たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

これからの薬剤師 <地域密着 サポート薬局>などを読みながら

2017-08-12 | 医療・介護・後見

170812 これからの薬剤師 <地域密着 サポート薬局>などを読みながら

 

昨夜というか今朝は気持ちのいい朝を迎えることができました。まいえば、涼しいの一言です。いや、ちょっと寒さを感じるほどでした。それで温度計を見たのですが、25度かとおもったら27度ですから、決して低くない。湿度も70%以上だったと思います。最近、こういった数値はすぐ忘れてしまうのです。大事なことはメモしないといけません。認知症予備軍になりつつあるといったら、仕事になりませんが、メモをしっかりとる方が仕事の正確性を高めることは確かですので、心がけています。

 

それとメールが便利ですね。東京で仕事をしていた20年くらい前から私の依頼者層はだいたいメール愛用者でしたので、これですぐ連絡していましたから、ファックス時代に比べ即応性や大量の図面や写真の送信が格段によくなりました。

 

話題を元に戻して、温度も湿度も高いのになぜ涼しいのか、これが不思議です。風も微風程度でひんやりした風とはいえないのです。わが家がある谷地形とその底を流れる河、背後の広大な森のおかげでしょうか。これはいつか解明できればと思うのですが・・・

 

いまその20年前くらいの事件記録を少しずつ整理しつつあるのですが、なかなか進みません。それで今日も夕方過ぎにこのブログを書く時間になったと気づき、しばらく悩んだ末、見出しの薬局、薬剤師を今日のテーマにしたのです。

 

薬局、薬剤師と聞かれても、医師の処方箋を持って薬局に行き、薬剤師から簡単な説明を受けて薬をもらうという、なんとなく機械的な作業を思い浮かべてしまいます。市販の薬だと、スーパーマーケット内にある薬局というかその区画で、こういう症状だけどちょうどいい風邪薬をくださいといった簡単な会話で似たような薬から選ぶ程度でしょうか。

 

そんなイメージですから、楽天でしたか、薬をネットで販売することを協力に推し進め、ようやく認められたのでしたか。厚労省の平成262月付け<一般用医薬品のインターネット販売について>はネット販売できる医薬品とか、その方法などをわかりやすく解説しています。

 

当然ながら、一般に見かける(いや私がそう見てしまっている偏見かもしれませんが)薬局・薬剤師は、このままだと医師の処方箋による調剤をする以外、将来的には必要なくなるのではと一瞬、思うこともないではありません。

 

でも、薬剤師は本来、薬の専門家です。医師以上に専門的知見を有している場合も少なくないように思うのです。私のかつての依頼者でありよき相談相手であったAさんは元製薬メーカーの研究所所長でしたが、彼は医師は薬のことをまったくわかっていないとよく愚痴をこぼしていました。それはともかく法的にも次のような規定があることをあまり知られてないかもしれません。

 

医師法では医師の業務を割合詳細に規定していますが、22条では、「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当っている者に対して処方せんを交付しなければならない。」と定めています。

 

そして薬剤師法は全体でも33条しかなく割合簡単ですが、23条で「薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。」と医師依存の業務構造になっています。

 

ここで私が指摘したいのは24条です。「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。」と医師の処方に機械的に従うのではなく、薬剤の専門家として、疑義がないか独自にチェックする役割を任されているのです。

 

当然と言えば、当然ですが、それを的確に行っている薬剤師こそ、本来の役割を果たしているといえるでしょうし、患者を的確に継続的に見ていれば(この見るは観察などさまざまな要素を含んだものだと思うのです)、処方薬剤の複合効果や累積効果などにより、禁忌ないしはそのおそれに気づくこともあると思われるのです。

 

それには単に窓口での簡単な会話ではそのような的確な判断をすることは容易でないことは当然でしょう。

 

私が首都圏に住んでいたとき、日常的に頼りにしていた薬局・薬剤師がいました。彼はまだ若かったですが、研究熱心で、私の生活なども詳しく聞いてくれ、親身になって対応して、適切な薬を提供してくれました。漢方薬もあったと思います。むろん処方箋がないので、調剤まではしてもらっていませんが、彼のような薬剤師なら通っていく気持ちになります。

 

市販の医薬品だと、別に薬剤師は必要ないと考える人もいるかもしれません。しかし、さまざまな病気を抱えている人の場合などは、現在服用している薬の影響を踏まえたうえで、市販医薬品の選択も検討される必要があるのではないかと思うのです。いや、慢性的な病気を抱えている人は、何種類といったレベルでなく何十種類といった薬を処方されている場合もあると思います。

 

その場合、その処方どおりに服用することが簡単ではないと思います。いや、それ以上に、処方が過剰になっているおそれもあるでしょう。その副作用によって健康を悪化させているかもしれません。

 

いろいろ書いてきましたが、要は、見出しの記事にある「健康サポート薬局」は将来の方向性を示すものではないかと期待しています。

 

いま毎日朝刊連載の<ドキュメント 訪問診療の暑い夏>は、医師、看護師、ケアマネなど介護職などがチームを組んで在宅医療・介護に取り組んでいる大変な様子をリアルに活写しています。その中で<2 薬の種類、徐々に減らす>では、多種多量の薬が放置されている現状が明らかにされています。

 

