和歌体十四年本(山澤本・37)
「こふきの研究」p56~73より
……先ず和歌体と説話体の両本を紹介することにいたします。
和歌体は、明治十四年のもので、前回お話申したように、沢山の写本があり、歌の多少の差はありますが、『復元』第十四号で山澤為次氏のしるしているように、百六十首本と、百六十一首本の二首に結着するようでありますので、各写本の相違についての考証をを略して、『復元』第十四号にならい、山澤良助筆“明治十四年三月記之、山澤良助”と表記されている写本(37)を台本として、桝井本“此世初まりのお噺控え”(4)によって第百六十一首を補足して、紹介いたします。
この山澤本は、おふでさきのように、一枚に八首の歌を、十六行に誌してあります。今、説明の都合上、歌の頭に番号をつけ、又、一枚を二頁に数えてこれを下方に記しましたが、勿論、これらの数字は、原本にはありません。また、原写本は、主として平仮名で誌され、脱字、誤写、漏写等ありますが、本文はそのままとして、右側に漢字を加え、また、訂正しておきました。神名等は、教典の例にならわず、原写本の用法をそのまま残し、側線をほどこしました。……(「こふきの研究」p56より抜粋)
和歌体十四年本(山澤本・37)内容
(註1;文字をデータ化するについて、上記のような書き方は出来ないため、横に書かれている漢字を用いて、入力をする。また「ゑ」という表記は「へ」「え」に、「よふ」などの「ふ」も「よう」などの「う」に、「へ」も必要に応じ「え」とし、「ハ」「バ」は「は」「わ」「ば」と書き換えた。)
(註2;文中の各註は漢字があてられた元の読み方又は字)
1、此の世は本元なるは泥の海 元なる神は月日様なり
2、それよりも月様先へ国床を 見定めつけて日様に談じ
3、それ故にくにとこたちのみこと様 此の神様は元の親なり
4、これからに世界拵え人間を 拵えようと相談きまり
5、人間を拵えるにはそれ/\の 道具雛型見出す模様を
6、見澄ませば泥海中に見えてある うをとみいとが混じりいるなり
7、このうをは顔は人間身体には 鱗なしなる人間の肌
8、それ故に人魚と云ううをなるぞ 見澄ますところ一条なるの
9、心見て承知をさして貰い受け これに仕込むる道具なるのは
10、見澄ませばしゃちほことて変なるの 勢い強き此の勢を見て
11、貰い受け食て了もをては此の者の 心味わい引き受けなして
12、男の一の道具に仕込みあり 人間なるの骨の守護
13、このうをにくにとこたちが入り込んで 夫婦始め人間の種
14、それ故に神名をつけて大神宮 これなる神はいざなぎの神
15、此の神は何処に居るとな思うなら 当年巳の十六才
16、存命で在しますなり此の神は 元のやしきの一の神なり 註;在します=(おわします)
17、みい様はしろぐつなとて肌合いは 人間なるの如くなるなり
18、この心真あ直ぐなるを見定めて これを引き寄せ承知をさして
19、又他を見澄ますれえばかめがいる このかめなるは皮強くにて
20、踏ん張りも強くて倒けぬ此の者を 承知をさして食て了うなり 註;倒けぬ=(こけぬ)
21、その心味わいを見て女子の 一の道具に仕込み給いて 註;女子=(おなご)
22、みい様へ日様心入り込んで 夫婦始め人間なるの
23、苗代に使うたこれで一の神 いざなみの神伊勢では外宮
24、此の神は人間なるの元の親 此の親様は何処に御座ると
25、思うなら当年巳の八十と 四才にてこそ山辺の郡
26、庄屋敷中山氏と云うやしき 存命にてぞ在しますなり
27、現れて在しますなり此の親は 此の世にいる人間の親
28、又かめは人間の皮繋ぎにも 使うた道具これに神名を
29、くにさつち此の神様は親様の 胎内こもり抱きしめ御座る
30、今年から三十年経ちたなら 名はたまひめ元のやしきへ
31、連れ帰りその上なるはいつまでも よろづたすけの守護下さる
32、つきよみはしゃちほこなりこれなるは 人間骨の守護の神
33、此の神は当年巳の六十と 一才にてぞ現れ御座る
