[サンヒョク社会人となって数年後 キム家の居間]
「お父さん、お父さんの誕生祝にユジンを呼んでもいいかな。」
「ああ、そうだな。
そういえばユジンの顔も久しく見ていないな。
ユジンのお母さんからもくれぐれもよろしくと頼まれているんだ。
こちらがソウルにいるのに知らん顔というのも申し訳ない。
何かないとユジンも遠慮して来にくいだろうから、ぜひ呼んであげなさい。」
「あなた、誕生祝は家族でするものですわ。
それに、ユジンだってもう子供じゃないんですから、呼ばれたらかえって気を使わせることになってかわいそうですよ。
仕事も結構忙しいんでしょう?」
「そんなに気を回すこともなかろう。
ユジンは小さい頃から良く知っている間柄なんだから、まあ、心配なら誕生祝といわずに、たまにはご飯を食べにおいでと誘ってもいい。
サンヒョク、少し息抜きしにおいでと誘ってあげなさい。」
サンヒョクの一家はジヌの転勤で今はソウルに住んでいた。
それにしても…
夫もサンヒョクも困ったものだとチヨンは思った。
大学に入って広いソウルに行けばたくさんの人と出会ってユジンへの熱も冷めるに違いないと高をくくっていたのがいけなかった。
社会人になった今でも相変わらず、サンヒョクの話に出てくる女性といえばユジンばかり。
もうあきれてばかりもいられない。
何とかしなければ…。
「ねえあなた、ユジンで思い出したのだけれども…
ユジンにどなたかお世話してあげたらどうかしら。
サンヒョクの話だと毎日残業続きで休みの日も仕事に出ることが多くて、恋人を作る暇もない生活をしているようですよ。
ユジンはチョン家の家長なんだから、早く結婚してお母さんを安心させてあげなくちゃいけないわ。
もう学生じゃないんですもの。
ユジンにのことを気にかけてあげることも結構ですけれども、いいお相手を、できれば養子に来てくださる方をお世話してあげるのが、ヒョンスさんの親友としてのあなたの勤めではありませんか?
ほら、あの方なんかどうかしら?
あなたの研究室の助手をしている方で、ご両親をなくして学生時代は苦学していたからとても人柄がよくてっていう方がいらっしゃったでしょ。
確か次男だって言ってたし、いいんじゃありません?」
「ああ、ソン君か。彼は真面目でいい青年だ。
しかし…、サンヒョクは今でもユジンのことを想っているんじゃないのか?
サンヒョクの気持ちも考えてやらんと。」
「あなた、サンヒョクはうちの跡継ぎですよ。
ユジンがうちの嫁になるわけにはいかないでしょう?
それは、ユジンはいい子だし、あなたも気に入っているかもしれないけれども、いくら親友の娘でもそれとこれとは別ですよ。
第一、ユジンはサンヒョクのこと友達以上には想っていないんじゃありませんか?
それではいくらサンヒョクがユジンのことを好きでもサンヒョクが不憫ですよ。
ねえあなた、ソンさんのこと考えておいてくださいね。」
ユジンのことは、それこそ幼い頃からよく知っていて良い娘だと思っていたが、嫁としてはサンヒョクに相応しくないとチヨンは考えていたのだ。
もっと早く手を打つべきだったのだ、とチヨンは今更ながら後悔した。
そういえばサンヒョクの学生時代もこんなことがあった。
あの時に何とかしていれば…。
[サンヒョク学生時代 ある休日]
「もしもし、母さん。
今日これからそっちへ行くから、うん、昼前には着くと思う。
じゃあ、後で。」
「あなた、今日サンヒョクが顔を出すそうよ。
泊っていかれるのかしら。
聞き損っちゃったわ。
せっかくだから夕食も一緒にできるといいんだけど。
サンヒョクももっとちょくちょく帰ってくればいいのに。
車があるんだから。」
「まあ、学生とはいっても、放送部に入っていれば結構忙しいものだ。
サンヒョクは勉強も真面目にやっているし、長い休みには戻ってくるのだから、いいじゃないか。」
「それは、そうですけれども…。」
「ただいま、母さん。」
「お帰り、サンヒョク。あら、ユジンも一緒だったの?」
「おば様、こんにちは。ご無沙汰しております。
いつも母が大変お世話になり、ありがとうございます。」
「ユジン、わざわざ挨拶に寄ってくれたのね。
こんなところで立ち話もなんだから、あがってお茶でもいかが。」
「いえ、母が待っていますので、ここで失礼します。」
「そお、お母様によろしくね。」
「母さん、ユジンを家まで送ってくるから、すぐ戻る。」
〈サンヒョクが帰ってくるときはいつもユジンが一緒だわ。
あの子、サンヒョクを足代わりにしているのかしら?〉
「サンヒョク、今日は泊っていかれるんでしょ。
お夕食も一緒にと思って準備してあるのよ。」
「ああ、でもユジンが今日のうちに戻るっていってたから…どうしようかな。」
「どうしていつもユジンと一緒に帰ってくるの?
