<首都圏大学非常勤講師組合 松村比奈子委員長インタビュー>
非常勤講師だけで生活しているいわゆる専業非常勤講師
2007年のアンケートに1,000人以上が回答
平均勤続年数:約11年
平均年齢:40代半ば
平均年収:約306万円
そのうち44%は年収250万円以下のいわゆるワーキングプアと言っていい年収
ほぼ全員が大学院卒
大学の学部生からマスター、ドクターと続けて奨学金を借りた人は1,000万円近い借金がある
専任教員と非常勤講師
同じ仕事をしている専任教員は、研究者として大学から書籍代なども支給されますし、今は随分変わってきたそうですが、学会に行った場合に学会費の一部や懇親会費の一部が補助されます。でも非常勤講師にはまったく何も出ません。また研究室もないわけですから、自分の家で勉強しなければいけない。そうした様々な不利益があります。そのように、研究者として扱われないにも関わらず研究業績は専任と同じように要求され、賃金は低いということです。
大学の授業は無料で奨学金は生活費として国家からサポートされる北欧:
北欧などの国々は人材教育には熱心です。そうした国々では優秀な人材が欠かせないということで、大学までの教育費を無償にし、なおかつ奨学金を出す。日本人の感覚では「大学の授業が無料なのに、なぜ奨学金が出るんだろう?」と思いますが、その理由は、大学で勉強している間は生活費を稼げないから、その分を国家がサポートしますよということなんです。
教える側がワーキングプアのような状況の国というのは、北欧では考えられない
私たちは非常勤だからというだけではなく、教員として教えることが好きだから学生には喜んで教えています。そうすると学生に「将来はぜひ先生のようになりたい」と言われることがある。だけど、当の私たちがワーキングプアなわけです。
A専任教員とB非常勤講師:二つの階級差
6コマ持っている専任教員は年収1,500万円
10コマ持っている非常勤講師は年収300万円
非正規という差別が人間から能力と意欲を奪う
非正規雇用は人間自体を破壊していく
一部の誠意ある専任教員:「同じ人間なのにそんなことをしていいのか」という怒りもある。
「AさんがBさんを差別するのは良くない」という分かりやすい構図ではなく
2つの階級に対して別の第三者が「Aは優遇するけどBは差別する」ということによって差別構造が維持される。
第三者に優遇された場合、優遇されている側は嬉しいので文句を言わず
逆に積極的にBをいじめるようになります。
するとBは差別されているからAに憎しみを持つけど、
第三者に対する憎しみはAへの憎しみに吸収されてしまう。
結局、経営者が正規と非正規をつくって分断することによって
正規と非正規がいがみ合って、経営者が漁夫の利を得るという構図になるんです。このことが、差別が固定化する原因になるわけです。これを取っ払うためには、全国で専任教員と非常勤講師が、あるいは正規と非正規が連帯する必要がある。
ーそれは民間の非正規問題と同じですね。
家族がいても苦しいし、家族がいなければ生存の不安に直結する。
自分が病気で働けなくなったら、もう明日はのたれ死にという人たちが増えてきています。
非常勤講師で家族がいなくて病気になってしまったら現実の問題として生存が危うくなる。
これはやはり何とかしなければいけないと思います。
これは政治の問題なので、政治を動かさないといけない。
民主主義社会においては政治はどうしても「数」ですから、数をまとめるしかありません。だからこそ今、専任教員と非常勤講師が一緒に連帯してたたかうべきです。貧困の再生産を止めていかなければなりません。
大学こそ知性のある人たちの集団なのだから、大学人こそが情報発信し、正義を発信し、連帯を広げていかなければと思います。
【2013年6月、首都圏大学非常勤講師組合・松村比奈子委員長談】
インタビュアー:井上伸
国家公務員一般労働組合執行委員、国公労連書記、雑誌編集者
月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、国家公務員一般労働組合(国公一般)執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『国公労調査時報』編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20140718-00037494/
早稲田大学の場合、非常勤講師が教員全体の約6割
非常勤講師の人数=専任教員の2倍以上
専門分野が外国語の場合、専任は一名あるいはゼロで99%が非常勤講師という大学も多い。
ツイッターより:
前にも呟いたことあるけど、非常勤についてはともかく、大方の専任はこんなにもらっていませんて。一部の例外を一般化するのは止めてください(。-人-。)
>QT「6コマ持っている専任教員は年収1,500万円で
10コマ持っている非常勤講師は年収300万円」これはひどい
という意見もあります。確かに、教員の年収は大学により異なるので、一般化はできないと思います。
が、このインタビューの趣旨は的を得ており、現在でも極めて有効に機能する方向性を明確に示唆していると言えるのではないでしょうか。