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すみれは、ベッドに仰向けになって考えていた。前の学校でもそうだったが、転校した今の学校でも何故自分がいじめの対象になってしまうのか。
パパが居ないせいだろうか? いや、自分以外のパパの居ない子だっている。その子はいじめには遭っていないようだ。自分は転校生だからか? だとすると、前の学校でのことはそれに当たらない。クラスで一番背が低いせいか? 同じような小柄な子でもみんなの仲間に入っている。無口のせいか?……千秋みたいに、スピードの有る話し方は出来ない。珠恵みたいに大人のような言い方は出来ないし、久美みたいに大きな声でもない。だから、いつも他の子より出遅れて黙ってしまう。だからだろうか?……。
すみれはため息をついた。何とかいじめに遭わない対策を考えなければならない。悔しいと思っても、いつも言葉を飲み込むばかりの自分を変えなければ、いつまでもいじめの対象になっていなければならない。
そうだ発声練習をしよう。はっきりした言い方で、早口で大人の女性のようになろう。
すみれは起きあがりベッドに正座した。両手は後ろで組む。胸を張って声を出した。
「あ、あ、い、う、え、お、お」
口を大きく開けた。腹式呼吸を音楽の時間に教わっていたのを思い出しながら声を出す。
祖母の竜子は、日曜日だがパートに出かけた。自分一人のアパートの部屋に声が充満する。両隣の部屋には誰もいないのだろう。人の気配がしない。自分が黙ると、途端に近くの鉄橋を渡る電車の音が聞こえた。
「あ、か、さ、た、な、は、ま……」
すみれは、何度も繰り返しているうち、鼻の奥がツンと痛くなって涙が湧いてきた。
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著書・夢幻に収録済み★連作20「すみれ五年生」が始まります。
作者自身の体験が入り混じっています。
悲しかったり、寂しかったり苦しかったり、そのどれもが貴重なものだったと思える今日この頃。
人生って素晴らしいものですねぇ。
楽しんでお読みいただけると嬉しいです。
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