シム・ジョンスの腹心で、汚れ仕事をいっぱいこなしている部下マクスですが、
彼は善徳女王に出てきていましたね~。
ユシン率いる青龍翼徒の一員でした。トンマンのよい仲間だったよね。
ここでもがんばってます!
《あらすじ》
女官たちが密命を負ったのだと気付いたギジュン。
彼女たちは、密かに準備を進めていた。
モギャは、巫女の格好で呪文を唱え、
迷信深い民たちに、文字を覚えさせようとしている。
ソイは、歌にのせて音を歌わせて浸透させてから、
子どもたちに書き方と読み方を教えるつもりだ。
チェユンにも、ある考えがあるのだが、
「それって脅迫よ」とソイに却下されてしまった。
「脅迫っていうか、人の心を操るだけだ」
「それを脅迫っていうのよ」
ソイは可笑しそうだ。
「だって一刻もはやく、民に広めたいわけだろ?それが任務だ」
「兄さん、すごくあせっているみたいね。王様との約束のせい?」
「ち……がうといいたいところだが、もう否定しないよ」
チェユンの言葉に、ソイははにかんだ。
チェユンは、王に言われたのだ。
「この文字を世に出すためには、お前の許可がいる。
チョン・ギジュンはこの文字を命がけで阻止すると言った。
文字を出すには、ふたつの策が必要だ。公布と流布」
「公布と、流布、ですか?」
「国による公布は無理でも、民の間にタネをまいておくのだ。
しかし、正音庁で印刷し、科挙の科目にせねば、タネはひからびる。
公布が必要なのはこのためだ。どちらも失敗できない」
「そうですね、しかし、私の許可が必要だとは?」
「流布をソイに頼みたい。危険な仕事だ。お前が守ってくれ」
流布が終われば、ソイと共に発ってもいい、と王は約束してくれた。
同時に、ソイも、ふたりに約束してほしいと頼んだ。
「私が任務遂行中に死ぬようなことがあっても、
王様も、兄さんも、私を探さないでください。時間を無駄にしないで欲しいのです」
「それは余も同じだ。余が死んでも、お前たちは任務を遂行するのだ」
ソイは、きっぱりと言った。
「誰が死んでも、前に進まねばなりません」
三人は微笑んで、その決意を新たにしたのだった。
王は、マルセンとチョン・インジを呼んだ。
「密本の書とは、どんなものだと思う?」
「おそらく、密本結成時の連判状かと」
文字を公布するために必要な手続きは、訓民正音を編纂するための省庁を作り、
科挙試験に組み入れることと、右議政、左議政、領議政の承認だ。
議政たちは、個人の意見で動くことはない。
宮廷での説得工作を地道に続けていくのが有効だろう。
問題は密本だが、おそらく彼らも一枚岩ではないと思われる。
おそらく文字の正体を知らされてはいまい。
そして大君の死……。
すべての密本員が賛成したとは思えない。
文字の公布を阻止するためだけに、大君を殺したのだから。
おそらく、密本は分裂しているはずだ。
それを前提に、策を練ろう。
シム・ジョンスも、王の密命を知った。
女官たちに重大な任務を負わせるとは……。
広平大君の死は、王に動揺させるには至らなかったのか。
これは本元の失策だ。
イ・シンジョクも、密本の元老らと会合を開いた。
本元の行動は、果たして正しいだろうか?
王は、イ・バンウォンを超える暴君となりはててしまうのでは?
