たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

森林経営管理法(その5) <Q&A資料から経営管理権集積計画を読み解いてみる?その2>

2018-12-07 | 農林業のあり方

181207 森林経営管理法(その5) <QA資料から経営管理権集積計画を読み解いてみる?その2>

 

昨日に引き続き、経営管理権集積計画なるものを考えてみようかと思います。<Q&A>でこの森林経営管理制度が少しずつ見えてくる感じですので、今日もこれを見ながら検討します。

 

Q&Aでは、最初に「林業経営が成り立つ森林」が取り上げられ、次に<経営管理が適切に行われていない森林>に対象が限定されるかと行った質問になっています。これは一体どういうことでしょう。

 

森林経営管理法>の条文(そろそろ条文解釈のさわりを少しずつ取り入れようかと思います)には、この<経営管理が適切に行われていない森林>という用語が一切ありません。ただ、2条3項で、「この法律において「経営管理」とは、森林(森林法第五条第一項の規定によりたてられた地域森林計画の対象とするものに限る。第五章を除き、以下同じ。)について自然的経済的社会的諸条件に応じた適切な経営又は管理を持続的に行うことをいう。」とありますから、本法では「経営管理」(しかもその定義自体に適切性を必須要件にしていますね。)をキーワードにしていることはよくわかります。

 

とはいえ、法文条では当該計画の対象を<経営管理が適切に行われていない森林>に限定する規定は明記されているとはいえません。

 

「経営管理権集積計画の作成」を定めた4条以下でも、そのような明確な定めはありません。4条1項で、「当該市町村に集積することが必要かつ適当であると認める場合」ということで権利主体である市町村への集積が必要かつ適当ということを定めているものの、<経営管理が適切に行われていない森林>という条件付けは法文からは明らかとはいえないと思います。

 

一体、国会ではどのような審議をしたのでしょうかね。議員に提供されるベーパーは要約されたものでしょうし、条文個々に当たる議員は多数の議案検討をかかえているので、よほどでない限り、レアではないかと思います。

 

新制度成立の背景は、経営管理が適切に行われていない森林が全国に多数あり放置できない状況ということではないかと思います。とはいえ「経営管理」という用語自体、それほど成熟した概念でなく、法文の規定もトートロジーのように見えますね。

 

今後政省令、あるいは通知でどの程度明確になるのか、期待したいです。そうでないと出発点がはっきりしないことになりますから。

 

またこの回答では、<本法律は、経営管理が行われていないことで公益的機能の維持等に支障が出る森林の経営管理を市町村に集積することを目指している>となっていますが、1条の目的規定ではそれほどこの点が明確とはいえません。

「この法律は、・・・林業経営の効率化及び森林の管理の適正化の一体的な促進を図り、もって林業の持続的発展及び森林の有する多面的機能の発揮に資することを目的とする。」とあるだけであって、はたしてそこまでいえるのかなと思うのです。いやいや、林野行政においては当然のことというのかもしれませんが、条文の文言だけからはそこまでいえるか少し疑問です。

 

公益的機能の維持等ということと、経営管理が適切におこなわれることとは同じではないですね。実際、その対立・調整の場面が当然あるわけですから。Q2-1では「林業に適した森林」否かの判断について、現時点では抽象的な基準だけで、結局、<民間事業者が再委託を受けない森林は経営的に適さない森林であると判断することもできると考えています。>ということですから、民間ベースで採算がとれなければ、計画対象とならないことを前提にしているようです。すると、この場合の経営管理の適切さというのはあいまいな印象です。

 

このあたりは政省令段階でより明確になるのでしょうか。どの部分が政省令に委ねられるのかいまのところよく分かりませんが、<制度概要22頁では10月ないし12月時点では政省令に加えて通知ができあがっているスケジュールです。いまのところ報道には上がっていないようですし、むろん林野庁のウェブサイトも変わりありません。

 

別に首を長くして待っている分けではありませんが、でもできあがるのを期待したいところです。

 

ところで、計画対象の森林になるか否かという点で、<人工林のみではなく天然林や放置竹林、原野等も意向調査の対象となるのか。>という質問への回答は基本、人工林をメインにおいているようです。

 

<市町村の判断により、放置竹林や天然林で意向調査することは可能>としつつ、市町村の判断に委ねています。興味深いのは天然林を取り上げ、<現状のままでも適切な経営管理が行われるような手入れを必要としない>ものは除外してもよいとしている点です。この文脈からは、天然林も対象としつつ、<適切な経営管理が行われるような手入れを必要としない>ものは除いてよいともとれます。天然林だから修飾語のようなことは当然にはいえないわけですから、やはり市町村は対象とする必要があるのではと思うのです。そうあって欲しいという思いもありますが。

 

他方で、放置竹林は完全に市町村の判断に委ねる趣旨ですね。しかし放置森林こそ大変な問題を抱えていますし、公益的機能にも支障を来したりしていると考えますので、これを市町村の判断に委ねることでよいかは考えものです。法文はなにも限定していませんので、林野庁がこういった解釈をしてよいのか気になるところです。

 

ただ、放置森林まで当然に計画対象とすると、それこそ意向調査やその後全体の計画推進がより複雑になるかもしれません。現時点では、このような理解にも一応の合理性が認められるかもしれませんが、もう少し利害得失を含め議論して説明責任を果たしておいた方が望ましいと思うのです。

 

