181209 森林経営管理法(その7) <森林所有者はどうなる?>
なんの準備もせずにいつも書き出しますが、そのためいつも前置きを書きながらどう進めようかと思案するのです。今日もそうしようかと思いつつ、それ自体を考えるのもしんどい感じで(これは昨日の歩きの影響もあります)、即座に始めます。ということは何がでてくるか、私も分かりません。
7回目ですが、<本法>の狙いともいえる森林所有者に焦点を当てようかと思います。といってもすべての森林所有者を念頭に置いて作られたものでないことは明らかです。といいたいところですが、条文上は必ずしもはっきりしません。
そこで<Q&A資料>では<本法律は、森林所有者が自ら責務を果たして経営管理を行えない場合の措置を定めたものであり>と限定しています。そして<自伐林家などが自ら施業して適切に経営管理されている森林については、市町村が権利の設定を行う対象とはなりません。>と自伐林家などが適切な経営管理している森林を対象外としています。おそらく政省令か通知で明確にするのでしょうね。
しかもおそらく初めて森林所有者の責務として、3条1項で「森林所有者は、その権原に属する森林について、適時に伐採、造林及び保育を実施することにより、経営管理を行わなければならない。」と明記しました。
平成21年農地法改正で創設された2条の2の「農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。」を思い出させる規定です。
とはいえ、<Q&A資料>では<「林業経営に適した森林」>について、経営管理が適切に行われていない場合に経営管理権設定を含むその集積計画の作成を市町村に義務づけていますが、そもそも<「林業経営に適した森林」>という用語が法文になく、<Q&A資料>だけで定義づけるのもどうかと思います。少なくとも政省令で明確な基準を設けてはどうかと思うのです。実際は各地で異なるだけでなく、さらにいえば山ごと違う条件になるので、容易でないかもしれません。むろん民間事業者によっても異なりますね。となると、森林所有者だって、一体どんな森林でどんな責務を負うのかはっきりしないと不平を言うかもしれません。なんとなく循環論法みたいになってしまいました。
ただ、ここは大事なところですので、しっかり森林所有者同士、市町村や民間事業者などと意向調査を通じて明確にしていく作業が必要ではないかと思います。
森林のある山であれば、しっかり手入れをしている人と、そうでない人で、山の景観が大きく違います。むろん最近では入会利用がされてきた時代と異なり、兼業農家が増え、山に滅多に入らなかったり、他方で専業林家も大規模林地を持っているところ以外ごくわずかでしょう。
新法による意向調査を契機に、もう一度森、山への意識を見直してはどうかと思うのです。とりわけ元の里山であった森林であれば、まだ手入れをしてきた世代が残っているでしょうから、まだ新法の制度が生かされるチャンスがあると期待しています。
ところで、<Q&A資料>を見ていると、計画に同意した後、森林所有者が死亡したらどうなるのかといった質問がありますが、相続や売却により計画自体、影響を受けないこととなっています(14頁 Q2-14 )。他方で、経営管理権は市町村と森林所有者(承継した)、経営管理実施権は市町村と林業経営体の合意で取り消すことができるとしています。これはそもそもそれぞれの実質的な合意で成立している権利の設定ですから、当然かもしれません。それと権利の承継の関係が曖昧ですが、経営管理実施権となると林業経営体の利益を一方的に侵害することができないので、承継した権利者としても、受忍せざるを得ないでしょう。
肝心の所有者不明の問題と確知所有者不同意の問題に入る前に一時間となりました。これが新法の究極の狙いの一つ?といってよいと思うのですが、この手続自体は、経営管理が適切に行われていない森林という認定が合理的かつ適正になされていれば、さほどやっかいな問題にはなりにくくなっているように思えます。所有者不明の「探索」といった奇妙な用語はともかく、所有者が不明という調査自体は新法では簡易化されているので、市町村側に大きな負担はないと思います。しかし、不適切な経営管理森林をどのような基準・根拠で認定したかは、今後審査手続、さらに問題が紛糾すれば行政不服審査や行政訴訟で議論されることになりかねません。
憲法の財産権保障との関係でも、法文自体が必ずしも明確でないため、政省令で相当程度合理的な目安を示していないと、市町村の裁量に委ねるのでは問題とされる可能性があると思うのです。
ここは重要な問題ですので、こういった安直な話にしないで、また別の機会に考えてみたいと思います。
なお、災害対応のための緊急時の措置としては、「第五章 災害等防止措置命令等」が重要です。
42条1項で、「災害等防止措置命令」が発令され、さらに代執行まで規定(43条)されています。
それは、経営管理が適切に行われていない森林といった以上に明確にされています。
「伐採又は保育が実施されておらず、かつ、引き続き伐採又は保育が実施されないことが確実であると見込まれる森林」と荒廃したとか放置された森林という表現が当たりますね。
それは次のような災害の危険性がある場合です。
一 当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させること。
二 当該森林の現に有する水害の防止の機能に依存する地域において水害を発生させること。
三 当該森林の現に有する水源の涵養の機能に依存する地域において水の確保に著しい支障を及ぼすこと。
四 当該森林の周辺の地域において環境を著しく悪化させること。
これは<要間伐森林制度>をより条件を絞り込み、緊急措置など手続の迅速化を図ったものでしょうか。
ちょっと時間がオーバーしてしまいました。途中ですがおしまい。また明日。