モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

ビビッてない

2025-03-01 20:55:12 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

岩田です。今回は、黒木さんの作品をご紹介します。
透明水彩で描いた2点の作品。どこか何気なく、ゆったりとした時間の流れを感じさせ、歩いていたり、家でくつろいでいたりする日常の1シーンを切り取ったような、飾らない雰囲気が魅力の作品達です。

左の絵は、小原先生の旅行写真からピックアップした、冬のチェコの川辺。
こちら側が逆光になっていて、川から向こう岸が光に包まれている美しい情景です。暗いセピアトーンの向こうに、うっすらと有彩色で描かれた風景がとても美しい。画像では認識できませんが、近くに寄ってみると、水が絵の具と紙の上で、自在に混ざり合いながら、繊細な滲みの表情を作り出しています。

黒木さんが継続して取り組んでいる透明水彩。特に最近は、紙と道具の扱い方みたいなものを感覚的に掴んできていらっしゃるなぁと感じています。上手くいかなかったことも含め経験が増えることで、描画材との距離感が徐々に分かってきたのかな。そんな印象を受けています。

右手の猫の絵も、まだ階段を登る途中段階にはいるのですが、どこか無理がない。
この紙にこの道具を使って、こう描けばこうなるみたいなものが、理屈ではないところで捉えられてきているので全然ビビッていないんです。猫自体も良いんですが、この絵の背景を見ると、そんな心持ちが垣間見れます。

黒木さんが、描くのが本当に面白くなってくるのはこれからです。良くここまで頑張ってきました。例えば、ちょっと高いかなと思う筆や、種類の違うスケッチブックなどを新調して、今までのものと描き比べてみて下さい。表現の幅が広がってくるかもしれませんよ。

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息子さん達を描き続けて16年

2025-02-14 21:23:43 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、佐々木さんの水彩画です。2009年から始まりました息子さんの成長画シリーズ、いよいよ16年目に突入!(アトリエは2007年から通われていますので、18年目!)今回の作品も次男君。2016年にご紹介させて頂いたブログでは赤ちゃんの頃の姿を見る事が出来ます。毎回思うのですが、こんなに小さな赤ちゃんが、たった数年で沢山食べ、走り回り、喋れる様になるのってとっても不思議です。人間ってすごい!

左の作品は、野外のイベントでしょうか?黄色い飲み物が沢山見受けられるので、ビールフェス?周りで大人たちがお酒を交わす中で、嬉しそうにポテトをつまむ姿が微笑ましいですね。見ている私も一緒に食べている様な気持ちになってきます。水彩の柔らかい色合いを活かし、日常にある穏やかで優しい時間を絵の中に作り出しています。何より、作者の人柄や子供に対する暖かい気持ちといった、本来は目には見えないそれらが、絵の具を通じて可視化されている様に思います。思い出と噛み締めながら、一筆一筆を丁寧に重ねていかれたのでしょう。
主役である次男君以外はかなり思い切って薄く仕上げました。それにより、絵の中にメリハリが生まれ主題が分かりやすくなっています。顔がハッキリと描かれているのは子供だけですが、画面に映る人たちの指先からも動きや感情が伝わってきますね。

右の作品はキャッチボールですね!お父さんと息子といえばコレ!ボールの軌道をしっかり見つめ、キャッチしようと構えている瞬間をよく捉えられています。シャツを白く見せる為の影の色やジーンズのくすみも、さり気無く描かれいるようで実は巧みに表現されています。水彩画、特に人物の肌などは色を濁らずに表現するのが難しいものですが、子供らしい健康的な肌の色に仕上げられています。16年間、息子さん達を描き続けた経験が活かされているのでしょう。背景の柔らかな光を感じるタッチも素敵です。

絵の中の息子さん達と一緒に、佐々木さんの技術も成長されているのでしょう。今後も成長を楽しみながら、制作して頂けたらと思います。

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主役を引き立てる影

2025-02-07 20:25:07 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

サトルです。今日は僕の担当している日曜クラスの釘宮さんの作品を紹介します!