ユジンに乗せて欲しいって頼まれるの?」
「違うよ。
僕から誘ってるんだ、一緒に帰ろうって。
ユジンは春川に帰る時はバスに乗るからいいっていつも断るんだけれども、忙しくてこんなときぐらいしか会えないからさ。」
「まあ、あなたはいつまでユジンばかり追いかけているの?
他に誰かいい人はいないの?
放送部の後輩とか、もっとあなたに相応しい人がいるんじゃないの?
恋人ができたらちゃんとお父様に紹介するのよ、わかった?」
[ジヌの誕生日数日前]
「サンヒョク、お父様の誕生祝にユジンを誘ったの?
もしまだなのなら、今回は辞めておきなさい。
あなたもユジンももう社会人なんだから、中途半端なお付き合いはお互いの為に良くないわ。
あなたがいくら幼馴染のユジンを友人として気にかけてお付き合いしているつもりでも周りはそうは見ないわよ。
恋人として付き合っていると勘違いされたら、男のあなたは良くても、女のユジンは困るのよ。
わかるでしょ。
いくら世の中が変わってきたといっても、きちんとした考えの人はまだまだ女性が複数の男性とお付き合いしたことがあるということに批判的なのよ。
だから、ユジンの為にももう少し考えてあげないと、そうでしょサンヒョク。
ユジンはチョン家を継がなきゃならない人なんだから、仕事も大切だけど早くきちんと結婚相手を決めてお母さんを安心させてあげることも大事なのよ。
あなたも友人として、親切にしてあげるだけではなくてそういうことも言ってあげるべきなんではなくて?」
「母さん、僕はけして中途半端な気持ちで、幼馴染だから気軽にユジンと接しているわけではないことぐらいわかっていてくれると思ったのに…。
僕は真剣にユジンと一緒になりたいと思っているんです。
ユジンではだめなんですか?」
「当たり前です。
あなたは二つの家を一人で背負い込むつもりなの?
第一、こんなことを言っては失礼だけれども、ユジンの家と我が家ではつりあいませんよ。
ユジンのお母さんが苦労されるだけじゃありませんか。
結婚となれば色々な手続きや準備があって嫁の家で負担しなければならないことも多いんです。
ただ好きなだけではすまないんですよ。
ユジンだって苦労することになります。」
「母さん、そんなことは僕がうまく何とかすればいいことじゃないんですか。
あやふやにしているのが気に入らないのなら、僕がちゃんとユジンに結婚を申し込むよ。
お父さんにも恋人としてユジンを紹介する。
それならいいだろう?母さん。」
サンヒョクのあまりに真剣な顔に、チヨンは二の句が告げなくなってしまった。
「お父さん、お父さんの誕生祝にユジンを呼んでもいいかな。」
「ああ、そうだな。
そういえばユジンの顔も久しく見ていないな。
ユジンのお母さんからもくれぐれもよろしくと頼まれているんだ。
こちらがソウルにいるのに知らん顔というのも申し訳ない。
何かないとユジンも遠慮して来にくいだろうから、ぜひ呼んであげなさい。」
「あなた、誕生祝は家族でするものですわ。
それに、ユジンだってもう子供じゃないんですから、呼ばれたらかえって気を使わせることになってかわいそうですよ。
仕事も結構忙しいんでしょう?」
「そんなに気を回すこともなかろう。
ユジンは小さい頃から良く知っている間柄なんだから、まあ、心配なら誕生祝といわずに、たまにはご飯を食べにおいでと誘ってもいい。
サンヒョク、少し息抜きしにおいでと誘ってあげなさい。」
サンヒョクの一家はジヌの転勤で今はソウルに住んでいた。
それにしても…
夫もサンヒョクも困ったものだとチヨンは思った。
大学に入って広いソウルに行けばたくさんの人と出会ってユジンへの熱も冷めるに違いないと高をくくっていたのがいけなかった。
社会人になった今でも相変わらず、サンヒョクの話に出てくる女性といえばユジンばかり。
もうあきれてばかりもいられない。
何とかしなければ…。
「ねえあなた、ユジンで思い出したのだけれども…
ユジンにどなたかお世話してあげたらどうかしら。
サンヒョクの話だと毎日残業続きで休みの日も仕事に出ることが多くて、恋人を作る暇もない生活をしているようですよ。
ユジンはチョン家の家長なんだから、早く結婚してお母さんを安心させてあげなくちゃいけないわ。
もう学生じゃないんですもの。
ユジンにのことを気にかけてあげることも結構ですけれども、いいお相手を、できれば養子に来てくださる方をお世話してあげるのが、ヒョンスさんの親友としてのあなたの勤めではありませんか?
ほら、あの方なんかどうかしら?
あなたの研究室の助手をしている方で、ご両親をなくして学生時代は苦学していたからとても人柄がよくてっていう方がいらっしゃったでしょ。
確か次男だって言ってたし、いいんじゃありません?」
「ああ、ソン君か。彼は真面目でいい青年だ。
しかし…、サンヒョクは今でもユジンのことを想っているんじゃないのか?
サンヒョクの気持ちも考えてやらんと。」
「あなた、サンヒョクはうちの跡継ぎですよ。
ユジンがうちの嫁になるわけにはいかないでしょう?
