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“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

子どもの脳にいい「ブレインフード」があるらしい。

2025年04月13日 12時31分37秒 | 育児
子どもの未来に無限の理想を託す・・・親が陥りがちな白昼夢です。
そんな中、早期教育は無効、強制してやらせてはいけない、等、
過剰な期待の弊害も指摘されています。

食べ物はどうでしょうか?
素材を味わう自然食品を心がけ、
たんぱく質と脂質を中心に置き、
ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取すれば足る、
を私は思いますが。

脳によい「ブレインフード」なるものが存在するそうで、
それを取り扱った記事が目に留まりましたので紹介します。

記事で取りあげられた食材を列挙してみます;
・ベリー類:ビタミンCが豊富・・・免疫系、脳にも働く
・スモモ(プラム、プルーン):トリプタファンが豊富・・・気分の安定に関わる神経伝達物質のセロトニンや、睡眠を促すメラトニンの生成に関与
・サツマイモ:ビタミンAが豊富
・魚:DHAが豊富
・その他:オーツ麦、ナッツ類、柑橘類、豆類、さまざまな色の野菜

・・・以上の食材がお勧めで、最後の一押しは「親がお手本を見せる」こと、
つまり上記食材を子どもの前で親が美味しそうに食べることだそうです。

あれ?
たんぱく質・脂質・糖質(炭水化物)のバランスについての言及がありませんね。
まあ、バランスのよい食事ができているという前提なのでしょう。


▢ 脳にいい「ブレインフード」とは、子どもの脳には特に重要
脳の健康に重要な約45の栄養素から子どもが食べやすいものを紹介
2025.04.02:National Geograpic)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 
 「ニンジンに含まれる栄養素は目の健康に欠かせない」「カルシウムが豊富な牛乳は歯や骨のためにいい」といった話はみな聞いたことがあるだろう。では、脳によい食べ物についてはどうだろう。
 「神経科学の観点から言うと、実際、脳の健康のために食べ物は重要です。脳は栄養素を燃料にして機能していますから」と、米ワイル・コーネル医科大学ウィメンズ・ブレイン・イニシアティブを主導するリサ・モスコーニ氏は言う。
 脳は年齢によってさまざまな栄養素を必要とする。とりわけ、幼児期は脳の成長や発達、健康にとって特に重要な時期だ。(参考記事:「皮を食べないと大損する野菜や果物、キウイやニンジン、柑橘類も」)
 「生まれてからわずか数年の間にも脳は急激にニューロン(神経細胞)を成長させていきます」と、神経科学者でもあるモスコーニ氏は言う。
 現在、脳の健康にとって重要な栄養素は約45あると分かっている。タンパク質、亜鉛、鉄、コリン、葉酸、ヨウ素、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12、オメガ3脂肪酸などだ。
 もちろん、「葉酸」「コリン」と聞いて「おいしそう」などと思う人は、子どもにも大人にもそういないはずだ。そこで、そうした栄養素を豊富に含む食べ物に目を向けてみよう。以下に挙げる食材のほかにも、オーツ麦、ナッツ類、柑橘類、豆類、さまざまな色の野菜を食事に取り入れるとよい。(参考記事:「体にいいナッツ5種、がんや認知機能などに効果、ベストはどれ?」)
 「早いうちに始めることが大事です」と、米ボストン小児病院の小児科医で米ハーバード大学医学部の小児科助教のクレア・マッカーシー氏は指摘する。「子どもが健康によい食べ物しか知らなければ、そうした食べ物を食べる・食べないで親と揉めることはかなり少なくなります」
 取り入れる食品群をいくつか絞って、新しい調理法をトライしてみよう。家族の脳の成長にいいものを提供することは、思ったよりも簡単なはずだ。

▶ ベリー類
 ブラックベリーやブルーベリーなどのよく見かける安価なベリー類にも、ビタミンCが豊富に含まれている。ビタミンCというと免疫系を思い浮かべる人が多いが、脳にも必要な栄養素だ。体内に生じたフリーラジカル(遊離基)はDNAや細胞にダメージを与えるが、それを中和する上で、抗酸化物質であるビタミンCが重要な役割を果たす、とモスコーニ氏は言う。
 「神経伝達物質、すなわち神経系の信号伝達に使われる化学物質の生成にもビタミンCは重要です」と、モスコーニ氏は説明する。ビタミンCが不足すると、脳を含め、多くの体内組織の結合が弱まり始めるという。(参考記事:「「ビタミンCで風邪を予防」のウソ、誤解生んだノーベル賞化学者」)
 ラズベリー、ダークチェリー、マルベリー(クワの実)、ゴジベリー(クコの実)も優秀な食材だ。ベリー類には、天然の糖分と消化器系に重要な食物繊維もバランスよく含まれている

子どもに食べさせるには:今回のリストの中では、おそらくベリー類が一番食べてもらいやすいが、変化を付けたいのであれば、ヨーグルトやダークチョコレートに浸して食べるのがモスコーニ氏のお勧めだ。
 ダークチョコレートには、トリプトファンという必須アミノ酸が含まれていて、それ自体も脳によい食べ物だ。または凍らせたベリー類をシャーベットにしてレモン汁とメープルシロップを少しかけて食べるのもよい。(参考記事:「冷凍の野菜と果物、実は栄養たっぷり、生よりよい場合も」)

▶ スモモ(プラム、プルーン)
 生のスモモ(プラム、プルーン)にも、ドライフルーツにしたスモモにも、トリプトファンが豊富に含まれている。トリプトファンは、気分の安定に関わる神経伝達物質のセロトニンや、睡眠を促すメラトニンの生成に関わっている。睡眠は脳の休息であり補修の時間だ。(参考記事:「睡眠薬が脳の掃除を妨げているおそれ、認知症とも関連、最新研究」)
 チアシードや、ダークチョコレートの原料であるローカカオ(生のカカオ)にもトリプトファンが含まれている。

子どもに食べさせるには:ドライフルーツのスモモは甘さと独特の味わいが絶妙に合わさっており、ピューレ状にすれば、赤ちゃんの離乳食になる。もう少し成長したら、リンゴの代わりにスモモを丸ごと弁当に入れるのもいい。あるいは、半分にスライスしてピーナッツバターをたっぷり塗れば、食物繊維とタンパク質たっぷりのヘルシーなおやつになる。(参考記事:「大腸がんのリスクを下げる食物繊維、1日にどのくらい取るべき?」)

▶ サツマイモ
 「子どもの脳の健康にいい食材を1つだけ挙げるとしたら、濃い緑色をした葉野菜を選びます」とモスコーニ氏は言う。とはいえ、正直なところ「子どもは葉野菜を食べてくれません」と認める。
 では代わりに、サツマイモはどうだろう。自然の甘味があり、いろいろな料理に使え、ビタミンAという別の抗酸化物質が豊富に含まれている。ビタミンAは脳の健康全般に重要な必須栄養素で、深刻なビタミンA不足は、中枢神経系の発達と機能を妨げるおそれがある。

子どもに食べさせるには:ゆでてつぶす、オーブンで焼く、揚げる、グリルで焼く、フライドポテトやタルト、パンケーキ、スープにするなど、レシピは無限にある。(参考記事:「ビタミンやミネラルの相乗効果、一緒に取るといい組み合わせ6選」)・・・

▶ 魚
 人の脳の半分以上は脂肪でできている。つまり、脂質が神経の健康に何らかの役割を果たしているのは明らかだ。だが、どんな脂質を摂取するかが重要だ。
 例えば、オメガ3脂肪酸の一種、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、ニューロンの形成に極めて重要だ。ニューロンは、健全な脳の成長や発達、学習能力を担っているとモスコーニ氏は説明する。
 DHAを摂取するには、「脂肪の多い冷水魚に注目すべき」だという。DHAが豊富なのは、サケのほか、サバ、アンチョビ(カタクチイワシ)、イワシ、ニシンなどの青魚だ。(参考記事:「DHAなどオメガ3脂肪酸は「肺の健康にも重要」、初の報告」)