ギジュンの耳にも、彼らの造反は届いている。
しかし、彼の信念は変わらない。
文字については、誰にも知らせない。
そしてこの文字の公布を阻止することが、今は密本の最優先事項である。
シム・ジョンスは、イ・シンジョクに会って決意を新たにした。
今大切なのは、本元チョン・ギジュンではなく、密本そのものだ。
宰相総裁制と、士大夫だ。
しかし、密本にはチョン・ギジュンが育てた熱い志を持った若い儒生たちがおり、
彼を支持している。
ジョンスたちには、誰が味方で、誰がそうでないかすら、わからないのだ。
「わたしたちに必要なものは、密本の名簿と、新しい本元です!」
ジョンスは大胆にもそう言い切った。
「よい方法があるのか?……」
本元は、女官たちを探している。解例を手に入れるためだ。
こちらが先に解例を入手して、本元に取引を持ちかけ、こちらの望むものを手に入れる。
シンジョクは、新本元になる気はない。
宰相となり、権力を握っていたいだけだ。
ジョンスは軽蔑の色を隠さないが、シンジョクは意に介さない。
こういう人間の方が、結局は側において便利なものだ。
だからこそ、王も自分を側に置いておくのだと。
王は、宮殿中のものを近くに待機させ、集賢殿に学士ら、大臣らを呼び集めた。
そして、謝罪と宣言、提案を行うという。
まずは、謝罪。
王は死んだ三人の学士と息子広平大君、サンムン、ペンニョン、チョン・インジが
天地契員だと認めた。
密かに文字創製をすすめていたことを過ちと認め、謝罪した。
王は深く頭を下げ、居並んだ面々は戸惑いながらも、謝罪を受け入れた。
そして宣言。
大君を殺したのは密本ではない。
自らの過ちで招いた結果ゆえ、密本へのいかなる処分も行わない。
彼らを異なる政治観を持つ朋党として認め、討論したい。
よって、密本員は朝廷広場に名乗り出よ。
マルセンは、必死に反論する。
「なりません!密本は犯罪を犯した者どもです!大逆罪です!」
しかし、王は動じない。
チョン・ギジュンとユン・ピョンは、殺人罪として処分する。
投書により、幾人かの密本員の名を知っている、と王は述べた。
そして提案。
なんとしても、文字は公布する。
大臣らが許せば、7日後に光化門の前で。
もし、密本が朋党を組んで反対するなら、公布前に名乗り出よ。
名乗り出ず邪魔をしたり、後に密本だと知られた場合は、
その後に起きたことは、すべて自らの責任になると知れ。
驚きの宣言に、朝廷は大揺れに揺れた。
王は、右議政イ・シンジョクを呼んで、領議政になってくれるよう、打診した。
突然の要請に、悪い気はしないシンジョク。
それを知ったジュンスは眉をひそめた。
マルセンは、チョ・マルリに単刀直入に尋ねる。
「そなたは密本か?」
マルリは当然否定するし、マルセンも本当に疑っているわけではない。
「ではシム・ジョンスは?」
マルリの性格上、彼も単刀直入にジョンスに尋ねるだろう。
「お前は密本か?」
問われたジョンスは密かに動揺するが、平静を装った。
「なぜそんなことを?」
「マルセン殿もそうだが、右議政もお前を疑っているとか。
もしそうなら、王様の提案に従え。集賢殿の名を汚すことはゆるさんぞ」
ジョンスは少しばかり、動揺した。
右議政が本当は何を考えているのか、わかったものではない……。
ジョンスはイ・シンジョクにすべてを話したフリをして、
独自の道を歩むことを決意していた。
イ・シンジョクもまた、ジョンスの裏切りを察知し、太平館に助力を求めることにした。
とにかく解例を手にいれなければ……。
巫女作戦、歌作戦は、それぞれ順調に進んでいた。
チョタクとチェユンは、紙屋で落ち合い、状況を報告しあうことになっている。
チェユンはソイに道中の食べ物を持たせてもらい、ニコニコと村を後にした。
ところが、紙屋には、ユン・ピョンが聞き込みに訪れていた。
女官の足取りを探っていたギジュンが、一帯の紙屋に聞き込みをかけるよう、
指示していたのである。
解例を印刷するには、とにかく紙が必要になるわけだから。
ギジュンは、ユン・ピョンからの報告を受け、はたと気付いた。
大量に注文されたお札の紙……。
そうか、イ・ドは、民自身に文字を広めさせるつもりなのだ!
