がん免疫療法が人類に勝利をもたらす!?
近年、がん免疫療法への関心が高い。なかでも、効果が明らかな「免疫チェックポイント阻害薬」(オプジーボ、キイトルーダなど)がその注目を集めている。
そのような中、7月27~29日に『第15回日本臨床腫瘍学術集会』が開催された。がん治療の最新知見が集まるこの学会に参加した、昭和大学臨床免疫腫瘍学講座の角田卓也教授は次のように語る。
「がん免疫療法、特に免疫チェックポイント阻害剤への理解が浸透してきていると感じました。最初の保険適用から2年、がん治療の分野に大きなインパクトを与えているのは間違いありません」
「劇的な効果をもたらす症例も経験し、従来の抗がん剤と違う特有の副作用に戸惑っていた腫瘍内科医も慣れてきた印象をもちました。免疫チェックポイント阻害剤のもつ<真の有用性>の報告が待たれます」
30年以上、がん免疫療法を研究してきた角田教授は、「がん治療のパラダイムシフトが始まっています。<死に至る病>だったがんが、糖尿病や高血圧のような慢性疾患になるのです」と断言する。
一方で、「どのような患者さんに有用なのか――という決め手には欠けており、今後の研究に期待したい」という。
ほかの薬剤との併用でさらに大きな効果が
免疫チェックポイント阻害剤の臨床効果をさらにアップする試みは、すでにスタートしている。ほかの薬剤との併用療法の臨床試験も始まっている。今後はその成果に期待が寄せられているのだ。
「米国で進行中の臨床試験の報告では、頭頚部がんにおいて、免疫チェックポイント阻害剤だけでは奏効率20%程度が、IDO阻害剤(腫瘍局所の免疫抑制状態を改善する酵素阻害剤)との併用で40%まで上昇していることが紹介されました」
免疫チェックポイント阻害剤は、今年9月には胃がんにも保険適用される可能性が高い。今や免疫療法抜きでは、がん治療を語ることができなくなっている。角田教授は、長期生存を達成できるがん免疫療法はがん患者の大きな福音だという。
「がん免疫療法は、世界で800以上の臨床試験が進められている。私たち医療従事者は、患者さんのために常に新しい情報、知識を収集していく必要がある」
FDAが「がんに勝利」宣言をする日
がん免疫療法は、年内には「CAR-T療法」が米国食品医薬品局(FDA)で承認され、2018~2019年には欧州医薬品庁(EMA)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で承認の見込みだという。
角田教授によれば「2020年には、免疫チェックポイント阻害剤の保険適用の対象となるがん患者さんが全がんの9割を超えるでしょう。複合免疫療法も国際共同治験が進行しており、FDA、EMA、PMDAで承認されるはず。外科手術の前からがん免疫療法を取り入れることで治療成績もさらに向上することが見込めます」という。
そして、「25年には長期生存者が50%を超え、さらに将来、半数以上のがん種で、進行がん(ステージIV)でも長期生存者が8割を超え、FDAが<がんはもはや死に至る病ではない。慢性疾患に分類される>と宣言する日が来るでしょう」と期待を寄せた。
がん免疫療法が<がん難民>を救う!?
一方で、同じがん免疫療法として、改めて注視されているのが「ペプチドワクチン療法」だ。患者の立場で情報を発出している「市民のためのがん治療の会」の代表である會田昭一郎氏は、<がんとの共存>についてこう話す。
「3大療法に行き詰まった<がん難民>に対して、『市民のためのがんペプチドワクチンの会』を立ち上げて勉強会や研究支援活動を行ってきた。いま脚光を浴びている免疫チックポイント阻害剤にも、高額な薬価、重篤な副作用、奏効率などの課題はある」
「神奈川県立がんセンターは2014年、がんワクチンセンターを設立し、がんワクチン療法の臨床効果を科学的に証明するために治験(臨床試験)・先進医療を実施している。(http://kcch.kanagawa-pho.jp/outpatient/vaccine.html) 」
「患者にとっては、がんが消えるか消えないかは二の次で、普通の生活ができれば、がんとの共存は許せる問題ではないでしょうか」