プラトンの『対話』には、「人間球体論」という理論が書かれている。
人間はもともと二つの頭と四本の腕それに四本の足を持っていたという神話に基づく説である。
男でも女でもあると同時に男でも女でもない完全に平等なこの存在は、強力なゆえに高慢でもあった。ゼウスはあまりにもうぬぼれ心の強いこの存在を罰するために二つに切り分けてしまった。二つに切られてしまった各々は、もう一方の分身を求め探し続ける。完全無欠な愛が成立するのは、この分身同士が出会った時なのだとする興をそそる不思議な説である。
ジョルジュ・サンドの『夢想者の物語 Histoire d'un reveur 』には、この「人間球体論」を想起させる場面が描かれている。ある旅人がクレーターを見に昇ったエトナ山で不思議な経験をする。美しい声をもった少年と出会った旅人は、この少年が目の前で華麗な女性に変身するのを見る。火山が噴火し、この美少女と結ばれようとした瞬間、旅人は自分の半分が焼け焦がれるのを感じる。そして、くすぶる溶岩の上に、自分の半身が横たわっているのを見るのだ。
精神的な愛と身体的な愛が完全に一致する絶対の愛を探究していた当時のサンドが、プラトン哲学の「人間球体論」に魅かれたのは、当然のなりゆきだったともいえるだろう。
画像はラファエルの描いたプラトンとアリストテレス
プラトンは天を示し、アリストテレスは地を指している。
人間はもともと二つの頭と四本の腕それに四本の足を持っていたという神話に基づく説である。
男でも女でもあると同時に男でも女でもない完全に平等なこの存在は、強力なゆえに高慢でもあった。ゼウスはあまりにもうぬぼれ心の強いこの存在を罰するために二つに切り分けてしまった。二つに切られてしまった各々は、もう一方の分身を求め探し続ける。完全無欠な愛が成立するのは、この分身同士が出会った時なのだとする興をそそる不思議な説である。
ジョルジュ・サンドの『夢想者の物語 Histoire d'un reveur 』には、この「人間球体論」を想起させる場面が描かれている。ある旅人がクレーターを見に昇ったエトナ山で不思議な経験をする。美しい声をもった少年と出会った旅人は、この少年が目の前で華麗な女性に変身するのを見る。火山が噴火し、この美少女と結ばれようとした瞬間、旅人は自分の半分が焼け焦がれるのを感じる。そして、くすぶる溶岩の上に、自分の半身が横たわっているのを見るのだ。
精神的な愛と身体的な愛が完全に一致する絶対の愛を探究していた当時のサンドが、プラトン哲学の「人間球体論」に魅かれたのは、当然のなりゆきだったともいえるだろう。
画像はラファエルの描いたプラトンとアリストテレス
プラトンは天を示し、アリストテレスは地を指している。