シム・ジョンスも、部下から情報を得て、ユン・ピョンらのゆく紙屋に向かった。
ジョンスの後を、トダム行首の腹心マクスがつけてゆく。
彼はまかれてしまったが、太平館の刺客キョン・ジョクヒは、
惑わされることなく、ジョンスをつけていった。
紙屋に着いたチョタクは、物陰に潜むユン・ピョンに気付き、
チェユンを待たず、暗号を残して女官たちのもとへ帰った。
通りすがりの荷車に隠れて帰ったつもりのチョタクだったが、
その荷車の御者は、ジョンスの腹心マクスの変装であった。
女官たちはさらわれ、ユン・ピョンが荷車に乗せて運んでゆく。
その荷車を襲ったのは、シム・ジョンス。
「本元を裏切るのですか?」
襲われたユン・ピョンは、とっさに女官を人質に取った。
「女官などいらぬ。殺すなら殺せ」
ジョンスの言葉に、ユン・ピョンは女たちの縄を切って、「逃げろ」と告げた。
マクスがふたりの後を追う。
ユン・ピョンはジョンスと剣を交えた。
ジョンスの部下は、二手に分かれ逃げた女官を追い、クンジを捕まえた。
と、そこへ現れたのは太平館のジョクヒ。
ジョクヒはクンジを確保すると、上司に報告するよう、ジョンスの部下を放逐した。
部下はジョンスに報告し、シンジョクが太平館とつながったことが明らかになった。
ジョンスはかねてより因縁のあったジョクヒを見つけようと考えているようだ。
必死に逃げたモギャも、ユン・ピョンに捕まってしまった。
「もうひと組の女官たちと、逃げたひとりを捕まえよう。
お前たちは本元に状況を報告せよ」
ジョクヒに捕まったクンジは、魅魂剤をかがされ、すべてを話してしまう。
「解例はどこにある?」
「な……い……」
解例など、最初から存在しないのだ。
「ソイはどこだ?」
「チャンアム村にいる……」
ジョクヒはクンジの始末を部下に命じると、すぐさま、チャンアム村へ向かった。
チェユンは、チョタクとパクポと合流し、女官たちを探していた。
しかし、処分されかかったクンジを見つけたのはシム・ジョンス。
魅魂剤をかがされたとわかったジョンスは、
「解例はどこだ?」と問いかける。
「解例は……チャンアム村にある……」
ジョンスもまた、村へ向かった。
その後を、ユン・ピョンが尾行してゆく。
クンジが小屋から運び出されようとした瞬間、チェユンたちが駆けつけた。
意識を取り戻したクンジは、明の女とジョンスが村へ向かったこと訴える。
「解例を奪いに、村へむかったんだわ……。解例を、解例を守って!」
「何をいってるんだ?わかるように話せ!
ソイかトックムさんが持っているのか?そんなものなかったぞ。
なのに奴らが解例を奪いに?どういうことなんだ?」
「ソイが……解例よ……。解例は、人だったのよ……」
シム・ジョンスは夜の山を走り、ユン・ピョンも後に続く。
ソイが危ない。
(つづく)
ややこしや~ややこしや~。
王様の思惑通り、密本が分裂しちゃってもうたいへん。
今まで味方だった人たちが入り乱れて、解例争奪戦を繰り広げております。
そもそも、大君を殺したことがやっぱり大きいね。
そのへんの学士を殺すのとはわけが違うぞ!と、元老なんかは恐れおののいているのです。
すっごい、罪だからね。
これはもう、法律上すっごい罪だよ、というのもそうだけど、
やはり腐っても儒学者。
染みついた思想が、恐れ多くも世子を殺害するなど……みたいな恐怖をぬぐい去れないのだと思う。
そこへきて、そもそも本元が文字公布阻止に必死になる意味がわかってない。
で、王様からも揺さぶりをかけられちゃって組織は揺らいじゃうワケよ。
だいたいさぁ、秘密結社だもんだから、
誰が同じ密本なのかわかってないんだよね~。
相談しようにも相談できる相手がそもそもいない、って場合もあるわけで、
そもそも個々に分断されているコミュニティは弱いですよ。
シンジョクは、もともと大義とか興味ないんで、
現世利益が手に入れば、それでいい人。
本元になる気はないけれど、宰相総裁制で権力を握りたい。
シム・ジョンスは三峯先生の大義に命懸けてるからね~。
シンジョクなんかと組むのはイヤなんだよね。
そこへ、シンジョクが自分を売るんじゃないか、という疑念が湧いて、
結局独立独歩で密本を立て直そうという気になったわけね。
ギジュンとシンジョクとジョンスの三つどもえか。
誰が解例を手にするのか?
争奪戦ですね。
ギジュンだけは、密本なんて今はどーでもいい!とか言っちゃいそうだけど。
解例さえ手に入れば、とりあえずいいわ、みたいな。
ヘロヘロになったクンジはたいへんでしたね。
「ソイが解例よ」って、ががーん!って感じですか?
なんとなく、そうかな~と匂わされていたので、
わたしたちはさほどおどろきませんけどね。
(とはいえ、前回の感想では、あの歌が解例なのかと勘違いしていました)
チェユンがショックだろうね。
ちょ、王様、それ教えといてよ、って気持ちが後からわいてくるのではないでしょうか?