晴れの日の美しい光の差し込む浅草寺と、参拝客が緻密かつ軽やかに描かれていますね。とても情報量の多い風景で、参拝客を一人一人描くだけでも非常に時間のかかる大変な題材です。賑わいを表現する為にここまで沢山人を描かないと行けない時、焦って雑になってしまいがちですが、釘宮さんはデッサンの段階から計画的に描かれていました。水彩画を写実的に描く際、油画やアクリル画の様に途中で形を変えることが出来ないので、デッサンのクオリティが作品の完成度に直結します。完成した作品からはわかりませんが、参拝客以外の部分の下描きがとても丁寧に描かれており、そのおかげで宝蔵門や看板の文字まで絵具で細かく仕上げることができました。

門に差し込む光が美しく描かれています。光を描くということは影を描くということです。美しい光を描くためには美しい影の色が必要です。門の影の色に注目してください。正面の柱は強くはっきりとした色で影を描き、それに対して門の奥、提灯左の柱などは背後から差し込む光を紫に近い色にして、奥行きのある表現がされています。また、最も太陽に近い位置の屋根を少々はっきりと描き過ぎてしまった為、青と白の瓦の対比を最後に洗い流しました。そのおかげで主役となる提灯が手前に感じられて立体感が出たのです。

この作品を見た時まず主役となる提灯や手前に描かれた参拝客のクオリティに目が行くのですが、それは主役を引き立たせる影の表現がとても繊細に描かれているからです。緻密で美しい表現がこの作品の一番の魅力ですが、それを活かす絵全体の組み立てが釘宮さんはとても上手です。デッサンから焦らず時間を掛けて絵作りしたおかげで完成した素晴らしい作品ですね。

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思い出を落とし込む

2025-01-29 23:34:43 | 大人 水彩


横山 透明水彩

今になってようやく布団を冬掛けに変えました、ナツメです。本日は、土曜大人クラスより横山さんの作品をご紹介します!
今回は、ご自身が撮影された写真をもとに水彩画を描かれました。たくさんの高級そうな果物が乗ったババロアが、まるで作家もののような器に美しく盛られています。思わず「食べるのがもったいない!」と思ってしまうほど、魅力的な一枚です。

テーブルの奥に設置された天然の小枝は、カフェの雰囲気や居心地の良さを伝える重要なポイントです。ところどころに映り込む葉や、赤寄りの茶色を基調とした色使いからは、素朴で温かみのある空気感が伝わってきます。

背景もババロアも暖色系で統一されているため、全体的に柔らかく温かみのある印象になっていますが、それだけでは主役がぼやけてしまいがちです。今回は器の左側に接する木の影に青を取り入れることで、デザートをより美しく際立てる工夫をされました。また、お皿に落ちる器の影や、ババロアの上に添えられたフルーツにも青系の色を使うことで、暖色の中にさりげなくコントラストを生み出し作品全体を引き締めています。このように周囲から引き立つように見栄え(見映え)をする効果は、補色(反対色)を効果的に使うと色のバランスがより洗練されうまくいきます。

まるで雑誌のグルメ特集に掲載されていそうな、美しく魅力的な一枚。見ているだけで「これを食べてみたい!」という気持ちになります。それはきっと、横山さんが実際にこのデザートを味わったときの「美味しかった」「楽しかった」という記憶や、素敵な時間を過ごした思い出が込められているからこそ。そんな温かい気持ちまで伝わってくる作品です。

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雰囲気や状況によって描き分けてみる

2025-01-18 21:59:44 | 大人 水彩


真愛 透明水彩

岩田です。今年最初の投稿は、真愛さんの作品をご紹介します。こちらは、インド象と戯れる男性を描いたものですが、まるで少年のように見えるこの人物は、旦那さんです。

今までも人物を中心に透明水彩で描くことを続けてきた真愛さんですが、今回は、特に全体の色調も綺麗で、鮮やかな作品に仕上がりました。

いつも淡い色調の作品が多く、それはそれで作者の個性が表れていて良いのですが、どうしても空間を出したり、立体的な表現をする上では、物足りない印象を持っていました。しかし、この絵に関しては、影に思い切って暗さを乗せたことで、逆に光を感じると共に、背景との距離感も上手く演出することが出来ました。

