細野豪志元環境相が昨年10月の衆院選の期間中に、東京都内の証券会社から5千万円を受け取っていたことがわかった。5カ月後の今年3月末、証券取引等監視委員会が証券会社に対し、この支出について報告を求めた。翌月、細野氏は「なし」としていた資産報告書の借入金を5千万円と訂正し、その後、返却した。

 5千万円が選挙資金であれば、借入金であっても公職選挙法に基づき報告義務がある。ただ、細野氏は個人的な貸し借りを届け出る資産報告書で開示した。

 昨年の衆院選は、10月10日に公示され、同22日に投開票された。

 朝日新聞が入手した証券会社の文書などによると、10月13日ごろまでに、細野氏の事務所から「政治活動を支援する目的で」貸し付けの依頼があり、資金提供を決定。同19日に5千万円を提供したとされる。

 細野氏は報告の締め切りとなる今年1月末、衆院選の投開票日時点での資産について「借入金なし」として報告書を出した。

 関係者によると、証券会社の親会社の自然エネルギー開発会社の資金調達をめぐって、監視委が同月末ごろから調査を開始。投資募集会社を通じて資金を募ったが、投資家への説明に虚偽があった疑いがあるとされた。開発会社が集めた資金の使途を調べる過程で、監視委は3月26日に証券会社に対し、細野氏への5千万円の説明を求めたという。

 細野氏は4月4日に資産報告書を訂正。証券会社の文書には、5千万円は同月9日に返済されたが、提供から3カ月以上、利子の支払いはなかったと記されている。

 証券会社は昨年5月、開発会社が買収し、拠点を沖縄から東京に移した。取締役には旧民主や日本維新の会の元国会議員3人が名を連ねる。調査会社によると、昨年3月期の売り上げは約1千万円。買収後は稼働実績がほとんどなかったという。5千万円の支出について「一切お答えできない」としている。

 細野氏は昨年8月に民進党を離党。小池百合子東京都知事が9月に立ち上げた新党「希望の党」に結成メンバーとして参加し、候補者調整にもあたるなど中核的な役割を担った。自身も公認候補として衆院選に立候補し、選挙区(静岡5区)で当選したが、希望の党は小池氏の「排除」発言などで大敗を喫した。その後、細野氏は無所属になった。(沢伸也、藤田知也)

■細野氏「個人として借り入れた」

 細野氏の事務所は25日、取材に対して文書で「(5千万円は)秋以降、急な政治資金が必要になる可能性があると考え、個人として借り入れた。利払いが不定期となった時期があったが、利子を含めて全額返した。借り入れが選挙後と認識していたため(報告書に)記載していなかったが、日時の誤りに気づいたので訂正を届け出た。(証券会社などへの監視委の調査は)承知していない」などと回答した。