パチンコ休業要請にともない、「ギャンブル依存症」に関する記事があった。
これが、依存症が世間の目に、しっかりと認識される機会だと思う。
なによりも家族が大変であり、その家族のおたすけを考えることも必要と思う。
以前にも書いたが、精神障害になると本当に大変なのです。本人がその時は助かりたいと望んでも、心がすぐに変わってしまうのです。
この本人の助かりたいと望む、度合いや、どのような助かりを願うかということも、助かる上には重要です。
依存症予備軍また精神障害予備軍と思われる方々がありましたら、本人ならず家族がこうした情報を読んで、それぞれの心を点検されることをお勧めします。
記事に出て来る田中紀子氏は、「ひのきしんスクール」の講師でもあります。
以下、記録としてコピペしておく。
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新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために自粛が続く中、休業要請に応じないパチンコ店に人が殺到していることが強く非難されている。中には都道府県を超えて向かう人もいるが、なぜ彼らはそこまでしてパチンコがしたいのだろうか?【BuzzFeed Japan Medical/岩永直子】
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」が、ギャンブル依存症からの回復者や家族に新型コロナの影響についてアンケートしたところ、新型コロナで経済的にもダメージを受け、不安やストレスが強くかかっている実態が見えてくる。
同会代表の田中紀子さんは「ギャンブル依存症問題の渦中のご家庭では、 より一層深刻な状況であることが推測されます。依存症支援という観点からも、この問題を見てほしい」と支援の必要性を訴えた。
調査は5月6日から7日の24時間、Webアンケートの形で行われた。「ギャンブル依存症問題を考える会」につながりのある回復者と、何らかの支援につながっている家族を対象とし、回復者216人、家族292人の有効回答があった。
新型コロナで自粛が続く中での状況を尋ねたところ、「特に変化はない」(48. 61%)が最も多かったが、「漠然とした不安感を抱えている」を選んだ人が全体の43.06%だった。
「経済的な不安を抱えている / 経済的に追い詰められている」は11.57%、「落ち込みが激しく鬱っぽくなっている」も10.65%いた。「ギャンブルが再発した」人も一人いた。
また、「もし回復する前に今の様な状況になっていたらどうしていましたか?」という質問に対しては、「ギャンブルで不安を払しょくしていたと思う」が最も多く、69.91%。「家族にあたっていた / 家族と喧嘩が増えた / 家庭不和になっていたと思う」がそれに続き、42.13%いた。
また、パチンコやパチスロ依存の経験がある203人に、回復前に地域のパチンコ店が自粛していたらどうしていたか聞いたところ、「都道府県をまたいででも営業しているパチンコ店を探して出かけたと思う」が60.59%と最も多かった。
次に、「もし回復する前に特別定額給付金10万円の支給があったら何に使っていたと思いますか?」と尋ねたところ、「自分の分だけギャンブルに使っていたと思う」が最も多く47.22%。「借金返済に使っていたと思う」が25%いた。
「家族の分も含めてギャンブルに使っていたと思う」も23.15%おり、「ギャンブルに使う」と答えた人は合計7割以上となった。
ただし、回復後の現在は何に使うか聞いたところ、「生活費 / 家賃 / 学費などに使う予定」が多数を占め、37.96%と最も多かった。依存症から回復すれば、金銭感覚も通常に戻ることが伺える。
一方、家族(有効回答292人)にも状況を尋ねた。内訳は回復者の家族が102人、まだ止まっていない人が26人、止まっているかどうかわからない人が164人だ。
現在の状況を尋ねたところ、「漠然とした不安感を抱えている」が最も多く、65.07%いた。
「経済的な不安を抱えている / 経済的に追い詰められている」(8.56%)「落ち込みが激しく、鬱っぽくなっている」(6.85%)「家庭内に閉じ込められ、家族関係がこじれてきた」(5.82%)もおり、家庭の中も不安定になっていることが伺える。
ギャンブラーが世帯主の場合、世帯主に一括給付される特別定額給付金をギャンブルに使われてしまう不安を家族は抱えている。
回復者の家族も多いため、「ギャンブラーと話し合いができているので、受け取りや使い道に不安はない」が最も多かったが、中には「ギャンブラーが受け取ることに不安を感じているが、対策や話し合いができていない」人も17.9%いた。
「全部使われてしまうとあきらめている」も4人いたが、「対策を講じている」と答える人も25人いた。
対策としては、「ギャンブラーの通帳とカードを預かっている」が最も多く60.27 %にのぼり、「別居し転出届を出した」人も10.96%いた。
自由記載欄でも、新型コロナの流行で生活が不安定になり、回復者でもギャンブル依存に逆戻りする不安を抱えている現状が透けて見える。
《「早くコロナが収束してくれないと、収入の面で生活が不安。この不安がなくならないとアディクションに使ってしまいそう」