今はとにかく彼女を守るのに必死でごわす。
もうさぁ~、チェユンがソイにメロメロなんだもの。
はやく一緒に暮らしたいから、一刻もはやく任務を終わらせたいんだよね。
そのことをもう隠そうとしないチェユンがすがすがしい。
そして、恥ずかしそうに笑うソイがすごくかわいい。
道中のおやつを持たせてあげて、いってらっしゃいっていうソイは、
もう奥さんみたい。
「10数えるうちに帰ってくるよ」っていうチェユンは、新婚のだんなさんみたい。
甘いわ~。
わたしニヨニヨしながら観てたのに……。
ああ、デレデレです。しあわせなのね。
彼女も本当に嬉しそうです。かわいい。
うう、その甘さが命取りなんだわさ。
ソイの方には男がチェユンしかいないんだから、
一瞬だって離れちゃだめでしょうが……。
護衛なんだから……。
紙屋に寄ったとき、チェユンがなにか大事そうに抱えていたでしょう?
たぶん夫婦なんとか、みたいなソイへのお土産だと思うんだよね。
もう絶対、これ使わせてあげてほしいわ!
なんか割れちゃってるとか、悲しい描写とか絶対いらないからね!
マルセンがまたもやかわいかったけど、
こういうラストでいかれると、もはやどーでもいい。
いや、どーでもよくはないか。
三人で王様に呼ばれて作戦会議していたとき、
「じゃ、そうしよう!」「オッケ!」「了解です!適当にね!」
みたいな仲間内のノリに、マルセンだけついて行けなかったの。
切れ者のおじさんが、ハテナマーク飛ばしている顔がかわいかったのだ。
緊迫したドラマの中にも息抜きがないとね。
ああ!でもやっぱどーでもいいか!
とにかくソイが心配なんだよ!
たぶん、さらわれることになると思うのだけど、誰になるのかな。
希望としてはユン・ピョンにしてほしい。
本元を裏切ってでも、助けてくれるはず……。
でも、あのー、わたしよくわかってないかもだけど、
解例ってどんな感じのものなのかなー。
すごく分厚い文法書みたいなもの?
いやいや、今回は音の解説でいいんだもんね。量はそうでもないのか。
あの、ソイがチェユンに説明する時書いたやつみたいなもの?
あ、だとしたらもうギジュンは持ってることになっちゃうか。
大事な要素なのに、なんかいまいちイメージがつかめていないのが悔しい。
でも、ソイがヘレだ、ということははっきりしているので、
あの子があぶないことだけはわかってる。
これって、チェユンの状況とあんまりかわんないのかな。
わたしが密本の部下じゃなくて本当によかった。
解例を探せ!とか言われても、どんなものを探せばいいのか、正直わかんないもん。
チョン・ギジュンもめちゃくちゃ頭いいというか、察しがいいよね。
とにかく紙が必要なんだから、紙屋を調べろ、と。
そしてお札用の紙が大量発注されているという事実から、
あ!お札か!と。
どんどん流布計画の内容があばかれていってしまう。
アジトから一歩も出ることなく、知略をめぐらせる、安楽椅子探偵型の人ですな。
また実行部隊が有能なユン・ピョンなので、ぜんぜん出し抜けない~。
またもや女官は捕まり、そして逃がされ、また捕まり、生きた心地もしません。
密本側がいろいろ入り乱れて、面白いわ。
そして王様もめちゃくちゃ頭いい。
とにかく密本を分裂させようと、異例の声明。
だいたい王様があんなふうに謝罪して頭を下げるなんてすごいことだよ~。
これひとつとっても、王を信じるに値する空気が生まれるでしょ。
同じ土俵に立って討論しよう、なんて、どこの議会制民主主義か。
すっごくリベラル。
マルセンの「なりませぬ!」が悲鳴のようでした。
頭のいい人同士が争うと、こういいう頭脳戦になるんですね。
このドラマの面白いところは、
こういう知略が楽しめる部分と、
アクションシーンが共存しているところだと思います。
いいバランスで配合されていて、話にメリハリがあるんじゃないかな。
チェユンとソイと王様は、文字公布に関して、深く結ばれた同士ですね。
この三人はチームで、それぞれがそれぞれの思いを背負って文字公布に挑む。
すべてが始まったあの夜、
三人の運命は、どうしようもなく結びつき、からみあった。
これが「因縁」というものなのでしょう。
それぞれが、辛く苦しい経験をした、青年王と、少年少女。
ドラマやなぁ。
韓国の史劇は、事実に基づいたフィクション、というか、
芥子粒ほどの中核に空想てんこ盛りの金平糖みたいなものかと思っています。
そっちの方が面白い!とういか、
もう、はっきり割り切ってお話しを作り込んでいるところが、ザ・ドラマって感じ。
そういうものだと思って楽しんでいる人と、
それが真実だと信じ込んじゃう人がいそうですけどね。
しっかし強力な明の自白剤……。
こんなもの作れちゃう国には、まだまだかなわんわ。
彼は善徳女王に出てきていましたね~。
ユシン率いる青龍翼徒の一員でした。トンマンのよい仲間だったよね。
ここでもがんばってます!