<東京都大田区の訪問診療医、高瀬義昌先生(60)は、・・川崎市内にある2Kのアパートに向かった。80代と70代の老夫婦は、最近訪問を始めた新患。・・「いい話があんの。糖尿病はよくなった!」。12種類もの薬が出ており、見直しに着手する頃合いだ。まず三つの糖尿病薬、念のため一つ残して二つを消す。高脂血症薬も同様に減らせると判断した。後でクリニックから薬局にファクスを入れれば、2週間分の薬が届けられる。高血圧薬も四つあるけれど、食事の見直しなどでさらに減らせそう。でも、急にはやらない。相手の気持ちを考えて徐々にやっていく。>と過剰な薬服用に気づいても細やかな配慮を示します。

 

<看護師が「お薬いっぱいあったよね?」と水を向けると、タンスから出てくる出てくる、薬の袋。「飲み残し」は珍しくないが、よく見ると、「朝食後」と書いた袋に違う種類の薬が入っていたりする。「訪問服薬指導してもらおう」。薬剤師が1回で飲む数種類の薬を1包にまとめ、日付ごとに朝・昼・晩用に「お薬ポケット」に収めてくれる。

 高齢者に関する医療で、いま注目は「多剤併用」の問題だ。厚生労働省が本腰を入れる前から、先生は指摘してきた。6種類以上の薬を飲むと意識障害や肝機能障害などが出やすくなるとの研究結果がある。>

 

私も訪問診療を続けている医師を知っていますが、終日ですし、病院や医院での診療と異なり大変です。知り合いの医師はとっくに高瀬医師より高齢になっているので、体力的にもきついでしょう。今後もこのような訪問診療は必要とされますが、少数の医師・看護師のチームだけに頼っていくのでは成り立たないでしょう。

 

完全な代替機能とはいえませんが、薬剤師も、上記のような問題は訪問すれば、すぐに問題視して、対応することができるでしょう。

 

さて見出し記事では<健康サポート薬局は、かかりつけ薬剤師がおり、地域住民の健康促進を積極的に支援する機能をもつ薬局のこと。国の医薬品医療機器法に基づき、昨年10月から届け出が始まった。>とあります。

 

<具体的にはどんな薬局か。東京都台東区浅草の下町にある「ケイ薬局」をのぞいた。玄関には「健康サポート薬局」の大きな文字が見える。待合室には高血圧、糖尿病予防など各種健康冊子が置かれ、壁にはいろいろな食品に含まれるビタミン・ミネラルの一覧表、塩分摂取の目安が分かる張り紙もある。現在、4人の薬剤師が約360人の患者を受け持つ。介護の相談にも応じるおむつフィッターや管理栄養士もいて、食事や健康食品の指導、介護の活用法なども教える。災害時には安否の確認も行う。>

 

より具体的な業務としては<薬局長の宮原富士子さんは約100人の患者を受け持ち、夜中でも電話相談に応じる。患者の家まで出掛けて薬を届けたり、病状を尋ねたりすることも。他県に嫁いだ女性から「年老いた私の親をよろしくね」と気軽に頼まれ、状況をまめに報告することさえある。「健康サポート薬局は地域住民の健康を支援する情報拠点。自分より年老いた周囲の人たちの面倒を最後まで見るという気持ちと覚悟でやっている」と宮原さん。>

 

こういった薬局ができれば、ネット通販の対象となる医薬品はネットで購入すればよく、薬局は独自の地域密着型の患者サポートを担う一員として強力な助っ人になり得ると期待しています。

 

<厚生労働省によると、健康サポート薬局は全国約5万7000の薬局のうち、398カ所(6月末時点)と少ないが、大手薬局チェーンも参入しており、今後さらに増えていきそうだ。>ということで、経済的メリットもないようですから、まだ進捗率は低いですが、上記の厚労省が問題にする事態の改善になりうるとしたら、より患者側も薬局にアクセスしやすくなるのではないかと思うのです。

 

参考までに厚労省の<薬局・薬剤師に関する情報 かかりつけ薬剤師・薬局について>を引用しますが、この中の<患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~>や<地域包括ケアシステムにおいて薬剤師・薬局が参画している好事例集>は、薬局・薬剤師の皆さんにも新たな方向性として取り組んでもらいたいと期待するものです。

 

今日はこの辺で終わりとします。


企業の力と魅力 <シャープ JDI再建「国内連合で」 戴社長、支援に意欲>などを目にして

2017-08-11 | 企業運営のあり方

170811 企業の力と魅力 <シャープJDI再建「国内連合で」 戴社長、支援に意欲>などを目にして

 

今朝の毎日朝刊は一面トップで<東芝赤字9656億円、国内製造業最大 延期の決算発表>と東芝が期限切れ寸前の決算で約1兆円の赤字決算と報じた上、2面、3面では<東芝監査法人と玉虫色決着 決算「限定適正」><東芝「限定付き適正意見」監査限界浮き彫りに>との見出しで詳細に報道しています。

 

そして<内部統制については「不適正」とし、決算にも「一般に公正と認められる基準に準拠しない」との意見>といった「限定付き適正」といった摩訶不思議な結論でようやく上場維持となったものの、なお綱渡り状態です。

 