34、くもよみはうなぎなるなり此の神は 人間の食い飲みの守護神
35、此の神は当年巳の五才にて 存命にてぞ在しますなり
36、かしこねはかれいなるなり此の神は 人間息の守護の神
37、此の神は当年巳の八才で 存命にてぞ在しますなり
38、たいしょくてんのみことはふぐなるぞ 此の者心味わいをみて
39、人間の死に生きの時縁を切る これは此の世の鋏なる神 註;鋏=(はさみ)
40、此の神は当年巳の三十と 二才にてこそ在しますなり
41、をふとのべ食物の神これ神は くろぐつなとて引き出しの神 註;食物=(じきもつ)
42、此の神は当年巳の十六 存命にてぞ在わしますなり
43、人間の魂なるは泥海に いたるどじょう此の心見て
44、皆の者承知をさして貰い受け 食てその心味わいを見て 註;食て=(くて)
45、此のやあつ人間魂道具なり これに皆々神名をつけて
46、人間の子数は九億九万人 九千九百九十九人や
47、此の年を経ちたるならばいんねんの 元のやしきへ連れ帰りてぞ
48、陽気なる遊山遊びをさしますと 月日様より約束をなし
49、今此処で元の神々人間で 皆存命で現れている
50、これまでは此の親様へ出るまでは 我が身体は我がものなると 註;我が身体=(わがからだ)
51、思ていた心違いや此の度は 親様よりの教えを聞いて
52、発明して真実心誠ふと 思う心は家内残らず 註;発明=(はつめ)、家内=(かなえ)
53、かりものは目へ潤いと温みいと 皮繋ぎいに芯の骨なる
54、飲み食いや出入りなるも息なるも これみな神のかりものなるぞ
55、此の事を疑う者は更になし これ疑えば御利益薄し
56、かりものを誠真実思うなら 何叶わんと云う事はなし
57、此のやしき人間創め元のじば 此処は此の世の親里なるぞ
58、此の世の元のやしきのいんねんで 元の道具を生まれ御座るで
59、それをばな見澄まし給え四十 五年以前に天降りあり
60、日々に御話しありたその事を 詳しく筆に誌るすなり 註;誌るす=(しゆるす)
61、人間の一の道具はかめなると しゃちほことふこれ身の内へ
62、これよりも九億九万と九千人 九百九十九人子数を
63、このじばで三日三夜に宿し込み 三年三月留まりありて 註;三夜=(三よさ)
64、これよりな大和の国の奈良・初瀬の 七里の間七日かかりて
65、産み下ろし残る大和は四日にて 産み下ろしありこれで神館 註;神館=(かみがた)
66、山城に伊賀・河内と三国に 十九日にて産み下ろしあり 註;三国=(さんがく)
67、そのあとは四十五日他なるの 残る国々産み下ろしあり
68、これ故に七十五日をびやちう 産み下ろしたるじばはみや/\
69、人間は五分から産まれ五分/\と 成人をして三寸にては
70、果てましていざなぎ様はこれにてぞ をすぎましますこの後なるは
71、いざなみのみこと様なりその胎に 一度教えた此の守護で
72、又親に元の人数宿り込み 十月経ちた事なるならば 註;人数=(にんじゅ)
73、此の人も五分から生まれ五分/\と 成人をして三寸五分で
74、果てまして又もや同じ胎内に 元の人数三度宿りた
75、此の者も五分から生まれだん/\と 四寸になりてまた果てました
76、その時にいざなみ様も喜んで にいこり笑うてもうこれからは
77、五尺の人にはなると思し召し おかくれましたその年限は
78、この年は九十九年の間なり 三度ながらも九十九年や 註;この年=(このねん)
79、二度目の産み下ろしたる場所は 墓所なり三度めは 註;墓所=(はかしょ)
80、三はらやそこで一みや二墓なり 三度三はらこれ詣り所
81、これよりは鳥獣や畜類に 八千八度生まれ更わりて 註;鳥獣や畜類=(とりけだものやちくるい)
82、それ故に人なるものは何なりと 真似を出来ます事であるなり
83、此の間経ちたるならばその後は 月日様より又御守護で
84、さるなるを一人残りこれなるは くにさつち様此の胎にてぞ 註;一人=(いちにん)、胎=(はら)