《あらすじ》
女官たちが密命を負ったのだと気付いたギジュン。
彼女たちは、密かに準備を進めていた。
モギャは、巫女の格好で呪文を唱え、
迷信深い民たちに、文字を覚えさせようとしている。
ソイは、歌にのせて音を歌わせて浸透させてから、
子どもたちに書き方と読み方を教えるつもりだ。
チェユンにも、ある考えがあるのだが、
「それって脅迫よ」とソイに却下されてしまった。
「脅迫っていうか、人の心を操るだけだ」
「それを脅迫っていうのよ」
ソイは可笑しそうだ。
「だって一刻もはやく、民に広めたいわけだろ?それが任務だ」
「兄さん、すごくあせっているみたいね。王様との約束のせい?」
「ち……がうといいたいところだが、もう否定しないよ」
チェユンの言葉に、ソイははにかんだ。
チェユンは、王に言われたのだ。
「この文字を世に出すためには、お前の許可がいる。
チョン・ギジュンはこの文字を命がけで阻止すると言った。
文字を出すには、ふたつの策が必要だ。公布と流布」
「公布と、流布、ですか?」
「国による公布は無理でも、民の間にタネをまいておくのだ。
しかし、正音庁で印刷し、科挙の科目にせねば、タネはひからびる。
公布が必要なのはこのためだ。どちらも失敗できない」
「そうですね、しかし、私の許可が必要だとは?」
「流布をソイに頼みたい。危険な仕事だ。お前が守ってくれ」
流布が終われば、ソイと共に発ってもいい、と王は約束してくれた。
同時に、ソイも、ふたりに約束してほしいと頼んだ。
「私が任務遂行中に死ぬようなことがあっても、
王様も、兄さんも、私を探さないでください。時間を無駄にしないで欲しいのです」
「それは余も同じだ。余が死んでも、お前たちは任務を遂行するのだ」
ソイは、きっぱりと言った。
「誰が死んでも、前に進まねばなりません」
三人は微笑んで、その決意を新たにしたのだった。
王は、マルセンとチョン・インジを呼んだ。
「密本の書とは、どんなものだと思う?」
「おそらく、密本結成時の連判状かと」
文字を公布するために必要な手続きは、訓民正音を編纂するための省庁を作り、
科挙試験に組み入れることと、右議政、左議政、領議政の承認だ。
議政たちは、個人の意見で動くことはない。
宮廷での説得工作を地道に続けていくのが有効だろう。
問題は密本だが、おそらく彼らも一枚岩ではないと思われる。
おそらく文字の正体を知らされてはいまい。
そして大君の死……。
すべての密本員が賛成したとは思えない。
文字の公布を阻止するためだけに、大君を殺したのだから。
おそらく、密本は分裂しているはずだ。
それを前提に、策を練ろう。
シム・ジョンスも、王の密命を知った。
女官たちに重大な任務を負わせるとは……。
広平大君の死は、王に動揺させるには至らなかったのか。
これは本元の失策だ。
イ・シンジョクも、密本の元老らと会合を開いた。
本元の行動は、果たして正しいだろうか?
王は、イ・バンウォンを超える暴君となりはててしまうのでは?