作者の場合、色使いのセンスが良く、紙白が透けた淡い色調のペールトーンがいつも美しさに繋がっているのですが、作品の場所も熱帯のバリ島で、真っ黄色のTシャツを着ている今回のような場合は、ビビッドで、コントラストの強い印象が場の雰囲気にも合いますね。

モチーフの雰囲気や状況によって、様々に印象を演出できるようになると、描くことが更に楽しくなってくるでしょう。

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大人な雰囲気

2024-11-28 22:53:47 | 大人 水彩


川上 透明水彩

二週間振りです、マユカです!今回は川上さんの作品をご紹介していきたいと思います。

バーで飲んだカクテルを描いたこちらの一枚。オレンジの皮の独創的な切り方や、使われているグラスがとてもスタイリッシュで、芸術品のようです。しかし、それゆえ絵にするとなると非常に高い技術が要求されます。カウンターの向こうから差し込む間接照明の表現にも苦労されました。グラスがかなり複雑な構造をしているため、ここにおそらく長く時間をかけられたのでしょう。質感の表現や、持ったときのずっしりとした重さが伝わってくるようです。

奥を薄い色、手前にはしっかりとした色を使用することで狭いバーカウンターの中にも奥行きを作り、二次元的なのっぺりとした仕上がりにならないよう工夫がされています。これは見せたいものをくっきりと強調させる効果もあるので、細密に描写されたグラスの凹凸感や、映り込み、反射等のこだわりポイントに注目しやすくなっていますね。全体的にオレンジベースの色味をしていることもあってか、鮮やかな青が際立ちます。また、手前に影を濃く入れているのも、奥からの照明によるものなのだというのが伝わってきますし、光の強さや周囲の暗さまでもが分かる要因となっているあたり、よく考えて描かれているなぁと感じました。

複雑で難しいモチーフだからこその楽しさや工夫のされ方が見える、オシャレなバーに行ったような気分になれる作品でした。いつかこんな素敵なお店に、私も行ってみたいです!

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水彩マスター!?

2024-11-27 22:17:52 | 大人 水彩


福嶋 透明水彩

冷え性なので近頃の寒さが堪えます、ナツメです。今回は月曜大人クラスより福嶋さんの作品をご紹介します!右上、右下、左の順で水彩画の描き方テキストを参考に、風景画を模写して描かれました。

右上の作品は海外の街並みです。かなりパースが効いている構図のためデッサンの線の角度に苦労されていましたが、真摯に調節を繰り返しながら奥行きを見事に描かれました建物の側面や地面にしっかりと影を落とし、左側からの光がとても綺麗に見えます。柵や壁のレンガなどの細かい箇所も細い筆を巧みに使い表現されました。

続いて右下の川の絵ではぐっとした暗さを入れることに注力されました。川の流れがとても丁寧に描かれていて、見ているとその場の空気や水の音まで感じられるようです。透明感や流れの勢いを筆のタッチで表現されていて、動きを錯覚してしまうような生き生きとした印象を受けます。岩のゴツゴツした質感や色の微妙な変化も絶妙で、自然そのもののリアルさと美しさを伝えていますね。全体的にやわらかな色合いが心地よく、川辺に佇んでいるような穏やかな気持ちになれる素敵な作品です。

そして、左のモン・サン・ミシェルと船を描いたものが1番新しい作品です。風景全体が柔らかな色合いで描かれていて、とても穏やかで心地よさを覚えます。手前の砂浜に停泊した船の描写が大変細やかながら力強く、前から見た時の形も上手に捉えられているため見る人の視線を自然と引き込みます。マストやロープのラインも繊細に描かれていますね。船、海を挟んで島とモン・サン・ミシェルの順に乗せる絵の具の段々と薄くしていき、手前は濃く、奥は淡くと言った遠近感が見事に表現されています。物語の一場面を切り取ったかのような風景です。

このように並べて見てみると、手前遠くの空間の出し方や明暗のコントロールなど、枚数を重ねるにつれメキメキと上達しているのがわかりますね!長く水彩を描かれてきたので、次から油絵に挑戦されるとのこと。どんな作品になるのか今から楽しみです。

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観る、描く

2024-10-16 22:04:02 | 大人 水彩


加藤 透明水彩

武蔵美では芸祭準備期間が始まり、浮き足立った気分になっています、ナツメです。本日は日曜大人クラスより加藤さんの水彩画を2枚ご紹介します!

