまで猫猫が関わった事件がいくつも重なった輪の中に一つの恐るべき可能性が浮かんできます。
十二話 中祀
重大な陰謀の可能性に思い至った猫猫が衝動的な行動に走ります。
武官を挑発して頭部を殴打されながらも必死に駆けつけ(タイミング良く助けてくれたのは羅漢)、危機一髪で救った相手は意外な人物でした。
十三話 曼荼羅華
足を負傷した猫猫ですが、事の次第を壬氏たちに解き明かします。事件の背景に翠苓の存在が浮かびますが、彼女は毒をあおって自殺していました。納得がいかない猫猫は彼女が蘇りの薬を使って死を偽装したと推理し棺桶を開けて確認します。
十四話 高順
壬氏と二人が服用しているのは男でなくなる薬(医局にお使いに行かされた猫猫が味見した薬)というわけで、この二人の正体についても仄めかされます。
十五話 後宮ふたたび
玉葉妃の月経が止まったことで、毒殺を防ぐために、猫猫が再び翡翠宮で毒見役を務めることになります。羅漢から遠ざける狙いもあるようです。
十六話 紙
後宮の医局に出入りするようになった猫猫が、ヤブ医者の実家の困りごとを解決します。
十七話 身請け作戦
白鈴の身請け話の噂に焦った李白が、猫猫に相談にやってきます。
二人のやりとりを目撃した壬氏は超不機嫌になり、猫猫を問い詰めるのですが、噛み合わない会話が笑えます。
十八話 青薔薇
壬氏が羅漢から持ち込まれた厄介事を猫猫が受けて立ちます。小蘭が手伝いで久々に登場します。周囲の興味を逸らそうと、猫猫は爪紅を用います。
十九話 爪紅
青だけでなくカラフルな季節外れの薔薇の登場で園遊会の注目を集めます。
猫猫は壬氏にそのからくりを説明します。色水か~~!!
羅漢に将棋の勝負を挑んだ猫猫は彼が下戸なのを利用して見事賭けに勝ちます。その代償は緑青館の妓女の身請けでした。
二十話 鳳仙花と片喰
人の顔を認識できない羅漢が出会った妓女が猫猫を産んだ女でした。彼女の顔だけは認識できたのです。やがて哀しいすれ違いで二人の運命は分かたれますが、真実を知った羅漢が駆けつけた時には遣り手婆の激しい怒りを買い、その後も融けることはなかったのです。
緑青館で意識が戻った羅漢は、約束通り妓女を選ぼうとしますが、梅梅から鳳仙が生きていることを示唆され(猫猫が贈った青薔薇のドライフラワーもヒントなのね)、鳳仙を身請けします。
猫猫が羅漢を嫌っているのは、幼い頃から追いかけ回されたトラウマが大きいのであって、彼を憎んでいるわけではないことが語られます。妊娠には鳳仙自身の思惑もあったと気付いている猫猫の観察眼は侮れませんね。
父親(羅漢)を嫌う娘(猫猫)の発言に何とも言えない表情の高順の理由は続編で明かされますね。
終話
梅梅からの手紙で鳳仙が身請けされたことを知った猫猫は、身請けの祭りの夜、一張羅の着物に同封されてきたひれを纏って外壁の上で祝いの舞を踊ります。そこに現れた壬氏に驚いて転落しそうになった彼女を抱きとめる壬氏。踊ったことで傷口が再び開いた猫猫を抱きかかえて外壁を降りる壬氏に猫猫が発したのは「牛黄下さい」
良いムードになるとしっかりオチが付くのね😁