子どもに食べさせるには:幼い娘がいるモスコーニ氏は、「ワンランク上のフィッシュ・スティック(衣を付けて揚げた棒状の料理)」と名付けた料理をよく作るという。魚の切り身を卵液に漬け、細かく砕いたピスタチオとアーモンド、パン粉、塩を混ぜたボウルに入れて衣を付ける。ココナッツオイルかエキストラバージンオリーブオイルでソテーしてできあがり。
 もちろん、子どもが青魚に手を出そうとしない場合は、冷凍食品コーナーで定番のフライやスティックを使って、魚の味に慣れさせるのも手だ。ティラピアやタラにも、健康にいい脂肪酸が含まれている、とマッカーシー氏は言う。
 マッカーシー氏から最後にもう1つアドバイスがある。それは「親が手本を見せること」だ。
 「子どもは親を見ていて、親から学びます」とマッカーシー氏は言う。「健康によいブレインフードを子どもに食べさせたいのなら、親も食べるべきです」(参考記事:「いつまでも記憶力は保てる、脳にいい運動の程度と食事とは」)



子どもを“フロー”状態に持っていくスキル

2025年04月13日 11時06分43秒 | 子どもの心の問題
何かに集中して他のことを忘れる時ってありますよね。
大人でスポーツをしている方はご存知と思われますが、
ランナーズハイやスイマーズハイ、等もその例です。

完全になにかに没頭している状態を「フロー」と呼ぶそうです。
子どもがフロー状態の時、成長と幸せを促すとのこと。

私はこれを聞いて、中学生の時に呼んだヘルマンヘッセの小説(エッセイ?)を思い出しました。
ある生徒が窓の外を見て空想の世界に浸っているとき・・・
ふつうの先生であれば、
「こら、ボーッとしているんじゃない!」
と叱るのが一般的ですが、
小説に登場する先生は、気づいても何も言わずにそのまま様子を見ていたそうです。

随分昔の話しでしょうけど、
その先生は「フロー」の大切さを認識していたのかもしれません。

SF少年であった私にも、
授業中に空想の翼を拡げて別世界に行っていた経験があります。
記憶が残っているということは、
その時の先生もスルーしてくれたのでしょう。

記事を読んで感じたこと。
なんだか「子育て指南書」を読んでいる錯覚に陥りました。

子どもがフロー状態に入りやすい環境を作るためには、
1. 子どもが何に興味をもつかを探る
2. 気が散るものを排除し、邪魔されない時間を確保する
3. 子どもに「足場」を用意してサポートする
4. 成果を重視しない
等が大切、と説明しています。

結局、
子どもをしっかり見つめて観察し、
コミュニケーションを取り、
安心を与えて自由にさせる、
ということに尽きると。

そして“成果”ではなく“過程”を評価するには、
子どものために時間を割いてエネルギーを使ってしっかり見つめる必要があります。


▢ 子どもを夢中な「フロー状態」に導くには、創造性を育み幸せに
子どものポテンシャルとやる気を引き出すために、親ができる後押しの4つの秘訣
2025.04.03:National Geographic)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 ギターを弾くなど、子どもが邪魔されずにやりたいことをするとき、「フロー状態」になることがある。専門家によれば、このように何かに完全に没頭している状態は、子どもの健やかな成長と幸せを促すという。
・・・
 心理学者によると、人が満ち足りた幸せを得るのは、何かに夢中になっているときや、誰かと重要な関係性を築いているとき、達成感とともに技能や知識を得られるような目標に向かっているときだという。
 不確かな状態や恐れなどは、子どもの活気を奪う要因になる。「現代の私たちは、脅威や安全に対する感覚が過度に高まりすぎて、何かにチャレンジすることが難しくなっています」とフロウ氏は指摘する。(参考記事:「子どもの心の健康にも「沈黙は金」、その大きな効果と処方箋」)
 しかし、エミーさんがドラゴンに出会ったように、虚脱感に対抗する手段はある。「フロー」だ。フローとは、何かに没頭している状態を指し、充実した幸せをもたらす特徴的な要素をいくつも備えている。
 フロー状態の子どもは、自分がしていることに完全に夢中になっていて、時間がたつのを忘れ、食べる・寝るといった身体的な欲求すら忘れてしまう
 「人はみな生まれつき、成長したいという欲求を持っています」とフロウ氏は言う。「子どもがフロー状態になるよう働きかけることは、子どもが自分のポテンシャルを模索し、発揮するのに役立ちます」(参考記事: 「私たちは実は努力が大好き、挑戦に駆り立てるドーパミンの力」)

▶ フロー状態の脳では何が起きているのか
 人がフロー状態のとき、脳では実にさまざまなことが起きていて、その全体像は単純ではないことがわかっている。
 米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の外科医であり神経科学者でもあるチャールズ・リム氏は、2008年2月27日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表した研究で、ジャズミュージシャンがピアノを演奏しているときの神経活動を調べた。
 すると、「即興で演奏しているとき、前頭前皮質(自己を客観的に観察することに関わる領域)の広い範囲が止まったようになっている」ことがわかった。
 また、「クリエイティブな活動をしている間は、感覚処理や運動処理を司る部分(の活動量)が増えているとみられる」とリム氏は語る。同様のパターンは、フリースタイル・ラップのミュージシャンや、コメディアン、風刺漫画作家にも見られた。
 簡単に言うと、人が没頭してフロー状態にあるとき、自意識は消えるが、している活動に対する意識が高まることが、脳をスキャンしたところわかった、ということだ。フロー状態に入ったダンサーは、例えば、おそらく筋肉の痛みは感じていないが、自分の動きを左右する曲には超敏感に反応している。
 このことは、子どもにとってどんな意味を持つのか。何をするかによって、またその人の専門の度合いによって(例えば「絵を描くのが好きな子ども」と「プロのアーティスト」の違い)、フローの状態には複数のレベルが存在するのではないか、とリム氏は推測する。
 現在進められている研究の中で、リム氏のチームは、音楽的な訓練を受けていない9~11歳の子どもを対象に、即興演奏中の脳の活動を調べた。ミュージシャンを対象にした実験と同様に、暗記した曲を演奏しているときと、即興で演奏しているときの脳のパターンを比べた。実験は、どんな音を鳴らしたとしても絶対に間違っているようには聞こえないような仕組みで行われた。
 「プロのミュージシャンと比べると、子どもの脳の活動はかなり控えめでした」とリム氏は言う。「子どもの脳のパターンと、訓練を経た大人の脳のパターンには、どのような関連性があるのかという興味深い疑問が生じました」
 とはいえ、「子どもが暗記から即興に移ったとき、つまり丸暗記から完全に夢中になれる活動に移ったときの脳には大きな違いがある」ことは明らかになった。今後続く研究によってさらに詳細が判明することだろう。(参考記事:「「推しがいること」は脳にとって薬か毒か、一方通行の関係の科学」)
 神経化学の観点から言うと、フロー状態では、学習や記憶、感情の制御に関わる神経伝達物質のドーパミンが重要な役割を担っている。(参考記事:「ドーパミンは「快楽物質」ではない、“幸せホルモン”の真実」)
 「実際、フロー状態は、脳のドーパミン作動性回路(ドーパミンが脳内を伝わる経路)をうまく利用している」と、英ロンドン大学の心理学教授ジョイディープ・バッタチャリア氏は言う。氏は、フロー状態になる頻度が高い人のドーパミン作動性回路は「時間をかけて徐々に再編成され、形作られる」のではないかと推測する。
 したがって、定期的にフロー状態になることで、学習意欲や感情をコントロールするスキルを向上させられるのかもしれない
 2013年11月22日付けで学術誌「Frontiers in Psychology」に発表された研究で氏は、ピアノを学ぶ学生のフロー状態に入る能力と、感情知能(感情を理解、管理、活用する能力)の間には関連があることを示した(ただし、研究は相関関係を示すものであって、因果関係を示すものではない、と氏は注意を促している)。