ひとつめの作品では神戸の風景を描かれました。夕方頃でしょうか、少し陽が落ちている時間帯の影と光の加減が絶妙です。一方向からの光を意識して、物や地面の影を描いているので光が綺麗に見える上、その中でも手前はコントラストを強く、奥は弱めに描いているので一体感がありつつも距離も感じるようになっています。風景画は、次にご紹介する静物画と比べてもどこをどれだけ描くかという全体の描き込み度合いのバランスを取ることが難しいのですが、遠近に合わせて難なく描かれています。

そして2枚目は静物画。以前の水彩画に続きアトリエにあるモチーフをご自分で組んで描かれました。風景画よりもモチーフひとつひとつに手を入れられる分、とても精密に描写されています。ちょっとした反射や映り込みによりズレなどの非常に細かな部分まで追っているため、ガラスにプラスチック、木などどれも素材が違う中でそれぞれの質感が手に取るように伝わってきます。

ご紹介する順番が前後してしまいましたが、はじめの風景画が1番新しい作品になります。加藤さんは静物画に続いて風景シリーズの制作を計画されているそうで、今回の絵の次はどんな作品になるのか非常に楽しみです!

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美しさを引き立てる工夫

2024-10-10 23:22:27 | 大人 水彩


木佐貫 透明水彩

マユカです!今回は木佐貫さんの作品をご紹介していきたいと思います。

神社などで時々目にする『花手水』。心まで清められてしまいそうなくらい美しいその様子を、水彩で描かれたこちらの一枚。同系色ではなく、様々な色の花が浮いているのも目に楽しく、「この花の名前は何というのだろう?」なんて考えながら見てしまいました。

花の美しさに目が奪われてしまいますが、今回の作品では水の冷たさ・フレーム外の手水舎の素材(石)を感じさせる、水の表現が画面においてとてもいい作用をしています。竹から流れる水は透明度を高くするため後ろの色を描きこむことで透明感を出し、濃紺で水面を描写し深さがあることを伝えます。

また、浮いている花の彩度と明度が全体的に高めなため、濃紺が締め色となり、隣り合う花が混ざり合わず、くっきりと浮き上がって見えてくる効果もあります。ここが白っぽいと、花の色が何だか散って見えたり、広がっているような間延びした印象を受けてしまうのですが、しっかりと暗い色を使っているからこそ柔らかい花の質感との対比もできているのですね。よく見てみれば、手前の花は花弁の一つ一つまでしっかり描きこまれており、輪郭もはっきりと見えますが、奥の花や葉はあえてふんわりとした描き方をすることで手前のピントを合わせ、凛とした空気感まで伝わってくるのです。

この締め色、背景ではあるのですが、見方を変えると隣り合う色となります。隣り合う色というのはモチーフと差をつけた色であることが好ましいです。これはデッサンなどでも言えることで、同じような濃さで画面を塗ると融合しているように見えたり、どこで区切られているのか、立体感はどこなのか…と、なってしまうこともしばしば。色のある水彩画、油彩画などでも隣に似たような色を置くとなんだか間延びして見えてしまいますから、意識的に差のある色を選んでみるのもいいでしょう。

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食欲を刺激する

2024-09-18 22:13:07 | 大人 水彩


川上 透明水彩

九月も後半に入ってきましたが長袖の服を出すにはまだ早そうですね。早く涼しくなって欲しいです、ナツメです。

本日は土曜大人クラスの川上さんの作品をご紹介します!ボリュームたっぷりなハンバーガーを透明水彩で描かれました。

今すぐかぶりつきたくなるような、食欲をそそるシズル感が素晴らしい!一つ一つの具材を丁寧に描かれていて、ジューシーなパティや瑞々しいレタスなどそれぞれの口当たりが浮かんでくるような魅力がありますね。

