181226 森林経営管理法(その9) <新制度に対する批判について>
NY株式市場はまた下がりましたね。ところが東京市場は下げ圧力に抗して少し反発したようです。でも昨夜BS日経などではこれまで結構景気のいい話をしていた専門家もいつの間にか2万円台への反転は来春以降になったようです。そんなに簡単に底をつくのかと思うのですが、まあ株式や金融商品の話は話半分に聞いていてよいと私なんぞは思っています。
ゴーン氏の特別背任の件も少し具体的な情報が明らかになってきたようです。やはり「付け替え」時点で既遂という判断を特捜はしているようです。だいたい膨大な損失含みの権利なんて、価値があるはずがないでしょう。
そういえば何年か前、高野山金剛峯寺は金融商品取引で●億円(額を失念)の損失出したということで、専門家調査とか第三者印快調さと銘打って調査させた結果があいまいだったため、当時に主務総長が退陣しました。
それが法人なりの経営管理でしょうから、代表者のそれを引き取るなんてことはありえない話でしょう。取締役会ではゴーン氏は利害相反するので、決議に参加できないはずですが、新聞報道では決議内容をごまかしていたようです。なんともすごい御仁ですね。こういう人が世界に冠たるグループ企業を牛耳っていたのですから、会社制度とか会計制度は資本の論理に勝てない、いや「カリスマ」リーダーに勝てないのでしょう。
また余分の話をしてしまいました。今日は森林計管理法を再び取り上げようかと思ったのです。というのはあの連載ブログを終えた後久しぶりに林野庁のホームページを見たら、12月21日付けで、最新版に代わっていました。おそらく政省令ができたのでしょうか、それを肉付けした手引きや解説が合計で200頁くらいの分量でアップされています。
といいながら、今日はこの内容を読んでいませんので、来年でもこれは取り上げたいと思います。たまたま新制度に反対の立場で書かれた意見を2件発見しましたので、こちらの批判的な視点に立って、新制度を見てみようかと思います。
まず基本的な論陣を張る方を取り上げます。農文協論説委員会の<森林経営管理法・森林環境税で日本の森林を破壊するな>というものです。
農文協の多数の書籍は素人にはわかりやすく、時折読んできました。さてこの反対論は、いくつかの論点を提供しています。まず、私も取り上げた森林盗伐事件の経緯を引用しながら、現行森林法の届出制の運用に問題があるとするかのようで、乱伐と自然災害もとりあげ、その趣旨があまり判然としません。
次には<原木の安価な大量安定供給が目的!?>と新制度を正面から批判しています。基本的には<泉英二・愛媛大学農学部名誉教授(森林学/森林・林業政策)>の見解を引用して、<川下の大型化した木材産業およびバイオマス発電施設への原木の安価な大量安定供給が目的>という見方で疑問を呈しているようです。他方で沖林野庁長官の発言や日刊工業新聞記事を引用して、51年生以上の人工林について小規模所有者に放置されているため、新制度の目的はその主伐であると言うとらえ方をしているように見えます。だからどうなんだということがはっきりしません。
さらなる問題点として、これまた泉氏の<「違憲」の疑い>を引用するものです。<制度の形式的な手続を引用しつつ、<非常に強権的な内容で、憲法が保障する財産権を侵害している可能性が高い>と断定していますが、法律論としてはどうかと思います。
農文協は自らも、所有者不明森林についての公告による同意制度や、「災害等防止措置命令」の制度を取り上げ、<他の法律には見られない強大な権限を地方自治体に持たせる法案であり、違憲の可能性も高いのだ。>と強調しています。
いずれもたしかに形式的な手続を見れば、その所有者の意思や財産権を侵害するおそれを懸念するのはごもっともということができ、制度運用に当たっては慎重にも慎重を期す必要があるという点では私も同感です。しかし、わが国の森林や、所有者意識の実態はどうでしょう、私が身近で体験し、感じるのは、このまま放置してよいかという点です。
それは宅地で言えば空き家・空き地問題、農地で言えば耕作放棄地問題、林地でいえば荒廃した森林ではないでしょうか。地先漁場も同じような問題を抱えていると思います。
安易に財産権侵害論を強調すると、ますます放置され荒廃する森林が増える一方になり、災害時はもちろん、地球環境問題にも対処できないことを見過ごしてしまうことになりかねません。私はそちらの方が心配です。30年くらい前にそういう意識をもったあと、紆余曲折しながら、少しずつ森林問題に直接取り組む段階になりました。
最期の論点は大事です。新制度がもっぱら対象としている、小規模森林所有者のことです。
農文協が指摘しているように、<小規模森林所有者は「意欲がない」のか>と新制度が断定しているのであれば、それは明らかに間違いでしょう。引用している<「宮崎県盗伐被害者の会」の人びと>、<NPO法人自伐型林業推進協会(自伐協)>など、各地で自主独立でがんばっている人たちが少なくないことは確かです。
実際、私も何年か前(10年前ではないと思います)、自伐協の代表、中嶋健造氏の話を伺い、感銘しました。やればできる、しかし創意工夫がしっかりしているなと思いました。この点、新制度も、そういったやる気のある、森林所有者が経営管理しているのを邪魔しようなんて考えておらず、そういう意思のある方がいない森林を対象としているのですから、批判は的外れになるでしょう。むろん現実の運用がこういった自主的な森林経営管理を行っている森をも対象にするようなことがあってはいけないわけで、そこは制度的には担保されていると考えます。
他方で、新制度が担い手としている<「意欲と能力のある林業経営者」>の選定が適切に行われなければ、<盗伐・誤伐の疑いをかけられている二つの経営体が含まれているという>悪貨が良貨を駆逐することを許すことになりかねませんね。それこそ、ここはこれからの制度運用のあり方が問われるものでしょう。
また、<「小さい林業」の「意欲と能力」こそ評価せよ>というのはごもっともな意見だと思います。新制度にこういったまっとうな林業を排斥するような要素があればそれこそ、批判されてよいと思います。
<昨年末、この「森林経営管理法案」とセットになる「税制改革大綱」が閣議決定された。>ことを踏まえて、後者の場合、すでに各地の自治体で導入されている「森づくり県民税」などにより定着している小さい林業を、主伐と経営規模の拡大により、壊してしまうのではないかといった批判です。
このような懸念は、たしかに考慮されるべきと思います。ただ、県単位での税制では限界がありますね。国民の支持が受けられていないともいえます。いま森林の荒廃でその機能が阻害されつつあることを、国民全員で共有する必要があるという新制度の背景は評価されてよいと思います。といっても主伐中心となったり、不相当に皆伐面積が拡大したりしたのでは、それこそ森林破壊となりかねないのですから、計画づくり、実施・監督においてそれこそ市町村の役割が期待されるものと思います。それこそこのような手続のオープン化、透明化をより進めてもらいたいものです。
少し冗長に長くなりすぎ、次の中嶋氏の意見にたどり着けませんでした。これは別の機会に。
今日はこの程度でおしまい。また明日。