モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

思わずウットリ

2024-06-14 22:59:14 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、黒木さんの水彩画です。以前より描かれていた鳥シリーズの3作目(1枚目はこちら、2枚目はこちら)は孔雀!異性を惹きつける豪華な飾り羽は、異種族である我々人間をも魅了する輝きを放っていますね。その存在感、なんと神々しいのでしょう!まるで後光を纏っているかのようです。

目玉のような模様や、鱗のようにびっしりと重なった羽も細かく丁寧に描写されています。見る角度によって変化する羽の色合いを、よく観察し1枚の絵の中に描かれています。また、中央にすっと伸びる胴体の深い青色は、水彩を幾重にも塗り重ねて作られたのでしょう。見れば見るほど吸い込まれそうな藍色ですね!透明水彩の発色の良さを存分に活かして描かれています。黄色と青は色相環の補色の関係にありますから、お互いの色をより一層引き立てあいます。
そして何よりも、気品溢れる孔雀の顔にウットリしてしまいますね。顔はより一層細やかに、気合を入れて描かれているのが伝わってきます。嘴の凹凸、頭に密集している羽、アイラインのような白い模様…全てを余す事なく描写してやろうという気概をも感じられます。黒木さんの鳥への愛から成せる力なのでしょう。

改題材となった鳥達の魅力を、再認識させてくれるような作品だと思います。今後の鳥シリーズも楽しみにしております!

 

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小粒の山

2024-06-06 23:14:08 | 大人 水彩


木佐貫 透明水彩

マユカです!今回は木佐貫さんの作品をご紹介したいと思います!

山盛りのいちご、シンプルながら目を惹くモチーフになっており、木の机や差し色の緑がいちごの赤を際立たせています。差し込む光は自然で優しい春の陽気を感じさせ、水彩の雰囲気にとても合っていてなんだかほっこりとしますね。ふんわりとした画材だからこそ、つやつやとしたいちごの瑞々しさを表現するのに苦労されました。

全体的にしっかりと立体感が付いており、淡い画材でも臆さずに濃く、強いコントラストの色彩を乗せているために、しっかりと光に沿ったゴロっとしたいちごの感じが出ています。一粒一粒の質感は勿論ですが、この粒を「個」として見るか、「塊」として見るかで絵の印象というのは大きく変わってきます。例えばブドウなどは、房に付いている一粒一粒を一個ずつ描いていると、光の方向が分からなくなってしまったり、立体感がなくなりイラストのようになってしまったりと、自然な感じを出すことが難しくなってしまいます。これが「個」の描き方ですね。そうならないために、ブドウの房の描き始めは5角形の角錐を横にしたようなアタリを描き、ざっくりとした全体の陰影をつけてから、粒の形を追っていく…というような描き方をします。これが「塊」の描き方です。

今回の木佐貫さんの水彩画は「塊」として見ることが出来ているので、上から見た構図でありながら、山のように積まれたいちごを感じるのでしょう。また、手前と奥の描き分けもいいですね!手前は木目までしっかり描写し、光が当たっている場所と影になっている場所でいちごの種の書き分けまでする徹底ぶり。しかし奥の方は木目は光で見えないようになっている上、いちごにも陰影をつけるくらいであとはぼやかされています。こうすることで遠近感を強く演出する効果が生まれており、画面にメリハリがついてとても見やすくなりました。まるで写真のようなピントの合わせ方ですね。

細かく描き込むだけが良いというわけではなく、本当に見せたい場所、視線を向けてほしい場所を重点的に描き、周囲はあえて描かない選択をすることで意図的にピントを作り出し、より見やすく、より伝わりやすい画面にできます。主役にスポットライトが当たる絵はやはり、見ていて心地がいいものです。

