モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

基礎から得る学び

2023-10-18 23:36:23 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

ナツメです。本日は日曜大人クラスの釘宮さんの作品をご紹介します!

釘宮さんの前回の作品をアップしたのは、ちょうど1年前の9月です。実は1年間、鉛筆デッサンの基礎に戻り修行をされていました。展覧会に出品された多くの方も「もう一度、1からデッサンを勉強し直します。」とおっしゃり、今まで描いていた画材を封印し、鉛筆に持ち替えて基礎から頑張っている様子を見ると、大学のデザイン課題に追われデッサンから離れている自分も身の引き締まる思いになります。

前回のブログでは、「まるで緑色の専門家ですね!」と書いたほど扱いに長けている釘宮さん。今回も流石のコントロールで前後感や細い松の葉の密集している様子などを表現されました。今回の作品も画面のほとんどを緑色が占めているので、どのようにして手前の松から奥の山までの遠近感を出すかを試行錯誤されていました。

1年間の修行の成果か、明暗の差をつける度胸がついたように思います。手前の松の木々も、これほど暗さをつけなければ遠くへと抜けるような空間の表現にはならなかったでしょう。デッサンのようにモノクロに置き換えたときにも空気感を伝えるという意識を感じられます。コントラストが強いのは手前の松ですが、木々や湖などの輪郭のやわらかい自然の中で、整った形の橋が1番に目に飛び込んできますね。奥の橋から静かな湖、そして手前の木々へと、段々手前に来るよう視線の流れが作られている点も、奥行きを出す一助となっています。

久々の水彩でしたが、ブランクを感じさせないどころか一層レベルアップした密度のある作品となりましたね。強化された釘宮さんの作品に今後もご期待下さい!私も楽しみにしています!

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旅の思い出

2023-10-11 22:52:22 | 大人 水彩


吉村 透明水彩

ナツメです。急に涼しくなりましたね。朝の登校にTシャツは寒く、長袖の服を引っ張り出して来ました。本日は大人クラスの吉村さんの作品をご紹介します!こちらの作品は、先日の展覧会に出品されていたので、記憶に新しい方がほとんだだと思います。実物はもっと瑞々しく繊細で、旅の記憶が蘇ってくるような懐かしさを感じさせます。

カメラのレンズの光沢や観葉植物のちょっとした葉の厚みなど、一つ一つのモチーフをとても丁寧に描いていますね。特に質感の表現は難しかったと思いますが、細かな部分まで見つけて描画しているため、どこをとっても質が落ちないほど高いクオリティとなっています。

空気感も素晴らしいですね!一方向(手前左に窓があるのでしょう)から当たる光がやわらかく、明るい中にもどこかに旅が終わった寂しさが漂う雰囲気へと繋がっています。透明水彩はその名の通り、暗い色の上に明るい色を塗っても透けて明るくはなりません。そのため明るい部分は初めから残し、段々と暗さをつけていく画材です。とは言え、少しずつ暗くしていくと淡くなりがち。吉村さんは濃い影や黒いカメラにぐっと強い暗さを入れたため、一かたまりに置かれたモチーフに光が当たり、奥へ行くほど仄暗くなっていく様子が巧く表現されています。

近頃はスマホ一台ですぐに撮影・画像の保存が可能ですが、カメラを片手に旅路を記録し、写真として残すところが懐かしさを感じる一因かもしれません。先程寂しさとも書きましたが、今後この相棒たちとどんな旅をするのかと、これからの行先も楽しみな気持ちも湧いてくる一枚です。

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やさしい光の中で

2023-09-22 20:40:25 | 大人 水彩


チョウ 透明水彩

島根県松江市にある、美保神社から仏谷寺に至る青石畳の通り、江戸時代の参拝道の遺構を描かれました。歴史を感じる家々がならぶ風景と明るい日差しが印象的ですね。澄んだ空気から爽やかさと静けさが伝わってくるようです。

今回は線に力を入れて描かれたため、淡めに塗ることでその線画を活かし水彩と鉛筆の優しさが魅力的な作品になりました。中でも建物や電柱などの真っ直ぐで硬いラインが正確に描かれているため、木や石畳などの自然物の佇まいもより強調されています!明暗を見てみると、全体的に茶色と緑色が置かれているなかでも手前のコントラストを強く、奥は弱く…と差をつけています。色相の限られた中でもパースのきいた距離感を出すための工夫もバッチリです!