その東芝、日立、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して124月に設立されたジャパンディスプレイ(JDI)は、赤字続きで、昨日の毎日では<有機EL転換遅く サムスンに押され>で、東入来会長が<「ラストチャンスだと思って構造改革をやり切りたい」>と会見で決意を示し、<今回の構造改革では、主力だった液晶パネル事業に代わり、有機ELパネル事業を経営の軸に位置づけた点が大きな変化だ。東入来会長は「有機ELなくしてスマホビジネスの将来なし。戦略的にかじを切った」と方針転換を強調した。>というのです。

 

しかし、ウィキペディア情報では<スマホなどの小型端末向けの有機ELディスプレイは、サムスンディスプレイのシェアが2016年時点で97.7[12]と、ほぼ独占している。韓国のLGのほか、中国最大手のパネルメーカーである京東方科技集団なども2014年に携帯端末向けパネルの量産を開始したが少量生産にとどまり、サムスンのようにパネルを外販するには至っていない。2016年現在では中国・韓国メーカーの高級スマホを中心に有機ELディスプレイの採用が進んでいる。>というのですから、この段階でどういう具体的な市場戦略があるかを示さないと筆頭株主が官民ファンドの産業革新機構ではきちんとコントロールできないおそれがありますね。

 

ここまでが前置きです。ここで見出しの記事が登場です。

 

<シャープの戴正呉社長は10日、経営難に陥っている液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)の再建について、「シャープが主導すれば自信はある。黒字化でき、技術流出もない」と述べ、支援に強い意欲を示した。液晶の主要技術を国内に保持するために日本企業で連合を組み、業界首位の韓国メーカーや台頭する中国勢に対抗したい考えだ。>

 

シャープ、そして背後の鴻海という企業は、次々と企業・事業結合ないし提携という打ち出の小槌を降り続けています。東芝の半導体事業の買収参画もまだ続いていますね。シャープの買収はまだ一年しか経っていないですね。こんどはJDIの事業に参画しようというのでしょうか。市場支配力への飽くなき戦略でしょうか。むろんどんな企業体でも大なり小なりこれがないところはないでしょうが、鴻海は別格のようにも思えます。

 

いや、昔の日本企業もそうだったと回想にふける暇はないでしょうね。東芝も事業拡大を求め続け、現在は迷走しているわけで、綱川社長の留任について有力なステークホルダーの意見も厳しいのは当然でしょう。

 

ではシャープの戴正呉社長は、この一年間でどのようなシャープ改革を行ってきたのでしょうか。ちょうど毎日が3日間の連載でその一端を取り上げています。

 

シャープ変転/上 鴻海流「信賞必罰」浸透 太陽電池、総出で営業

シャープ変転/中 液晶、世界へ再挑戦 8K前面に独自路線

シャープ変転/下 人材確保、再建の鍵 買収1年、問われる真価

 

買収したシャープについて、<経営状況を調べた鴻海の郭台銘会長(66)は「清の皇帝のようだ」とあきれた。成功体験をひきずり、経営が傾いても高コスト体質から抜け出せない姿を、3世紀続いた末に衰退した中国最後の王朝に重ね合わせたのだ。>と手厳しいです。

 

その象徴がシャープの太陽電池事業ということで、撤退も検討されたそうですが、<「ぜひ商品の良さを知ってもらおう」。奈良県天理市の研修施設に昨年12月、設計や品質管理といった太陽電池に関わる社員数十人が集まった。3カ月は通常の業務を離れて、太陽電池のセールスで販売会社社員と一般の住宅を回った。関西地区の営業を統括するシャープ子会社の三島広史さん(43)は「それだけ追い込まれていた」と振り返る。信賞必罰を旨とする鴻海の傘下となり、危機意識が早くも浸透していた。 >とセールスのあり方の変更を社員全員が真剣に取り組んでいます。

 また、<割高だった原材料購入契約の見直しもあり、太陽電池事業は17年3月期に3年ぶりの営業黒字を確保した。>のですから、やはり変化は明確に現れたのですね。

 

でも<国が普及を目指す省エネ住宅「ゼロ・エネルギー・ハウス」向け機器の販売に力を入れ始めたが、“太陽電池バブル”崩壊後の需要減から国内外で抜け出せておらず、依然として厳しい事業環境は続く。>これだけで<鴻海流「信賞必罰」浸透>という風に理解できるかはまだなんともいえませんが、事業の赤字状態を黒字化したという客観的事実は、短期的には事業化に関わる担当社員の意識改革の結果ともいえるでしょう。ただ、それ自体はたいていの企業が心がけているわけで、それがシャープの場合清国の末期のように張り子の虎状態だったかどうか、もう少しみないと的確には評価できないように思うのです。

 

2に取り上げたのは8K路線の選択です。<有機ELでLGに後れを取ったシャープは、優位性がある8Kを戦略の中心に据えたのだ。>もう有機ELではサムソンに勝てないとあきらめているように見えるのですが、それがよくわからないのです。たしかに液晶の成功体験にこだわってその事業拡大に邁進した結果シャープは鴻海に身売りしたのですから、将来性のある事業選択をどうするかは最も重要です。

 

<「有機ELは韓国勢が先行している。郭会長から『追随はしたくない』という話があった」と明かす。>というのですが、それは合理的な判断といえるのでしょうか。

 

私にとっては4Kだろうが8Kだろうがあまり大きな違いがわかりませんし、それぞれに魅力を感じるほどの尺度をもっていないので、その選択の合理性を判断するだけの材料がありません。ただ、記事は次のように疑問符的な問いかけをしています。

