《あらすじ》
ミシルは、死んだ。
ミシルの時代は終わる……。
居室から先に出てきたピダムを見て、アルチョンとユシンは不審に思う。
「ピダム!話がある。ピダムを捕まえてください」
ユシンはトンマンの命令で、馬に乗り走り去るピダムを追った。
ミシル勢力は、すべて武装解除された。
大耶城はチュンチュに任された。アルチョンが補佐をする。
トンマンは、何よりピダムと話をしなくてはならない。
ユシンがピダムを足止めし、トンマンが追いついた。
「嘘をついたな。お前を信じるために聞いたのだ。
お前とミシルはどんな関係だ。教えろ」
トンマンの手を振り切って、ピダムは行ってしまおうとする。
トンマンはピダムを追った。
「教えてくれ。お前の答えが、今後の私たちの関係の土台になるといった。
このままでは、私たちは終わりだ。答えなさい!」
トンマンはピダムの鎧に手をかけて、揺さぶる。
「母……なんです。ミシルが、私を産んだのです」
トンマンもにわかには信じられない話だった。
「私も信じられませんでした。
チンジ王とミシルの間に産まれた息子なんです。
王を廃位させ、私は必要なくなった。だから璽主は私を捨てたんです。簡単に。
そんな私をムンノ公が育ててくれた。偶然その事実を知りました。
でも璽主は最後まで、息子と認めなかった。
どんな関係か聞かれて、どう答えれば?
母親が息子だと認めないのに、私が息子だと言えるはずがありません。
政変が起きた日になぜ殺されなかったのか、私こそ知りたいです。
いっそ殺そうとしていれば、そのほうが簡単だし、私も楽だった。
こんなに苦しむことはなかったはずです……」
ピダムは泣きながら、トンマンにそう告白した。
武装解除の命令は、チルスクの元にも飛んだ。
ミシルが自害したことを聞かされたチルスクは、そのまま使者を斬り殺す。
「私は命令に従うつもりはない!」
チルスクは、ミシルの命令のうち、ただひとつ実行できていなかった命令を実行するつもりだ。
トンマン王女暗殺。
ソップムに、兵を連れて帰れと命じるチルスク。
「ここが私の死に時だ。もう逃さない。ひとりでこの乱を決行する。
チルスクの乱だ」
すべてを背負おうとするチルスクに、ソップムは言った。
「いいえ、いけません。これは、チルスクとソップムの乱です」
彼もまた、ミシルのために死ぬことを決意したのだ。
「どうして、話してくれなかった。
いや、話せないな……。捨てられたなんて……
それは本当に、つらいことだから」
トンマンも、産まれてすぐに捨てられた身。ピダムの気持ちが痛いほどわかる。
「でも私には、話してほしかった」
「でも、話したとして、王女様にも、見捨てられたら?」
涙でいっぱいの瞳をしたピダムを、トンマンは抱いてやる。
「つらかったでしょう?苦しかったろうに……」
トンマンの目にもいつしか涙が。
ピダムもそっと、トンマンの背中に手をまわすのだった。
ソップムが兵を連れて大耶城の兵たちと戦っている。
共に切磋琢磨してきた花郎同士、
アルチョンは苦悩しながらも、ソップムと刃を交える。
「なぜ命を捨てようとする!」
「お前も主のために、命を捧げているだろう!」
ソップムは、チルスクがトンマンの元へ走る時間をかせぎ、
彼を捉えようとしたアルチョンの刀で自害した。
ピダムとトンマンが丘を降りてくる。
そこへ、馬に乗ったチルスクが現れ、トンマンに襲いかかった。
なんとかしのぐピダムだが、劣勢だ。
異変に気付いたユシンが馬に乗り、弓を射ながらかけてくる。
トンマンのために、ふたりの男がチルスクに立ち向かった。
チルスクの気迫は尋常ではなく、ユシンとピダムは苦戦する。
しかし、とうとう、最後の時が来た。
敗北を悟り、自ら腹を切ったチルスク。