透明水彩はその名の通り下に塗った色が透ける絵の具なので塗り重ねれば重ねるほど色が暗くなっていきます。油絵やアクリル絵の具のように上から重ねてカバーすることのできない画材なので、光の当たっている所などの明るくしたい部分は塗り残しておくなど、最終的な完成図のイメージを作り色をおく計画を立てる必要があります。今回のチョウさんの作品も全体の雰囲気や光を意識して描かれたため、どこをどれくらい塗っていいのかという計算が難しいところだと思います。画面全体の明るさを保つだけでなく、暗さを入れる勇気をもってコントラストの強弱を上手く入れることができたので、淡い色合いが際立つ作品になりました。
こちらの作品は月末の展覧会で展示されます。どうぞお楽しみに!   ナツメ

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沼地のハイビスカス

2023-09-15 16:10:34 | 大人 水彩


河合 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは河合さんの水彩画です。
モミジアオイという花を透明水彩で描いています。ハイビスカスにも似たこの花は、沼地に多く生息している事から沼ハイビスカスとも呼ばれているそうです。
ボタニカルアート(写真が無い時代に、図鑑などに挿絵として描かれたもの)を意識して描かれているのでしょうか、背景は描かずに花びらや葉の形を繊細に描写し、透明水彩で美しく着彩されています。特に主役である花弁の部分は筋や凹凸を絵の具の濃さ、塗り重ねる回数の違いで細かく表現されており、非常に存在感のある仕上がりとなりました。周辺の葉は位置によって色合いや濃さを変え、手前や主役の花の周辺は濃く、そこから離れるにつれ淡く塗られています。草花の持つ瑞々しさ、水彩絵の具の持ち味である透明感を活かし、うまく引き出されていますね!透明水彩は色を重ねすぎても汚くなったり、薄すぎると弱々しくなってしまうので、思い切って大胆に色をはっきり塗った方が画面にメリハリを効かせる事ができます。絵具の扱いに慣れるまでは苦労する画材ではありますが、河合さんはその過程も楽しみながら制作を続けていく事が出来るでしょう。
構図はシンプルながら、右に傾いて配置された茎と、反対に左側を向いた花で構成されています。花を向いている方向は蕾や葉を描かずに空間を作り、花に目が行きやすく成っていますね。描くものが少ないシンプルなもの程、実は構図を取るのが難しかったりします。河合さんの今回の作品は、全体がバランス良く配置されているので、葉の1枚1枚まで心地よく鑑賞する事ができるのです。

モミジアオイの花言葉は「穏やか」「温和」。初めての取り組み・知識を楽しみ、喜びをもって制作されている作者の人柄にもぴったりの花だと感じました。是非これからも色々な花・モチーフに取り組んで頂けたらと思います。

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伝える絵

2023-09-13 23:34:14 | 大人 水彩


上田 『強い光  強い影』 透明水彩

まだまだ日差しが強い日が続きますね、ナツメです。本日は日曜大人クラスの上田さんの作品をご紹介します!今回は水彩で2つの作品を同時進行で制作されました。

強い光が印象的な2枚ですが、どちらにも俯いて座っている人物が描かれており、その隣には寄り添うように小さなお地蔵様が置かれています。落ち込んでいる時は先に光があることに気づかないけれど、道を示し寄り添ってくれる存在がいるから1人じゃない。絶望ではなく、長いトンネルの先には必ず明るい未来があるというテーマの元に描かれました。

そのため、全体を通してテーマを強調するように明暗の差を意識して描かれたのがわかります。

左の絵では、俯きながらも光の方向に体を向けている女性が描かれています。青と茶色(オレンジ系)の色との補色対比をしながら、影となる部分の明度を下げてはいますが、彩度の高い鮮やかな色を置き、心が拓けるのはあと少しと暗示しています。

それに対して右の作品は、左と同様に大胆に明度差をつけつつも、全体的に深い緑系の色を使っています。光の黄色は彩度が高くまばゆいほどなのに、まだ光の存在にすら気づけていないことを示すかのように(もしくは「ほっといてくれ」と言わんばかりに)、人物は光に背を向け、彩度の低い重たい色を使った影の中に浸食しています。

ストーリーやコンセプト、絵を通して伝えたいことが明確にある場合、言いたいことをあれもこれもと盛り込んでしまうと、結果すべてが薄まり何が言いたかったか分からなくなってしまいます。まずは絞り込んだ少ないポイントに全力を注ぐと、上田さんの絵のような強く印象に残る作品になるでしょう。
最初の水彩画でしたが、ここまで気持ちを込められたのは素晴らしいですね!今後だんだんと描けるものが増えていく中でどんな作品が生まれるのか、楽しみにしています!