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手に取れるような質感

2024-05-30 23:34:40 | 大人 水彩


加藤 透明水彩

マユカです!今回は加藤さんの作品をご紹介していきたいと思います。

ぼんやりとしてしまいがちな水彩でこれだけくっきりと見やすく、さらに物質の質感まで伝わってくるような作品たち。左の作品は描写力は勿論なのですが、同系色のモチーフで固められているにもかかわらず濃淡と、イエロー寄りのブラウンから赤み寄りのブラウンを使用し、色相を変えることで単調にならないような色使いをされています。細やかなラベルのレタリングによって実在感が一層増して見えますね

右の作品は海を感じさせるモチーフで統一していますが、セピア調の背景色と青色の浮き球、魚の置物がお互いの色彩を引き立てあい、とても目を惹く作品になっています。対極の位置にある色彩は、慣れないうちは合成の様になってしまうこともあるのですが、加藤さんの作品では空間になじみ、鮮やかな青を局所的に使用することで、茶色同系色に起こりがちなくすんだ感じもさせずに描写されています。どのモチーフも手に取ったときの重さや触り心地を容易に想像することが出来てしまうあたりに、見る人への気配りを感じました。
何処を切り取ってもその精密さに驚いてしまいますが、「いつも仕事ではスピード重視だわ、結果出さなきゃいけないわ、しかもそれが当然で誰も褒めてくれないから、ここで褒めてもらえるのメッチャ嬉しいです!」とよく言ってます。(笑)

物体だけでなく背景にも色を付けることで同じ空間上に物が置いてある様子や光の入り方が統一され、反射光などに背景と同じ色を入れることで情報量も増え、見ていて飽きない作品となります。私たちが普段見ている物達は情報量の倉庫。見れば見るほどに新しい発見があるものです。そういった「よく見ないと気づかないそのもの特有の性質、質感」を発見することでモチーフへの解像度が高まり、見た人にどんな素材のモチーフなのかを伝えるきっかけになります。どういった映り込みが入っているか、写真を撮って確認してみても描きやすくなりますね。

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新しい一面を垣間見せる

2024-05-25 23:39:27 | 大人 水彩


佐藤K 透明水彩

岩田です。本日は、佐藤さんの作品をご紹介します。

こちらは、昭和に建てられたアパート。既に人は住んでおらず、網戸も外れっぱなしの状態で放置されています。今まで旅行先のヨーロッパなどの風景を描かれていらっしゃった佐藤さんですが、突然描いたこの廃墟。
美しく整然とした街並みを描かれていた時は、どうしてもデッサンの狂いなどが目立ってしまいましたが、ゆらゆらとしたペンで描いた線とラフな塗りが、傾きかけたアパートの様をよりリアルに感じさせくれます。

今まで使っていた鮮やかなトーンは影を潜め、全面が落ち着いたグレーに覆われ、枯れたような雰囲気に包まれていて、作者のこれまでの作品には見たことのない新しい一面を垣間見られたような気がします。

身近に見られる建物をどこか擬人化したような面白さを持つこちらの水彩。これから描き方を更に洗練させていきながら、シリーズ化していっても良いかもしれません。

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葉の一枚一枚が見えるような。

2024-05-16 23:38:09 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

マユカです!今回は釘宮さんの作品をご紹介していきたいと思います

透明水彩で風景を描き続けていらっしゃる方です。今回は花々が咲き誇る温かみのある庭園を描かれました。前回の作品はこちら
今の季節にピッタリ合わせてフィニッシュを迎えられました。色とりどりの花がありますが、全体的に暖色でまとまっているため見やすく、花に注目しやすいカラーリングになっています。ぐっと暗い低木の地面や枝が画面を引き締め、遠くにあるものはふんわりとした印象にすることで花の鮮やかさが際立ち、目に楽しい一枚となっていますね。

釘宮さんの作品の持ち味はその細かさでしょう。前回の作品も今回の作品同様植物のある風景を描かれていますが、木や建物の木組み、屋根の雰囲気に至るまで細やかなタッチで描かれています。今回の作品でも花の描き方と茂みの描き方が少し違っていたり、奥にある葉の種類を変えられていたりと、様々な個所から観察力の高さも伺えます。それはかなり難しいパースのついた楕円形の構図が全く違和感なく描かれている所からも。繊細な描写が出来るのは、間違いなく鋭い観察力があるからでしょう