「……これで、終わりだ……トンマン……私……ソファ……」
そう言って、元上花は崩れ落ちた。
事後処理にあたるトンマンの元に、王危篤の知らせが届く。
急ぎ帰ったトンマンは、ミシルの最後を報告するのだが、
父王の瞳に力は戻らない。
「これからは、お前の時代だ……。
不可能な夢は、お前が実現させるのだ……」
遺言を残し、王は事切れた。
王の葬儀はしめやかにとりおこなわれた。
ミシルもまた、一族がひっそりと見送った。
残党を逆賊として処分するように進言する臣下の前で、
トンマンは宣言する。
「彼らを処刑することはしません」
ミシルの葬儀に現れたピダムに、ソルォンが打ち明ける。
「璽主を殺せという勅書は、お前に渡すつもりだったのだ。璽主は……」
「俺に渡そうと?なぜ?勅書が公開されれば、すべてが終わる。なのになぜ!」
「お前に大義を譲るため。功績を立てさせるためだ。
璽主は政変を起こす前、すでに準備していた。
失敗した場合、その後は……」
「つまり俺に、母親の夢の後始末をしろと?」
皮肉な物言いのピダム。ソルォンはピダムの胸ぐらをつかんで、言った。
「母君の志を侮辱するな。
璽主は、つまりお前の母君は、お前に大義を託して命を絶たれた。
屈辱に耐え、お前を、このお前を王にせよと言い残された。お前をな!」
「私を、王に?なぜ?」
「お前があの勅書を公開できなかった理由と同じだ」
(なぜ……今になって……なぜ……)
ミシル一派を処分しない、と決めたトンマン。
そうしようと思えば、何千、何万人を殺さなくてはならない。
恨みをかって、それを抑えるよりも、彼らを味方にする努力をしたい。
その方が、価値ある努力だと思うからだ。
この乱は、チルスクとソップムの乱として発表し、歴史の闇に葬る。
側近たちは口々に反対するが、トンマンの意志は固い。
「この中に、私よりも恨みが深いものはいるか?」
その言葉に、みなは黙り、うつむくしかない。
もっともミシルを恨んでいるのは、トンマン自身のはずなのだ。
「私とて、母や姉の分まで恨みを晴らしたい。しかしミシルはもういない。
残されたものは、新羅……新羅なのだ」
トンマンとしての恨みや憎しみを抑え、彼女は新羅の王として決断した。
ソルォンもまたその措置に、屈辱に耐え、生き延びることを選ぶ。
チュンチュもまた、自身の野望を捨ててはいない。
トンマンはこれから、王としての覇道を歩み始めるのだ。
夜半、トンマンはピダムを呼び出した。
「何でしょうか?」
ピダムは静かにトンマンと向き合った。
「あの勅書をミシルに渡したのか?
それともミシルに見せて、公開すると脅したのか?答えなさい」
ピダムは黙ってトンマンを見つめている。
「結局のところ、ミシルの心を変えさせたのはお前だったのか。
勅書があるのに、世間に公開しない息子の気持ち。
勅書を見せて母親のことを脅す息子の気持ち。
それが、ミシルの心を変えさせた」
トンマンから目をそらすピダム。
「自分を、責めているのだな。
礼を言う。
私のためなのだろう?
ありがとう」
トンマンは新設部署、司量部を作ることにした。
ミシル一派を、新設部署に置く。
司量部令は、ピダム!
戸惑うミセン、ソルォンらと、にやりと笑うヨムジョン。
ピダムに要職を任せるのは象徴的な意味がある。
ミシル派の不安を払拭するため。
そして、彼らを御せるのは、ピダムだけだ。
それに、トンマンの味方になり、ミシルを排斥した功績もある。
そして……。
最後の理由をトンマンは言わずにおいた。
司量部の仕事は、すべての部署の情報収集だ。
ハジョンは、ピダムの命令に反感を示すが、ミセンに止められる。
「ミシルの名前は、私の前では出すな。
今目の前にいるのはミシルか?
