台風10号の豪雨は、秋の味覚にも大きな打撃を与えた。ジャガイモなどの一大産地である北海道・十勝地方で農地が広範囲で冠水し、流通網も寸断された。食卓への影響が懸念されている。

 「一夜にして畑が泥の湖になった」。流木が散乱する畑

 台風10号で、北海道では18河川が氾濫(はんらん)した。高嶋さんの35ヘクタールの畑でも近くの戸蔦別(とったべつ)川が氾濫し、収穫間近のジャガイモやテンサイ、スイートコーンが軒並み冠水した。冠水すると傷んだり腐ったりし、大半が売り物にはならない。

 農家の5代目。富山県から入植した初代から100年以上、畑を耕してきた。3日に畑の水は引き、家族総出で、出荷可能な一部のジャガイモを掘り出す作業に追われた。

 被害額は4千万円近い。長年維持してきた表土が流され、肥料を入れて元に戻す作業が待っているが、敏彦さんは「回復には十数年かかる。先のことは考えられない」と言う。

 清水町では断水が続き、牛への水やりや搾乳機器の洗浄がままならない。乳牛65頭は「牛舎が浸水したし、牧草地はぬかるんで刈り取りできない」

 台風10号の前に連続して北海道に上陸した三つの台風と合わせ、道内の農地被害はすでに約1万6千ヘクタールを超えた。被害は十勝地方や、タマネギ産地のオホーツク地方に集中する。芽室町では、スイートコーンの缶詰工場や農機具メーカーの工場も浸水した。

 流通網も寸断された。道東地方から本州へ向かうJR根室線は複数の橋が流され、復旧のめどは立っていない。例年ならジャガイモなどを運ぶ貨物列車が運休している