他方で、原野や草原などは、除外してもとくに問題は少ないでしょう。

 

そろそろ一時間になりそうです。読みながら書いていますので、中身を理解するのに時間がかかり、進みません。今日もこの程度で終わりとします。また明日。


柿と人と農 <甘熟富有柿 「夢」と「希」最高級柿選果 九度山>などを読みながら

2018-12-07 | 農林業のあり方

181207 柿と人と農 <甘熟富有柿 「夢」と「希」最高級柿選果 九度山>などを読みながら

 

冬は柿ですね。当地に来て、毎日のように一個食べることが自然な感じになりました。他のフルーツはあまり関心がないのですけど。夏のメロンもスイカも。ナシやミカン、イチゴなどなどその他多彩なフルーツ天国日本ですが、あまり興味をそそらないのです。出されると残してはいけないので食べる程度です。当地にやってきてそんな感覚になったように思います。なぜでしょう?私自身がわかりません。

 

さてそんなくだらない話は別にして、当地は柿王国です。ですので農家も先駆けを狙って、いろいろ工夫するようです。商品差別化、高級品質化は当然でしょうね。

 

今朝の毎日紙面では「最高級柿を初選果」との見出しで取り上げていました。ウェブ記事では<甘熟富有柿「夢」と「希」最高級柿選果 九度山・JA紀北かわかみ /和歌山>と少し要約版としてアップしています。

 

先日のブログで紹介した九度山が舞台です。<九度山町特産の富有柿の最高級ブランド「甘熟(あまじゅく)富有柿」の今年の初選果が5日、町内の「JA紀北かわかみ マルい選果場」であった。>

 

さて初選果された高級ド品は、<初日に集荷された約1・5トンの中から厳選した最高品質の「夢」約20箱分、これに次ぐ「希(のぞみ)」約60箱分を詰めた。>とのこと。

 

では差別化のためにどのような工夫をしているかの一端は、<「夢」は木に実ったまま一つずつ袋を掛け、通常の柿より1週間~10日間長くおいて完熟させる。糖度18度以上で、大きい実は5Lサイズ(410~440グラム)ある。>大きさも極めてビッグです。

 

さらに選別はセンサー+プロが品質管理を行っているのです。<選別では、センサーを使って糖度や色付き具合を調べ、JA職員や甘熟富有柿部会の生産者らがさらに一つずつ見栄えの良しあしなどでより分けた。>

 

その結果、とても高額な品物として販売されるのです。<夢は大阪市内の市場、希は関東方面に出荷され、店頭では1箱(6~9個)7000~8000円で販売される。【松野和生】>

 

で、私がこの記事を取り上げたのは、<甘熟富有柿部会>の部会長であるNさんを知っているからで(紙面記事で掲載)、Nさんは地元に有名人が来たりすると説明したり柿畑を案内したりするそうです。

 

そのNさんの風貌がすごいです。私より若いのですが、まあ真っ黒焦げといっちゃ失礼ですが、これぞ百姓魂というか、炎熱の下でどれだけ苦労して丁寧に柿を育ててきたかが、その姿・顔・表情からすぐにうかがえるのです。Nさんのような柿農家がいる限り、九度山も当地の柿生産も期待できると思うのです。

 

そういえば1024日付け毎日記事<農と食・地域に根ざして/4 JA紀北かわかみ 宮崎卓郎組合長(62) 生柿の米豪輸出、本格化 /和歌山>では、今年から生柿の本格的な輸出を始めたそうです。

 

宮崎組合長が率先して、新たな市場を開拓して、当地の柿の魅力を海外の顧客層を掴もうとしているのでしょう。私は海外生活した狭い経験から、十分見込みがあると思うのです。北米はもちろん豪州の人たちもフルーツが好きですし、柿の本当の味を知るときっと飛びつくと期待しています。

 

宮崎組合長の話でしょうか、<私たちが手がける事業で皆さんにいま一番関心を持っていただいているのが、管内の主力産品である生柿の輸出でしょう。昨年は米国、今年は豪州と、どちらも国産柿として初の試みです。米国へは解禁に合わせて収穫期が遅めの富有柿0・8トンを輸出しましたが、現地到着が年明けになってクリスマス商戦には間に合いませんでした。今年は収穫の早い刀根早生柿を送り始めており、計10トン余りを見込んでいます。黄色っぽいカボチャで作るランタンのイメージを柿に重ね、10月末の「ハロウィーン」向けにアピールします。>

 

少しの間、宮崎組合長とある会でご一緒しましたが、業務多忙で別の方が参加するようになり、組合長はこういった新機軸を打ち出しているわけですから、多忙この上ないでしょうね。

 

当地の農業の将来については、AI化や新規担い手支援などいろんな方策に取り組んでいるようです。

<農業一般にいえることですが、課題となるのが農家の高齢化と生産用地の減少です。柿についても消毒や収穫作業の大きな負担を減らすため、機械による省力化や作業人員の確保策など検討を進めています。また生産用地を維持するため、休耕地を貸したい人と新たに栽培を希望する人をマッチングさせるなどの事業に取り組んでおり、昨年度は計95件(計18ヘクタール)の成約につなげました。これからもさまざまな困難を感じている生産者をJAがサポートしていきたいと考えています。【聞き手・松野和生】>

 

当地の農業についてもいつか、書いてみたいと思うのですが、いつになることやら。夕方、時間を見つけて、連載の森林経営管理法を続けます。