ギジュンの耳にも、彼らの造反は届いている。
しかし、彼の信念は変わらない。
文字については、誰にも知らせない。
そしてこの文字の公布を阻止することが、今は密本の最優先事項である。
シム・ジョンスは、イ・シンジョクに会って決意を新たにした。
今大切なのは、本元チョン・ギジュンではなく、密本そのものだ。
宰相総裁制と、士大夫だ。
しかし、密本にはチョン・ギジュンが育てた熱い志を持った若い儒生たちがおり、
彼を支持している。
ジョンスたちには、誰が味方で、誰がそうでないかすら、わからないのだ。
「わたしたちに必要なものは、密本の名簿と、新しい本元です!」
ジョンスは大胆にもそう言い切った。
「よい方法があるのか?……」
本元は、女官たちを探している。解例を手に入れるためだ。
こちらが先に解例を入手して、本元に取引を持ちかけ、こちらの望むものを手に入れる。
シンジョクは、新本元になる気はない。
宰相となり、権力を握っていたいだけだ。
ジョンスは軽蔑の色を隠さないが、シンジョクは意に介さない。
こういう人間の方が、結局は側において便利なものだ。
だからこそ、王も自分を側に置いておくのだと。
王は、宮殿中のものを近くに待機させ、集賢殿に学士ら、大臣らを呼び集めた。
そして、謝罪と宣言、提案を行うという。
まずは、謝罪。
王は死んだ三人の学士と息子広平大君、サンムン、ペンニョン、チョン・インジが
天地契員だと認めた。
密かに文字創製をすすめていたことを過ちと認め、謝罪した。
王は深く頭を下げ、居並んだ面々は戸惑いながらも、謝罪を受け入れた。
そして宣言。
大君を殺したのは密本ではない。
自らの過ちで招いた結果ゆえ、密本へのいかなる処分も行わない。
彼らを異なる政治観を持つ朋党として認め、討論したい。
よって、密本員は朝廷広場に名乗り出よ。
マルセンは、必死に反論する。
「なりません!密本は犯罪を犯した者どもです!大逆罪です!」
しかし、王は動じない。
チョン・ギジュンとユン・ピョンは、殺人罪として処分する。
投書により、幾人かの密本員の名を知っている、と王は述べた。
そして提案。
なんとしても、文字は公布する。
大臣らが許せば、7日後に光化門の前で。
もし、密本が朋党を組んで反対するなら、公布前に名乗り出よ。
名乗り出ず邪魔をしたり、後に密本だと知られた場合は、
その後に起きたことは、すべて自らの責任になると知れ。
驚きの宣言に、朝廷は大揺れに揺れた。
王は、右議政イ・シンジョクを呼んで、領議政になってくれるよう、打診した。
突然の要請に、悪い気はしないシンジョク。
それを知ったジュンスは眉をひそめた。
マルセンは、チョ・マルリに単刀直入に尋ねる。
「そなたは密本か?」
マルリは当然否定するし、マルセンも本当に疑っているわけではない。
「ではシム・ジョンスは?」
マルリの性格上、彼も単刀直入にジョンスに尋ねるだろう。
「お前は密本か?」
問われたジョンスは密かに動揺するが、平静を装った。
「なぜそんなことを?」
「マルセン殿もそうだが、右議政もお前を疑っているとか。
もしそうなら、王様の提案に従え。集賢殿の名を汚すことはゆるさんぞ」
ジョンスは少しばかり、動揺した。
右議政が本当は何を考えているのか、わかったものではない……。
ジョンスはイ・シンジョクにすべてを話したフリをして、
独自の道を歩むことを決意していた。
イ・シンジョクもまた、ジョンスの裏切りを察知し、太平館に助力を求めることにした。
とにかく解例を手にいれなければ……。
巫女作戦、歌作戦は、それぞれ順調に進んでいた。
チョタクとチェユンは、紙屋で落ち合い、状況を報告しあうことになっている。
チェユンはソイに道中の食べ物を持たせてもらい、ニコニコと村を後にした。
ところが、紙屋には、ユン・ピョンが聞き込みに訪れていた。
女官の足取りを探っていたギジュンが、一帯の紙屋に聞き込みをかけるよう、
指示していたのである。
解例を印刷するには、とにかく紙が必要になるわけだから。
ギジュンは、ユン・ピョンからの報告を受け、はたと気付いた。
大量に注文されたお札の紙……。
そうか、イ・ドは、民自身に文字を広めさせるつもりなのだ!
