
『待ちくたびれて首じゃなく腕が伸びちゃった』(と、永瀬さん談)
本日ご紹介するのは水曜午前大人クラスより、永瀬さんのアクリル画です。何枚もアクリル画を描いている永瀬さんですから、もう画材の扱いはお手の物といったところでしょうか。現在は、より深く、鑑賞する者の想像を刺激するような作品を目指して制作に勤しんでおられます。
今回の作品では、部屋の隅で頬杖をつき、思い悩んでいるような、誰かを待っているような女性の姿を描きました。一目見てぐっと惹きつけられ、また彼女の心情に思いを馳せてしまう…そんな一枚になりました。
途中まで、背景のドアはもっとおぼろげで、窓とも取れるように描いていました。しかしそこからドアを少し開け、壁と床をしっかり描き込んだことで、より物語性が増し作品に感情移入できる入り口が開いたように思います。曖昧にしたり、描かないことだけが想像を刺激する術ではありません。よりはっきりと形作ることで、かえってこれはどういうシチュエーションだろう…と気を引き、見る者に考えさせる事ができるのです。
そして出来上がった背景、この色合、まさに永瀬さん節全開!憂い顔の表情と白く浮かび上がる腕が、背景の分割の中で美しく浮かびます。
頬杖をついている腕は、実際の人体と照らし合わせればリアルな長さではありません。しかしこの作品をしっかりと支えています。ところどころに嘘が入っていますが、それをすんなりと受け入れさせるのは、この空気の中ではこの長さでなくてはいけないような、そうした画面作りが出来ているからこそと思います。それは感覚で描く永瀬さんが、これこそが心地良い形、という気持ちを大事にしているからではないでしょうか。
そうして作り上げた画面に、感覚だけでなく、画面の中でしっくりときているか、冷静に他人の目になって見ることと理論立てて構成する余地が入ってくることでより魅力的になり完成されていくのですね。
ドアの下部分に入る水色なども、ここになければ絵がたるんでしまいそうです。ほんの些細なところですが、チラリと見えるだけでグッと引き締まりお洒落になるということは、ファッションでもよく感じられますよね。永瀬さんはファッションセンスも素晴らしいので、それが遺憾なく発揮された色選び、差し色にはいつも唸ってしまいます!
遊び心を常に持って生活していくことで、より美術的な感覚も鍛えられますね。手に入れたものは自分の中、作品にどんどん取り入れて、永瀬さんのように絵の具と遊び、楽しみましょう! 庄司でした。