愛美 中3 岩絵具・銀箔/パネルに和紙
一気に高温多湿!という感じの気候が増えましたね、ホノカです。今回ご紹介するのはそんな暑さも忘れてしまうくらいの冷たいキリッとした印象のある、愛美の日本画です。
大きな銀の月が輝く夜に遠吠えをする狼。現実では考えられませんが、月を大きく描くことで神秘的な雰囲気や孤高といった雰囲気が感じられます。月と狼といえば人狼の話が浮かびますが、実際には狂犬病に罹ってしまった人が正体なのだとか、閑話休題。
今回の彼女の絵の一番の特徴ともいえるのが、ドライブラシです。ドライブラシは水彩画などの技法の一つであり、筆の水気を切ることでザラザラとした感触や掠れた質感を表現できるものとなっています。こちらの作品では狼の体毛に存分に生かされており、岩絵具をドライブラシで重ねていくことで体毛の細さや、寒い時期を過ごす毛皮の密度がありありと伝わります。なんとこのやり方は自身で独自に行なっていたそうなので、彼女の勘の良さではないでしょうか。また、全体に色を多く重ねるのではなく、下塗りの薄い紫を少し見えるくらいにおさめている部分や、少し密度が高く毛が描かれている部分など、全体が均一にならないような工夫も見られます。
そして絵の半分程度は銀箔で飾られた月が占めており、狼をその光で引き立ててくれています。ですが一方で箔は強く光を反射するため、メインのモチーフが埋もれてしまう可能性もあります。今回の作品では先述のドライブラシで描かれた毛並みの質感があることで、平面的ながらインパクトをもたらす月、そして立体的で存在感のある狼という二つの要素が絡み合い面白い作品になっていますね!
扱いが難しく、学生クラスの中でも苦戦する生徒が多い日本画ですが、その中でも彼女なりに方法を模索してとても良い形で完成させられたのではないでしょうか。新しい画材を使うときは楽しさと同程度に難しさもありますが、今後も模索しながら楽しさを見出せるといいですね!