紫陽花記

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別館★写真と俳句「めいちゃところ」

4 赤飯

2023-01-01 06:11:02 | 著書・夢幻★すみれ五年生


明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
引き続き「すみれ五年生」をお楽しみいただけると嬉しいです。




「すみれ、大人になったのよ。お祝いしようね。お赤飯を炊こう」
 祖母の竜子は、整理タンスの小引き出しを開けてビニール袋を取りだした。
「リュウちゃんの使った残りがまだ捨てずに有ったわ。これを使いなさい」
 すみれは、無言で受け取った。千秋たちが、休み時間に小声で話していたことが、やっと自分にも経験することが出来た。そう思うだけで、下腹の疼きが心地よいものに変わるような気がした。竜子の、使い方の説明は聞かなくても分かっていた。千秋たちの話は耳に入っていたから。ただ、その時は何のことか分からなかったが、今思えばこのことだったのだ。
「すみれ、体を大切にするのよ。大切にして、いいお嫁さんになるのよ。それまでリュウちゃんは頑張るからね」

 すみれは、母親のことを思い出していた。お嫁になることは、ママのようになることだ。ママは自分を置いてパパ以外の男の人と一緒に暮らしている。自分はもし自分のような娘がいたなら、絶対置いてなんかいかない。でも、もし自分がママと一緒に行ったとしたら、リュウちゃんは独りになってしまう。だから、自分だったら、パパ以外の男の人とは、絶対一緒に暮らさない。リュウちゃんとママと三人で暮らす。と思った。 
「さぁ、お赤飯ができたわ。ママが知ったら驚くでしょうね。すみれもとうとう大人の仲間入りをしたわって」
 すみれは聞こえないふりをした。ママのことは一番聞きたくないことだ。竜子はすみれの様子に気づき、それ以上は言葉を発しなかった。すみれの赤飯を食べる様子を見て自分も口に入れた。




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著書・夢幻に収録済み★連作20「すみれ五年生」が始まります。
作者自身の体験が入り混じっています。
悲しかったり、寂しかったり苦しかったり、そのどれもが貴重なものだったと思える今日この頃。
人生って素晴らしいものですねぇ。
楽しんでお読みいただけると嬉しいです。
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