大坪 油彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは大坪さんの油彩作品です。
元々豆より小さいてんとう虫を、これまた小さなキャンバスに描いていったので、制作中は非常に苦労されていたそうです。また、ボリューム感を出す為に、背中の硬い前ばね(上翅-じょうし)にペインティングナイフでかなり油絵具を盛ったので、最終的にテカテカにするのにも苦労されていました。てんとう虫は小学校の校庭の隅の植木でよく目にしていましたが、こうして拡大して描かれたのを見ているととても可愛らしく見えます。苦労されただけあって、てんとう虫特有のコロッとしたシルエットや、ツヤツヤの体の質感がよく伝わってきます。
また、葉に落ちる影も自然に見せる事にも苦労されたそうです。この青みがかった影により、夏の強い日差しが間接的に感じられます。なんだかてんとう虫が日陰を求めて葉の上を歩いている様にも見えてきて微笑ましいですね。
葉の緑には沢山の色を薄塗で重ねているので、そこから様々な色味を感じられ非常に魅力的です。油絵のこうした色の響き合いは見ていて気持ちが良いですね。この葉の緑とてんとう虫の赤は補色の関係にもなっているので、お互いの色を引き立てる組み合わせとなっています。(クリスマスのカラーにも同じ様に赤と緑がよく使われていますね)
構図に注目してみると、全面を緑の葉で埋めるのではなく、右側の上下に空間の抜けを作る事で小さい画面の中に葉の向こう側の空間を生み出しています。こうした抜けは画面全体のバランスを取る上でも重要になってきます。皆さんも画面構成に行き詰まった際は、空間の抜け感を意識してみてはどうでしょうか?