見る力は描写力に繋がります。実物やモチーフをよく観察し、観察眼を鍛えることで描くことが出来る絵の幅が格段に広がります。もし時間があれば、身近な物のスケッチなどをしてみてもいいかもしれません

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儚げでも力強く咲く花

2024-05-09 23:12:08 | 大人 水彩


室橋 透明水彩

マユカです!今回は室橋さんの水彩画をご紹介していきます。

今回のモチーフは夜に開花するという百合の花。周囲が夜のような黒寄りの濃紺でじんわりと滲むように縁どられており、ふっくらと膨らんだつぼみは花開く時を待っているよう。一足先に咲いた白い花弁はまるで周囲に存在をアピールするかのように美しく映えていますね。室橋さんの透明水彩をご紹介した前回のブログでは、大竹先生が「水彩は慣れるまで沢山描く必要があります」と書いていましたが、見比べると画材の扱いにだいぶこなれた感があります。前回の絵は少々色に振り回されたような印象を受けましたが、今回は前後感や立体感といったリアリティが格段に上がった上、モノトーン系ということもあり使用色数の少なさが落ち着きのあるしっとりした魅力につながり、モチーフとの親和性があったのかなと感じます。

植物と水彩の親和性は、その儚さにあるように思います。花弁を描く際にふんわりと滲むようなタッチで描くことにより、触れたときの柔らかさや散ってしまいそうな脆さを画面から感じることが出来ます。繊細なテクスチャを入れてみるのもよし、水分量を調整して暗い場所はくっきりと、輪郭線を整えて描けば力強さ、見やすさを兼ねることすらできちゃいますよ。水分量の調節一つで絵の雰囲気は大きく変わってきますから、その調節になれるまで枚数をこなせばそれだけ上手くなるのでしょう。

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癒しの猫たち

2024-04-26 21:05:15 | 大人 水彩


小嶋 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、小嶋さんの水彩作品です。可愛らしい招き猫が1枚の画面に沢山描かれていますね!いつまでも眺めていられるような癒しの光景です。こちらは小さな招き猫の置物を持参され、それを見ながらイラスト調に仕上げていきました。イラスト調に仕上げる場合、色の組み合わせや線の運び方はより気を遣う必要がありますが、小嶋さんは全体はパステルカラーで柔らかくまとめ、1列ずつモチーフに関係を持たせ描かれていますね。
元々はデッサンや色鉛筆画で動物やそれらの置物をモチーフにして描かれてきましたが、今回イラスト調の作品を制作し「自分がやりたかったのはこれかもしれません!」と目覚めていたそうです。初めての描き方を模索しながらも、楽しんで描かれているのが作品からも伝わりますね。

シンプルな画面ながらも、猫の立体感を感じさせるために薄く明暗を作っています。猫たちも1匹1匹違った柄で描かれており、華やかな画面となっていますね。1列目の猫ちゃんの後ろに描かれている食べ物は、その子達の好物なのでしょうか?アイス好きなメガネ柄の子の表情なんて、なんとも言えない可愛らしさがあります。上2段に対し、下段は夜空を見上げる後ろ姿で描かれています。表情が見えないながらの、哀愁ある背中が味わい深い光景ですね。何を思ってそれぞれの空を見上げているのでしょうか?

猫達の穏やかな表情や、温かみのある色合いからは作者の人柄までも読み取れる様な作品。皆さんが気に入った猫ちゃんはどの子でしょうか?