透明水彩というと淡い色合いの画面になりがちなところを、主役であるハンバーガーを中心に手前にしっかりと鮮やかで濃い色を乗せています。食べ物の写真を撮る時に、より美味しそうに見せるために「コントラストを強めにする・彩度を上げる」加工をすると良いとされているのですが、まさにそのポイントを抑えた描き方をされています。

ハンバーグ以外のものを描き過ぎない加減に苦労されたとのことですが、その塩梅も丁度良いですね!遠くは薄くぼんやりと、手前ははっきり鮮やかに描かれていることに加え、その中間にあるコップや椅子などは淡くなりすぎずぼかしすぎず、という非常に難しいラインを見事に見極めて表現されているので、自然に手前の主役に目がいく画面になっています。

主役だけでなく周りの見え方の加減もコントロールすることで、お腹が空いていてハンバーガーがとても魅力的に見えて仕方ない、といったまさに今食べようとしている時のような視点が伝わってきますね。見ている内に本当に食べたくなってきてしまったので、明日のお昼ご飯はハンバーガーにしようと思います。

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雨上がりの紫陽花階段

2024-09-06 19:40:53 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、釘宮さんの水彩画です。この作品を見てもお分かりになるように、紫陽花の季節=つまり5月から制作されていらっしゃいました。雨に濡れた黒い石の階段や、雨上がりの優しい日差しが左上から右側の花に当たっているところ、門の中にお宮参りというよりは観光客であろうご婦人たち、全てが自然に調和するように注意を払って描かれています。
光を受けて葉が透けるように明るくなっている柔らかな色合いが美しいですね。奥は絵の具を薄く塗っているのに対し、陰になる左手前などは黒や近しい濃い色を思い切りのせて差を付けています。画面全体のバランスを注意しながら制作されて行ったのでしょう、どこを観ていても心地よい1枚だと思います。紫陽花の青色も美しいですね。紫陽花は小さな花びらが集合して1つの塊となっているので、どこまで描き込むかの判断が難しいものですが、釘宮さんはその塩梅を見極めて描かれていますね。

陽光や湿度、匂いといった形のないものを表現するのは難しいですが、風景を描く上ではいかにそれらを観賞者に感じさせることが出来るかが重要になってきます。一筆一筆に作者が目指したかった優しい風景への思いが込められているのでしょう、じっと見つめていると、雨と紫陽花が混ざった匂い、遠くで談笑する人々のかすかな声、葉っぱに反射する陽光が、まるで実際に体験したかのように頭の中に広がっていきます。

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広がる空間

2024-09-04 22:17:03 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

とうとう夏休みが終わってしまいました、ナツメです。今回は大人クラスより黒木さんの作品をご紹介します!
まるでターナーの水彩画を見ているような美しい景色。写真集の見開きのページから画題を選ばれました。淡く優しい色遣いが印象的ですね。まるで空を割って現れたかのように輝く太陽にも、眩しいながらギラギラとした強さはなく落ち着いた雰囲気を感じます。

空の中心部には紫、青、黄色など様々な色相から選んで乗せています。絵の具が重なった部分にまた新しい色彩が生まれ、透明水彩ならではの複雑な色合いがとても効果的に使われていますね。この幻想的なトーンがここまで綺麗に見えるのは、周囲に暗い箇所を作っているためです。左右上の空や水面の向こうに見える街などもしっかりと暗さをつけ描かれているため明るい空との対比が際立つように設計されています。同じく手前の海は暗く、遠くにいくほど段々と水面が明るくなっているため遠近感の表現だけでなくビネット効果のように中心へと視線を集めることにも一役買っています。光を強く演出するような明度計画が素晴らしい!
横長の構図もしまって、閑静な空気の中で穏やかに波が寄せていく音や雰囲気がありありと伝わってくるような臨場感あふれる作品となりました。

ワンポイントアドバイス 横長のパノラマのような画角によってまるでその場にいるかのような視点になっていますが、こういう広がりのある風景を描く時は大きめの紙を使い、余白まで筆を止めずにはみ出しながら描くことが、のびのびと感じさせるコツです。

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人物を捉える

2024-08-07 22:37:49 | 大人 水彩


真愛 透明水彩

ナツメです。本日は土曜大人クラスより真愛さん(ご主人と一緒にミオスに通っていらっしゃるので、下のお名前で呼ばせて頂きます。)の作品をご紹介させていただきます。人物画を得意とされる真愛さん、今回も水彩で2枚の人物画を制作されています。