▶ 子どもがフロー状態になるよう働きかけるには
 落書きや積み木で高層ビルを作り上げることに夢中になる子どもをみたことがある人ならわかるだろうが、「子どもはフロー状態になる傾向を生まれつき、本質として持っています」と、バッタチャリア氏は言う。
 だが、ちょっとした後押しが必要なときもある。子どもがフローの恩恵を受けられるよう、いくつかアドバイスを専門家からもらった。(参考記事:「6つの子育てスタイル、子どもにベストなのは? 専門家に聞いた」)

1. 子どもが何に興味をもつかを探る
 フロー状態になるには、本人の内側から生じる動機が非常に重要であるため、子どもが何に夢中になるかを探ることが大事だ。
何に興味があるのか、子どもと話をしてください」と、ミシェル・ハリス氏は言う。氏は米国ニューヨークに拠点を置く認定臨床ソーシャルワーカーで、親たちのためのコーチングやワークショップなどのサービスを提供する会社「ペアレンティング・パスファインダー」の創設者だ。
 また、子どもにただ「これをしなさい」と言うのではなく、子どもに自分で考えさせるべきだ、とも説く。自主性が認められると、続ける可能性が高くなる。年少の子どもの場合は、「自分で思いつくのが大変そうであれば、親がアイデアを出して提案してもかまいません」とアドバイスする。
 どんな活動が「フロー状態」になるかは、個人によって大きく異なる。「何が子どもの心に火を付けるのか、お子さんのために探ってください」と、米ラトガース大学の教育心理学者デビッド・シャーノフ氏は言う。
「こうした類いのフロー状態になる活動を積み重ねていけばいくほど、子どもはやる気や意義を感じるようになります」(参考記事:「趣味は脳と体にいい、寿命を10年近く延ばすスポーツ他おすすめは」)

2. 気が散るものを排除し、邪魔されない時間を確保する
 私たちが生きている時代は気が散ることばかりで、予定もぎっしり詰まっている。どちらもフロー状態を壊しかねない。「テレビを消して、気が散りにくい場所を見つけてください。そして、今はただ、自分が取り組んでいることを楽しむ時間だよ、と子どもに伝えてください」とハリス氏は言う。(参考記事:「「SNS断ち」に短期間でも驚きの効果、専門家が秘訣を伝授、研究」)
 フロウ氏も同意見だ。「何も決めず自由に遊ぶこと、しかもたくさん遊ぶこと。それが不可欠です」。例えば、フロウ氏の11歳の娘と14歳の息子は、興味のあることをする自由な時間を十分に確保するため、課外活動は2つまでにしているという。

3. 子どもに「足場」を用意してサポートする
 フローには微妙なバランスが求められる。興味を持ち続けられる難易度は必要だが、がっかりしてしまうほど難しすぎてもいけない。子どもがヘルプを必要としがちな最初の頃は親が「足場」となるようなサポートを用意して、このバランスを保つ必要がある。子どもに自信がついてきたら、親は手を引く。
 レゴを例に挙げよう。まずは「説明書の通りに作れば、何ができあがるのかがわかるキットから始めるのがよいでしょう」とシャーノフ氏。子どもが基本を身に付けたら、何か新しいものを一緒に作るとよい。
 「煙突の色は何色にする?」「ここのドアは外開き、それとも内開き?」など、子どもに尋ねるのを忘れないように。ただし、主導権は子どもに握らせる
 フロー状態をもたらす活動に親が一緒に取り組むことは、子どもとのつながりを生む非常によい方法でもある。
 家族でも友達でもメンターでも、他の人とつながっていると感じられると、フローを促し、虚脱感にも対抗できるかもしれない。例えば、学校におけるフローに関するシャーノフ氏の研究では、教師と同級生からのサポートは、生徒の積極的な参加につながることがわかった。
 「フロー体験を友だちと共有することは有意義で、絆を生むきっかけになります」とシャーホフ氏は言う。さらに、友だちやメンターから即座にフィードバックが得られれば、子どもは目標(あるいはそれ以上)を達成しやすくなる。(参考記事:「科学の教え、「もっと人に助けを求めよう」 、どういうこと?」)

4. 成果を重視しない
 親が成果や結果を重視すると、やっていることを楽しむ気持ちを失わせてしまうかもしれない。「ピアノを弾くのにモーツァルトになる必要はないし、バスケットボールをするのにマイケル・ジョーダンになる必要もありません」とリム氏は言う。
 そうではなくて、子どもがもう少し自由に、手順やルールなどに縛られずに取り組めるようにしよう。出版のことは一切考えずコミックブック制作に取り組むのもいいし、お気に入りの映画のサウンドトラックに合わせて歌うのもいい。
 結局のところ「創造性は万人に備わっている」というのがリム氏の考えだが、さらに磨きをかけるには訓練が必要だ。
 「子どもがこうした活動に取り組むとき、脳内では創造性が育まれています」とリム氏は語る。そして子どもがフローを通じて自身のクリエイティブな本質に触れるようになればなるほど、大人になったとき、そうしたスキルを生産性へと発展させられる可能性が高くなるだろう。


子どもの身長を伸ばす食材

2025年04月08日 14時10分13秒 | 育児
古くて新しい話題・・・
子どもの身長を伸ばしたい!
どうすればいい?

非科学的な迷信も多々ありますが、
科学的に正しい情報を提供します。

子どもの成長に関わるメインの要素は、
年齢と共に変化することがわかっています。

乳児期は「栄養」
幼児期は「成長ホルモン」
思春期は「性ホルモン」
・・・これが医学の常識です。

ですから、成長不良の患者さんを診たとき、小児科医の頭の中は、
乳児の成長不良 → 栄養不良はないか?
幼児期の成長不良 → 成長ホルモンが足りているか?
思春期の成長不良 → 性ホルモンは十分分泌されているか?
との疑問がグルグル回っています。
もちろん、栄養不良は基本的に全年齢に影響を及ぼします。

整形外科医に取材した「子どもの身長を伸ばす」記事が目に留まりましたので紹介します。
結論から申し上げると、
「卵と肉と魚を食べるべし」
という、ごくフツーの内容でした。

ここには糖質・炭水化物が登場しません。
つまり、「糖質制限食」「ロカボ」が身長を伸ばす食事、
ということになりますね。

<ポイント>
・完全栄養食と呼ばれる卵は1日1個より1日2個食べたほうが身長が伸びるという報告がある。
・身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれている手頃な食材がある、それは「サバ缶」。
・子どもの身長を伸ばすためにはカルシウムが大事。
・卵は必須アミノ酸をすべて含む優秀なたんぱく源。さらに、ビタミンC、食物繊維以外の栄養素をすべて含むことから、「完全栄養食」と呼ばれていまる。
・肉と魚介はどちらも優秀なたんぱく源。肉と魚介を1:1で摂るよう心がるべき。
・牛肉には、鶏肉にあまり含まれていない鉄や亜鉛が多く、豚肉はエネルギー代謝を促すビタミンB1が鶏肉より多いというメリットがある。
・牛肉には鉄や亜鉛が豊富に含まれており、豚肉や鶏ササミやムネ肉はビタミンB群が豊富。
・魚介には肉にはほとんど含まれないビタミンDを含むものがたくさんある。骨ごと食べられるものならカルシウムもたっぷり摂れる。
・マグロやカツオ、サバなどには鉄やビタミンB群も豊富。さらに、青魚や鮭、マグロやカツオなどの脂に多く含まれるオメガ3不飽和脂肪酸(以下・オメガ3)には、神経伝達をスムーズにして脳の認知機能を向上させたり、体内の炎症を抑え、アレルギー症状を軽減させる働きが認められている。
・生サバ、塩サバ、サバ水煮缶、サバ味噌煮缶は、骨の材料になるたんぱく質、カルシウムのほかにも、身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれている。