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表情やしぐさを大切に

2024-03-09 16:11:12 | 大人 水彩


上田 透明水彩

岩田です。今回は、上田さんの作品をご紹介します。

上田さんは、人物が上手くなりたいという思いでミオスに通われている方。
こちらは、家呑みをしている場面を絵にした1枚。まるで酔っぱらってソファから、ふいにパシャっと撮ったような、面白いアングルで描かれています。

ペンをベースに全体を透明水彩で彩色していますが、サラッと描いているものの、雑然と飲み物などが置かれているテーブルや家具、室内全体の状況が、ごく自然に描かれていて、描画材の扱いに手慣れているという感じを受けると同時に、肝である人物を意外にもあっさり描いているなあという印象を受けます。

前回、ご紹介したこちらも同様、客観的にその場、その状況を俯瞰して描くことは、とても得意なのだと思いますが、取り巻く風景と同等位に人物を扱っているのかなという気さえしてくるのです。もっと個々人に思い入れがあっても良いのではと感じます。

例えば、より人物にスポットライトがあたるような状況を絵にしてみたり、動きのあるシーンを選ぶなど、何を描きたいのかを見定め、更に描き込む比重を変えて、1枚の絵を仕上げてみてはどうでしょう。

tpoによる、その時々の状況はもとより、心情や感情によっても人の表情やしぐさは多様に変化するものです。そうしたことに興味を持ち、更に魅力的な人物を描いていって下さい。

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ハイライト考

2024-03-02 17:43:04 | 大人 水彩


透明水彩 大崎

岩田です。今回は、大崎さんの作品をご紹介します。こちらは、アクアリウムミュージアムにて撮影した金魚の写真を元に透明水彩で描いた作品です。

下方に見える赤いつぶつぶは、イクラではなく、水槽内に敷かれたビーズ。
これを一つ一つ丁寧に描くだけでも大変でしたが、初めての画材で、ここまで頑張って描いたなーと、只々感心してしまいます。

このような光を反射した点や線のようなハイライトが幾つもあるモチーフを透明水彩で描く場合は、どのように進めていくべきか実に困るものです。ハイライトの部分を紙の白で残して描くのが最良の方法とは考えますが、どうにも白い箇所を残しようがない場合も多々あります。

解決する術の一つに液体マスキングがありますが、これが実に使いにくい!!
筆や竹串など駆使し、マスクしようとしますが、やっている傍から固まるし、筆に纏わり着くと二度と綺麗に剥がれないし、筆を捨てざるを得ません。

そこで大崎さんは今回、最後に不透明水彩でハイライトを描くという手法を取りました。
この場合も、白を只そのまま載せる、強すぎて浮いた印象になってしまうので、多少でも周りを反映させた色を混ぜたりすると良いでしょう。

今回は、脇役のビーズについてのコメントが幅を利かせてしまいましたが、主役の金魚の尾びれも繊細に描かれているのも見逃せません。

次は初の油彩に挑戦する大崎さん。やりたいこと全て、貪欲にやってみて下さい。

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複雑な色を丹念に表現していく

2024-02-17 14:00:08 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

岩田です。昨日の室橋さんのブログに続いて、アジサイの透明水彩画のご紹介です。

こちらは黒木さんの描いたアジサイ。大輪の花が咲き誇っている風情ある1枚です。
青やピンク、様々に違う色のアジサイが梅雨の時期に、しっとりと落ち着きのある景色を演出している様が、見ているこちらのすぐ目の前に広がっているようです。

何と言ってもこれだけ沢山の葉を画面いっぱい描くのに、まず時間と労力を費やします。
更に花を1輪1輪丁寧に描くほどに、作品が完成する頃にはどうしても季節外れになってしまうのは仕方のないことです。

手前に鎮座する最も見栄えのする花だけでも、100以上のガクの集合体だと思われますが。手で触るとふわっと柔らかい、そのこんもりとした球形の様を、細部に執拗に拘り過ぎず、バランス良くここまで表現したなあと感心してしまうのです。

葉を描く際も、何度も絵の具を重ね、渋さと鮮やかさが同居する複雑な色を丹念に作り出していきました。透明水彩を描き進めていく度に、色の深みを出し、そのものらしさを表現するための術を着実に身につけていっている黒木さん。

いまチャレンジしている作品も完成が楽しみです。

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旅行の気持ち

2024-02-16 13:59:56 | 大人 水彩


室橋 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、室橋さんの水彩作品です。箱根の登山鉄道モハ2形と、線路沿いに咲いた紫陽花を描かれています。

