水泳(競泳)の「部活動の地域移行」に関して、あらためて課題を考えてみます。
水泳の地域移行とは、学校の部活動からスイミングクラブへの移行ということになります。
課題1 指導体制の問題
スイミングクラブ(以下、スイミング)は基本的に、中学生や高校生から水泳を始めるような指導体制になっていません。
多くのスイミングでは、幼少期の”ぶくぶくぱ~”からはじめて、検定を受けて合格すれば「級」が上がって、育成クラスや選手クラスに入っていくというしくみになっています。
中学生になるころに選手・育成クラスに入れなければ、成人クラスで泳ぐか、やめてしまう人が多いと思われます。
学校の水泳部は、そのような生徒の受け皿にもなっています。
日大豊山水泳部のBチームの生徒は、これから水泳を始めたいとか泳ぐのが好きであるとか、文武両道で頑張りたいなど様々な動機で水泳部に所属しています。
中学生の場合は、受験期にスイミングをやめていることも多いので、中学からまた始めたいという生徒も多数います。
もし部活動がなくなり、Bチームの生徒にスイミングでやってくださいといっても、その指導体制上、中学生や高校生から入会することは難しいと考えられます。
地域移行といっても、水泳の場合、スイミングがすべての生徒の受け皿にはならない可能性が高いです。
課題2 移籍の問題
全国レベルの生徒ならスイミングに入会できるかというと、それにも難しい問題があります。
東京都の場合だけかもしれませんが、スイミングの移籍を認めていないことが多いからです。
移籍というのは、今のスイミングから別のスイミングに移ることです。
移籍ができるとしても、選手が自宅や学校から通える範囲でなければ現実的ではありません。
通える範囲であったとしても、すべてのスイミングに選手コースがあるとは限りません。
選手コースがあったとしても、その選手のレベルに見あうものかどうかという問題もあります。
課題3 大会参加の問題
中体連大会はこれから廃止されていくと思いますが、高校でも同様の措置になった場合、選手の参加できる大会が減少します。
廃止された大会のすべてを東京都水泳協会やスイミング団体が新設できるとは思えません。
既存のスイミング主催の大会は、中体連や高体連の大会よりも制限タイムが高く設定されていることが多いです。
新設されたとしても、スイミング主催の大会は運営に関する競技役員を務めることが水泳部顧問・コーチの役割の一つとなっています。
水泳大会の多くは土日に設定されており一日を通して競技役員として活動することや少数の水泳部顧問で生徒指導と競技役員を役割分担をすることが必要となります。
特に土曜日は授業があるため、人手が不足することになります。
競技役員を出せなければ、選手の出場もできません。
大会廃止や制限タイムの問題、競技役員の問題などにより、部活動に所属する選手が参加できる大会は減少することが予想されます。
課題4 金銭的問題
近年、水泳はお金のかかるスポーツとなっています。
スイミングクラブに通うとなれば、月謝や大会参加費、交通費、合宿代、大会遠征費などが高騰していることもあり、多額の費用が必要となります。
保護者の負担を考えると、スイミングクラブに通うこともそれほど簡単なことではありません。
課題5 スイミングコーチの問題
若手コーチが少ないです。
練習会や合宿、大会に参加するコーチは、昔から続けている年配者が多いです。
様々なコーチに事情を聞いたところ、やはり働き方改革が影響しており、若手コーチはなかなか出てこれないということです。
特にコロナ禍以降は経営の問題も深刻となり、人員削減が進んでいることも影響していると思われます。
根本的にスイミングに正社員として就職する人が少ないということがあるかもしれません。
今後はスイミングでもコーチの人材確保が難しくなることが予想されます。
コーチの不足は東京都水泳協会としても悩ましい問題となっています。
課題6 スイミング存続の問題
スイミングも少子化の影響を大きく受けています。
現在は子どものためのスイミングというよりも、大人のためのフィットネスに力を入れているスイミングが多いと思います。
建物の老朽化が進んでいることもあり、老舗のスイミングでも経営を取りやめるという話を聞くようになりました。
東京の場合、建て替えるといっても土地が狭いため容易ではないようです。
しかも近年、東京の不動産価格は急騰してます。
今後を考えると、スイミングは減少する一方であることが予想されます。
まとめ
水泳の地域移行は、そう簡単なことではないということです。
現在スイミング所属で全国大会に出場している生徒だけを考えるのであれば、地域移行は簡単です。
スイミング参加のインターハイにするか、全国中学大会のように廃止してしまえば、教員の負担も軽減します。
しかし、学校の部活動に所属している生徒全体のことを考えると、この問題はそう簡単なことではありません。
私たちのように学校対抗での優勝を目標に活動している部活動は、その存在意義を失うことにもなります。
つまり水泳の場合、地域移行ができないまま大会だけを廃止していくと、部活動が消滅し、水泳人口が全体的に減少することは確実になるということです。
文部科学省やスポーツ庁が本気で地域移行を考えるということであれば、せめてスイミングに中学生や高校生を受け入れるよう要請し、その体制を整えてからにすべきです。
スイミングに所属して全国大会に参加する選手だけではなく、水泳部に所属する生徒全体を念頭に「部活動の地域移行」を考えなければ、水泳が好きな生徒はその居場所をなくすことになります。
Aチームは朝練習!
朝練習後は、魂の塩むすび!