違う。私はピダムだ。
今後はミシルではなく、私、ピダムに従え。
私の意向を尊重し、私だけに従ってもらう。
分かったか?」
ミシルを彷彿とさせる言動に、渋い顔のポジョンらと、
またしても面白そうにほほえむヨムジョンだった。
「王女様はピダムに力添えをしているのだ」
チュンチュはユシンに言う。
「ユシン郎、アルチョン郎、私、それぞれの勢力を牽制するためだ」
「競い合えと?」
「本当に優れた方だ」
「しかし、ピダムを信じてもいいものでしょうか?」
「信じてはおられぬ」
チュンチュの言葉に、ハッとするユシン。
「これまではそうだったかもしれないが、今や誰のことも信じてはおられぬだろう。
王の道を、歩き始めたのだ」
ほれぼれと、トンマンについて語るチュンチュに対して、ユシンは複雑な顔だ。
「お気の毒です。
人を信じて親しくするのがお好きな方なのに。
心を開いて人を受け入れる方なのに、
もうそれができないとは」
王妃は、仏門に帰依するという。
「お前のかわりに戦ってくれる人も、苦しんでくれる人もいない。
人を信じるのも、信じないのも許されない。
孤独を恐れずに、立ち向かえるか?」
「はい、母上。できます。やり遂げます」
トンマンはひとり、この国を守り、民を守らなければならないのだ。
かつてミシルが言った言葉が、トンマンの心によみがえる。
「このミシルは、天を利用するが、これを恐れない。
世の非情を知るが、これに頭を下げない。
人々を治めるが、これに頼らない」
本当に、人を信じても頼ってもいけないのか?
ひとりで進む道に入ったのか……これからは……。
とうとう、トンマンの即位式が執り行われた。
金の王冠をいただき、トンマンは玉座につく。
「陛下、惜しみなく、私のすべてを捧げます」
「陛下、容赦なく、すべてを奪い取ります」
ふたりの男が、それぞれ心に誓う言葉。
(つづく)
正直……ミシルが死んじゃって、この後どうしようかなーと、
モチベーションが低下していたわたくしですが……。
こ、この展開は!
ミシルとピダム、ということであれば、やっぱりミシルが敵だった方が面白い。
トンマンだって自由に動けたし、絵的に面白いし、
なにより生き生きとしたトンマンが見られるのが楽しかったから。
本格的に覇道を歩み始めたトンマンは、苦しそうで見てらんないよ……。
でも観るけどね!
しょうがないっしょ、ラストのセリフ聞いちゃったら。
「陛下、惜しみなく、私のすべてを捧げます」
「陛下、容赦なく、すべてを奪い取ります」
ピダム……中庭ぐるぐるして出した結論がこれか!
お前の愛っていったいどういうものなんだ?
トンマンからすべてを奪ったら、あの子には何が残るんだ?
トンマンからすべてを奪うことが、トンマンを手に入れることなのか?
それがお前の愛だっていうのかーーーーーーー!
うえーん、わからん。
ピダムのこと好きだけどさ……。
トンマンが、ピダムを信じようと思って必死で問いただした質問に嘘で答えたピダム。
わたしは心配してたんだけど、その理由は案外ピュアだった。
俺はあの人のこと、オンマだって思ってるけど、
あの人が俺を息子だって認めてないんだもん、そんなこと言えないだろ!
俺だけがそう思ってるなんて、恥ずかしいだろ!そんなの変だし!
それが理由ですか……。
しゃくりあげるピダム……可愛すぎる。
てか、子どもすぎる……。
トンマンがピダムを抱きしめたのは、もろにお母さん目線に見えました。
よしよし、つらかったね、苦しかったね、とんとん、と背中をたたいてやるお母さん。
トンマン、あんたこそつらいでしょーよ。
自分は誰にも頼れないのにね。
ユシンを手放したくないって泣いてた時、自分の民を斬り殺した時、
ピダムは慰めてくれましたけど、
あなた、本当に心を許してた?ピダムを感じながらも、殻の内側にいたでしょ?
いつもトンマンは、ひとりだったじゃない。
自分が何者か知らなかった頃、自由な心でいられた頃、
その時期だけだよね、トンマンが本当の意味で仲間と一緒にいられたのは……。
だから、ユシンとトンマンの絆は特別なんだよね。
そんな風に背中とんとんしてもらったくせに!
ピダムは、ソルォンの話でぐーらぐーらしちゃうんですねー。
ミシルが、ピダムに大義を託した。
ピダムが勅書を隠したのと同じ理由で、ミシルはピダムに大義を託した。
俺は息子だって認めてもらってたんだ!って思った?ピダム?
で、中庭でぐるぐるして死ぬ前の母の言葉を思い出して、
愛は容赦なく奪うものだから、トンマンを愛するならそうなさいって言われたので、
そうすることにします、ってことなのか!
本当にそれでいいのか!ピダム!