 

<普及に向けた鍵になるのは、放送局のスタンスだ。国内では18年12月に衛星放送で4Kと8Kの実用放送が始まり、それに合わせてシャープが8Kテレビを発売する予定だ。だが、NHKと各民放が参加する4Kに対して、8KはNHKだけ。4K放送は既に世界的な潮流となっているが、より大きな投資が必要になる8Kには多くの放送局が二の足を踏んでいるからだ。>

 

そして<それでも鴻海は世界的に需要が伸びると判断して、中国や米国で8K向け液晶工場の建設に突き進む。米ウィスコンシン州の工場建設は先月、ホワイトハウスでトランプ大統領と郭会長が並んで発表した。そこで作った液晶でシャープがテレビを生産する。シャープが経営危機に陥った主因は、液晶への過剰投資。「シャープを変える」と乗り込んだ鴻海が頼りにしたのも、やはり液晶だった。もう失敗は許されない。>

 

第3はさらに疑問符が大きくなっているようにも思えます。

 

<東京・新橋のビルの一室に、2016年11月に設立されたベンチャー企業「Team(チーム)S」の小さなオフィスがある。社名の「S」は、シャープの頭文字と同社の創業理念「誠意と創意」に由来する。メンバーは8人全員がシャープの元社員で、うち4人は液晶への過剰投資で経営危機に陥った頃に辞めた。

 「スマートフォンと“下敷き”をつなぐ通信の新しいアイデアを思いついた」。今月2日、オフィスに集まった5人が開発中の製品について意見を交わした。下敷きと呼ぶのは、B5サイズほどで湾曲する厚さ数ミリのシート。無線でつながったスマホの表示画面をそのまま映し出して、指で操作できるユニークな製品だ。さまざまな企業と連携して開発を進めており、19年春にも世に出る予定だという。>

 

山椒は小粒でもぴりりと辛い、とはよくいったもので、元シャープ社員のメンバーは少数精鋭の魅力を遺憾なく発揮しているように思えます。

 

上記のチームSのリーダーは<入社した1984年ごろ、社員の平均年齢は27歳前後で「『とにかく何でも挑戦してみろ』という自由な社風が好きだった」と振り返る。希望退職を経て、現在の平均年齢は43歳を超えている。>と問題を指摘しています。

 

この連載は最後に、<台湾の鴻海精密工業がシャープを買収して12日で1年。鴻海流の徹底したコスト削減と、時代を先取りするユニークな製品を生み出す「シャープらしさ」は両立していけるのだろうか。鴻海の郭台銘会長(66)は「数字(利益)さえ上げれば文句は言わない」(シャープ幹部)という。再び成長軌道に乗り、輝きを取り戻せるか。シャープが真価を問われるのはこれからだ。>と数字の拡大を目指す企業家精神とシャープが本来もっていた自由で闊達な雰囲気で作られた独創的な商品の魅力と折り合うか、将来の行方を注視しています。

 

そして鴻海の郭台銘会長が有機ELをシャープの事業戦略から外す一方で、見出し記事ではシャープの戴正呉社長がJDI再建支援を発表しています。<JDIは再建の柱に有機ELを据え、2019年の量産化を目指す構えだ。シャープとしては、JDIと「日の丸連合」が組めれば、有機ELが強化でき、世界的な競争力を確保できるメリットが期待できる。>

 

Kと有機ELの二兎を追う者は一兎をも得ずということになりはしないか、誰もが不安を感じるのではないでしょうか。いや、鴻海全体ではちゃんと制御できているというのでしょうか。

 

その巨大な力、それを支持する資本マネーの流れは、グローバル社会では当然かもしれませんが、その企業が本当に魅力的な存在であり得るのか、社員にとって、またその商品を選択しようか考える消費者にとって、思案する問題かもしれません。

 

今日はこのへんで終わりとします。


研修医のあり方 <研修医自殺 労災認定 「月残業209時間」>を読んで

2017-08-10 | 医療・医薬・医師のあり方

170810 研修医のあり方 <研修医自殺 労災認定 「月残業209時間」>を読んで

 

昨夜NHKスペシャル「帰還した町で」を一部見ました。福島第一原発事故から7年目。避難指示がようやく解除され、自宅に帰ることが行政上はできることになりました。帰還できる、いや、帰還することが求められるような雰囲気ができあがりつつありますね。でもほんとうに帰れるのか、それに支障となるのは放射線汚染の危険性だけではありません。

 

野生生物が街の中に居着いているのです。イノシシの親子が闊歩しているのです。人を見ても逃げようとしないのです。私自身、竹林のタケノコが全部採られる被害を受けてきましたが、それは真夜中の出来事です。一度もイノシシを見たことがありません。朝方見るのは、イノシシが掘り返した後の畑であったりするのです。それがまるまるとしたイノシシがのしのしと明るいうちから堂々と歩いているのです。

 

全員避難して誰もいなくなった家々は彼らにとって格好のえさ場であり、ねぐらでもあったのでしょう。そして何世代もすでにその「都市生活」を暮らして、新世代のイノシシには人を怖がらないDNAが根付きつつあるのでしょう。逆に人間の方が怖がってしまいます。

 