シム・ジョンスも、部下から情報を得て、ユン・ピョンらのゆく紙屋に向かった。
ジョンスの後を、トダム行首の腹心マクスがつけてゆく。
彼はまかれてしまったが、太平館の刺客キョン・ジョクヒは、
惑わされることなく、ジョンスをつけていった。
紙屋に着いたチョタクは、物陰に潜むユン・ピョンに気付き、
チェユンを待たず、暗号を残して女官たちのもとへ帰った。
通りすがりの荷車に隠れて帰ったつもりのチョタクだったが、
その荷車の御者は、ジョンスの腹心マクスの変装であった。
女官たちはさらわれ、ユン・ピョンが荷車に乗せて運んでゆく。
その荷車を襲ったのは、シム・ジョンス。
「本元を裏切るのですか?」
襲われたユン・ピョンは、とっさに女官を人質に取った。
「女官などいらぬ。殺すなら殺せ」
ジョンスの言葉に、ユン・ピョンは女たちの縄を切って、「逃げろ」と告げた。
マクスがふたりの後を追う。
ユン・ピョンはジョンスと剣を交えた。
ジョンスの部下は、二手に分かれ逃げた女官を追い、クンジを捕まえた。
と、そこへ現れたのは太平館のジョクヒ。
ジョクヒはクンジを確保すると、上司に報告するよう、ジョンスの部下を放逐した。
部下はジョンスに報告し、シンジョクが太平館とつながったことが明らかになった。
ジョンスはかねてより因縁のあったジョクヒを見つけようと考えているようだ。
必死に逃げたモギャも、ユン・ピョンに捕まってしまった。
「もうひと組の女官たちと、逃げたひとりを捕まえよう。
お前たちは本元に状況を報告せよ」
ジョクヒに捕まったクンジは、魅魂剤をかがされ、すべてを話してしまう。
「解例はどこにある?」
「な……い……」
解例など、最初から存在しないのだ。
「ソイはどこだ?」
「チャンアム村にいる……」
ジョクヒはクンジの始末を部下に命じると、すぐさま、チャンアム村へ向かった。
チェユンは、チョタクとパクポと合流し、女官たちを探していた。
しかし、処分されかかったクンジを見つけたのはシム・ジョンス。
魅魂剤をかがされたとわかったジョンスは、
「解例はどこだ?」と問いかける。
「解例は……チャンアム村にある……」
ジョンスもまた、村へ向かった。
その後を、ユン・ピョンが尾行してゆく。
クンジが小屋から運び出されようとした瞬間、チェユンたちが駆けつけた。
意識を取り戻したクンジは、明の女とジョンスが村へ向かったこと訴える。
「解例を奪いに、村へむかったんだわ……。解例を、解例を守って!」
「何をいってるんだ?わかるように話せ!
ソイかトックムさんが持っているのか?そんなものなかったぞ。
なのに奴らが解例を奪いに?どういうことなんだ?」
「ソイが……解例よ……。解例は、人だったのよ……」
シム・ジョンスは夜の山を走り、ユン・ピョンも後に続く。
ソイが危ない。
(つづく)
ややこしや~ややこしや~。
王様の思惑通り、密本が分裂しちゃってもうたいへん。
今まで味方だった人たちが入り乱れて、解例争奪戦を繰り広げております。
そもそも、大君を殺したことがやっぱり大きいね。
そのへんの学士を殺すのとはわけが違うぞ!と、元老なんかは恐れおののいているのです。
すっごい、罪だからね。
これはもう、法律上すっごい罪だよ、というのもそうだけど、
やはり腐っても儒学者。
染みついた思想が、恐れ多くも世子を殺害するなど……みたいな恐怖をぬぐい去れないのだと思う。
そこへきて、そもそも本元が文字公布阻止に必死になる意味がわかってない。
で、王様からも揺さぶりをかけられちゃって組織は揺らいじゃうワケよ。
だいたいさぁ、秘密結社だもんだから、
誰が同じ密本なのかわかってないんだよね~。
相談しようにも相談できる相手がそもそもいない、って場合もあるわけで、
そもそも個々に分断されているコミュニティは弱いですよ。
シンジョクは、もともと大義とか興味ないんで、
現世利益が手に入れば、それでいい人。
本元になる気はないけれど、宰相総裁制で権力を握りたい。
シム・ジョンスは三峯先生の大義に命懸けてるからね~。
シンジョクなんかと組むのはイヤなんだよね。
そこへ、シンジョクが自分を売るんじゃないか、という疑念が湧いて、
結局独立独歩で密本を立て直そうという気になったわけね。
ギジュンとシンジョクとジョンスの三つどもえか。
誰が解例を手にするのか?
争奪戦ですね。
ギジュンだけは、密本なんて今はどーでもいい!とか言っちゃいそうだけど。
解例さえ手に入れば、とりあえずいいわ、みたいな。
ヘロヘロになったクンジはたいへんでしたね。
「ソイが解例よ」って、ががーん!って感じですか?
なんとなく、そうかな~と匂わされていたので、
わたしたちはさほどおどろきませんけどね。
(とはいえ、前回の感想では、あの歌が解例なのかと勘違いしていました)
チェユンがショックだろうね。
ちょ、王様、それ教えといてよ、って気持ちが後からわいてくるのではないでしょうか?