85、人間を男五人と女子を 五人と都合十人づつ 註;女子=(おなごふ)
86、宿まりてこれも五分から生まれ出て 八寸の時水土分かり
87、一尺八寸の時海山も 天地日月分かりかけたり
88、一尺八寸までは一胎に 十人づつ生まれてるなり 註;一胎=(ひとはら)
89、これよりは三尺まで一胎に男一人に女子一人と
90、二人づつ生まれてたなり此の人を 三尺にて物を言いかけ
91、これ故に今人間も三歳で 物も言いかけ智恵も出来ます
92、これよりな今に於いても一胎に 一人づつと定まりなりし
93、此の人を五尺なるに海山も 天地世界も皆出来ました
94、水中を離れ出まして地の上に 上がりましたるその時までに 註;水中=(みずなか)
95、成人に応じ食物立毛も 不自由なきよふ与えあるなり 註;食物立毛=(じきもつりうけい)
96、だん/\と食物にては食い廻り 唐天竺へ上がり行くなり
97、人間を授けた神の証拠ふは をびや一条現れてある
98、此の話し宿り込むのも月日様 生まれ出るのも月日御苦労
99、産む時の守護下さる神様は たいしょくてんこれなる神は
100、胎内の縁切る神で法華(?)様 をふとのべへの神様なるは 註;法華(?)様=(ほふけさま)
101、産む時に引き出しの神真言で 産み出した後しまい繋ぎは
註;神真言=(かみしんごん)
102、くにさつち此の神様は禅宗で この三神はあつけん明王 註;三神=(さんじん)
103、此の三神をびや一切御苦労て をびや許しは腹帯要らず
104、凭れ物七十五日此の間 毒忌み要らず此の産式(?)を 註;産式(?)=(さんしき)
105、許しあり常の身体で穢れなし をびや許しは此のやしきにて
106、許し出すこれは此の世の人間を 創めかけたる親のやしきで
107、此の許し三千世界此の世に 他にあるまい生まれ故郷よ
108、人間を宿し込みたるやしきなる 証拠現すたすけ道開け
109、人間に病と言うてなけねども 心違いの道がある故
110、此の道は凡夫(?)心に八ツあり ほしいをしいとかハいにくいと 註;凡夫(?)=(ぶんぶ)
111、うらめしとはらだちよくとこふまんと これが八ツの心違いや
112、此の違い身の内なるの悪しきいの 譬え話の胸のほこりや
113、此のほこり積もり重なるそれ故に 病悩みも憂災難も 註;病悩みも憂災難も=(やまいなやみもうれさいなんも)
114、何もかも身の内守護神様の 心なおしの意見立腹
115、一れつにてんりん様を念ずるは 八ツのほこり十五才より
116、今迄にほこりつけたと思う事 心真実さんげをいたし
117、ほこりさい速やか洗た事なれば 病の根えは切れて仕舞うで
118、他なるのよろづたすけも同じ事 家内残らず心澄まして
119、願うなら家内睦まじ人間を 互いにたすけ心あるなら
120、此の心神様より見分けして よろづたすけや御利益深く
121、此の世ふも人間なるも出来たのは 月日様より御守護なり
122、此の元を知りたるものは更になし 天は月様地は日様や
123、此の世界天地日月同じ事 地と天とは実の親なり
124、父母と云うのは天地夫婦や 南無と云うのも同じ事なり 註;父母=(ちちはは)
125、後なるは道具衆なり人間の 五体残らず神のかりもの
126、神様のかりものなるは一に眼 これは月様かりものなるぞ 註;眼=(がん)
127、身の内の温み一切日様の かりものなるやこれ南無と云う
128、皮繋ぎくにさつちなる神様の かりものなるぞ芯なる骨は
129、つきよみのみこと様のかりものや これで阿彌なり飲み食い出入り
130、くもよみのみこと様のかりものや これで五倫と五体と云うなり
131、息吹くはかしこね様のやりものや 息で物言う風で吹き分け
132、これこそはなむあみたぶと六台や つなる神様たいしょくてん
133、あとなるのをふとのべゑの神様は 立毛引き出し百姓の神
134、此の神を寄り集まりて御座る故 方位八方許します