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小鳥への愛情を感じる1枚

2023-08-19 18:42:48 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

授業・ブログともに1週間の夏休みを頂きまして、ありがとうございました。お久し振りです、岩田です。

本日は、黒木さんの作品をご紹介します。
今回は、ペットのセキセイインコを描かれました。以前にも小鳥の絵を描かれていて、そちらは水彩色鉛筆を使い鮮やかな色の鳥たちを描いたのですが、本作は、逆光の日差しに苦労されながらも描画材を透明水彩に変え、きれいな影色を演出しました。

小鳥好きの黒木さんらしい、セキセイインコへの愛情を感じる1枚で、ふと鉢植えのそばに止まって、首をかしげながら辺りを見回しているような愛らし表情がとても印象的です。

鳥の羽根はとても複雑で、部分部分で羽根自体にも違いがあり、描く上でも相当な観察眼を要します。更にセキセイインコの羽根となると、風切羽根の先端に行くにつれて色が濃くなっていたりと、色のバリエーションも相まって、描く上でも相当な観察力が必要になってきます。
黒木さんは、その違いをつぶさに見ていて、後ろからのアングルから見た羽根を美しく表現されていますね。

鳥や花を通して、何気ない日常の風景を自然なタッチで絵にされる黒木さん。現在描いている紫陽花も仕上がりが楽しみです。

 

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ガラリと変化して

2023-06-09 20:11:35 | 大人 水彩


矢作 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、矢作さんの油彩作品です。雪で白く塗られた階段に、赤い椿が散っています。こちらはF15号と少々大きめのキャンバスに、最初は青い背景に山猫を横構図で描かれていました。何度か描き直し、どうしても気に入った絵にならず、その青を下地として活かし、雪と苔の積み重なりを表現しています。前回の油絵を岩田先生がYouTubeでアップしたのがちょうど1年前の6月4日。その後、すぐに新作に取り掛かったと記憶しておりますので、山猫に半年、椿に半年掛けたのではないでしょうか?
雪の椿は、季節外れに描き始めた訳ではありませんでしたので、きっとその計算で合っていると思います。素晴らしいバイタリティーです!

制作途中では今よりも椿が多く咲いていましたが、その所為かどこか散漫な印象がありました。そこで、主役となる椿を1つ決め、他は脇役となるように消したり描き直したりしています。それにより、主役が何なのかが一目で分かるようになっていますね。
下地の絵の時点でもかなり絵の具をのせていたので、かなりマチエールのついた画面となっていますが、ゴツゴツした岩の階段や、それを覆う雪ともマッチして非常に油絵らしく重厚な仕上がりとなっています。階段が奥へと続いていく構図も、見た人の視線をそのまま手前から奥へと導いてくれていますね。足跡もなく花が踏まれた形跡もないので、ここはあまり人が立ち入らない場所なのでしょうか。奥の方は霧がかかったように白んでおり、吸い込んだ空気の冷たさまで伝わってくるようです。

下地になった作品はどちらかというと夏っぽい印象でしたので、季節までもガラリと変わったのは面白いですね。油彩は思い切った描き直しも出来、かつその下地が思いもよらぬ効果を生んでくれたりするので偶然も楽しめる画材だと思います。次回も是非楽しみながら制作して頂きたいと思います!

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同じ色でも

2023-06-08 23:33:24 | 大人 水彩


殿山 透明水彩

日差しが強い日が続きますね、早くも夏を感じています。マユカです!本日は殿山さんの作品をご紹介します。

自然な笑顔が素敵なこちらの作品。淡い色使いが優しい雰囲気をまとっており、なんだか幸せそうな空気感が伝わってきます。肌色に同じものを使わず、イエローベースとブルーベースの描き分けをされているのが素晴らしいですね。よく見てみれば、服に使われているブルーも重なって混ざらないように濃さや淡さが違います。服につけられている模様など、影色で前後をつけるだけでなく、細やかな工夫が見て取れるところから、殿山さんがこの作品に真摯に向き合っていることがとても伝わってきます。