今はとにかく彼女を守るのに必死でごわす。
もうさぁ~、チェユンがソイにメロメロなんだもの。
はやく一緒に暮らしたいから、一刻もはやく任務を終わらせたいんだよね。
そのことをもう隠そうとしないチェユンがすがすがしい。
そして、恥ずかしそうに笑うソイがすごくかわいい。
道中のおやつを持たせてあげて、いってらっしゃいっていうソイは、
もう奥さんみたい。
「10数えるうちに帰ってくるよ」っていうチェユンは、新婚のだんなさんみたい。
甘いわ~。
わたしニヨニヨしながら観てたのに……。
ああ、デレデレです。しあわせなのね。
彼女も本当に嬉しそうです。かわいい。
うう、その甘さが命取りなんだわさ。
ソイの方には男がチェユンしかいないんだから、
一瞬だって離れちゃだめでしょうが……。
護衛なんだから……。
紙屋に寄ったとき、チェユンがなにか大事そうに抱えていたでしょう?
たぶん夫婦なんとか、みたいなソイへのお土産だと思うんだよね。
もう絶対、これ使わせてあげてほしいわ!
なんか割れちゃってるとか、悲しい描写とか絶対いらないからね!
マルセンがまたもやかわいかったけど、
こういうラストでいかれると、もはやどーでもいい。
いや、どーでもよくはないか。
三人で王様に呼ばれて作戦会議していたとき、
「じゃ、そうしよう!」「オッケ!」「了解です!適当にね!」
みたいな仲間内のノリに、マルセンだけついて行けなかったの。
切れ者のおじさんが、ハテナマーク飛ばしている顔がかわいかったのだ。
緊迫したドラマの中にも息抜きがないとね。
ああ!でもやっぱどーでもいいか!
とにかくソイが心配なんだよ!
たぶん、さらわれることになると思うのだけど、誰になるのかな。
希望としてはユン・ピョンにしてほしい。
本元を裏切ってでも、助けてくれるはず……。
でも、あのー、わたしよくわかってないかもだけど、
解例ってどんな感じのものなのかなー。
すごく分厚い文法書みたいなもの?
いやいや、今回は音の解説でいいんだもんね。量はそうでもないのか。
あの、ソイがチェユンに説明する時書いたやつみたいなもの?
あ、だとしたらもうギジュンは持ってることになっちゃうか。
大事な要素なのに、なんかいまいちイメージがつかめていないのが悔しい。
でも、ソイがヘレだ、ということははっきりしているので、
あの子があぶないことだけはわかってる。
これって、チェユンの状況とあんまりかわんないのかな。
わたしが密本の部下じゃなくて本当によかった。
解例を探せ!とか言われても、どんなものを探せばいいのか、正直わかんないもん。
チョン・ギジュンもめちゃくちゃ頭いいというか、察しがいいよね。
とにかく紙が必要なんだから、紙屋を調べろ、と。
そしてお札用の紙が大量発注されているという事実から、
あ!お札か!と。
どんどん流布計画の内容があばかれていってしまう。
アジトから一歩も出ることなく、知略をめぐらせる、安楽椅子探偵型の人ですな。
また実行部隊が有能なユン・ピョンなので、ぜんぜん出し抜けない~。
またもや女官は捕まり、そして逃がされ、また捕まり、生きた心地もしません。
密本側がいろいろ入り乱れて、面白いわ。
そして王様もめちゃくちゃ頭いい。
とにかく密本を分裂させようと、異例の声明。
だいたい王様があんなふうに謝罪して頭を下げるなんてすごいことだよ~。
これひとつとっても、王を信じるに値する空気が生まれるでしょ。
同じ土俵に立って討論しよう、なんて、どこの議会制民主主義か。
すっごくリベラル。
マルセンの「なりませぬ!」が悲鳴のようでした。
頭のいい人同士が争うと、こういいう頭脳戦になるんですね。
このドラマの面白いところは、
こういう知略が楽しめる部分と、
アクションシーンが共存しているところだと思います。
いいバランスで配合されていて、話にメリハリがあるんじゃないかな。
チェユンとソイと王様は、文字公布に関して、深く結ばれた同士ですね。
この三人はチームで、それぞれがそれぞれの思いを背負って文字公布に挑む。
すべてが始まったあの夜、
三人の運命は、どうしようもなく結びつき、からみあった。
これが「因縁」というものなのでしょう。
それぞれが、辛く苦しい経験をした、青年王と、少年少女。
ドラマやなぁ。
韓国の史劇は、事実に基づいたフィクション、というか、
芥子粒ほどの中核に空想てんこ盛りの金平糖みたいなものかと思っています。
そっちの方が面白い!とういか、
もう、はっきり割り切ってお話しを作り込んでいるところが、ザ・ドラマって感じ。
そういうものだと思って楽しんでいる人と、
それが真実だと信じ込んじゃう人がいそうですけどね。
しっかし強力な明の自白剤……。
こんなもの作れちゃう国には、まだまだかなわんわ。
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