杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

騒がしい楽園

2025年02月07日 | 
中山七里(著)  ‎ 朝日新聞出版 

埼玉県の片田舎から都内の幼稚園へ赴任してきた神尾舞子。
騒音や待機児童など様々な問題を抱える中、幼稚園の生き物が何者かに惨殺される事件が立て続けに起きる。やがて事態は最悪の方向へ――。(内容紹介より)

一 デジタルウーマン
二 悪の進化論
三 権利と義務と責任と
四 ガーディナー
エピローグ

幼稚園が舞台の「闘う君の唄を」の続編らしいのですが、そちらは未読。
埼玉の片田舎から世田谷の住宅街にある園に異動となった舞子先生。
冒頭の京葉線の女性専用車の車内で子供に食事をさせながら化粧に余念のない母親に理路整然と冷静に抗議する描写で彼女の倫理観が示唆されます。

赴任早々、都会の幼稚園ならではの騒音トラブルに直面する舞子。町内会長の老人の言は一理あるけれど、基本的な相互理解不足が浮き彫りにされます。

さらに、2年続けて入園できず、何としても息子を入園させようとする母親への対応にも悩まされます。待機児童の問題は保育園のみならず幼稚園でも起きていることに気付かされ、そういえば、子供の入園願書に夫を借り出して並んでもらったことを思い出し、今も昔も変わらない現実にため息が出ます。

舞子が受け持つ年長クラスには過労死で争った被告と原告双方の子どもが在籍していてこれがまたトラブルを生んでいます。といっても子供たちは仲が良く、それぞれの個性についても描かれほのぼのとしながらも騒がしい日常が描かれていきます。

池に毒物が入れられ飼育していた水生動物が全滅したことに端を発し、頭部を潰された蛇(アオダイショウ)が投げ込まれ、園で飼っていたアヒルが首を切られて殺され、頸を締められた野良猫の死体がぶら下げられるなど、園への嫌がらせか動物虐待の常習者の仕業かと思われる事件が続けて起き、舞子と一緒に異動した同僚の池波は、被害が魚類→爬虫類→鳥類→哺乳類と進化していることへの危惧を吐露します。

池波や舞子の指摘もあり事なかれ主義の園長も看過できず警察に届け出ますが、やってきた世田谷署生活安全課の古尾井刑事は真面目に捜査してくれずにいるうち、とうとう舞子のクラスの女児が殺されて園の門前に遺棄される事件が起きます。被害者は保護者間でトラブルのあった人材派遣会社社長の娘でした。

保護者たちの手前を取り繕うため、園長の要請で幼稚園職員が交代制で自主パトロールをしていましたが、犯行当日の当番が舞子と池波で、たまたま見回りが早く終わって30分繰り上げて終了していたことが問題となります。園長の保身のためスケープゴートにされ保護者や職員たちの非難の矢面に立たされ窮地に立った舞子と池波に、同様に初期対応の遅れを批判され捜査から外された古尾井刑事が協力して事件の犯人を突き止めようと声をかけます。

相手と距離を置きクールに対応する舞子のスタンスはそれまで一貫して崩れることがなかったのですが、教え子が殺されるという異常事態に置かれて動揺が襲います。それでも池波のさり気ない支えもあり、自分らしさを取り戻した彼女は、古尾井刑事と容疑者として浮かんだ関係者を回って情報を得ようとします。
そのうちの一人に動物虐待の疑いが浮上し、任意同行を受けて犯行を自供しますが、殺人に関しては頑なに否定されます。
そんな折、被害女児の母の弟が漏らした一言で真犯人を推察した舞子たちは、動かぬ証拠を得ようと危険な賭けに出ます。いやいや、それって囮捜査で違法じゃないの??💦
いかにもな3人の容疑者に対して、捕まった犯人の動機はわかるとして切羽詰まっている筈の犯人にしては成果までの道のりが遠大過ぎる気がしますが・・。

事件解決後、亡くなった園児の机の供花を巡る舞子と友達だった園児のやりとりが出てきます。子供たちの心の傷を少しでも癒そうとした舞子に対して、忘れないことが大事だという園児の思いにはっとさせられました。
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