それは、ユジンはいい子だし、あなたも気に入っているかもしれないけれども、いくら親友の娘でもそれとこれとは別ですよ。
第一、ユジンはサンヒョクのこと友達以上には想っていないんじゃありませんか?
それではいくらサンヒョクがユジンのことを好きでもサンヒョクが不憫ですよ。
ねえあなた、ソンさんのこと考えておいてくださいね。」
ユジンのことは、それこそ幼い頃からよく知っていて良い娘だと思っていたが、嫁としてはサンヒョクに相応しくないとチヨンは考えていたのだ。
もっと早く手を打つべきだったのだ、とチヨンは今更ながら後悔した。
そういえばサンヒョクの学生時代もこんなことがあった。
あの時に何とかしていれば…。
[サンヒョク学生時代 ある休日]
「もしもし、母さん。
今日これからそっちへ行くから、うん、昼前には着くと思う。
じゃあ、後で。」
「あなた、今日サンヒョクが顔を出すそうよ。
泊っていかれるのかしら。
聞き損っちゃったわ。
せっかくだから夕食も一緒にできるといいんだけど。
サンヒョクももっとちょくちょく帰ってくればいいのに。
車があるんだから。」
「まあ、学生とはいっても、放送部に入っていれば結構忙しいものだ。
サンヒョクは勉強も真面目にやっているし、長い休みには戻ってくるのだから、いいじゃないか。」
「それは、そうですけれども…。」
「ただいま、母さん。」
「お帰り、サンヒョク。あら、ユジンも一緒だったの?」
「おば様、こんにちは。ご無沙汰しております。
いつも母が大変お世話になり、ありがとうございます。」
「ユジン、わざわざ挨拶に寄ってくれたのね。
こんなところで立ち話もなんだから、あがってお茶でもいかが。」
「いえ、母が待っていますので、ここで失礼します。」
「そお、お母様によろしくね。」
「母さん、ユジンを家まで送ってくるから、すぐ戻る。」
〈サンヒョクが帰ってくるときはいつもユジンが一緒だわ。
あの子、サンヒョクを足代わりにしているのかしら?〉
「サンヒョク、今日は泊っていかれるんでしょ。
お夕食も一緒にと思って準備してあるのよ。」
「ああ、でもユジンが今日のうちに戻るっていってたから…どうしようかな。」
「どうしていつもユジンと一緒に帰ってくるの?
ユジンに乗せて欲しいって頼まれるの?」
「違うよ。
僕から誘ってるんだ、一緒に帰ろうって。
ユジンは春川に帰る時はバスに乗るからいいっていつも断るんだけれども、忙しくてこんなときぐらいしか会えないからさ。」
「まあ、あなたはいつまでユジンばかり追いかけているの?
他に誰かいい人はいないの?
放送部の後輩とか、もっとあなたに相応しい人がいるんじゃないの?
恋人ができたらちゃんとお父様に紹介するのよ、わかった?」
[ジヌの誕生日数日前]
「サンヒョク、お父様の誕生祝にユジンを誘ったの?
もしまだなのなら、今回は辞めておきなさい。
あなたもユジンももう社会人なんだから、中途半端なお付き合いはお互いの為に良くないわ。
あなたがいくら幼馴染のユジンを友人として気にかけてお付き合いしているつもりでも周りはそうは見ないわよ。
恋人として付き合っていると勘違いされたら、男のあなたは良くても、女のユジンは困るのよ。
わかるでしょ。
いくら世の中が変わってきたといっても、きちんとした考えの人はまだまだ女性が複数の男性とお付き合いしたことがあるということに批判的なのよ。
だから、ユジンの為にももう少し考えてあげないと、そうでしょサンヒョク。
ユジンはチョン家を継がなきゃならない人なんだから、仕事も大切だけど早くきちんと結婚相手を決めてお母さんを安心させてあげることも大事なのよ。
あなたも友人として、親切にしてあげるだけではなくてそういうことも言ってあげるべきなんではなくて?」
「母さん、僕はけして中途半端な気持ちで、幼馴染だから気軽にユジンと接しているわけではないことぐらいわかっていてくれると思ったのに…。
僕は真剣にユジンと一緒になりたいと思っているんです。
ユジンではだめなんですか?」
「当たり前です。
あなたは二つの家を一人で背負い込むつもりなの?
第一、こんなことを言っては失礼だけれども、ユジンの家と我が家ではつりあいませんよ。
ユジンのお母さんが苦労されるだけじゃありませんか。
結婚となれば色々な手続きや準備があって嫁の家で負担しなければならないことも多いんです。
ただ好きなだけではすまないんですよ。
ユジンだって苦労することになります。」
「母さん、そんなことは僕がうまく何とかすればいいことじゃないんですか。
あやふやにしているのが気に入らないのなら、僕がちゃんとユジンに結婚を申し込むよ。
お父さんにも恋人としてユジンを紹介する。
それならいいだろう?母さん。」
サンヒョクのあまりに真剣な顔に、チヨンは二の句が告げなくなってしまった。