冬に完成したこちらの作品ですが、慣れない画材は季節を先取りして描き始めたつもりでも、時間が掛かってしまうということがしばしば起こります。室橋さんも透明水彩を始めたばかり。しかも電車のようなカッチリとした乗り物を題材に選ばれたのも初めてでしたので、なかなか苦労されていました。朱色のボディと、周りの緑の色の響き合いが美しいですね。自然物はにじみを多用して柔らかく塗り、反対に人工物(電車)はムラなく均一に塗る事で質感の差も作られています。また、紫陽花は電車よりも手前にありますが、あえて細かく描かない事で、電車にピントが合う様に設定されています。ただ、細かく描かないと言っても、絵全体を見た時は小さな花の集合である紫陽花の形が伝わる程度には描かれています。そのバランスがちょうど良いですね。
水彩の柔らかな雰囲気もあり、優しく穏やかな時間が流れている様に思います。箱根という観光地ということもあり、旅行の時のウキウキした気持ちが思い起こされますね。私も友人と何度が行ったことがあったので、懐かしい気持ちになってしまいました。

水彩は慣れるまで沢山描く必要がありますが、1つ1つを楽しんで制作していって頂けたらと思います。

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モノになる瞬間を感じている

2024-02-10 14:20:01 | 大人 水彩


加藤 顔彩

岩田です。今回は、加藤さんの静物着彩をご紹介します。

こちら、定番のモチーフ。対象をしっかり見て描いていますね。
金属、ガラス、貝など其々の質感までも良く感じられ、作者自身が楽しんで描いているなーというのが伝わってきます。

写実的にモノを描く場合、描画材が何であれ、描いていると、絵の具が”目で見ている対象そのモノ”に変わる瞬間があります。
描き始めて暫くは、当然ながら、絵の具で描いているなあと自分でも感じているのですが、全体的に色を置き、徐々に細部に行くにつれて筆を画面に置くスピードもゆっくり且つ慎重になってくると、遂にその瞬間が訪れます。これこそが、写実の真骨頂です。

加藤さんも多分、その瞬間に魅了されている一人です。

特に奥に描かれた茶色っぽい花器は模様などがあり、中々一筋縄には描けるものではありませんが、ここまでそのものらしさを良く出せたなあと感心していまいます。

しいて言えば、あとは「空間」と「影」でしょうか。
コーヒーミルの縁の前後の空間、貝の縁などモチーフそれ自体の中に空間性を出せるともっとリアリティは増してきます。そしてモチーフによって、台上に投影される影にはもっと違いがある筈です。影もモチーフ一つとして扱う気持ちを持って挑んでみて下さい。

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表情豊かな風景

2024-02-06 22:05:50 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

関東でも大雪になる程の突然の寒さに驚いています。サヤカです!

さて、今回は大人クラスの釘宮さんの作品を紹介します。いつも季節に沿った風景を選ばれていますが、こちらは12月に入る前に完成された秋の清水寺です。これまでも四季折々の自然と日本ならではの建築物を描いてこられましたが、今回は秋がテーマということで、鮮やかな紅葉と存在感ある清水寺が印象的な一枚ですね!修学旅行で訪れた秋の清水寺の美しさに胸を打たれた思い出をふと思い出しました。

崖の上に建てられた清水寺は、何百本の欅の柱に支えられ、木々の中から堂々と本堂が現れるというような清水寺ならではの魅力を持っています。その魅力を最大限に活かし、木々をアバウトに描くことで、清水寺に目が向くようになっています。陰影もかなりしっかり描かれていて、正面からの画角にも関わらず奥行きを感じられます。以前のナツメ先生がブログで、釘宮さんのことを「緑色の専門家」と呼ばれていましたが、今回の作品も緑の使い方がさすがです!清水寺の背後の木々は、清水寺を引き立たせるためにぼんやりと描かれていますが、紅葉の赤色をアクセントに使い、表情豊かな山が表現されています。

釘宮さんは、現在菜の花畑の広がる春の絵を制作されています。次回も日本の四季を感じられる美しい作品を楽しみにしています!