ちなみに、こちらのお二人は奥様のご両親とのこと。婿殿からこんな素敵なプレゼントをもらったら、嬉しすぎますね!
でもこの絵を見た幼稚園児の娘さん、「次は私を描いて!」とやきもちを焼かれたそうですよ!今まで沢山描いてもらっているのに…!(これこれこれこれこれ!)どれも娘さんへの愛を感じるとても素敵な作品です。これだけたくさんの人物画を描いているからこそ上達するのだと、改めて感じました。

衣類や肌に限った話ではありませんが、実は一見同じ色に見えるものも、少しずつ色が違うことが多いです。どんなに同じ色に見えていたとしても、手前の方が濃く、後ろの方は少し淡いような、似ている違う色で塗ることで前後感が生まれ、自然な奥行きが更に広がって見えます。皆様も、同じ色が隣り合った時は同じ色をもう一度使うのではなく、別の色を混ぜた、少し違う色を使用してみてくださいね!

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作者の眼差し

2023-06-06 23:00:01 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

佐藤です。本日は大人クラスより佐々木さんの水彩作品をご紹介します。
永らく息子さんの成長記録を描き続けていらっしゃる佐々木さん。左の絵は次男くん、右は長男くんです。このブログでも何度も息子さん達を描いた作品を紹介していますので、もうすっかりお馴染みの方も多いと存じます。

話が少し逸れるのですが、私は向田邦子の小説やエッセイが好きで、折に触れて氏の作品を読み返しています。
向田作品の魅力は等身大の人間を丁寧に描く描写力と、人間の滑稽さや可笑しみも愛情を持って描く、作者の眼差しにあると感じます。文章の上手な作家さんや大胆で奇抜な題材を扱った作家さんなど、作者の数だけ作品の面白さがありますが、物語を通して作者から被写体への愛情に触れられるような作品は、そう多くはないように思います。

佐々木さんの作品を拝見した時にも同じように、作品を通して、何気ない日常を愛おしむ作者の暖かい眼差しを感じました。
どちらの作品も決して奇を衒ったシーンではないですが、淡い色使いや丁寧な筆運びから、佐々木さんにとって大切な日常の一コマを切り出しているであろう事が伝わってきます。

次の作品では、きっともう少し成長した息子さん達の姿が見られるのではないでしょうか。
その姿を佐々木さんがどのような眼差しで見つめ、描かれるのかも、引き続き楽しみにしております。

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石膏デッサン促進委員会・会長!

2023-05-17 00:03:03 | 大人 水彩


林 透明水彩・石膏デッサン

佐藤です。今回は大人クラスの林さんの作品をご紹介します。

女性の人物画を得意とされている林さんですが、ここ最近は一貫して石膏デッサンをされていました。
ミオスの石膏デッサン促進委員会会長を自任し(笑)、「もっとたくさんの人に石膏デッサンの面白さ、必要性が伝わればいいのに…」と常々おっしゃっていたようです。
その甲斐あって、窓際に置いてある描きかけの林さんのデッサンを見た生徒さん達から「こんな風に描けるようになりたいので、次回は石膏にチャレンジします。」などのお申し出が相次ぎ、現在かなりの方が石膏デッサンを描かれています。
4月、林さんの在籍する土曜クラスでは6人の方がトライ、なんと石膏台に同時に3体の石膏像を並べていたことも!高い石膏台に重い石膏像を持ち上げるのは骨が折れるので、こちらとしては嬉しい悲鳴なのですが…。

人物画も、以前の林さんの人物画と比べて非常に進化されているのが分かります。
いずれも顔や手、上半身のバランスをしっかり取る必要があり、誤魔化しの効かない難しい構図ですが、安定して描きこなせているのはきっと継続的な石膏デッサンの賜物ですね。
女性を照らす柔らかい光や、透けるような肌の表現も、透明水彩という画材の特徴を生かされていてとても素敵です。
以前の油彩では、キリリとした目元から女性の強さを感じるような作品も多かったですが、今回の水彩作品からは少し儚い雰囲気も感じられます。

お引越しで退会されてしまいましたが、ぜひ今後もライフワークとして絵を描き続けて頂ければ嬉しいです。機会があればぜひ新作を拝見させてください!