135、この内に東三神女子神 西三神は男神なり 註;東三神女子神=(ひがしさんじんをなごかみ)
136、辰巳いはくにさつち様仏法の 普賢菩薩に達磨弁天
137、戌亥はつきよみの神仏法の 八幡菩薩聖徳太子
138、東はくもよみの神仏法の 文珠菩薩龍王神農
139、薬師様薬の守護すいしやも 書物文字智恵も御守護
140、坤かしこねの神仏法の 大日様に法然様と
141、丑寅はたいしょくてん仏法の 虚空蔵菩薩妙見様に
142、鬼子母神橋詰様と儒来(?)と 県様とは同じ方なり 註;儒来(?)=(じゆらい)、方なり=(こふなり)
143、西こそはをふとのべ様仏法の 不動明王に弘法大師
144、此のやしき人間創め元の神 在わします故よろづたすけを
145、此の世を創めてからに今迄は 此のたすけをば出来ぬ事から
146、これ迄は医者薬も人間の 修理肥にて拵えありた 註;拵え=(こしらへ)
147、これからは医者や薬も呪いも 拝み祈祷もいらん事やで
148、神々の拝み祈祷や占いや これ人間の恩の報じ場
149、神様の御話聞いて思案して 真実心叶うた事なら
150、何にても叶わん事はなけねども 心違えば薬飲むなり
151、人間は死に行くなぞと言うけれと 死に行くやないかりもの返す
152、返すのは身の内ほこり積もる故 身の内神が退きなさる
153、此の事を着物に譬え話する 心のよごれはらさぬ者は
154、洗わずば着てる事をが出来んから なんぼ惜しても脱ぎ捨てるなり
155、着物でもなんぼよごれてあるとても 水で洗えば着て気がよろし
156、人間も心のよごれはろたなら 神も喜び守護下さる
157、人間は死ぬると云うは着物を 脱ぎ捨てるのも同じ事なり
158、神様は話しばかりで人間の 心よごれを洗いなさるで
159、此の話水と神様同じ事 よごれたるもの洗い澄まする
160、たすかるも心次第やいちれつに 早く心を澄ます事なり
161、心さい速やか澄んだ事ならば 親様よりはすぐに与えを
「こふきの研究」p56~73より
……先ず和歌体と説話体の両本を紹介することにいたします。
和歌体は、明治十四年のもので、前回お話申したように、沢山の写本があり、歌の多少の差はありますが、『復元』第十四号で山澤為次氏のしるしているように、百六十首本と、百六十一首本の二首に結着するようでありますので、各写本の相違についての考証をを略して、『復元』第十四号にならい、山澤良助筆“明治十四年三月記之、山澤良助”と表記されている写本(37)を台本として、桝井本“此世初まりのお噺控え”(4)によって第百六十一首を補足して、紹介いたします。
この山澤本は、おふでさきのように、一枚に八首の歌を、十六行に誌してあります。今、説明の都合上、歌の頭に番号をつけ、又、一枚を二頁に数えてこれを下方に記しましたが、勿論、これらの数字は、原本にはありません。また、原写本は、主として平仮名で誌され、脱字、誤写、漏写等ありますが、本文はそのままとして、右側に漢字を加え、また、訂正しておきました。神名等は、教典の例にならわず、原写本の用法をそのまま残し、側線をほどこしました。……(「こふきの研究」p56より抜粋)
和歌体十四年本(山澤本・37)内容
(註1;文字をデータ化するについて、上記のような書き方は出来ないため、横に書かれている漢字を用いて、入力をする。また「ゑ」という表記は「へ」「え」に、「よふ」などの「ふ」も「よう」などの「う」に、「へ」も必要に応じ「え」とし、「ハ」「バ」は「は」「わ」「ば」と書き換えた。)
(註2;文中の各註は漢字があてられた元の読み方又は字)
1、此の世は本元なるは泥の海 元なる神は月日様なり
2、それよりも月様先へ国床を 見定めつけて日様に談じ
3、それ故にくにとこたちのみこと様 此の神様は元の親なり
4、これからに世界拵え人間を 拵えようと相談きまり
5、人間を拵えるにはそれ/\の 道具雛型見出す模様を
6、見澄ませば泥海中に見えてある うをとみいとが混じりいるなり
7、このうをは顔は人間身体には 鱗なしなる人間の肌
