文部科学省は、学習指導要領のポイントとして子どもたちの「生きる力」を育むことを目指しています。
「確かな学力」・「豊かな人間性」・「健康・体力」という知・徳・体をバランスよく育てることが重要であるとしています。
「確かな学力」を育てることで、様々な問題に積極的に対応し、解決する力を育みます。
「豊かな人間性」を育てることで、自らを律し、他人とともに協調する心を養います。
「健康・体力」はたくましく生きるために必要とされる力です。
なぜ文部科学省が学習指導要領で「生きる力」を強調しているのでしょうか。
それは現在の日本の子どもたちから「生きる力」が失われつつあることを感じているからでしょう。
確かに近年の中学生・高校生を見ていると、それを強く感じています。
かつてより悪さもせず、おとなしくて真面目だと思いますが、その反面元気がなく心を病んでいる生徒が多いようです。
問題を解決することや他人との協調性、たくましさなどに欠け、打たれ弱くなっていることを感じています。
壁どころか、ちょっとした段差やスロープさえも登れず、へこたれる場面も見受けられます。
子どもの弱さを守るような社会の風潮がそれに拍車をかけているようで、弱いものを強くするという視点がないようです。
水泳選手もいつも厳重に温度管理されたプールで練習や大会にでていますから、少し水温や気温が変化すると耐えられないようです。
人は鍛えてこそ強くなるものです。
学力も人間性も体力も荒波にもまれてこそ強くなるものであって、それが「生きる力」につながります。
そういう意味では、学校のクラブ活動は人間性や体力を養うという点で最適な教育環境にあると考えています。
特に合宿所生活を送っている生徒は、親元を離れて自分で身の回りのことをし、色々な人と接するなかで人間性が鍛えられます。
水泳部の活動では体力を養い、大会で勝敗を競うことで人生の厳しさを知ることになります。
毎日の授業では学力を向上させているはずです。
学生時代には多くの人とかかわり、学力と体力を養い、人間関係を学ぶことで社会人となってからもたくましく生きられるのだと思っています。
そして、若いうちはできるだけ厳しい環境で過ごした方が、より鍛えられ、「生きる力」が高まるはずです。
日本は楽に生きられるような豊かさを手に入れた半面、子どもたちから強く生きる力も奪っているようです。
グローバルといわれる社会の流れの中でたくましく生きていくために青少年を厳しく育てることが必要とされていることは間違いありません。
これからの日本の子どもたちに文部科学省の学習指導要領が提唱している「生きる力」がよみがえる日は来るのでしょうか。
写真は「生きる力」の強さを感じさせる護国寺の雑草です。
竹村知洋