▢ カルシウムだけじゃ骨は伸びない…「子どもの身長を伸ばす栄養素」が一気に摂れる"超万能食材"「完全栄養食」である卵は1日2個食べたほうがいい
田邊 雄:東京神田整形外科クリニック院長
2025.3.30:PRESIDENT)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 何を食べれば身長が伸びやすくなるのか。東京神田整形外科クリニック院長の田邊雄さんは「完全栄養食と呼ばれる卵は1日1個より1日2個食べたほうが身長が伸びるという研究結果がある。さらに、身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれている手頃な食材がある」という――。

▶ 成長ホルモンと栄養、どちらも欠かせない
 子どもの身長を伸ばすためにはカルシウムが大事だと思う方が多いのではないでしょうか? しかし、身長を伸ばすのに必要なのはカルシウムだけではありません。
 成長期には脳の脳下垂体という部分からたくさんの成長ホルモンが分泌されます。これは「今、成長しなさい」という脳からの指令。成長ホルモンは、その指令に従い、食事で取り入れた栄養を使って骨を伸ばします。
 骨を伸ばすためには、カルシウムだけではなく、たんぱく質、ビタミンD、亜鉛、鉄といった多くの栄養素が必要となります。
 つまり、身長を伸ばすためには、次の2つが重要です。
・脳から成長ホルモンが十分に分泌されること
・骨の成長に必要な栄養を十分に摂ること
 睡眠をはじめとする生活のリズムが乱れて成長ホルモンが十分に分泌されなかったり、必要な栄養が不足したりするだけで、骨の成長は停滞し、身長が伸びにくくなる可能性があるのです。
成長ホルモンと栄養。この2つが連携して子どもの体は成長していくということを、まずは覚えておいてください。

▶ 卵は「完全栄養食」と称えられる理由
 卵はMサイズ1個(50g)に約6gのたんぱく質が含まれています。ここでは、たんぱく質を構成するアミノ酸について解説しましょう。
 人体を構成するアミノ酸は20種類。そのうちの9種類が必須アミノ酸です。必須アミノ酸は人体で合成できないため、食事で摂る必要があり、1つでも不足すると、体内でたんぱく質が十分に合成されなくなります。
 そのため、栄養計算上ではたんぱく質が十分でも、必須アミノ酸が不足していると成長に悪影響が及ぶ可能性があるのです。
 卵は必須アミノ酸をすべて含む優秀なたんぱく源。さらに、ビタミンC、食物繊維以外の栄養素をすべて含むことから、「完全栄養食」と呼ばれています
 さらに注目すべきは、必須アミノ酸の消化吸収率(DIAAS)。・・・卵の消化吸収率は動物性食品の中でもトップクラス。卵は非常に優秀な食材なのです。

▶ 卵は「1日1個」より「1日2個」
 卵は1日に何個食べると身長の伸びに効果があるのでしょう? ウガンダの小学校で「卵が子どもたちの成長にどれくらい影響を及ぼすか」を調べた研究の結果を見てみましょう。
 調査の内容は次のとおりです。
 対象は6〜9歳の小学生。週5日提供されている給食で、卵0個のグループ、卵1個のグループ、卵2個のグループに分け、これを6カ月間継続し、それぞれの身長の伸びを比較。
 結果は、卵0個のグループは3cm弱、1個のグループは約2.5cm、2個のグループは3.5cm弱身長が伸びていました。明らかに卵2個食べたほうが身長が伸びていたのです。・・・
 つまり、卵を食べない、または1日1個食べるより、2個を毎日食べることで身長が伸びる可能性が確認されたのです。
 たんぱく質が少なくなりやすい朝食で卵2個を食べてもいいですし、朝1個、夜1個でもかまいません。ただし、卵には脂質も含まれているので、体脂肪率が高い子どもは食べすぎないようにしましょう

▶ 鶏ササミ・むね肉はたんぱく質が豊富
 「肉はどの種類のどの部位を食べればいいですか?」という質問をよく受けます。身長を伸ばすという点においては、鶏ササミ・鶏ムネ肉がおすすめです。
 その理由は骨の材料となるたんぱく質を多く含むからです。
 100gあたりのたんぱく質量が多いのは、鶏ササミ約25g、鶏ムネ肉(皮なし)約24g、豚ヒレ肉(赤身)が約23g。逆にたんぱく質が少ないのは、牛バラ肉が約11g、牛サーロインが約12g、牛肩ロースが約14g(すべて和牛)となります。
 鶏ムネ肉・ササミと牛バラ肉のたんぱく質量には、倍以上も差があるので、牛バラ肉を優先的に食べ続けた場合、かなりの量のたんぱく質を取り損ねることになります。
 ただし、牛肉には、鶏肉にあまり含まれていない鉄や亜鉛が多く、豚肉はエネルギー代謝を促すビタミンB1が鶏肉より多いというメリットがあります。それぞれの栄養価を知り、鶏ムネ肉やササミをメインにしつつ、たんぱく質量の多い牛や豚のヒレ肉やモモ肉を、ときどき加えるといいでしょう。

▶ 魚介にも肉にもそれぞれメリットがある
 肉と魚介はどちらも優秀なたんぱく源。成長に欠かせない必須アミノ酸をバランスよく含む点でも同レベル、100gあたりのたんぱく質含有量もほぼ同レベルです。
 だからといって、肉ばかり、魚ばかり、さらに同じ種類ばかりを食べるのは、おすすめできません。偏らずにいいとこ取りをしたほうが、成長のためにはいいからです。
 たとえば、魚介には肉にはほとんど含まれないビタミンDを含むものがたくさんあります。骨ごと食べられるものならカルシウムもたっぷり摂れます
 マグロやカツオ、サバなどには鉄やビタミンB群も豊富。さらに、青魚や鮭、マグロやカツオなどの脂に多く含まれるオメガ3不飽和脂肪酸(以下・オメガ3)には、神経伝達をスムーズにして脳の認知機能を向上させたり、体内の炎症を抑え、アレルギー症状を軽減させる働きが認められています。成長期の子どもにとって有意義な働きがたくさんあることがわかります。

▶ 週1回は食べてほしい「サバ缶」
 肉の場合も同様にメリットがあります。牛肉には鉄や亜鉛が豊富に含まれており、豚肉や鶏ササミやムネ肉はビタミンB群が豊富です
 それぞれのいいところを上手に取り入れるためには、肉と魚介を1:1で摂るよう心がけてみてください。完璧にできなくてもかまいません。たとえば、朝食で魚介を食べなかった場合は、夕食で魚介を食べる。前日、肉ばかりを食べてしまったら、次の日は魚介をメインにするといった感じで意識して実践するだけで、大きく偏るのを防げます。
 魚介を取り入れる際におすすめしたいのがサバ水煮缶です。「加工したサバより新鮮なサバのほうが体にいいのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか。しかし、答えはノー。サバ水煮缶の栄養価は、生サバや塩サバに劣ることはありません。むしろ優れている部分もあるのです。

▶ 5つの栄養素がすべて入った優秀な食材
 生サバ、塩サバ、サバ水煮缶、サバ味噌煮缶の100gあたりの栄養価を比較してみましょう。・・・
 いずれも、骨の材料になるたんぱく質、カルシウムのほかにも、身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれています。なかでもサバ水煮缶は、カルシウムの量が多く、不足しがちな鉄や亜鉛、ビタミンDもしっかり含まれています。味噌煮缶よりたんぱく質、カルシウム、亜鉛、ビタミンDの量も豊富です。
サバ缶は、サバを骨ごとぶつ切りにして缶に入れて加熱しているため、骨に含まれるカルシウムも逃さず摂取できます。刺身や焼き魚ではかなわない、サバ缶ならではのメリットです。
 サバ水煮缶100gあたりには、約11gの脂質が含まれています。脂質が多いとなると、肥満、そして身長の伸び率低下のリスクがある早熟が気になり、避けたくなるかもしれません。
 しかし、サバなどの青魚に含まれる脂質は積極的に摂ってください。なぜなら、人間の体内では合成できない「必須脂肪酸」のオメガ3が多く含まれているからです。