8、それ故に人魚と云ううをなるぞ 見澄ますところ一条なるの
9、心見て承知をさして貰い受け これに仕込むる道具なるのは
10、見澄ませばしゃちほことて変なるの 勢い強き此の勢を見て
11、貰い受け食て了もをては此の者の 心味わい引き受けなして
12、男の一の道具に仕込みあり 人間なるの骨の守護
13、このうをにくにとこたちが入り込んで 夫婦始め人間の種
14、それ故に神名をつけて大神宮 これなる神はいざなぎの神
15、此の神は何処に居るとな思うなら 当年巳の十六才
16、存命で在しますなり此の神は 元のやしきの一の神なり 註;在します=(おわします)
17、みい様はしろぐつなとて肌合いは 人間なるの如くなるなり
18、この心真あ直ぐなるを見定めて これを引き寄せ承知をさして
19、又他を見澄ますれえばかめがいる このかめなるは皮強くにて
20、踏ん張りも強くて倒けぬ此の者を 承知をさして食て了うなり 註;倒けぬ=(こけぬ)
21、その心味わいを見て女子の 一の道具に仕込み給いて 註;女子=(おなご)
22、みい様へ日様心入り込んで 夫婦始め人間なるの
23、苗代に使うたこれで一の神 いざなみの神伊勢では外宮
24、此の神は人間なるの元の親 此の親様は何処に御座ると
25、思うなら当年巳の八十と 四才にてこそ山辺の郡
26、庄屋敷中山氏と云うやしき 存命にてぞ在しますなり
27、現れて在しますなり此の親は 此の世にいる人間の親
28、又かめは人間の皮繋ぎにも 使うた道具これに神名を
29、くにさつち此の神様は親様の 胎内こもり抱きしめ御座る
30、今年から三十年経ちたなら 名はたまひめ元のやしきへ
31、連れ帰りその上なるはいつまでも よろづたすけの守護下さる
32、つきよみはしゃちほこなりこれなるは 人間骨の守護の神
33、此の神は当年巳の六十と 一才にてぞ現れ御座る
34、くもよみはうなぎなるなり此の神は 人間の食い飲みの守護神
35、此の神は当年巳の五才にて 存命にてぞ在しますなり
36、かしこねはかれいなるなり此の神は 人間息の守護の神
37、此の神は当年巳の八才で 存命にてぞ在しますなり
38、たいしょくてんのみことはふぐなるぞ 此の者心味わいをみて
39、人間の死に生きの時縁を切る これは此の世の鋏なる神 註;鋏=(はさみ)
40、此の神は当年巳の三十と 二才にてこそ在しますなり
41、をふとのべ食物の神これ神は くろぐつなとて引き出しの神 註;食物=(じきもつ)
42、此の神は当年巳の十六 存命にてぞ在わしますなり
43、人間の魂なるは泥海に いたるどじょう此の心見て
44、皆の者承知をさして貰い受け 食てその心味わいを見て 註;食て=(くて)
45、此のやあつ人間魂道具なり これに皆々神名をつけて
46、人間の子数は九億九万人 九千九百九十九人や
47、此の年を経ちたるならばいんねんの 元のやしきへ連れ帰りてぞ
48、陽気なる遊山遊びをさしますと 月日様より約束をなし
49、今此処で元の神々人間で 皆存命で現れている
50、これまでは此の親様へ出るまでは 我が身体は我がものなると 註;我が身体=(わがからだ)
51、思ていた心違いや此の度は 親様よりの教えを聞いて
52、発明して真実心誠ふと 思う心は家内残らず 註;発明=(はつめ)、家内=(かなえ)
53、かりものは目へ潤いと温みいと 皮繋ぎいに芯の骨なる
54、飲み食いや出入りなるも息なるも これみな神のかりものなるぞ
55、此の事を疑う者は更になし これ疑えば御利益薄し
56、かりものを誠真実思うなら 何叶わんと云う事はなし
57、此のやしき人間創め元のじば 此処は此の世の親里なるぞ
58、此の世の元のやしきのいんねんで 元の道具を生まれ御座るで
59、それをばな見澄まし給え四十 五年以前に天降りあり
60、日々に御話しありたその事を 詳しく筆に誌るすなり 註;誌るす=(しゆるす)
61、人間の一の道具はかめなると しゃちほことふこれ身の内へ