知らないぞ、ムンノが聞いたらなんていうか。
トンマンは、自分のことを思って、勅書を使ってミシルを脅したのだな、と
お礼を言ってましたが、本当にそうなのかな?
「合従に応じなければ、勅書を公開します」と言って、ピダムはミシルを脅した。
もちろん、トンマンのためでもあったと思うけど、
あの時はなんか、お母さんのことしか考えてなかったんじゃないかって気がする。
もうあきらめてくれって、むざむざ死ぬようなことはしないでくれって、
脅したんじゃなくて、頼んでいたんじゃないのかな……。
なんだかトンマンの「コマプタ」にピダムが無反応すぎて、そんなことを感じました。
最後にちょっと笑ったところも、なにか罪悪感を抱えているように見えましたね。
「王になれ」というミシルの遺言について考えていたからかな。
ミシルがすごいのは、当の息子には、一切そういうこと言わなかったこと。
後から知ってびっくりのピダム。ショックだよねー。
ソルォンの説明によれば、ミシルは政変を起こす時点で、失敗したときのことを
考えていたということでしょ?
それなのに、ピダムにはなんにも言わない。
ただ、容赦なくすべてを奪うのが愛だって、教えちゃったけど……。
アルチョン郎には、豪族のバックが、
ユシン郎には伽耶民のバックが、
チュンチュには、王家の嫡男としての後ろ盾があり、
それぞれにそれぞれの理由で、トンマンを追い落とそうとしても不思議ではない。
やっぱ王様は男がいいよねーとかいう民の声もありそうだし。
で、そいつらを牽制するために、ピダムを要職につけた、と。
力のある側近らを競わせ、牽制させるため、
ミシル一派を束ねる要職につけて、ピダムには女王の後ろ盾があると示してやった、と
チュンチュは考えているのですが……。
そーなのー?
わたしはね、ふと、トンマンは本当にはピダムを信用していないから、
彼を見張るために、あの要職につけたのかな、と思いました。
忠誠をはかるにはぴったりの職だから、そうしたのかな?と。
一番裏切りそうな男は、一番側に追いとくに限るのかな、と思ったのね。
どうなんだろ?そういう側面もあるのではないかしら?
「ありがとう」とお礼を言った時のピダムの様子が上の空だったことぐらいは、
トンマンだって気付いていたでしょう?
ぼんやりとトンマンを見つめている……ような気がする。
もう、ユシンがひとり、トンマンの心配をしてあげててつらい。
やっぱりトンマンのこと、一番理解してくれているのはユシン郎なんじゃないかなー。
無骨なくせに、わりと繊細なところもあるユシン郎が好きだよ。
チルスクアジョッシは、散り際を見つけたね。
彼はムンノと違って、すごい怪力ってーか、パワーもある剣士なんだわよね。
だからこの人の闘いのシーンってめちゃくちゃ怖いんだよね。
ぐうわぁぁぁぁー!ってうなりながら突進してくるし。
最後は、これでソファのもとへ行ける、と思って死んでいったのかな……。
革鎧の隙間を切り裂かれて死んだ。こわい。痛そう。
ソップムも、見せ場を作ってもらってよかったね。
正直、花郎にあるまじき顔の面白さだと思ってたけど、すまんかった。
人間、顔じゃない。かもしんない。
やな奴だったけど、彼なりに筋を通した結末だったと思う。
とうとう司量部令になっちゃったピダム。
気合いが入ってるわ~。
ソルォンの言うとおり、王になってやろうと決めたんだね。
ミシルの遺言を、聞き届けてやろうと。
だが羽根扇子はよせ!
衣装かっこいいのに~。
ミセン兄さんみたいじゃんか。
ますますもってろくでもねぇ。
ヨムジョンのニヤニヤ笑いも気になるし、
ここからはピダム暗躍のターンになるのかな?
ふふふ、黒ピダム久々だし大好きだもん、いいけどね。
ただ、黒の羽根扇はよせ!