▶ 子どもの脳の健やかな成長も促す
 オメガ3は、血液サラサラ効果があることで知られていますが、子どもの成長にも欠かせない栄養素です。・・・
 特に注目したいのは、脳神経の発達を促す働きです。脳は心身のあらゆる機能を操る司令塔。身長を伸ばすのに欠かせない成長ホルモンも、脳の指令によって分泌されるのですから、脳の健やかな成長はとても大切です。
 また、体内の炎症を抑える働きがあることから、運動によって傷ついた筋肉の修復にも有効。疲労回復効果もあることから、アスリートも積極的に取り入れている栄養素です。
 オメガ3にはたくさんのメリットがありますが、酸化に弱いという弱点があります。サバ缶の場合、缶を開けた瞬間から酸化が始まるので、開封後は早めに食べきるようにしてください。
 また、熱によっても酸化が進むので、加熱せずに食べるのがベスト。缶汁にもオメガ3が含まれていますが、身にも十分含まれていますから缶汁は無理をして摂る必要はありません。

<参考>

こどものSOSが聞こえてますか?

2025年03月27日 10時02分13秒 | 子どもの心の問題
こどもに関する諸問題を扱った書籍を読むと、
「まず子どもの気持ちを受け止めましょう」
という文章にたびたび出会います。

逆に言うと、
現代社会では子どもの気持ちを受け止める土壌が崩壊しており、
それが問題の源流となっている、
と言い換えることができるかもしれません。

そしてネット社会になり、
子どもの相談先は玉石混淆のバーチャルサイトに移り、
ますます家族・保護者から離れていっているようです。

危険ですね。

そんな内容を扱った記事が目に留まりましたので紹介します。

<ポイント>
・子どもの死亡例の約2/3は病死、1/3は外因死です。そして、外因死のうち最も多くを占めるのが自殺
・就学前児童のインターネット利用状況:1歳児では33.1%、2歳児では58.8%が利用しており、6歳児では8割を超えました。
・スマホ所持率:6歳児では既に13.3%の子どもが自分専用のスマートフォンを所持している、10歳以上の小学生では70.4%、中学生では93.0%
・就学前児童の遊びを調査:よくする遊びとして、砂場遊び43.7%、鬼ごっこや缶蹴り31.2%に対して、YouTubeの視聴が58.7%
外で兄妹や友人と遊ぶより、スマートフォンなどを手にしている機会のほうが多い。友人や家族に何かを相談する機会は減り、インターネットで自己解決しようとしている。

私が就学前児童の頃(50年以上前)は、
子どもは外で遊んで日が暮れるとかえってくるのがふつうでした。
田んぼや空き地を犬と駆け回り、
刈り取った藁で秘密基地を作り、
ザリガニ釣りをしていました。

とにかく体を動かし、
ヘトヘトになって帰宅する毎日でした。
家の中で遊ぶのは、雨の時だけ。

病弱だった私が健康になれたのは、
その走り回った日々のおかげかもしれません。

今思い返すと、藁のニオイや、ヒバリの鳴き声が蘇ります。


▢ SOSを発しない子ども
一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)
 (2025年03月22日:日本医事新報社)より一部抜粋(下線は私が引きました);

▶ 子どもの死亡検証
 2024年の出生者数は72万988人と過去最少の数字でした。貴重な子どもの命を守らなくてはなりません。筆者らは地域における18歳未満の子どもの死亡例を検証し、防ぎうる死の予防や、死が避けられない子どもに対する医療や支援の充実に努めています(child death review:CDR)。
 筆者が検証している地域では、どもの死亡例の約2/3は病死、1/3は外因死です。そして、外因死のうち最も多くを占めるのが自殺です。自殺例を検証して、事前に気づける変化はなかったのか、子どもが発するサインはなかったのか、早期に介入できなかったのかなどが話し合われます。しかし、どうしても周囲が気づけるようなサインを発せずに、自殺に至る例があります。その背景には、近年の子どもの生活状況が関係しているようです。

▶ インターネット利用状況
 昨年、政府は青少年のインターネット利用環境実態調査結果を公表しました。年齢とともにインターネットの利用率は高くなりますが、驚いたことに、1歳児では33.1%、2歳児では58.8%が利用しており、6歳児では8割を超えました。利用する手段はスマートフォンや携帯電話が圧倒的でしたが、6歳児では既に13.3%の子どもが自分専用のスマートフォンを所持しているそうです。そして、その率は年齢とともに上昇し、10歳以上の小学生では70.4%、中学生では93.0%となりました。
 目的としては、低年齢ほど動画の視聴やゲームが多かったのですが、年齢とともに、情報検索や投稿、メッセージ交換の割合が上昇していきました。このように、現在の子どもたちが育ってきた環境は、明らかに私たち大人とは異なります。

▶ 子どもの遊び
 6歳就学前までの子どもの生活について、民間の研究所が継続的に調査を行っています。「幼稚園や保育園以外では誰と一緒に遊ぶか」という問いに対して、1995年には「兄妹」や「友だち」と答える割合は半数以上でした。しかし、その割合が年々低下し、2022年にはそれぞれ38.8%および16.0%でした。さらに、よくする遊びとして、砂場遊び43.7%、鬼ごっこや缶蹴り31.2%に対して、YouTubeの視聴が58.7%になっていました。
 このように、外で兄妹や友人と遊ぶより、スマートフォンなどを手にしている機会のほうが多いようです。

▶ SOSが発信されない
 子どもたちの多くは幼少期からインターネットで情報を得て、コミュニケーションもインターネットが主体となっています。友人や家族に何かを相談する機会は減り、インターネットで自己解決しようとしているようです。その結果、たとえ悩んでいたとしても、それが発信されず、周囲がこころの変化に気づけない状況になります。
 社会では自殺予防に向けた相談窓口や相談ダイヤルがありますが、インターネット社会で育った子どもたちに有用なのか検証する必要があります。とは言っても、このようなSNSが中心の社会を後戻りさせることはできません。
 子どもを育てる上で何か足りないところがあったはずです。子どもの自殺予防のために今、大人が立ち上がらなければなりません。


・・・ネットと自殺、というキーワードで、
もう一つ目に留まった記事があり、紹介します。
検索ワード「学校に行きたくない」の検索数と中高生の自殺数が比例していた、
という驚くべきデータ。

▢ 日本の小中高生の自殺リスク「学校に行きたくない」検索量と関連
(鷹野 敦夫)
2024/11/20:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 
 自殺は、日本における小児および青年期の主な死因となっている。自殺リスクの検出に、インターネットの検索量が役立つ可能性があるが、小児および青年期の自殺企図とインターネット検索量との関連を調査した研究は、これまでほとんどなかった。多摩大学の新井 崇弘氏らは、自殺者数と学校関連のインターネット検索量との関連を調査し、小児および青年期の自殺予防の主要な指標となりうる検索ワードの特定を試みた。・・・
 2016〜20年の警視庁より提供された日本の小中高生における自殺企図の週次データを用いて、検討を行った。インターネットの検索量は、Googleトレンドから収集した20の学校関連ワードの週次データを用いた。・・・主な結果は以下のとおり。

・「学校に行きたくない」「勉強」の検索ワードは、自殺発生率とのグレンジャー因果性が認められた。
・相互相関分析では、「学校に行きたくない」では-2〜2(タイムラグ最高値:0、r=0.28)、「勉強」では-1〜2(タイムラグ最高値:-1、r=0.18)の範囲で有意な正の相関が認められ、自殺者数の増加に伴い検索量の増加が示唆された。
・COVID-19パンデミック期間中(2020年1〜12月)では、「学校に行きたくない」の検索傾向は、「勉強」とは異なり、自殺頻度との高い関連性が認められた。