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画面の密度と繊細さ

2023-03-23 23:47:44 | 大人 水彩


黒永 透明水彩・茶色ミリペン/木製パネルに直描き

花粉に苦しめられています!マユカです。本日は黒永さんの作品をご紹介します。

キューバの裏道です。閑静な住宅街のような雰囲気にも見えますが、泥棒除けの鉄格子のはまったドアもある整備の行き届かない路地を描かれました。こちらの作品なんと、木のパネルに直接描かれています。しかも水彩絵の具で!
木は、かなり水を吸収しやすく、目が粗いために木目の溝を伝って広範囲に絵具がにじみやすい素材です。しかも、水彩絵の具は絵具の中でも水分を多めに使う画材であるにも関わらず、手前の車や建物の輪郭がはっきりとしており、直線や曲線にブレがありません。水分量の調節はもちろんですが、その筆さばきも細かく、こだわりを持って描いていることが伝わってきます。

奥の建物の薄れていく描写にはにじみをうまく使い、空間に奥行きが出ていますね。道や空に使ったぼかしと対比するように、メインである車や建物にははっきりとしたタッチで細かく描写がしてあり、よく見ると車のヘッドライトの反射やナンバープレート、建物のドアの凹凸、壁のシミなどすらしっかりと描きこまれています。特筆すべきは、パネルの木目や傷・ささくれを利用した、陥没してぬかるむ道路の表現でしょう。パネル自体がF0号とかなり小さく、掌両手分位の大きさの画面なので、この写真では分かり辛いのですが実際に見ると巧みなテクニックが見て取れます。
以前描かれたパネル作品も、同じように丁寧に描きこまれており、差し込む光の雰囲気がとても美しい作品でした。(前回黒永さんが描かれたパネルの絵はこちら

木のパネルには紙を貼るものだと思い込んでいた私にとって、パネルにそのまま描く、というのは驚きでした。皆様も時には紙ではない素材を支持体にして描いてみると、新たな発見があるかもしれませんね!

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日常の何気ない一コマ

2023-01-26 23:21:17 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

旅行に行きたい!マユカです。今回は佐々木さんの作品をご紹介します!

透明水彩で描いた2枚の人物風景画。どちらの作品も、人物には強く焦点を当て、細かい筆運びで鮮明に描写し、背景は水彩絵の具特有のにじみを活かして描写することにより、淡く優しい光を感じます。遠近感がはっきりとして見えてくるため、描かれた空間に奥行きが生まれていますね。
佐々木さんには二人の息子さんがいらっしゃるのですが、中学生のお兄ちゃんが生まれた時から、成長記録として描き続けています。写真ではなく、自らが描いた絵で思い出を残していくあたりに、佐々木さんから息子さんへの大きな愛を感じます。

左の作品は信号待ちをしている様子を切り取ったのでしょうか。2人とも同じ方向を向いて、車が走っている道路を見つめています。仲がよさそうな兄弟の雰囲気が伝わってきますね。遠くにある車や建物も、さらっと描いてあるように見えますが、よくよく見ると窓についているカーテンだったり、ベランダの日よけ、奥に住宅街が続いている道の様子など、細かく描写されています。目立たないようなところもしっかりと手を入れて描いているからこそ、描きこまれた人物と背景がなじんで、1枚の絵としてのクオリティが高く見えるのでしょう。

右の作品は、涼しげな風を感じるような、爽やかな空気感が伝わってきます。芝生の色の移ろいで、奥まで続いた走り回りたくなるような広い空間を、小さな画面に上手く描写しています。空の青さのグラデーションも美しいですね。晴れた日の外の、肺いっぱいに吸い込みたくなるような空気の清々しさを思い出させてくれます。チューブから出したままの鮮やかな色ではなく、目でとらえた自然な色彩を作ってから画面にのせて描いているため、緑豊かな風景がより美しく見えます。

今回ご紹介した佐々木さんの作品は、2枚ともカメラを意識していない、何気ない日常を切り取ったような構図になっていました。人物をメインとした作品は、こちらに顔を向けていたり、ポーズをとっていたりと、カメラを感じるようなものが多いため、背を向けているというだけでむしろ新鮮さを感じます。きっとこの作品のカメラは、佐々木さんの視点なのでしょう。これからのお子さんたちの成長が、見ているこちらも楽しみになってしまいますね。

 

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のどかな木漏れ日

2023-01-25 23:46:37 | 大人 水彩


杉本 透明水彩

寒すぎて極力家に引きこもってます、ナツメです。本日は水曜大人クラスより杉本さんの作品をご紹介します!