【追記】
ミシルの位牌の戒名?がななめってるのが気になるんです。
なぜ……ちょっとゆがんだままオッケー出したのか、小道具さんよ……。
ミシルは、死んだ。
ミシルの時代は終わる……。
居室から先に出てきたピダムを見て、アルチョンとユシンは不審に思う。
「ピダム!話がある。ピダムを捕まえてください」
ユシンはトンマンの命令で、馬に乗り走り去るピダムを追った。
ミシル勢力は、すべて武装解除された。
大耶城はチュンチュに任された。アルチョンが補佐をする。
トンマンは、何よりピダムと話をしなくてはならない。
ユシンがピダムを足止めし、トンマンが追いついた。
「嘘をついたな。お前を信じるために聞いたのだ。
お前とミシルはどんな関係だ。教えろ」
トンマンの手を振り切って、ピダムは行ってしまおうとする。
トンマンはピダムを追った。
「教えてくれ。お前の答えが、今後の私たちの関係の土台になるといった。
このままでは、私たちは終わりだ。答えなさい!」
トンマンはピダムの鎧に手をかけて、揺さぶる。
「母……なんです。ミシルが、私を産んだのです」
トンマンもにわかには信じられない話だった。
「私も信じられませんでした。
チンジ王とミシルの間に産まれた息子なんです。
王を廃位させ、私は必要なくなった。だから璽主は私を捨てたんです。簡単に。
そんな私をムンノ公が育ててくれた。偶然その事実を知りました。
でも璽主は最後まで、息子と認めなかった。
どんな関係か聞かれて、どう答えれば?
母親が息子だと認めないのに、私が息子だと言えるはずがありません。
政変が起きた日になぜ殺されなかったのか、私こそ知りたいです。
いっそ殺そうとしていれば、そのほうが簡単だし、私も楽だった。
こんなに苦しむことはなかったはずです……」
ピダムは泣きながら、トンマンにそう告白した。
武装解除の命令は、チルスクの元にも飛んだ。
ミシルが自害したことを聞かされたチルスクは、そのまま使者を斬り殺す。
「私は命令に従うつもりはない!」
チルスクは、ミシルの命令のうち、ただひとつ実行できていなかった命令を実行するつもりだ。
トンマン王女暗殺。
ソップムに、兵を連れて帰れと命じるチルスク。
「ここが私の死に時だ。もう逃さない。ひとりでこの乱を決行する。
チルスクの乱だ」
すべてを背負おうとするチルスクに、ソップムは言った。
「いいえ、いけません。これは、チルスクとソップムの乱です」
彼もまた、ミシルのために死ぬことを決意したのだ。
「どうして、話してくれなかった。
いや、話せないな……。捨てられたなんて……
それは本当に、つらいことだから」
トンマンも、産まれてすぐに捨てられた身。ピダムの気持ちが痛いほどわかる。
「でも私には、話してほしかった」
「でも、話したとして、王女様にも、見捨てられたら?」
涙でいっぱいの瞳をしたピダムを、トンマンは抱いてやる。
「つらかったでしょう?苦しかったろうに……」
トンマンの目にもいつしか涙が。
ピダムもそっと、トンマンの背中に手をまわすのだった。
ソップムが兵を連れて大耶城の兵たちと戦っている。
共に切磋琢磨してきた花郎同士、
アルチョンは苦悩しながらも、ソップムと刃を交える。
「なぜ命を捨てようとする!」
「お前も主のために、命を捧げているだろう!」
ソップムは、チルスクがトンマンの元へ走る時間をかせぎ、
彼を捉えようとしたアルチョンの刀で自害した。
ピダムとトンマンが丘を降りてくる。
そこへ、馬に乗ったチルスクが現れ、トンマンに襲いかかった。
なんとかしのぐピダムだが、劣勢だ。
異変に気付いたユシンが馬に乗り、弓を射ながらかけてくる。
トンマンのために、ふたりの男がチルスクに立ち向かった。
チルスクの気迫は尋常ではなく、ユシンとピダムは苦戦する。
しかし、とうとう、最後の時が来た。
敗北を悟り、自ら腹を切ったチルスク。
「……これで、終わりだ……トンマン……私……ソファ……」
そう言って、元上花は崩れ落ちた。
事後処理にあたるトンマンの元に、王危篤の知らせが届く。
急ぎ帰ったトンマンは、ミシルの最後を報告するのだが、
父王の瞳に力は戻らない。
「これからは、お前の時代だ……。
不可能な夢は、お前が実現させるのだ……」
遺言を残し、王は事切れた。
王の葬儀はしめやかにとりおこなわれた。
ミシルもまた、一族がひっそりと見送った。
残党を逆賊として処分するように進言する臣下の前で、
トンマンは宣言する。
「彼らを処刑することはしません」
ミシルの葬儀に現れたピダムに、ソルォンが打ち明ける。