イノシシだけではありません。ハクビシンやアライグマも、調査すればもっとたくさんの種類が各地ではびこっているのでしょう。先日はヒアリなどの特定外来生物を取り上げましたが、内発的外来種?とでもいいましょうか、人が住んでガードしてきたゾーニングがもろくも消えてしまうと、そこには闖入者の生息域となるのは当然かもしれません。

 

彼ら闖入者との棲み分けが今後本格的に実施されないと、ますます帰還することが困難となり、人の住めない新たな生息空間になるかもしれません。アライグマやハクビシンは外来種でしょうが、元々福島には生息が確認されないほどだったと思うのですが、人が生活しなくなると、イノシシだけでなく、外来種が侵入し急速に増大することは確かでしょう。

 

個人的な駆除ではなく、行政的対応が求められると思います。わが国固有の野生生物もきっとその生息空間を脅かされていると思います。そして、ますます福島への帰還が困難になる人々への思いやりも不可欠かと思うのです。

 

話変わって本日の話題に入ります。毎日朝刊<研修医自殺労災認定 代理人弁護士「月残業209時間」 東京の病院>は、研修医の過酷な「労働」現場の実態を明らかにしています。

 

<東京都内の総合病院産婦人科に勤務していた30代の研修医の男性が2015年に自殺したのは、長時間残業で精神疾患を発症したのが原因だったとして、東京労働局品川労働基準監督署が労災認定したことが分かった。>というのです。

 

2年前の自殺ですね。それが弁護士が労災申請してようやく認定されたということでしょう。

 

<労基署の決定などによると、直前1カ月の残業は約173時間で過労死ライン(直前1カ月100時間)を大幅に超えていた。>というのですから、異常としかいいようがないですね。

 

<弁護士によると、電子カルテへのアクセス記録などを集計したところ、直前2~6カ月の残業は月約143~209時間だった。>というのですから半年の間、異常事態が常態化していたことになります。

 

実際のところ、<産婦人科の医師は約10人いたが、長時間残業と休日勤務が常態化していて、男性は直前6カ月で5日間しか休んでいなかった。月に4回程度の当直勤務のほか、連続30時間以上拘束されることもあった。病院近くの寮に住み、妊婦の急変などで休日に呼び出されることも頻繁だったという。>というのですから、それを勤務記録では残っていなかったのでしょう。だから電子カルテへのアクセス記録で解析したのでしょう。

 

<両親は弁護士を通じ、「息子は激務に懸命の思いで向かい、業務から逃げることなく医師としての責任を果たそうとした」「医師も人間であり、労働者。労働環境が整備されなければ、不幸は繰り返される」とコメントした。>というのですが、まさに医師が人間であり、病院という世界の中では実質、労働者的側面を持っているわけです。人間性、労働者性を無視した管理が問われるべきでしょう。そのような肉体・精神を酷使して、ほんとうに患者のために、人間味ある対応ができるようになるでしょうか。

 

むろん産婦人科の仕事は、とりわけいつお産がはじまるかわからない、また異常が起こるかもしれません。その意味で、陣痛促進剤や無痛分娩など患者のことを配慮しつつも、医師側の論理で選択される医療手法も普及してきたのかもしれません。しかし、それは正当な選択といえるか、検討されるべきではないかと思うのです。それにしても、研修医がその長時間拘束の犠牲になる事態は回避されるべきでしょう。

 

研修医は酷使されるものとか、自由がないのが当たり前といった考えで、こき使う昔ながらの医療体制があるとすれば、それは厳しい批判にさらされるべきだと思うのです。

 

電通は、いま労基署だけでなく、社会から厳しい指弾を受けています。医師は、働き方改革の残業規制で例外扱いとなっていますが、そのことにより今回の異常事態が無視されてよいはずがありません。

 

<病院の管理課長は取材に「何も話せない」と答えた。>ということですが、それは医師という、患者を人として対応することが求められる重要な職業の一つであるにもかかわらず、人間性を無視した取り扱いを研修医に対して行っているわけですから、人間を育てる組織として失格ではないでしょうか。

 

昨年の記事では<研修医自殺病院に是正勧告を 夫、新潟労基署に申し入れ /新潟>の中で、問題の病院は<09年度、36協定で定めた上限を超える時間外労働があったとして、同労基署から是正勧告を受けている。>にもかかわらず、<今年1月に新潟市民病院(新潟市中央区)の研修医の女性(当時37歳)が「過重労働」のため自殺した>のです。

 

そして<30代の夫が13日、新潟労働基準監督署に対し、長時間労働がまん延しているとして、同病院に是正勧告するよう申し入れた。

 申告書によると、市の情報公開制度で取得した2015年6月分の電子カルテの利用履歴から、同病院の研修医35人に月80時間を超す時間外労働があったと指摘。労使間で結んだ特別条項付きの「36協定」で定めた上限(80時間)を超えるとして、同労基署に労働基準法に基づき是正を勧告するよう求めている。>

 

私たち弁護士も、和解働き盛りの時、徹夜など過労の連続で、病気となったり、病死したりして、働き盛りに命を落とした仲間も少なくないですが、彼らはまだ自分の意欲や気力でやっていったという自負があったのではないかと思うのです。しかし、少なくとも研修医はその自由な意思でそういった過酷な労働を甘受していたかというと、それは自由な意思を一方的に擬製するものであって、病院管理者側の勝手で一方的な判断でしかないと思うのです。

