たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

森林経営管理法(その1) <ある盗伐事件>と<新たな森林管理システム>

2018-12-03 | 農林業のあり方

181203 森林経営管理法(その1) <ある盗伐事件>と<新たな森林管理システム>

 

メールで<「2019331日」をもってYahoo!ジオシティーズを終了する>という通知が来ました。10月に来ていたようですが見逃していました。そんなわけでこのブログも3月末には終わりとなります(すべてアップされなくなります)。引き続き別のところでやるかどうかは分かりません。とりあえずその日までは続ける予定です。ブログをいつまで続けようかと思っていたところで、いい頃合かもしれません。マンネリというか、自分自身で心に響かない内容ですので、書き続ける意味をあまり見いだせなくなっているのが原因かもしれません。

 

さてともかくブログに移り、本日のお題、森林経営管理法という、多くの人はあまり耳慣れない法律の話を今後しばらく続けようかと思っています。今日はとりあえず大枠みたいな話となります。

 

たまたま今朝withnewsというウェブに<ある日、山がなくなっていた……「盗伐」被害、警察が動きにくい理由半世紀ぶり「切り時」悩みが深かった>という記事がアップされていました。

 

梅とか、リンゴなどの果物の大量盗難も時折、ニュースになっていますが、盗伐は珍しいなと思って読みました。なにせ一般的には木材価格が下がる一方ですから、伐ってもコスト倒れと思われているからです。日本各地には北欧の森林国にも負けないほど、密集した森林がどこにでもありますが、誰も盗もうなんて思わないと思い込んでいるかもしれません。戦前とか戦後一時期までは森林窃盗という森林法違反に問われる事案がそれなりにあったのではないかと思います。それも過去の話かと思いきや、最近のTVニュースでも見た記憶があります。いやいや実際は、現場ではある程度の盗伐が行われている可能性があり、ただ所有者が気づいていないだけ、あるいは気づいても誰がやったか分からないというだけの場合もあると思っています。

 

以前、タケノコ泥棒の事件を担当したことがありますが、いまどきタケノコを盗む人がいるのですね。中国人でした。でもその竹林の所有者が被害を訴えている人物ではないことを登記簿、公図などを調べて確認したことがあり、いろいろ問題のあった事案で結局、起訴猶予となりました。

 

だいたい旬を過ぎた孟宗竹のタケノコで、私なんかとても食べる気にはならないですし、所有者も放置していた竹林でした。

 

脱線しすぎて停まりません。記事に移ります。千葉に住んでいるご本人が実家の宮崎に帰ったところ、<整然と立ち並んでいるはずの200本のスギ林が切り株に変わり果て、地面が向きだしのはげ山になっている光景でした。>これは大変ですね。警察が調べたところ、業者が虚偽の伐採届を出して、伐採したことがわかり、逮捕したのですが、証拠を勘案して不起訴となったのです。

 

それでこの方、<「盗伐被害者の会」を設立>して、全国に盗伐の危険を訴えているのですから、なかなかのものです。<林野庁が3月にまとめた調査では、1月までの10カ月間に自治体に寄せられた「無断伐採」の相談件数は62件。九州・沖縄が33件と多く、関東9件、北海道・東北8件、中部5件です。うち11件は意図的な無断伐採である「盗伐」の疑いがあるとされました。>わかっている範囲での件数ですから、実際はもっと多いでしょうね。

 

盗伐の背景を探るのも大事なことですが、他方で、山離れしている所有者意識やそれを放置している行政のあり方も問われるかもしれません。

 

このような視点では、所有者不明・境界不明の森林、農地、宅地、そして空き家などをこれまでなんどか取り上げてきました。

 

今年の通常国会で成立した、その対策ともなりうる法律について、とりあえず森林では「森林経営管理法」を取り上げて、私も勉強がてらに少しずつ読みくだいていければと思います。

 

林野庁の<森林経営管理制度(森林経営管理法)について>の中にある<森林経営管理制度(新たな森林管理システム)について>を基本にして、少しずつ話を進めていこうかと思います。

 

森林経営管理ということばも似たような用語はこれまでもありましたが、やはり初耳かもしれません。いったい何だろうと思いますね。それが私有林について、市町村が経営管理するというのですから、盗伐される?ように、今度は行政に勝手にされるのではないかといった勘ぐりも出てくるかもしれません。

 

そこは上記の制度解説では、森林所有者の意思を確認して、市町村に経営管理を委託するということですから、所有者の了解なしにはできないことになっています。

 

といっても市町村が実際に森林経営管理をやっていけるかというと、林業地域でもなかなか行政のノウハウやスタッフだけでは実現できるところは数少ないでしょう。実際のところは、<意欲と能力のある林業経営者>に再委託するシステムとなっています。まあおおざっぱに言えば、現在森林経営計画を市町村等の認定を受け、森林経営体が利用間伐事業など森林環境保全直接支援事業を進めているのと同じような仕組みに近いかと思われます。

 

ただ、<林業経営に適さない森林>については市町村が自ら管理することになっている点が違いますね。この林業経営に適するかどうかは、この事業に採算性があるか、換言すれば林業経営者が受託する程の利益を生み出すかということですが、これがなかなか難しい基準でしょうね。いずれもう少し詳細な検討はしたいと思います。

 

他方で、経済林として成り立つ森林は林業経営者に委ね、そうでない森林は多様で健全な森林の整備を狙っているのですから、その目的自体は合理性があると思われます。すでに和歌山県のゾーニングについて、以前紹介した記憶がありますが、それをより明確にしたのかもしれません。とりわけこれまで見捨てられていた放置森林への対応が、農地における遊休農地対策に呼応して、今回の新制度で整備されたといえましょうか。

 

新制度導入の背景は長く言われ続けた、人工林の活用できる伐期になり、国産材供給量が増加して、いま伐らないといけない時期であること、他方で、農地同様零細分散の私有林で、手入れされていない状態であり、しかも所有者不明、境界不明問題が大きな障壁となっていること、その担い手として経営規模拡大を目指す林業経営者が増えていることがあげられています。

 

一時間を過ぎてしまいましたので、中途ですが、この辺で今日はおしまいとします。

 

ただ、この制度が円滑に進むには、いくつか大きな問題が横たわっていると思われます。どうやら主伐事業を想定していて、当然、伐採後の造林が必要ですが、そのような伐採かつ造林の費用をまかない、所有者に満足してもらえる利益還元をして、事業者も事業採算性が得られる、おそらく市町村にも手続費用を上回る収益を予定しているようにも見える、三方皆満足を得られるような事業モデルを生み出すことができるか、利用間伐事業でも補助金便りのなかで、容易ではない話かもしれません。

 

コマツ方式のIOTなり高度の生産方式を活用するのであれば、一つの選択として魅力的ですが、現在の林業経営体でそこまで取り組むことができるところは少ないでしょう。

 

いや、現状改革のためにやるしかない、というやる気を感じさせる新制度ですので、期待して今後の省令の中身に期待しつつ、見守りたいと思います。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。