「璽主を殺せという勅書は、お前に渡すつもりだったのだ。璽主は……」
「俺に渡そうと?なぜ?勅書が公開されれば、すべてが終わる。なのになぜ!」
「お前に大義を譲るため。功績を立てさせるためだ。
璽主は政変を起こす前、すでに準備していた。
失敗した場合、その後は……」
「つまり俺に、母親の夢の後始末をしろと?」
皮肉な物言いのピダム。ソルォンはピダムの胸ぐらをつかんで、言った。
「母君の志を侮辱するな。
璽主は、つまりお前の母君は、お前に大義を託して命を絶たれた。
屈辱に耐え、お前を、このお前を王にせよと言い残された。お前をな!」
「私を、王に?なぜ?」
「お前があの勅書を公開できなかった理由と同じだ」
(なぜ……今になって……なぜ……)
ミシル一派を処分しない、と決めたトンマン。
そうしようと思えば、何千、何万人を殺さなくてはならない。
恨みをかって、それを抑えるよりも、彼らを味方にする努力をしたい。
その方が、価値ある努力だと思うからだ。
この乱は、チルスクとソップムの乱として発表し、歴史の闇に葬る。
側近たちは口々に反対するが、トンマンの意志は固い。
「この中に、私よりも恨みが深いものはいるか?」
その言葉に、みなは黙り、うつむくしかない。
もっともミシルを恨んでいるのは、トンマン自身のはずなのだ。
「私とて、母や姉の分まで恨みを晴らしたい。しかしミシルはもういない。
残されたものは、新羅……新羅なのだ」
トンマンとしての恨みや憎しみを抑え、彼女は新羅の王として決断した。
ソルォンもまたその措置に、屈辱に耐え、生き延びることを選ぶ。
チュンチュもまた、自身の野望を捨ててはいない。
トンマンはこれから、王としての覇道を歩み始めるのだ。
夜半、トンマンはピダムを呼び出した。
「何でしょうか?」
ピダムは静かにトンマンと向き合った。
「あの勅書をミシルに渡したのか?
それともミシルに見せて、公開すると脅したのか?答えなさい」
ピダムは黙ってトンマンを見つめている。
「結局のところ、ミシルの心を変えさせたのはお前だったのか。
勅書があるのに、世間に公開しない息子の気持ち。
勅書を見せて母親のことを脅す息子の気持ち。
それが、ミシルの心を変えさせた」
トンマンから目をそらすピダム。
「自分を、責めているのだな。
礼を言う。
私のためなのだろう?
ありがとう」
トンマンは新設部署、司量部を作ることにした。
ミシル一派を、新設部署に置く。
司量部令は、ピダム!
戸惑うミセン、ソルォンらと、にやりと笑うヨムジョン。
ピダムに要職を任せるのは象徴的な意味がある。
ミシル派の不安を払拭するため。
そして、彼らを御せるのは、ピダムだけだ。
それに、トンマンの味方になり、ミシルを排斥した功績もある。
そして……。
最後の理由をトンマンは言わずにおいた。
司量部の仕事は、すべての部署の情報収集だ。
ハジョンは、ピダムの命令に反感を示すが、ミセンに止められる。
「ミシルの名前は、私の前では出すな。
今目の前にいるのはミシルか?
違う。私はピダムだ。
今後はミシルではなく、私、ピダムに従え。
私の意向を尊重し、私だけに従ってもらう。
分かったか?」
ミシルを彷彿とさせる言動に、渋い顔のポジョンらと、
またしても面白そうにほほえむヨムジョンだった。
「王女様はピダムに力添えをしているのだ」
チュンチュはユシンに言う。
「ユシン郎、アルチョン郎、私、それぞれの勢力を牽制するためだ」
「競い合えと?」
「本当に優れた方だ」
「しかし、ピダムを信じてもいいものでしょうか?」
「信じてはおられぬ」
チュンチュの言葉に、ハッとするユシン。
「これまではそうだったかもしれないが、今や誰のことも信じてはおられぬだろう。
王の道を、歩き始めたのだ」
ほれぼれと、トンマンについて語るチュンチュに対して、ユシンは複雑な顔だ。
「お気の毒です。
人を信じて親しくするのがお好きな方なのに。
心を開いて人を受け入れる方なのに、
もうそれができないとは」
王妃は、仏門に帰依するという。
「お前のかわりに戦ってくれる人も、苦しんでくれる人もいない。
人を信じるのも、信じないのも許されない。
孤独を恐れずに、立ち向かえるか?」
「はい、母上。できます。やり遂げます」
トンマンはひとり、この国を守り、民を守らなければならないのだ。
かつてミシルが言った言葉が、トンマンの心によみがえる。
「このミシルは、天を利用するが、これを恐れない。
世の非情を知るが、これに頭を下げない。
人々を治めるが、これに頼らない」
本当に、人を信じても頼ってもいけないのか?