 著者らは「『学校に行きたくない』のインターネット検索量のモニタリングは、小児および青年期の自殺リスクの早期発見につながり、Webベースのヘルプライン表示の最適化に役立つ可能性が示唆された」とまとめている。

<原著>

“食べることに興味がない子ども”への対応

2025年03月27日 07時42分54秒 | 育児
乳幼児健診で多い相談事の筆頭が「偏食」です。
その中身はさまざまで、
原因・理由もさまざま。

単なる好き嫌いのレベルから、
発達の問題、感覚の問題、食事習慣の問題など、
紐解いていくと複雑です。

そんな相談の中に、
「食べ物・食べることに興味がない」
という相談があります。

現在、偏食について鋭意勉強中の私ですが、
啓蒙書にそれを扱った項目があったので、
抜粋・要約して残しておきます。

▶ 偏食の子どもを持つ保護者への対応の基本は、
「食卓における親子の役割分担」
・親の役割:いつ、何を、どこで食べるかを決める
・子の役割:食べる食べない、食べる量を決める
・子の役割を守ると偏食が改善するが、守らないとバトルが始まる

その具体的な方法を列挙します。

● 保護者の役割は「いつ」「どこで」「なにを」食べるか決めること

(いつ) → 規則正しい食事とおやつを提供する
⭕️ 2歳まで:3食+軽食2回(朝食・午前軽食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 2歳以降:3食+軽食1回(朝食・昼食・午後軽食・夕食)
⭕️ 食事間隔を2.5〜3時間開ける
⭕️ 1回の食事時間を15〜30分
❌️ 1日3食
❌️ 食事と食事の間に欲しがったら与える(ダラダラ食べ)
❌️ 1回の食事時間が40分以上

(どこで) → 家族が食べる食卓で一緒に
⭕️ 座位保持から独步まで(6ヶ月〜1歳):ハイチェア
⭕️ 小走りし始めたら(1歳半〜2歳以降):ステップチェア
⭕️ 座卓の場合は豆椅子
 ✓ 1〜2歳:背もたれつき
 ✓ 3歳以降:円座(硬めの正座用クッション)
⭕️ 外出時は親が決めた場所
❌️ 親が食事の途中に離席する
 ✓ 離席した子どもの相手をするため
 ✓ 食卓にないものを取りに何度も立ち上がる
❌️ テレビやビデオ、YouTube、スマホ、タブレットを見せる
❌️ 親が食事中に食卓で授乳する

(なにを)
⭕️ 栄養バランスの取れたメニューを決めて出す
❌️ 何を食べたいか子どもに聞く
❌️ 出すつもりではなかった食べ物を出す
❌️ 食べる順番を決めて守らせる
❌️ 食べ物をごほうびにする

● 子どもの役割は「食べるかどうか」「どのくらい食べるか」を決めること
〜そのためには保護者は子どもを信頼する必要がある、すると・・・
⭕️ 食べる・食べない・食べ残すを決める
⭕️ 好きなものだけ食べる、嫌いなものは食べない
⭕️ その食卓のメニューのおかわりをする
❌️ その食卓のメニュー以外のものを要求する

● 上記の役割分担の境界線を越えると、摂食の問題が発生する
(例)子どもが何をどれだけ食べるかを保護者が決める・コントロールする
(例)子どもに献立を決めさせる

● 上記の役割分担を守ると子どもたちは食べることを楽しいと感じるようになる

迷ったらここに立ち戻り、
何が問題なのかを再考することを繰り返すのが良いですね。
では実践編です。


▶ 実際に「うちの子、食べることに興味がないんです」と相談されたら・・・
・食べる食べない以前に、食材になじんで興味を持たせることから始める。
・食材の育ち、流通を知り、スーパーでの買い物、一緒に料理など、
 食に関連する面白い体験を取り入れる。
・するとモンスターであった未知の食べ物が、友だちになる瞬間が来る。
・食べることに興味を持たせるためには、
 食べさせようとする(強制)よりも、
 食事時間を含む生活リズムを決めることが有効。
・時間が来たら、食卓に座ることを日常生活のリズムにする。
・時間を知る出来事のあとに、または好きな活動をしたあとに食卓に座るという流れを作るとよい。
(例)
「お昼のチャイムが鳴った、あ〜お昼だ、手を洗って椅子に座ろう」
「園からかえったら、午後のおやつの時間だ、手を洗おう」
「夕方外遊びをしたら手を洗って、夕ご飯の支度のお手伝い」
・前後のお手伝いとお片付けを取り入れると、
 自然に座って食べるようになるかもしれない。
・食事時間には、一連の流れで座る〜座ったら食べる、
 が習慣化することで臓器感覚(空腹感)が養われる。
・4〜5歳になったらスケジュール表を子どもと一緒に作り、
 次に何をするかを“見える化”すると効果的。

▶ 親自身が食事に興味がない場合
・食べることに興味のない保護者が、
 自分の子どもの食事を用意するのは大変な作業。
・基本は同じで、まず、
「保護者自身が好きな食べ物を子どもと一緒の食卓で食べる」
・好きな食べ物を食べている保護者の表情はきっといいはず、
 それを見たこどもも「何それ?」と興味を示すかもしれない。

▶ はじめての食材にまったく手を出さない場合
・食べたことのない食べ物は、子どもにとってはモンスター。
・食べるまでのステップには以下のすべてが必要(Toomey)
 ✓ 食べ物の存在を認める
 ✓ 食べ物を見る
 ✓ 食べ物に触る
 ✓ 食べ物のにおいをかぐ
 ✓ 食べ物を舐めて味を知る
 ✓ 食べ物をかじる
 ✓ 食べ物を噛んで粉砕する
 ✓ 食べ物を飲み込む
● モンスターをお友だちにする方法
・ストレスフリーの食卓で親子の役割分担(前述)を守る。
・リラックスできるようになると、家族が食べているものに興味を持つようになる。
・子どもが食べ物に触れたり、遊び出したりしたら、
「行動実況放送賞賛法」を使って遊びを続けたくなる状況にする。
・子どもがその食べ物に慣れてくる(お友達になれそう)と、
 見て、触って、においをかいで、かじって・・・
 という順番で仲良しになっていく。
・かじったあと、噛んで飲み込むまでにもさまざまなステップがある。
・子どもがかじったら、保護者は素早く「あ、かじっているね、ママも」
 などと子どもの良い行動をまねてみる。
・子どもは大人が自分のまねをすると得意になってさらにやろうとする。
・1回のトライですぐに食べ物を触り始めることは期待しない。
・さまざまな食材で、楽しい雰囲気で、ゲーム感を持って繰り返しやってみる。


脂肪の多い食品にかけたデンマークの「脂肪税」が1年で廃止

2025年03月09日 08時11分10秒 | 子どもの心の問題
イギリスでは食品会社に「国民にわからない程度に食品の塩分含有量を少し減らしてください」と依頼し、
それが生活習慣病の予防に役立った、という話が有名です。

デンマークでは塩分ではなく脂肪に着目し、
脂肪をたくさん含む食品に税金をかけるという手法を試みました。
しかしたった1年で頓挫した・・・という記事を紹介します。

脂肪摂取を減らすことは健康面ではよいことではあるけど、
“脂肪税”を実施するためには背景にある複雑な事情を解決する必要があり、
その圧に負けた、というところでしょうか。

含有脂肪の分析にコストがかかること、
食品会社の反発を食らうこと、
子どものお菓子代が嵩んでシングルペアレントが経済的に困ること、
脂肪摂取を減らすと人は塩分摂取に走ること・・・等々。

根本的原因は、
「人間は“油を食べたい”という欲求を抑えることができない」
ことと見たり。


▢ 国民を肥満から救うはずが…バター、ポテチに課された「世界初の脂肪税」がたった1年で廃止になったワケ「脂肪がダメなら塩を舐めればいい」
イェンヌ・ダムベリ:ジャーナリスト・作家
2025.2.25:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 デンマークでは2011年、飽和脂肪酸を含む食品に課税する「脂肪税」を世界で初めて導入したが、わずか14カ月で廃止されてしまった。一体何があったのか。