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古めかしくも美しい街

2024-02-02 20:56:37 | 大人 水彩


佐藤k 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは佐藤さんの水彩画です。ドイツのハイデルベルクの街を描いています。旧市街の奥には赤砂岩のハイデルベルク城が見えますね。ドラクエやゼルダの様な中世ファンタジーゲームで育った私はこの光景にとてもワクワクしてしまいます。笑
以前紹介したこちらの絵の、反対岸から描かれたものだと思います。ネッカー川に架かるカール・テオドール橋はドイツで最も古い橋の1つだそうです。また、ドイツで最も古い大学のハイデルベルク大学もこの街にあります。その下には長い輸送船が通っており、古都にいきなり現代が入り込む不思議な光景ですね。

バーントシェンナの屋根が並ぶ中、ウルトラマリンがアクセントに塗られています。(右側のウルトラマリンの屋根の建物は聖霊教会でしょうか)同じ角度から撮った写真を見ましたが、実際にここまで鮮やかな屋根は存在しなかったので、作者の工夫が入っているのでしょう。奥へと行くにつれ彩度を落とした絵の具を薄く塗っていく事で、空気の層を作り遠近感が作られています。作品の観る人の視線が、手前の橋から街へと渡り、ウルトラマリンの屋根を伝い、森の奥へと誘導されて最後に城へとたどり着く様に導かれていっていますね。

以前と作品と比べますと、より透明水彩の色合いを生かした透明感のある仕上がりとなっていると思います。太陽の光や澄んだ空気が感じられ、より画面の中の街の息遣いが伝わってくる様です。水彩絵の具は色を重ねすぎても濁ってしまうので、やめ時の見極めが難しいものですが、そのタイミングをマスターしてきているのではないでしょうか。次回も鮮やかな作品をお待ちしております。

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主役を引き立てる背景

2024-01-18 22:59:20 | 大人 水彩


真愛 透明水彩

風邪を引いたかと思ったらどうやらスギ花粉が飛び始めているようです。花粉症のマユカです!
本日は真愛さん(ご主人と一緒にミオスに通っていらっしゃるので、下のお名前で呼ばせて頂きます。)の作品をご紹介させていただきます!

雨の町を走る少女と、胡坐で座る女性。どちらも写真を見て描かれました。
透明水彩ならではの温かみを感じるふんわりとした質感と、にじみを活かした描き方が優しい雰囲気を纏っていますね。ファッションアイテムに使われている色が背景にも使われているため、それぞれの作品が統一感にあふれています。使われている色は多種ありますが、それを同じ雰囲気でまとめ、一枚一枚雰囲気が少しずつ変えられている辺りにもにもセンスを感じます。それではまず左の作品から見ていきましょう。

女の子は、どこに向かっているのでしょうか。急いでいるようにも、スキップしているようにも見えるこの作品は、異国情緒あふれる街で雨に濡れ、周囲の風景をぼんやりと映し出す地面の描写がとても美しいですね。映り込みの解像度はあえて抑え、絵具の広がりのみで描かれているように見えます。主役になっている女の子には赤い色をポイント的につかっているため、どんよりとした天気も吹き飛ばしてしまうようです。
様々な種類の白を使っているため、遠くのビル群と手前の橋の欄干にしっかりと差を生み、風景により厚みを出していますね。

次に右の作品ですが、オレンジと青の対比的なカラーリングが目に鮮やかで、人物だけでなく背景の車や建物、看板の文字に至るまで細かく描かれています。しっかり描かれていても、中心の女性よりは柔らかく単純になっているため、前後の遠近感を感じるような作品になりました。
透明水彩を何度も重ねた層によるにじみや色の混ざりは、雑誌の挿絵にありそうなオシャレさを感じますね。

日常の一コマ、のような題材を持った作品には水彩絵の具はピッタリな画材です。写真をイラストにする際にはとても相性がいいため、水彩に触れたことが無い方も一度、試してみてはいかがでしょうか?

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