「営業を自粛しない店舗に足を運ぶ人の多さを見ると自分もかつてそうなっていただろうと感じる。 この状況で足を運んでしまう人全員が強迫的にギャンブルをしていると思われるので、これを機に自分のことに気づいたり、 誰かに気づいてもらえたりすることが増えることを望んでいます」
「真っ最中の頃だったら、今頃はギャンブル三昧だったと思う。しかし給与が減ると借金返済で狂いが生じ、ギャンブル生活の 破綻が早まったと思う」
「自粛でパチンコ店が閉まっていることで今現在ギャンブルを止められているが、非常事態宣言が解除されたとたんに またギャンブルをやる人達は反動でたくさんいるかなと思います 」》
家族も、パチンコ自粛で安心している人もいるが、給付金の問題や自粛解除の後の反動を心配している人もいる。
《「自粛の時にパチンコ店に行列のできてるニュースを見て、【悩んでる家族の方が沢山おられるだろうな】と心が痛みます」
「営業自粛要請に従わないパチンコ店の公表で、県外からも来店し行列をなす様子に、ギャンブル依存症で治療や回復に 繋がらない人の多さを実感しました」
「回復していないギャンブラーが世帯主で給付金全てがその口座に入るという話は、その家族にとってとても恐ろしい事だと思う」
「コロナの不安は大きいが、パチンコ店が閉まっていることは家族にとって今までで一番安心できる環境。ただ、自粛が解除された際の反動が心配で今から悪い想像をしてしまう」》
アンケートを行ったギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんは、パチンコ店に並ぶ人たちに対して厳しい批判の声が上がる中、こう訴える。
「コロナ禍においてもパチンコに押し寄せる人々のことを、多くの人は理解できないかと思いますが、アンケート調査の結果からも明らかなように、この問題を個人の意志の弱さや、モラルの低下といった批判だけでなく、ギャンブル依存症の側面からも考えて頂きたいと思います」
さらに、ギャンブル依存者が世帯主の場合、特別給付金が世帯主に一括支給される仕組みは危険だということも改めて指摘する。
「特別給付金の支給も世帯主の一括請求では、ギャンブル依存症者の家族は、ギャンブルの資金源として使われてしまう可能性があります。子供のお年玉や、親の香典まで使ってしまうのがギャンブル依存症の恐ろしさです。本当に支援が必要なご家庭に対し、柔軟かつ安全な支給方法を大至急検討して下さい」
そして、ギャンブル依存者や家族に対する包括的な支援策が急務だということを強く訴えた。
「今回のアンケート結果を鑑み、遅々として進まないギャンブル依存症対策、特に経済的にも精神的にも困難な状況にある家族に対する支援策の強化を強く望んでいます」
依存症問題に詳しい国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部長、薬物依存症センター センター長にこの調査についてコメントを寄せていただいた。全文掲載する。
感染症の流行を含む自然災害後には、アルコールや薬物といった精神作用物質の摂取量が増える傾向があります。海外には、SARSのアウトブレイク後、あるいは竜巻などの自然災害の後にはアルコール・薬物問題が増えたという研究が報告されています。
日本でも、阪神淡路大震災後、仮設住宅で先の見えない不安のなかで飲酒量が増え、アルコール性肝障害が増えたことが報告されています。また、東日本大震災の後にも、もともと飲酒習慣のある人が、震災によって失業などを体験した場合に飲酒量が増えたことが指摘されています。
災害とギャンブル行動との関連については、現時点では報告は少ないですが、被害日本大震災後、岩手・宮城県沿岸部に居住する男性で、一過性にギャンブル障害が増えたという報告があります。
物質使用やギャンブル行動といった嗜癖行動そのものが、不安や気分の落ち込みへの対処として行われることが少なくないことを考えると、現在の自粛生活がもたらす、先の見えない不安がパチンコへの耽溺を促す可能性は十分にあり得ます。
その場合、パチンコ店に行く人を非難するのではなく、本人やそのご家族(本人は困っていなくとも、家族は困っている可能性があります)に精神保健福祉センターなどの相談機関の情報を提供することが必要です。
あわせて社会に対しては、この機会に、自粛下でパチンコに行くことが単に道徳や倫理の問題ではなく、精神保健的問題である可能性を伝えていくことも大切です。
それから、「男たちの居場所」という視点も無視すべきではないでしょう。
在宅勤務の促進や子ども休校といった、「3密」を防ぐ対策の結果、皮肉にも、現在、住宅事情の厳しい都市部の家庭は「密」な状態になっています。
そのような家庭内で、ふだんいないはずの「ワーカホリックな」父親が終日存在するわけです。そのような男性たちは家族から邪魔がられ、家庭に居心地の悪さを覚えていることでしょう。
職場は原則出勤禁止で、飲み屋もカフェも休業している現在、そのような男性たちが行くことができる、数少ない「居場所」がパチンコ店である可能性も否定はできません。
その意味で、ともすればStay home運動が美しく語られていますが、実は都市部ではけっこう苦しいものであることももっと指摘されてよいと思います。
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