▶ デンマークの「脂肪規制」
 デンマークの食のイメージといえば真っ赤なソーセージ、デニッシュ、ベーコン、レムラードソース、豚皮のフライだが、だからといって国民の健康にまつわる法制度がスウェーデンより緩いわけではない。見方によっては進歩的とも言えるほどだ。
 2003年にはデンマークが工業生産のトランス脂肪酸を厳しく規制したことが世界的なニュースになった。新しい規制では食品に含まれる人工型トランス脂肪酸は最大2%までで、繰り返し違反した場合には最長2年の禁固刑が科せられることもある。
 デンマークでトランス脂肪酸の規制を推進したのは、予防循環器学の教授スティーン・ステンダーだ。規制だけが唯一の合理的な結論だという姿勢で、トランス脂肪酸は他の脂肪と異なりデメリットを補うようなメリットがないからというのが理由だ。つまり人間にトランス脂肪酸は必要ないのだ。

▶ 「トランス脂肪酸」規制で心血管疾患の死亡率が減少
 デンマークでは1980年以降心血管疾患による死者が70%も減少していて、その傾向はまだ続いている。同じ傾向が他のEU諸国にもみられるが、デンマークは特に顕著だ。
 ステンダーによれば医療技術が向上したこと以外にも、デンマークでは厳しい喫煙禁止が実施され、政府が「運動して果物や野菜を食べよう」というキャンペーンを行ったのが大きかったという。その中でトランス脂肪酸の規制がどれだけ貢献したかは判別できないが──とスウェーデン公共テレビのインタビューで語っている。
 2000年から2009年の間にデンマークの男性が心血管疾患で死ぬ確率は毎年8%減少した一方で、スウェーデンは4.5%の減少だった。二国で唯一違ったのがトランス脂肪酸の規制の有無だったとステンダーは指摘する。

▶ 脂肪の多い食品に「脂肪税」を課税
 デンマークでは2011年にもう一つ脂肪が規制されている。飽和脂肪酸はほぼすべての動物性食品、そしてポテトチップスや加工食品など多くの工業生産食品にも含まれているため規制を導入することはできなかったが、消費を制御する効果的な手法、つまり価格設定を利用したのだ。
 デンマーク政府は飽和脂肪酸含有量が2.3%を超える食品に税金をかけることで、国民の健康を良い方向へ向かわせようとした。この課税は中道右派政府によって導入されたが、左派からも支持を得ていた。
脂肪税は悪しき習慣を正すプロジェクトの一環で、脂肪税以外にはエネルギー税も引き上げられ、逆に良い効果につながるものに対しては減税が行われた。
 脂肪税を提案した予防委員会は「10年でデンマークの平均寿命を3年延ばす方法を提案せよ」というミッションを課せられていた。税率は飽和脂肪酸の割合で決まり、バターのように飽和脂肪酸の割合が高いものは16.7%だった一方で、250グラムのポテトチップスは6%だった。
 ある試算によれば、この脂肪税のおかげで平均的なデンマーク人は10年で5.5日長く生きられるようになったという。目標の3年には程遠いが、それでも良い方向には向かっている。
 結果として税金の導入は成功だった──と経済学の教授シンネ・スミーは言う。

▶ たった14カ月で脂肪税は廃止に
 該当する食品の売り上げはすぐに減少した。飽和脂肪酸の消費は4%減り、果物と野菜が売れるようになった。スミーの試算によればこの食生活の変化で毎年123人が早期死亡を回避できるという。しかも税金は収入源にもなった。
 政権を引き継いだ社会民主党は選挙前に脂肪税の倍増をうたっていたが、結果的に実現されず、なんと脂肪税自体が廃止されてしまった。たったの14カ月で。
 政府が意見を翻したのは、脂肪税によって国内で力をもつ食品会社の事務作業が増えたからだった。それに税金のせいで国境を越えた売買も増えてしまった──つまり入るべき消費税がデンマークの国庫に入ってこなくなったのだ。別の批判は社会的なデメリットに向けられた。シングルペアレントが経済的に大きな打撃を受けることになったからだ。

▶ 含有量のチェックに莫大なコストが…
 スミーは課税によって人々の行動を制御できるかどうかを研究しているが、消費を削減したい商品を値上げする価値はありえると言う。
 「税率をうまく設定すれば効果を得られます。ソフトドリンクにかけた税金が良い例で、導入された国では売り上げが減少している。しかし秤のもう一方で社会経済的な犠牲が生じるのも現実です。デンマークの産業界は脂肪税でダメージを受けたと主張するでしょう。食品によっても状況は変わります。ソフトドリンクは比較的簡単に課税できる。だけど飽和脂肪酸は各食品の含有量を調べなければいけない。そのために莫大なコストのかかる管理体制が必要になった
 脂肪税は税種としては英国の経済学者アーサー・ピグーにちなんで名づけられたピグー税に当たり、特定の商品やサービス、活動には隠れたコストがかかるという原理に基づいている。そのコストは最初から価格に含まれるべきで、後で社会が負担するのではなく実際にその商品を使用する人によって賄われるべきだという考え方だ。
 典型的な例が長期的には高額な医療費につながる喫煙だ。このピグー税がうまく機能すれば消費者個人が支払ったお金で目立たない社会的コストをカバーすることができる。一方でこのシステムのデメリットは正確なコストを算出するのが難しいという点だ。

▶ 「ソフトドリンクへの課税のほうが楽」
 さらに複雑なのが、私たちがある程度必要とする商品にこの類の課税をする場合だとスミーは言う。たとえば飽和脂肪酸は北欧諸国の栄養推奨の食事にも入っている──ただ今日私たちが食べているほどの量ではないというだけで。
 「本来なら、栄養推奨に設定されている10%を摂取したらそれ以上は食べられなくなるようなチップを搭載すべき。それ以上は買えないような仕組みが必要なんです」
 スミーはそこで皮肉な笑みを浮かべたが、また真剣な表情になって続けた。
 「食品に自然に含まれる成分や私たちが必要としている食品に規制をかけると問題が起きる。ソフトドリンクのほうが楽──ソフトドリンクにはメリットなど一つもなくて何の存在意義もないから」

▶ 「情報」だけでは人々を制御できない
 食品業界のように、社会全体のための課税や規制の脅威にさらされる団体は「最善の解決法は情報提供だ」と訴える。どういうことなのかを国民がわかっていれば、決めるのは彼ら自身のはずだ。それが良い決断でも悪い決断でも。
 オンラインカジノで全財産を失う可能性があることをわかっていれば、それでもリスクを冒すかどうかは個人の自由なのだから。しかしスミーはその「情報」がどこまで有効な制御になるかは疑わしいと感じている。
「もちろん情報も少しは効果があると思うけれど、私たち人間はそういう意味では合理的ではない。明日こそ運動をしようと思っても、明日が今日になるともうそこまでやる気はないでしょう? だけど値段が高いと自制心が高まるということは研究でも示されているんです」

▶ デンマーク人は脂肪の代わりに塩を舐め始めた
 世界保健機関(WHO)や他国の政府も脂肪税に関心を寄せている。スミーは経済学者として一時期世界各地に赴き脂肪税についてレクチャーを行った。今のところそのような税金を導入した国は他にない。が、2010年代にはソフトドリンクや砂糖の税金が以前より一般的になっている。
 健康という見地から脂肪税がマイナスだった面を挙げるとすると、デンマーク人が塩を多く摂取するようになったことだ。それも特に驚くことではない、とスミーは言う。ある商品の価格を上げれば、人は他の選択肢を探すものだ。
 「脂肪や砂糖、塩にはしっかり味がある。だから飽和脂肪酸を減らした分、塩を増やすのかもしれません。また脂肪税を導入することがあれば、その時には塩の消費を制限する方法も探さなくてはね」