ひとりで進む道に入ったのか……これからは……。
とうとう、トンマンの即位式が執り行われた。
金の王冠をいただき、トンマンは玉座につく。
「陛下、惜しみなく、私のすべてを捧げます」
「陛下、容赦なく、すべてを奪い取ります」
ふたりの男が、それぞれ心に誓う言葉。
(つづく)
正直……ミシルが死んじゃって、この後どうしようかなーと、
モチベーションが低下していたわたくしですが……。
こ、この展開は!
ミシルとピダム、ということであれば、やっぱりミシルが敵だった方が面白い。
トンマンだって自由に動けたし、絵的に面白いし、
なにより生き生きとしたトンマンが見られるのが楽しかったから。
本格的に覇道を歩み始めたトンマンは、苦しそうで見てらんないよ……。
でも観るけどね!
しょうがないっしょ、ラストのセリフ聞いちゃったら。
「陛下、惜しみなく、私のすべてを捧げます」
「陛下、容赦なく、すべてを奪い取ります」
ピダム……中庭ぐるぐるして出した結論がこれか!
お前の愛っていったいどういうものなんだ?
トンマンからすべてを奪ったら、あの子には何が残るんだ?
トンマンからすべてを奪うことが、トンマンを手に入れることなのか?
それがお前の愛だっていうのかーーーーーーー!
うえーん、わからん。
ピダムのこと好きだけどさ……。
トンマンが、ピダムを信じようと思って必死で問いただした質問に嘘で答えたピダム。
わたしは心配してたんだけど、その理由は案外ピュアだった。
俺はあの人のこと、オンマだって思ってるけど、
あの人が俺を息子だって認めてないんだもん、そんなこと言えないだろ!
俺だけがそう思ってるなんて、恥ずかしいだろ!そんなの変だし!
それが理由ですか……。
しゃくりあげるピダム……可愛すぎる。
てか、子どもすぎる……。
トンマンがピダムを抱きしめたのは、もろにお母さん目線に見えました。
よしよし、つらかったね、苦しかったね、とんとん、と背中をたたいてやるお母さん。
トンマン、あんたこそつらいでしょーよ。
自分は誰にも頼れないのにね。
ユシンを手放したくないって泣いてた時、自分の民を斬り殺した時、
ピダムは慰めてくれましたけど、
あなた、本当に心を許してた?ピダムを感じながらも、殻の内側にいたでしょ?
いつもトンマンは、ひとりだったじゃない。
自分が何者か知らなかった頃、自由な心でいられた頃、
その時期だけだよね、トンマンが本当の意味で仲間と一緒にいられたのは……。
だから、ユシンとトンマンの絆は特別なんだよね。
そんな風に背中とんとんしてもらったくせに!
ピダムは、ソルォンの話でぐーらぐーらしちゃうんですねー。
ミシルが、ピダムに大義を託した。
ピダムが勅書を隠したのと同じ理由で、ミシルはピダムに大義を託した。
俺は息子だって認めてもらってたんだ!って思った?ピダム?
で、中庭でぐるぐるして死ぬ前の母の言葉を思い出して、
愛は容赦なく奪うものだから、トンマンを愛するならそうなさいって言われたので、
そうすることにします、ってことなのか!
本当にそれでいいのか!ピダム!
知らないぞ、ムンノが聞いたらなんていうか。
トンマンは、自分のことを思って、勅書を使ってミシルを脅したのだな、と
お礼を言ってましたが、本当にそうなのかな?
