
木佐貫 透明水彩
マユカです!今回は木佐貫さんの作品をご紹介していきたいと思います。
神社などで時々目にする『花手水』。心まで清められてしまいそうなくらい美しいその様子を、水彩で描かれたこちらの一枚。同系色ではなく、様々な色の花が浮いているのも目に楽しく、「この花の名前は何というのだろう?」なんて考えながら見てしまいました。
花の美しさに目が奪われてしまいますが、今回の作品では水の冷たさ・フレーム外の手水舎の素材(石)を感じさせる、水の表現が画面においてとてもいい作用をしています。竹から流れる水は透明度を高くするため後ろの色を描きこむことで透明感を出し、濃紺で水面を描写し深さがあることを伝えます。
また、浮いている花の彩度と明度が全体的に高めなため、濃紺が締め色となり、隣り合う花が混ざり合わず、くっきりと浮き上がって見えてくる効果もあります。ここが白っぽいと、花の色が何だか散って見えたり、広がっているような間延びした印象を受けてしまうのですが、しっかりと暗い色を使っているからこそ柔らかい花の質感との対比もできているのですね。よく見てみれば、手前の花は花弁の一つ一つまでしっかり描きこまれており、輪郭もはっきりと見えますが、奥の花や葉はあえてふんわりとした描き方をすることで手前のピントを合わせ、凛とした空気感まで伝わってくるのです。
この締め色、背景ではあるのですが、見方を変えると隣り合う色となります。隣り合う色というのはモチーフと差をつけた色であることが好ましいです。これはデッサンなどでも言えることで、同じような濃さで画面を塗ると融合しているように見えたり、どこで区切られているのか、立体感はどこなのか…と、なってしまうこともしばしば。色のある水彩画、油彩画などでも隣に似たような色を置くとなんだか間延びして見えてしまいますから、意識的に差のある色を選んでみるのもいいでしょう。