 

ぜひとも将来のある、意欲的な研修医の過労死や病気による断念などを回避する方策をしっかり取り組んでもらいたいものです。そのような配慮をしていない病院管理者は厳しい責任を問われるべきではないでしょうか。


灌漑とミニ水力発電 <北海道初の農業水路で小水力発電、売電収益で農業を守る>などを読んで

2017-08-09 | 農林業のあり方

170809 灌漑とミニ水力発電 <北海道初の農業水路で小水力発電、売電収益で農業を守る>などを読んで

 

やはり台風ノルーの豪雨は当地でも相当な量だったのでしょう。今朝、花に水をやろうとしたのですが、まだ水分がたっぷりといった感じで、これ以上水をやるとげっぷ?がでるなんてことになりかねないといった、ありえない心配をしてしまいそうです。

 

庭のはるか下には田畑がありますが、その両脇に用水路?が流れています。ま、三面コンクリート張りで、排水路といっていいかもしれません。この用排水路、豪雨の時はゴーというような轟音が響いてきたように思います。ただ、灌漑用水としては深い底ですので、田んぼに給水する構造にはなっておらず、田んぼのそばにある小さな溝が用水路だと思われます。

 

ところで、大規模な圃場整備がされたところでは、灌漑用水路も容量があり整備されていて、給排水も自動的な制御装置すらあるところもあるようです(北米だと20数年以上前にはその状態でしたが)。

 

では再生可能エネルギーはどうでしょう。昨日は太陽光発電について書きましたが、今日はスマート・ジャパンから小規模水力発電施設について紹介メールが来ていたので、取り上げようかと思います。

 

再エネとしては各地でさまざまなチャレンジをしていますが、私はまだ実際のものをみたことがありません。太陽光発電やその他の再エネと比較すると、土地利用の問題はまず生じないので、農地転用とか、自然公園法とかの許可規制の問題はないですね。その意味では手軽にやれるかもしれません。

 

ところで、水量発電といかいうと、日本では大きな高低差のあるダムを想定しがちですが、水力発電の盛んなカナダでは、水量は多いですがあまり高低差のない河川で行われていて、ダムもいくつか見学したことがありますが、あまり高いのを見ませんでした。これでアメリカに売電しているのですから、水量の多さというのがエネルギーとしては重要なのでしょう。

 

さて、見出しの記事は<北海道初の農業水路で小水力発電、売電収益で農業を守る>がキャッチコピーでしょうか。

 

北海道のように河川流量も多いところで、なぜと思ったら<冬期はほとんど農業用水を使用しないため、施設の稼働期間が限定されてしまうという北海道特有の問題を、水利権の確保の工夫でクリアした。>とやはり気温と用水利用が関係するんですね。

 

<北海道旭川市および上川郡当麻町に位置する「当麻永山用水地区」に、農業用水路を活用した小水力発電所「当永発電所」が完成した。北海道開発局の旭川開発建設部が国営かんがい排水事業のもとで建設した発電所で、旭川市内と土地改良区が北海道電力に売電を行い、その収益を用水路の維持管理費に充てる計画だ。>

 

こういった古い改良区は施設の維持管理に四苦八苦していますね。<農業水利施設の多くは、建設以来30年以上を経過しているものが多く、さらに凍害などによって老化が進行。漏水や分水位の低下などで安定した用水供給が困難になることを防ぐための改修費が増大していた。>

 

それは当地の水利組合でも同じというか、もっと大変かもしれません。より小規模ですし、まさに零細錯圃の中にほんとにちいさな灌漑用水路を縦横に走らせていますが、水漏れはどこでも起こっていて、維持管理が容易でないのが実態でしょう。

 

上記でも指摘されていましたが、<北海道内には多くの農業水利施設があるものの、小水力発電の導入が進んでいない。冬期はほとんど農業用水を使用しないため、施設の稼働期間が限定されているためだ。>というのですが、冬期に農業用水を使用しているところは日本全国でも2期作でもしているところ(どこかしら)以外はどこも水は流れていないように思うのですが・・・

 

ともかく<かんがい期間の前後に新たに発電用水利権を確保することにした。通常の58月の水田かんがい期間に加え、4月及び911月の非かんがい期間の発電用水利権を取得した結果、年間を通じて十分な発電量を得られるめどが立った。1年のうち約8カ月間稼働する計画だ。>

 

慣行水利権以外は、基本的には、許可水利権でしょうから、灌漑期以外に用水を確保しようとしたら、新たに水利権を取得する必要があるというのはわかります。それはやはり法的な制約かもしれません。これが慣行水利権が主流と思われるため池灌漑だと、ただ、冬期に樋を開けて流せばいいのでしょう(冬期はまず、水抜きをして堆積土を取り除くとか、その後湛水する必要などあり、簡単とはいかないかもしれませんが)。

 

また水路に改良を加えて発電量をアップする工夫もあるようです。<「当永発電所」は石狩川に設置してある大雪頭首工から取水した後、導水幹線用水路を流下する過程で発電を行う。流水はかんがい期間は農業用水として利用し、非かんがい期間は石狩川に放流する。

 発電所の最大出力は139kWで、最大使用水量は6.25m3/s、年間発電量は708000kWh(キロワット時)を見込んでいる。FITを利用して売電することで、年間2000万円以上の収益が得られる見込みだ。