「合従に応じなければ、勅書を公開します」と言って、ピダムはミシルを脅した。
もちろん、トンマンのためでもあったと思うけど、
あの時はなんか、お母さんのことしか考えてなかったんじゃないかって気がする。
もうあきらめてくれって、むざむざ死ぬようなことはしないでくれって、
脅したんじゃなくて、頼んでいたんじゃないのかな……。
なんだかトンマンの「コマプタ」にピダムが無反応すぎて、そんなことを感じました。
最後にちょっと笑ったところも、なにか罪悪感を抱えているように見えましたね。
「王になれ」というミシルの遺言について考えていたからかな。
ミシルがすごいのは、当の息子には、一切そういうこと言わなかったこと。
後から知ってびっくりのピダム。ショックだよねー。
ソルォンの説明によれば、ミシルは政変を起こす時点で、失敗したときのことを
考えていたということでしょ?
それなのに、ピダムにはなんにも言わない。
ただ、容赦なくすべてを奪うのが愛だって、教えちゃったけど……。
アルチョン郎には、豪族のバックが、
ユシン郎には伽耶民のバックが、
チュンチュには、王家の嫡男としての後ろ盾があり、
それぞれにそれぞれの理由で、トンマンを追い落とそうとしても不思議ではない。
やっぱ王様は男がいいよねーとかいう民の声もありそうだし。
で、そいつらを牽制するために、ピダムを要職につけた、と。
力のある側近らを競わせ、牽制させるため、
ミシル一派を束ねる要職につけて、ピダムには女王の後ろ盾があると示してやった、と
チュンチュは考えているのですが……。
そーなのー?
わたしはね、ふと、トンマンは本当にはピダムを信用していないから、
彼を見張るために、あの要職につけたのかな、と思いました。
忠誠をはかるにはぴったりの職だから、そうしたのかな?と。
一番裏切りそうな男は、一番側に追いとくに限るのかな、と思ったのね。
どうなんだろ?そういう側面もあるのではないかしら?
「ありがとう」とお礼を言った時のピダムの様子が上の空だったことぐらいは、
トンマンだって気付いていたでしょう?
ぼんやりとトンマンを見つめている……ような気がする。
もう、ユシンがひとり、トンマンの心配をしてあげててつらい。
やっぱりトンマンのこと、一番理解してくれているのはユシン郎なんじゃないかなー。
無骨なくせに、わりと繊細なところもあるユシン郎が好きだよ。
チルスクアジョッシは、散り際を見つけたね。
彼はムンノと違って、すごい怪力ってーか、パワーもある剣士なんだわよね。
だからこの人の闘いのシーンってめちゃくちゃ怖いんだよね。
ぐうわぁぁぁぁー!ってうなりながら突進してくるし。
最後は、これでソファのもとへ行ける、と思って死んでいったのかな……。
革鎧の隙間を切り裂かれて死んだ。こわい。痛そう。
ソップムも、見せ場を作ってもらってよかったね。
正直、花郎にあるまじき顔の面白さだと思ってたけど、すまんかった。
人間、顔じゃない。かもしんない。
やな奴だったけど、彼なりに筋を通した結末だったと思う。
とうとう司量部令になっちゃったピダム。
気合いが入ってるわ~。
ソルォンの言うとおり、王になってやろうと決めたんだね。
ミシルの遺言を、聞き届けてやろうと。
だが羽根扇子はよせ!
衣装かっこいいのに~。
ミセン兄さんみたいじゃんか。
ますますもってろくでもねぇ。
ヨムジョンのニヤニヤ笑いも気になるし、
ここからはピダム暗躍のターンになるのかな?
ふふふ、黒ピダム久々だし大好きだもん、いいけどね。
ただ、黒の羽根扇はよせ!
【追記】
ミシルの位牌の戒名?がななめってるのが気になるんです。
なぜ……ちょっとゆがんだままオッケー出したのか、小道具さんよ……。
ミシル死す!?
ここまで怒涛の展開!と思って見てたけど、
まさか、ここでミシルが…
この先どうなっちゃうのー!
ここから物語は天敵不在のまま走り出すんですよ……。
尾人的には、これまでとはだいぶんドラマの印象が変わると思います。
ギアチェンジできなくて、ついてけない、いまひとつ、と
感じる方も多かったようです。
どうなるかはお楽しみですよ~。
すごい驚いているしーまさんのコメントを見て、
わたしが嬉しくなってしまいました。
最後まで楽しめるといいですね!