62、これよりも九億九万と九千人 九百九十九人子数を
63、このじばで三日三夜に宿し込み 三年三月留まりありて 註;三夜=(三よさ)
64、これよりな大和の国の奈良・初瀬の 七里の間七日かかりて
65、産み下ろし残る大和は四日にて 産み下ろしありこれで神館 註;神館=(かみがた)
66、山城に伊賀・河内と三国に 十九日にて産み下ろしあり 註;三国=(さんがく)
67、そのあとは四十五日他なるの 残る国々産み下ろしあり
68、これ故に七十五日をびやちう 産み下ろしたるじばはみや/\
69、人間は五分から産まれ五分/\と 成人をして三寸にては
70、果てましていざなぎ様はこれにてぞ をすぎましますこの後なるは
71、いざなみのみこと様なりその胎に 一度教えた此の守護で
72、又親に元の人数宿り込み 十月経ちた事なるならば 註;人数=(にんじゅ)
73、此の人も五分から生まれ五分/\と 成人をして三寸五分で
74、果てまして又もや同じ胎内に 元の人数三度宿りた
75、此の者も五分から生まれだん/\と 四寸になりてまた果てました
76、その時にいざなみ様も喜んで にいこり笑うてもうこれからは
77、五尺の人にはなると思し召し おかくれましたその年限は
78、この年は九十九年の間なり 三度ながらも九十九年や 註;この年=(このねん)
79、二度目の産み下ろしたる場所は 墓所なり三度めは 註;墓所=(はかしょ)
80、三はらやそこで一みや二墓なり 三度三はらこれ詣り所
81、これよりは鳥獣や畜類に 八千八度生まれ更わりて 註;鳥獣や畜類=(とりけだものやちくるい)
82、それ故に人なるものは何なりと 真似を出来ます事であるなり
83、此の間経ちたるならばその後は 月日様より又御守護で
84、さるなるを一人残りこれなるは くにさつち様此の胎にてぞ 註;一人=(いちにん)、胎=(はら)
85、人間を男五人と女子を 五人と都合十人づつ 註;女子=(おなごふ)
86、宿まりてこれも五分から生まれ出て 八寸の時水土分かり
87、一尺八寸の時海山も 天地日月分かりかけたり
88、一尺八寸までは一胎に 十人づつ生まれてるなり 註;一胎=(ひとはら)
89、これよりは三尺まで一胎に男一人に女子一人と
90、二人づつ生まれてたなり此の人を 三尺にて物を言いかけ
91、これ故に今人間も三歳で 物も言いかけ智恵も出来ます
92、これよりな今に於いても一胎に 一人づつと定まりなりし
93、此の人を五尺なるに海山も 天地世界も皆出来ました
94、水中を離れ出まして地の上に 上がりましたるその時までに 註;水中=(みずなか)
95、成人に応じ食物立毛も 不自由なきよふ与えあるなり 註;食物立毛=(じきもつりうけい)
96、だん/\と食物にては食い廻り 唐天竺へ上がり行くなり
97、人間を授けた神の証拠ふは をびや一条現れてある
98、此の話し宿り込むのも月日様 生まれ出るのも月日御苦労
99、産む時の守護下さる神様は たいしょくてんこれなる神は
100、胎内の縁切る神で法華(?)様 をふとのべへの神様なるは 註;法華(?)様=(ほふけさま)
101、産む時に引き出しの神真言で 産み出した後しまい繋ぎは
註;神真言=(かみしんごん)
102、くにさつち此の神様は禅宗で この三神はあつけん明王 註;三神=(さんじん)
103、此の三神をびや一切御苦労て をびや許しは腹帯要らず
104、凭れ物七十五日此の間 毒忌み要らず此の産式(?)を 註;産式(?)=(さんしき)
105、許しあり常の身体で穢れなし をびや許しは此のやしきにて
106、許し出すこれは此の世の人間を 創めかけたる親のやしきで
107、此の許し三千世界此の世に 他にあるまい生まれ故郷よ
108、人間を宿し込みたるやしきなる 証拠現すたすけ道開け
109、人間に病と言うてなけねども 心違いの道がある故
110、此の道は凡夫(?)心に八ツあり ほしいをしいとかハいにくいと 註;凡夫(?)=(ぶんぶ)