今回は初めての透明水彩ということで、温かい光がそそぐテラスを描かれました。葉の擦れる音や周囲の広さを感じるほど空気感が巧みに表現されています。

やはり印象的なのは光の加減ですね!木漏れ日のコントラストはそこまで強くないため強い日差しには感じさせないのですが、光の当たる奥の葉に鮮やかな色を使ったり逆行になる手前の椅子に強い暗さを置くことで、奥の空間に広くあたる光の明るさを表現しています。木漏れ日は一度壁の暗さを塗ってから、(洗剤無しで茶渋が落ちる)メラニンスポンジ『激落ちくん』を駆使し明るい部分の絵具を抜いて表現されました。

それぞれの形も正確に取られていて、椅子の脚や奥のフェンスなど、筆で描ききれないような細い線にも積極的に挑まれました。工業製品の真っ直ぐで硬いラインが正確に描かれているため、木や石畳などの自然物の佇まいもより強調されています!

透明水彩はその名の通り下に塗った色が透ける絵の具なので塗り重ねれば重ねるほど色が暗くなっていきます。油絵やアクリル絵の具のように上から重ねてカバーすることのできない画材なので、光の当たっている所などの明るくしたい部分は塗り残しておくなど、最終的な完成図のイメージを作り色をおく計画を立てる必要があります。以前までアクリルで写真模写をされていたため透明水彩に変わったことで色の扱いなどに苦戦された部分もあったと思いますが、それを微塵も感じさせないほど色の滲ませ方や濃淡など画材の持ち味を活かした絵になりました。様々な画材を扱うことができると描きたい画面に合わせて選択ができるため、皆さんもどんな画材が合うのかから考えてみてはいかがでしょうか?

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28年のご愛顧に感謝

2022-12-31 15:00:39 | 大人 水彩


坂本 透明水彩

大晦日ですね。2022年も、大変お世話になりました。
コロナで閉鎖や縮小する企業も多い中、当校はお陰様で大盛況でございます。
調べてみますと、旅行などの楽しいイベントを自粛しなければならない中、マスクをしたままできる習い事が人気だとか…それにしても、元住吉だけでも4校もある絵画教室の中からアトリエ・ミオスを選んで頂きましたこと、心より御礼申し上げます。「選択を失敗した」と思われぬよう、スタッフ一丸となって皆様の充実した趣味の時間を提供していきたいと思っております。

と、こんな決意を書きつつ、1年の最後に笑いを取る?訳ではございませんが、たくさんの生徒さんや今まで勤めてくれた元講師達に「来年は30周年記念なんですよ!凄いでしょ?」と自慢しながら言いふらしておりましたが、ふと「あれ?25周年記念展覧会やったのって、5年前じゃなかったよなぁ?」と気付きました。来年はまだ29周年でした!(美大の友人達にお祝いまで頂いてしまった…。私は同学年の友人より遅く卒業してしまったので、皆も計算ができず…。)
こんないい加減な人間がトップを務めていているのに、350人もの生徒さんが通っているとはちょっと戦慄を覚えますが、この不安要素は2022年で捨て置きます!2023年は新たな気持ちでスタートします!  小原

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先ずは大きく、そして細部へ

2022-12-17 10:08:48 | 大人 水彩

英保 透明水彩

岩田です。今回は、英保さんの作品をご紹介します。
今までに無いくらいの数の透明水彩で描いた作品が並んでいますが、ここ一年くらい水彩に徹して描いてきました。

海辺を人が歩いている風景や、ご自身で撮影したカモメのいる海の景色などモチーフは様々。
特に最初は、風景をありのままに描いたような作品を制作していたのですが、何か物足りず、もっと色を大胆に使いたいという気持ちを抱いていきました。
次に描いたアメリカのジャズバーのエントランスを描いた作品でも、その印象的な赤い屋根を目立つように描いきたいという願望を持ちつつも、何かそうしたことが上手く表現できないなあということを思っていた様子でした。

そこで小原先生が、それなら黒と赤だけを使ってザザっと大きい筆で世界を作ってみたらどうでしょう?ということで描いた一枚を手本に、今までにない位力強い作品が生み出されていったのです。
その次の作品でもそうした思考を取り入れて描いていこうという試みは続けられていますが、一連の作品の描き方を見ると、筆の動かし方が細かいなあという印象。筆の先を使って始めから描いてる感があるのですが、先ずは大きく全体感を作りながら徐々に細かい仕事に移行していくという感覚で描くことを意識して欲しいのです。
そうすることで、一枚の絵の中での表現の幅が増え、更に良くなっていくでしょう。

ユーチューブでは、作品を近づけたりしながら、詳しく解説しています。どうぞご覧ください。
英保さんの動画はこちら

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