みんなで朝掃除。朝から11階の人口密度は高いです。
竹村知洋
水泳の地域移行とは、学校の部活動からスイミングクラブへの移行ということになります。
課題1 指導体制の問題
スイミングクラブ(以下、スイミング)は基本的に、中学生や高校生から水泳を始めるような指導体制になっていません。
多くのスイミングでは、幼少期の”ぶくぶくぱ~”からはじめて、検定を受けて合格すれば「級」が上がって、育成クラスや選手クラスに入っていくというしくみになっています。
中学生になるころに選手・育成クラスに入れなければ、成人クラスで泳ぐか、やめてしまう人が多いと思われます。
学校の水泳部は、そのような生徒の受け皿にもなっています。
日大豊山水泳部のBチームの生徒は、これから水泳を始めたいとか泳ぐのが好きであるとか、文武両道で頑張りたいなど様々な動機で水泳部に所属しています。
中学生の場合は、受験期にスイミングをやめていることも多いので、中学からまた始めたいという生徒も多数います。
もし部活動がなくなり、Bチームの生徒にスイミングでやってくださいといっても、その指導体制上、中学生や高校生から入会することは難しいと考えられます。
地域移行といっても、水泳の場合、スイミングがすべての生徒の受け皿にはならない可能性が高いです。
課題2 移籍の問題
全国レベルの生徒ならスイミングに入会できるかというと、それにも難しい問題があります。
東京都の場合だけかもしれませんが、スイミングの移籍を認めていないことが多いからです。
移籍というのは、今のスイミングから別のスイミングに移ることです。
移籍ができるとしても、選手が自宅や学校から通える範囲でなければ現実的ではありません。
通える範囲であったとしても、すべてのスイミングに選手コースがあるとは限りません。
選手コースがあったとしても、その選手のレベルに見あうものかどうかという問題もあります。
課題3 大会参加の問題
中体連大会はこれから廃止されていくと思いますが、高校でも同様の措置になった場合、選手の参加できる大会が減少します。
廃止された大会のすべてを東京都水泳協会やスイミング団体が新設できるとは思えません。
既存のスイミング主催の大会は、中体連や高体連の大会よりも制限タイムが高く設定されていることが多いです。
新設されたとしても、スイミング主催の大会は運営に関する競技役員を務めることが水泳部顧問・コーチの役割の一つとなっています。
水泳大会の多くは土日に設定されており一日を通して競技役員として活動することや少数の水泳部顧問で生徒指導と競技役員を役割分担をすることが必要となります。
特に土曜日は授業があるため、人手が不足することになります。
競技役員を出せなければ、選手の出場もできません。
大会廃止や制限タイムの問題、競技役員の問題などにより、部活動に所属する選手が参加できる大会は減少することが予想されます。
課題4 金銭的問題
近年、水泳はお金のかかるスポーツとなっています。
スイミングクラブに通うとなれば、月謝や大会参加費、交通費、合宿代、大会遠征費などが高騰していることもあり、多額の費用が必要となります。
保護者の負担を考えると、スイミングクラブに通うこともそれほど簡単なことではありません。
課題5 スイミングコーチの問題
若手コーチが少ないです。
練習会や合宿、大会に参加するコーチは、昔から続けている年配者が多いです。
様々なコーチに事情を聞いたところ、やはり働き方改革が影響しており、若手コーチはなかなか出てこれないということです。
特にコロナ禍以降は経営の問題も深刻となり、人員削減が進んでいることも影響していると思われます。
根本的にスイミングに正社員として就職する人が少ないということがあるかもしれません。
今後はスイミングでもコーチの人材確保が難しくなることが予想されます。
コーチの不足は東京都水泳協会としても悩ましい問題となっています。
課題6 スイミング存続の問題
スイミングも少子化の影響を大きく受けています。
現在は子どものためのスイミングというよりも、大人のためのフィットネスに力を入れているスイミングが多いと思います。
建物の老朽化が進んでいることもあり、老舗のスイミングでも経営を取りやめるという話を聞くようになりました。
東京の場合、建て替えるといっても土地が狭いため容易ではないようです。
しかも近年、東京の不動産価格は急騰してます。
今後を考えると、スイミングは減少する一方であることが予想されます。
まとめ
水泳の地域移行は、そう簡単なことではないということです。
現在スイミング所属で全国大会に出場している生徒だけを考えるのであれば、地域移行は簡単です。
スイミング参加のインターハイにするか、全国中学大会のように廃止してしまえば、教員の負担も軽減します。
しかし、学校の部活動に所属している生徒全体のことを考えると、この問題はそう簡単なことではありません。
私たちのように学校対抗での優勝を目標に活動している部活動は、その存在意義を失うことにもなります。
つまり水泳の場合、地域移行ができないまま大会だけを廃止していくと、部活動が消滅し、水泳人口が全体的に減少することは確実になるということです。
文部科学省やスポーツ庁が本気で地域移行を考えるということであれば、せめてスイミングに中学生や高校生を受け入れるよう要請し、その体制を整えてからにすべきです。
スイミングに所属して全国大会に参加する選手だけではなく、水泳部に所属する生徒全体を念頭に「部活動の地域移行」を考えなければ、水泳が好きな生徒はその居場所をなくすことになります。
Aチームは朝練習!
朝練習後は、魂の塩むすび!
みんなで朝掃除。朝から11階の人口密度は高いです。
竹村知洋