181210 森林経営管理法(その8) <選ばれる林業経営者とは?>
そろそろこの新法の話は一旦、終わりにして別の話に移ろうかと思ったのですが、今日も終日仕事に追われ、あまり考える気力もないので、簡潔にこの連載を続けて、今日で一時締めて、また政省令が出そろった段階で、今度は少し整理して書いてみようかと思います。まあ今回は少しでもこの新法に関心を抱いていただければと思いながら書いています。冗長で内容がないので、かえって関心を遠ざけたかもしれませんが、その場合はいつか捲土重来?をと思っています。
さて<森林経営管理制度(新たな森林管理システム)について>を見ていて、市町村の役割も大きいですが、林業経営者の役割こそ、この新法の盛衰を決めるかもしれないように思えるのです。むろん、森林所有者こそ重要なステークホルダーですが、知事、市町村、林業経営者がうまく連係しないと新法が有効に機能しないことは確かですが、経営管理実施権の主体である林業経営者が適切かつ効率的に経営管理を行わないと、市町村がいくら手綱さばきをうまくやっても経済的にも環境的もマイナスとなり、むろん森林所有者にもそっぽを向かれ、地球温暖化対策も含め公益機能が阻害されることになるでしょう。
さて、上記のウェブ情報12頁では<意欲と能力のある林業経営者の選定>と銘打って、その「意欲と能力」ある主体をどのような手続と基準で選ぶかを示しています。そこでは<経営管理実施権の設定手続き>と呼んでいます。
<法文>では、知事がゾーン毎に公募し(36条1項)、応募者から一定要件に適合する者を絞り、その情報を整理・公表を行い(同条2項)、それを受け市町村がその中から選定することになっています(同条3項)。公募段階では民間事業者ですが、経営管理実施権の設定を受けると本法の林業経営者になります(37条4項)。
では本法が定める林業経営者になるに値する要件はというと、法36条2項に次の要件適合性を求めています。
一 経営管理を効率的かつ安定的に行う能力を有すると認められること。
二 経営管理を確実に行うに足りる経理的な基礎を有すると認められること。
これだけだと抽象的ですね。法文では36条1項、2項いずれも、省令で定めるという規定になっていますが、それが区域のことか、公募のことか(1項)、法定要件のことか、応募内容、整理・公表のことか、などなにを対象としているのか必ずしも分明ではありませんので、省令をみて検討することになるかと思います。
通常、省令では実体的な内容についてまで踏み込むことがなく、手続き的な事柄が対象となりますので、私見では、上記の法定要件はあまり内容が明確にされないかもしれないと危惧しています。
とはいえ、応募内容について一定の書類提出を求めることで、「効率的・安定的に行う能力」を確認することは可能かと思います。たとえば宅建業者のように決算書類の提出とか、従業員情報とか、業務実績とか、ある程度判断できるでしょうね。林業経営・作業に必要なさまざまな資格保有者の情報提供も当然、必要になるのでしょう。
市町村としては、知事から提供を受けた公表資料から、経営管理実施権を設定するのに適切な業者を選定すればいいので、「意欲と能力のある」の判断はある程度、知事の絞り込みでやってもらっているから、安心して?選べるともいえます。とはいえ、森林所有者の理解を得ないといけませんから、当該森林ゾーンに適した林業経営者といえるかの判断はやはり市町村の責任になると思われます。
ところで、上記2要件の1号については、ウェブ情報では「考慮事項」として、
① 森林所有者及び林業従事者の所得向上につながる高い生産性や収益性を有するなど
② 主伐後の再造林を実施するなど林業生産活動の継続性の確保
を掲げています。
①の所得向上とか、②の継続性確保とか、当然の内容とはいえそうですが、法文上はそこまで明記されていないので、省令の前触れとみるのでしょうか。いやいや当然のことを書いたまでというのでしょうか。
この点、<Q&A>15頁では、回答として
① 経営改善の意欲の有無
② 素材生産や造林・保育を実施するための実行体制の確保(関係事業者との連携も可)
③ 伐採・造林に関する行動規範の策定(主伐後の再造林の確保)等を考慮する事項と考えており、都道府県が地域の実情に応じて判断すること
とより踏み込んだ内容になっています。
③も当然の内容でしょうけど、いずれも法文では明記されていないので、省令で補充するのでしょうか。
市町村が「公正な方法により選定」(36条3項)となっていますが、この公正な方法というのは具体的に基準なり指針を設けないでよいのでしょうか。おそらく通知で補充するのでしょうかね。このままだと、まさかとは思いますが、市町村が競争入札みたいなことをするかもしれませんが、それは本法の趣旨に添わないおそれがありますね。
そんなことをあれこれ考えながら、一時間が経過しました。
当分の間、この新法の話はこれで打ち止めとします。また明日。