まずはストリートスナップのような画角の左の作品。雰囲気のある2人の佇まいがかっこいいですね。少し力を抜いているような姿勢にアンニュイな表情が加わりイエローオーカーや黄緑など黄みの色に対して、彩度の高い青色や柵の紫などが補色のアクセントになっています。

そして2枚目、メリーゴーランドにもたれかかっている女性。遠くはぼんやりと淡く塗っているのに対して手前は濃く塗っています。これは周りの雰囲気を描きつつも人物に焦点を当てるような効果になっています。画面の中央に集めるように使われている黒も印象的で、遊具の足やスカートだけでなく、腕にもしっかりと濃い黒を乗せることで、柔らかい色遣いの画面を引き締めると同時に、顔周りへ視線を集めるような視線誘導になっています!

どちらも対象の人物の魅力を捉え、最大限引き出すために表現方法や絵の具の濃淡をコントロールしています。

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長編ドキュメンタリー

2024-07-16 22:18:29 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

サヤカです!期末が近づき、レポートやテスト勉強に追われています…今回は、そんな忙しない日常に癒しをくれるような佐々木さんの作品をご紹介します。

佐々木家の次男坊シリーズ。先に生まれたお兄ちゃんはたくさん描かれたので、最近は次男坊君がもっぱらモデルになっています。小さい赤ちゃん(こちら)が、もうこんなに大きくなりました!

今回ご紹介する作品は、どれも何気ない日常を切り取った作品です。ポーズを決めているわけでも、特別な場所にいるわけでもないですが、ご家族にしか見せない表情が描かれていて、佐々木さんにしか描けない家族の温かみが伝わってきます。

焦点を当てなければいけない人物ですが、顔や服装の着彩にいくつもの色を重ねて厚みを出し、背景は単調に塗ることで、人物が背景に比べてグッと解像度が高く、無防備なポーズや表情に込められた愛おしさが際立っています。また、陰影のコントラストがはっきりついているため、体の立体感と画面全体の臨場感が感じられます。

ブログでご紹介した佐々木さんの作品を追って見ると、息子さんたちの成長が鮮やかに感じられ、長編ドキュメンタリーを見ているかのような気持ちになりました!最近、はじめてのおつかいの映像を見て、子供の時にはわからなかった親の気持ちが多少わかるようになったのか、すぐグッとくるようになってしまいました…お子さんへの愛情が込められた作品から、佐々木さんの当時の気持ちを疑似体験しているようでとても暖かい気持ちになりました!

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うん、まだまだいける

2024-07-06 18:23:25 | 大人 水彩


坂本 透明水彩

岩田です。それにしても暑いですねー。

今回は、坂本さんの作品をご紹介します。
ご自身で撮影された、鯉が池の中で泳ぐ画像を元に、透明水彩で描かれたこちらの作品。
プリントされた画像には、空や池のほとりに茂る木々、シダなどが水面に反射し、何とも言えない独特の世界が広がっています。

これは果たしてどうやって描いていけば良いのだろう?そんな言葉が坂本さんの脳裏にも浮かんでいたかもしれません。画像を見た私も「おっ、チャレンジするなー」と思った反面、でも坂本さんならどうにか描き切ることが出来るなという確信を持ちました。

これまでも、台湾九份の提灯が並ぶ賑やかな景色や、猫島のどこか懐かしい、味わい溢れる景色など、実に様々な作品を描いてきた経験上、いつものように、最初に描いたイメージを大切にしながら、最後まで粘り強く取り組むことで、間違いなく美しい世界を紙の上に展開できると感じたのです。

案の定、今回もキラキラと眩しく、繊細な坂本さんらしい作品に仕上がりました。
暗い色から明るい色までのコントラストを目一杯使いながら、動く水面を伸びやかに表現し、シダの緑と鮮やかな鯉の朱色が鮮烈な印象を与えてくれます。

正直、こうした絵は私には描けません。完成した作品を見た時「うん、まだまだいけるな」という言葉が私の頭に浮かびました。

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