111、うらめしとはらだちよくとこふまんと これが八ツの心違いや
112、此の違い身の内なるの悪しきいの 譬え話の胸のほこりや
113、此のほこり積もり重なるそれ故に 病悩みも憂災難も 註;病悩みも憂災難も=(やまいなやみもうれさいなんも)
114、何もかも身の内守護神様の 心なおしの意見立腹
115、一れつにてんりん様を念ずるは 八ツのほこり十五才より
116、今迄にほこりつけたと思う事 心真実さんげをいたし
117、ほこりさい速やか洗た事なれば 病の根えは切れて仕舞うで
118、他なるのよろづたすけも同じ事 家内残らず心澄まして
119、願うなら家内睦まじ人間を 互いにたすけ心あるなら
120、此の心神様より見分けして よろづたすけや御利益深く
121、此の世ふも人間なるも出来たのは 月日様より御守護なり
122、此の元を知りたるものは更になし 天は月様地は日様や
123、此の世界天地日月同じ事 地と天とは実の親なり
124、父母と云うのは天地夫婦や 南無と云うのも同じ事なり 註;父母=(ちちはは)
125、後なるは道具衆なり人間の 五体残らず神のかりもの
126、神様のかりものなるは一に眼 これは月様かりものなるぞ 註;眼=(がん)
127、身の内の温み一切日様の かりものなるやこれ南無と云う
128、皮繋ぎくにさつちなる神様の かりものなるぞ芯なる骨は
129、つきよみのみこと様のかりものや これで阿彌なり飲み食い出入り
130、くもよみのみこと様のかりものや これで五倫と五体と云うなり
131、息吹くはかしこね様のやりものや 息で物言う風で吹き分け
132、これこそはなむあみたぶと六台や つなる神様たいしょくてん
133、あとなるのをふとのべゑの神様は 立毛引き出し百姓の神
134、此の神を寄り集まりて御座る故 方位八方許します
135、この内に東三神女子神 西三神は男神なり 註;東三神女子神=(ひがしさんじんをなごかみ)
136、辰巳いはくにさつち様仏法の 普賢菩薩に達磨弁天
137、戌亥はつきよみの神仏法の 八幡菩薩聖徳太子
138、東はくもよみの神仏法の 文珠菩薩龍王神農
139、薬師様薬の守護すいしやも 書物文字智恵も御守護
140、坤かしこねの神仏法の 大日様に法然様と
141、丑寅はたいしょくてん仏法の 虚空蔵菩薩妙見様に
142、鬼子母神橋詰様と儒来(?)と 県様とは同じ方なり 註;儒来(?)=(じゆらい)、方なり=(こふなり)
143、西こそはをふとのべ様仏法の 不動明王に弘法大師
144、此のやしき人間創め元の神 在わします故よろづたすけを
145、此の世を創めてからに今迄は 此のたすけをば出来ぬ事から
146、これ迄は医者薬も人間の 修理肥にて拵えありた 註;拵え=(こしらへ)
147、これからは医者や薬も呪いも 拝み祈祷もいらん事やで
148、神々の拝み祈祷や占いや これ人間の恩の報じ場
149、神様の御話聞いて思案して 真実心叶うた事なら
150、何にても叶わん事はなけねども 心違えば薬飲むなり
151、人間は死に行くなぞと言うけれと 死に行くやないかりもの返す
152、返すのは身の内ほこり積もる故 身の内神が退きなさる
153、此の事を着物に譬え話する 心のよごれはらさぬ者は
154、洗わずば着てる事をが出来んから なんぼ惜しても脱ぎ捨てるなり
155、着物でもなんぼよごれてあるとても 水で洗えば着て気がよろし
156、人間も心のよごれはろたなら 神も喜び守護下さる
157、人間は死ぬると云うは着物を 脱ぎ捨てるのも同じ事なり
158、神様は話しばかりで人間の 心よごれを洗いなさるで
159、此の話水と神様同じ事 よごれたるもの洗い澄まする
160、たすかるも心次第やいちれつに 早く心を澄ます事なり
161、心さい速やか澄んだ事ならば 親様よりはすぐに与えを
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