 当初の水路の落差は1.5m程度だったが、落差工の統廃合や水路敷高を上げることにより、総落差を3.5mにかさ上げし、発電量の増強を図った。損失落差を差し引いた有効落差は3.15mである。>

 

こういった小規模水力発電施設でも費用がやはり問題になりますね。その点に配慮したのが次の<「水路で発電」を低コストに、3人で設置できるマイクロ水車>です。

 

<日本の各地に広がる用水路。規模は小さいものの、その水流を活用して発電する取り組みが広がっている。NTNは農業・工業用水路に設置しやすい、プロペラ式の小水力発電機を開発した。このほど福島県須賀川市の「新安積疎水」での実証を終え、201612月から販売を開始する予定だ。>

 

< NTNが同社の小水力発電機の大きなメリットの1つとするのが、設置コストの低さだ。小水力発電機の重量は130150kg(キログラム)。移動式クレーン車1台と3人の作業者のみで、1台当たり1時間程度で設置できるという。>

 

さらにこのプロペラを改良して、より発電量を増やす工夫をしていますね。こういった試行錯誤は期待したいです。

 

落差1メートルの水路でも発電可能、設置も簡単な小水力発電機>も、小規模農家が多いわが国にあったもののように思います。これだとどこでも使えるかな。あとは費用対効果のよりアップを望めば、事業化の見通しも明るいように思うのです。

 

さて今日は紹介だけにして終わります。いつか水利権問題についても触れてみたいと思いながら、なかなか頭の整理ができません。課題が多いので、死ぬまでやることも多い?簡単に死ねない?なんて気分でこのブログも続けいます。

 

今日はこの辺でおしまいです。


農地の2層活用? <農業の新しいビジネスモデルに、ソーラーシェアリングのススメ>を読んで

2017-08-08 | 農林業のあり方

170808 農地の2層活用? <農業の新しいビジネスモデルに、ソーラーシェアリングのススメ>を読んで

 

昨日は台風5号がどうやら紀ノ川を遡ったようで、当地の頭上あたりを通過したのでしょうか。隣の五條市を含め奈良県各地、とくに深い山里が多い南部では土砂災害警報や避難勧告などがでて不安だったでしょう。当地も大雨暴風警報くらいはでていたと思いますし、それなりの激しい雨と風でしたが、さほどでもなかったように思います。仕事を早めに切り上げ明るいうちに家路に向かいました。紀ノ川護岸を通るのですが、水嵩もその時点ではたいした量でなく、堤防内のグラウンドなどの高さまでまだだいぶある感じでした。

 

家ではのんびりと窓ガラス越しに雨脚や風の様子を見て過ごしていましたが、雨戸を閉めるほどの激しさもなく、強い雨風に打たれるスギ・ヒノキ林や田畑などをゆったりとした気分で見ることができました。

 

そういえばだいたいたいていの家は雨戸を閉めるのでしょうが、昔の和風建物なら別ですが、窓サッシの構造が防水性が優れているので、何か飛んでくる心配がなければ、雨戸を閉める必要がないように思います。普通の家屋用の窓サッシは防音性はなかなか高まりませんが、防水性は結構いいと思うのです。北米ではほとんど雨戸をみた記憶がないのですね。

 

それでも雨戸をつけ、雨戸を閉めるのは、雨風と関係なく防犯のためでしょうかね。わが国の場合防犯性の見地から外塀も高くしてきましたが、最近は低くしたり、あるいはなくす分譲地が増えてきたのではと思うのです。防犯機能という面では別のハード・ソフトの方が効果的であったり、景観的にも望ましいように思うのです。どんどん余談が続くので、この辺にしておきます。

 

さて、見出しの記事タイトルは、スマート・ジャパンから今朝送信されてきたものです。

 

再生可能エネルギーの一つである太陽光発電は、最も普及していますが、農地の場合もその目的で転用されるほとんどがソーラーエネルギー施設目的ですね。

 

農水省の<農地に再エネ発電設備を設置するための農地転用許可の実績について>を見ると、風力など他の再生可能エネルギーを凌駕しています。欧米などでは農地でも風力発電用風車がどこまでも続く風景が見事な景観の一つになっているように思うこともありますね。でも日本では北海道は別にして、大規模なものは見かけないですね。

 

再エネが今ひとつ増えないのはなぜか、現行の土地利用規制に問題の一つがあるかもしれません。安倍政権は規制緩和を第一次政権時代から唱え続けていますが、どこまで進んだのでしょうか。岩盤規制に穴を開けるという議論が獣医学部を新設するなど多くは細々としたところに終わっていないのでしょうかね。

 

農地転用について、太陽光発電については急速に伸びてきいることがわかりますが、平成26年を頂点にして、27年度になると下火になった印象があります。

 

だいたい太陽光発電設備が農地の中にできると、反射熱・光や雨水排水の影響、風の遮断などあなどれない悪影響があるように思うのです。耕作放棄地に立地する場合でも、周辺に農地があると同じようなことになるおそれがありますね。

 

