みなさん、お気づきだろうか?
このブログ、かわいいことりが出てきたり、誰かの展覧会を観に行ったり、
横浜の学校に行ったり、動物園に行ったり、美味しいものを食べたり…。
そんな記事が多いことに。
本当にこの人はアトリエで紙を漉いているのだろうか?
ちゃんと何かを作っているのだろうか?ことりを肩に乗せて
和紙を漉いてるって、そんなメルヘン、嘘じゃない?って。
そう思わなくもないでしょう。当然です。
だっておとといブログを書きながら、私自身が思ったのだから
なんか、上っ面だけ書いている感じ。
だから、今日はいつもよりも少ーしアトリエここるぴあの裏側にも目を向けて
書いてみます。
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昨日と今日は新しく入手したベンガラを使って、試しに染めて漉いてみた。
けっこういろんな色があってどんな風に染まるか楽しみだったけど、
繊維の状態で染めるとあまり色が付かず下染め剤を使のだが、漉く時に
トロロアオイを入れたとたんに繊維がスジスジになってびっくり!
漉きあがった紙を染めるのに使った方がよさそうだという結論が出た。
でも、それなりに漉いた紙は穏やかな色合いで色自体は気に入りました。
雨で外に干せず、乾かないので扇風機に頼る
しかし、そんなことに熱中していると、母から何度も「まだ来ないの?」
「どこにいるの?」って電話が掛かってくる。あとちょっと、と思っているときに
掛けてくるので、気になって後が続けられない。内心は「もう!」って思うけど、
しかたがないので慌てて片付けて出かける準備をする
私は自分のペースを乱されるのがとても嫌いだ。
気にしなくてもいいよと言われても、やっぱり誰かが待っていたりすると
気になって相手に合わせて動いてしまい、結局自分のやりたかったことが
おろそかになって後悔することを多く経験してきたので、大事な時は
なるべく一人で動く道を選んできた。
母は病気だし、私のことを待っているのもわかるので、そんな時は「イライラ
したらいかん、イライラしたらいかん…」と自分に言いきかせ、自分が小さい
時に自宅から離れた所で自営業をしていた母に何度も「まだ帰らないの?」
と電話をしていた時のことを思い出し、気持ちを抑え母のところに行く。
母はすぐに転倒してしまうため、一人で出歩くことができない。そんな母を
片腕につかまらせ、腕を組むような形で買い物か散歩に出かけている。
今は雨が多いのでショッピングモールを歩く。入院時も病院の中を散歩した。
母の髪を手入れしたり、お風呂に入れたり、一緒にトイレに入ったり、
食べこぼしを片付けたり、そんなことはそれほどいやじゃないし、母が喜んで
いるので私もやりがいはあるけれど、心の片隅では、早くアトリエに帰って
続きをやらなきゃ!次のデザインを考えなきゃ!展示の書類を作らなきゃ!
予定を決めなきゃ!など、スヌーズ機能を持ったアラームのように、低い
つぶやきが頭の中でこだましている。
ずっと自営業をしていた母は現実的で仕事を優先にすることを第一にする
傾向が強いが、それにも増して娘と一緒にいたいという気持ちをあらわに
することがある。
よくある。母親というものが持つ葛藤なのだろうか。
そんな時はきりをつけて慌てて帰り、たいてい疲労がどっと溢れてくるので、
少し休憩し、ことりが寝たくらいの時間から仕事を再開する。すっかり夜だ。
今も夜の22時半。扇風機で漉いた紙を乾かしつつ、その紙をノートの表紙に
使うためのデザインを考えつつ、次に漉く楮の繊維を煮ているところ。
プラス、今このブログを書いている。
自分が作りたいものを形にする、自分にしかできないものを作る、なんて
志を常に持ってはいるが、家族の病気のこと、仕事とは全く関係ないことで
やらなくてはいけない煩雑なこと、自分の体調、サボっている検診、いろんな
ことに後ろ髪をひかれる思いで、自分なりにデザインや技法の勉強をし、
それを試し、材料の調達に悩み、締め切りに追われ、どうしても困った時は
信頼できる友人知人に相談に乗ってもらいながら毎日を過ごしている。
今朝、親戚のおばさんから電話があったが、第一声は「今日休み?」。
…なわけないじゃん!って思いつつ近況をい知らせる。勤めに出ていないと
顔を見るたび「今日休み?」って聞く人が多いのは、しかたがないのかな。
直前まで必死で仕事してるのにね。
実際、どんなに作品を作っても打ち合わせに出かけても、それが形になって
納められないと対価をいただくことができないので、ただいるだけで刻々と
お給料が発生する勤め人と違い、仕事とプライベートの境目がない今の生活。
続々と届く請求書を見てハラハラしながら楮の繊維を叩いたりもする。
実際はメルヘンとはほど遠く、汗だくで息切れしながら過ごしている感じ。
それでも自分が望んで堅い勤めを辞めて選んだことだから後悔はないけど、
やっぱりラクではないですな。でも勤めに出ていた時よりも、気持ちが
充実しているのは確かな気がする。
今日も、保管していたトロロアオイが腐って使い物にならなくなっているのを
発見しガッカリした
でもね、それを助けてくれようとする人がいたり、
本当に肩にことりを乗せて紙を漉いていたりすると、その温もりが
励ましてくれるので、あきらめずがんばろうと思うのです。