わが国の農地は零細錯圃が一般的です。一戸当たり数haあるとか、いったことは平均像と隔絶していると思います。合計すると1ha持っている人でも、実際に耕作している区画は1反、2反(10アール)程度、いやもっと少ない数畝(アール)くらいではないでしょうか。それだけその区画の栽培を、耕作を大事にして育てているように感じます。そういうわけで、隣接農地の利用に敏感です。田んぼが畑に変わること、畑で栽培する農作物を変えることを気にします。むろん木を植えるといったことになると、当然、光や風などを遮るので、セットバックを求めるのが普通でしょう。

 

こういう農地利用ですので、太陽光発電設備も転用許可を与えるのには慎重となるのは当然です。

 

で、本日の話題はその進化系のソーラーシェアリングです。上記の記事によると、<ソーラーシェアリングとは、太陽の恵みを太陽光発電システムによって創った電気と農作物の栽培で分け合う(シェアする)という考え方に基づき、農地で植物の生育にとって必要な太陽光の日射量を保ちながら、農業が維持される限り安全で安定した収入源として太陽光発電を運用する仕組みのことである。>とのこと。

 

農水省は、平成25年3月運用通知(通達という用語は通達行政廃止後もこの種の通知でしっかりと生き続けていますね)で、<支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて>と題して発せられ、「営農型発電設備」(業界用語ではこれをソーラーシェアリングと呼んでいるようです)を新たな転用許可指針(基準)として制度化しました。その後次第に普及して、事業化が順調に進んでいると言うことで、新たに平成28年4月、より詳細化した運用通知で改正を行っています。

 

加えて転用許可の審査を担う農業委員会などに向けて<営農型発電設備の実務用Q&A>を発表して、農水省も本格的に取り組みを始めている印象があります。

 

たしかに見出し記事の筆者は、ソーラーシェアリング業者サイドの顧問の立場で書いていますので、太陽光発電をやりながら営農もできる、まいえば2階建てで、一階では農業生産を行いながら、二階では太陽光発電をして、二重の収入源をもてると、なかなか魅力的な話となっています。

 

実際にも、<ソーラーシェアリングは、農林水産省によって設置が認められるようになった2013年から、事例が徐々に増えてきた。2015年度には年間374件が許可され、累計の導入件数は775件となっている。2016年度中には累計許可件数が1000件に達したと予測される。>とのことで、太陽光発電設備全体の趨勢と異なり、人気が上向きとのことですね。

 

筆者の意見は次のようになかなか魅力的です。<下記は参考例になるが、複数の発電設備を持つことで年間100万円ほど現金収入を増やすことができれば営農継続の弾みになると考えている。

 

全国平均年間農業所得

5.9万円/(1反=10a=1000m2

全国平均耕地面積

235a/戸(2万3500m2/戸)

太陽光発電年間売電収入

100.8万円/反

 

と指摘しています。が、この数値自体がどうかと思うのです。上2段の数値もどうかと思うのですが、太陽光発電年間売電収入が仮に100.8万円/反だとしても、上段では収支差し引きした後の所得を取り上げているのに、ここでは費用を計上していません。

 

そして問題は、農水省の営農型発電設備の転用指針(基準)では高さが2m以上となっているところを、この筆者が勧めるのは4mとなって、トラクターなど機械作業を可能にするものになっています。

 

そうなると、通常の太陽光発電設備でも相当の設備設置費用がかかるのに、指針の高さ2mでも相当費用が増大することが予想されますが、倍となるとそれだけ支柱の構造強化を図る必要があり費用もかかるでしょう。それに遮光率33%を維持しつつ、太陽光発電を効率よく行うにはその分太陽光パネルの改良などに費用がかかることが予想されます。

 

いずれにしても初期投資だけでも通常の太陽光発電設備に比べて大きな負担になることが推測できます。

 

それに周辺の農家の理解を得ることもより大変でしょう。こういった農地利用も一つの方法として検討すること自体は反対ではないですが、言うほどに効率的な、採算性のある事業といえるか、まだ疑問が少なくない状態と思うのです。

 

それにこの構造からすると、大規模化とか大面積での利用は困難であることが想定できます。実際、<農地に太陽光パネルを設置するための農地転用許可の実績について>で見る限り、その転用件数に比べてその面積はきわめて僅少です。その件数自体も全体に比べればまだまだという状況でしょうか。上記の筆者の引用実績はより最近のものがありますが、基本的な傾向は変わらないように思えます。

 

農地転用のあり方自体について、より根本的な問いかけが必要とされているように思うのですが、これはまた別の機会にしたいと思います。

 

なお、今朝の毎日に<再生可能エネルギーコスト半減 日本は異例、石炭依存続く 英機関2040年予測>という記事で、<再生可能エネルギーとして代表的な太陽光と風力の世界規模の発電コストは、2040年までにいずれもほぼ半減するとの予測を、英民間調査機関「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)がまとめた。>とのこと。風力も同様に半減ですね。日本も同様にコストダウンするのですが、石炭依存構造が災いして、<現在、原発の再稼働の遅れを石炭火力で補っている結果、依存は高止まりとなると分析。日本が掲げる温室効果ガスの削減目標達成の根拠となる電源構成では、30年時点で▽石炭火力38%(目標は26%)▽再生可能エネルギー28%(同22~24%)▽原子力10%(同20~22%)--などと予測した。>というのです。

 

石炭依存状況は困ったものですが、太陽光発電などのコストダウンに希望の光が当たりそうなので、農地での活用も、見通しが明るくなるかもしれません。

 

今日はこれでおしまいです。