<参考>
・『脂肪と人類』(イェンヌ・ダムベリ、新潮選書)

黙り込んだ子どもの気持ち

2025年02月23日 07時41分12秒 | 子どもの心の問題
児童精神科看護師の書いた書籍が話題になっています。
内容の一部が消化された記事が目に留まりましたので、紹介します。

黙り込んだ子どもの心を紐解く方法が書かれていました。
従来「傾聴」が大切、とされてきましたが、
そこから一歩進んで「聴きに行く力」が必要とのこと。
その入口は「子どもの得意分野について本気で質問する」だそうです。

・・・読んでみて感じたことは、
「これを日常生活で行うことは難しい」
なぜかというと、大人自身が「話を聞いてもらえない」状況だから。
話を聞いてもらえない経験を重ねてきた大人が、
人の話(子どもの話)を「傾聴する」「傾聴するために努力する」
のは困難でしょう。

保育士は子育てのプロ、と考えられていますが、
実際に自分の子どもの育児をすることになると、
思うように行かずギブアップすることも珍しくないと聞きます。
なぜって「育児はエンドレス、保育士の仕事は9時5時」だから。

こど看さんも仕事だからここまでできるのでしょう。
というわけで、この本を購入する価値を見いだせませんでした。


▢ 子どもには子どもの「言えない」理由がある…黙り込んだ子に大人がやるべきたった一つの行動「話さないとわからないよ?」と促しても効果は薄い
こど看:精神科認定看護師
2024.2.1:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 何を考えているか話してくれない子どもに、どう声かけすればいいか。児童精神科看護師のこど看さんは「子どもが黙っているときは、言いたいことがあっても言えずにいる場合が多い。『話さないとわからないよ?』と急かすのではなく、言葉を待つことが重要だ」という――。(第1回/全3回)

▶ 大人は子どもの言葉を待つことができない
 子どもと大人の気持ちはよくすれ違います。子どもが何も語らずに黙っているとき、大人は「話さないとわからないよ?」と語りかけがちです。しかしそのとき、子どもは「話せないんだよ。わからないの?」と感じているかもしれません。
 なぜこのようなすれ違いが起きるのでしょうか? その原因のひとつとして、私たち大人が「子どもの言葉を待てない」ことがあると思うのです。大人は、自分の気持ちを言葉で伝えて、その言葉を受け取ってもらったという経験を積み重ねているので、「言葉で伝えることの大切さ」を理解しています。
 しかし、子どもは言葉でやり取りする経験を積んでいる真っ最中なので、言葉にする前に「これ言ったら怒られるかな」「迷惑かけちゃうかもしれないな」と考え、自分の言葉が変に伝わってしまわないか怖くなり、「言いたいのに言えない」状況が発生します。
 それに加え、自分の気持ちを適切に表現する言葉を知らなかったり、大人から言葉を求められるプレッシャーに圧倒されているなど、子どもながらに言えない理由や背景があります。それを理解し、私たち大人には、子どもの言葉を待つ姿勢が求められるのではないかと思うのです。

▶ 「言えるけど言わない」のではなく「言いたいけど言えない」
 大人は「言えるけど言わない」ができます。しかし、子どもは「言いたいけど言えない」のです。もし、子どもから言葉が返ってこなかったら、「話さないとわからないよ?」と子どもの言葉をせかすのではなく、「話せないの、つらいよね」と共感しながら子どもの言葉を待ってみましょう
 そして、子どもが自分の思いや感情を言葉にすることができたときは、その言葉を否定せずに受け止めてあげてください。そうすることで、子どもは「自分の言葉には価値がある」と実感し、「言葉で伝えるって大切なんだな」と思えるようになるのです。

▶ 誰かに話しかけるのは子どもにとって勇気がいる
 子どもの話を聞く上で、傾聴力が大切なのは言わずもがなです。しかし、傾聴力だけでは子どもの話を聞くことはできません。なぜなら、子どもの話を聞く場面をつくらなければ、子どもの話を聞けないからです。だからこそ私は、「子どもの話を聞きに行く力」が大切だと思うのです。
 子どもにとって、「誰かに話しかける」って結構勇気が必要なことです。大人と違い、誰かに声をかけたり相談してきた経験が少ないので、たとえそれが親相手であったとしても、「今忙しくないかな?」「こんなこと話しても大丈夫かな?」と、自分から話しかけることに躊躇しやすい面があります。そんな背景があるからこそ、大人のほうからも子どものところに行って、声をかけてほしいのです。
 では、子どもの話を聞く場面を多くつくり、子どもの話を聞きに行く力を伸ばすにはどうしたらよいでしょうか。
 私のおすすめは「子どもの得意分野について本気で質問する」という方法です。「絵を上手く描きたくて」、「サメの弱点を知りたいんだけど……」のような感じで、子どもが得意としていることに関して本気で質問や相談をし、会話のきっかけをつくるのです。その中で、子どもの困り事をさりげなく聞いてみるのもよいでしょう。ただし、強引に子どもの話を聞き出そうとするのは避けてください。私たち大人と同じように、子どもだって話したくないときはありますので、子どもから「話したくない」と言われたら、潔く身を引きます。
 このように、子どもの話を聞く力には、「子どもの話を積極的に聞きに行く力」が含まれます。「子どもの話をどうやって聞こう」を考えることと同じくらい、「子どもの話をどうやって聞きに行こう」と考えることが重要なのです。

▶ 「なんでそんなふうにできるの?」と聞いてみる
 どんなときでも全力で遊び、楽しみ、悔しがる。
 周りの目を気にせず、自分の好奇心に従って行動する。
 このような子どもの姿を見て大人が心を動かされることってありますよね。それはきっと、子どもの頃はできていたことが、大人になった今となってはできなくなっていることに気づかされるからなんだと思います。
子どもの姿から学ぶことは大切なのですが、それだけで終わるのはもったいない! もし、あなたが子どもの姿を見て学んだのであれば、その子から直接指導を受けることを強くおすすめします。
 方法はシンプルで、子どものそばへ行き、「◯◯なところが勉強になったんだけど、意識していることや、コツとかってあるの?」「なんでそんなふうにできるの?」と、子どもに直接指導をしてもらいたいと真剣にお願いするのです。こうした姿勢は大人だけではなく、子どもにも大きなメリットがあります。それは、「その子が自分のすばらしい部分に気づける」という点です。

▶ 大人の「教えて!」が子どもの自信を育てる
 子どもから見た大人は、自分よりも経験豊富な「たぶん自分よりもすごい人」に見えています。その「すごい人」から、急に「あなたのやっていることを教えてください」と言われたら、「自分のしてることってなんかすごいのかも」と、その子が気づいていないすばらしい部分を、その子自身が感じられます。
 さらに、「大人に認められた」といううれしい事実も残ります。こういった、少し恥ずかしくもうれしい気持ちが、その子にとって大切な要素になります。
 ぜひ、子どもの素敵な姿に心を動かされたら、真剣に「教えて!」とお願いしてみましょう。大人のそんな姿勢が、子どもの自信を育む手助けになるのです。

▶ 「よくわからないけど」は子どもの心を閉ざす枕詞
 子どもが発する話題は、大人にとってなじみがなく、理解しづらい場合が多いものです。それで私たち大人はつい「よくわからないけど、そうなんだ」と相槌を打ってしまうことがあります。実はこの言葉、子どもには否定的に捉えられてしまう可能性があり、注意が必要です。
そもそも、子どもが熱心に話しているということは、あなたに対して、「この人ならこの話を理解してくれるかもしれない」と期待して話している可能性が高いです。そんな子どもにとって、「理解してくれるかもしれない」と期待している大人からの「よくわからないけど、そうなんだ」という言葉は、かなり衝撃的に聞こえます。「この人、この話をわかろうともしてくれないんだ」とネガティブに捉え、「もうこの話題は出さないようにしよう……」と心を閉ざしてしまうかもしれません。
子どもの興味・関心を子どもの目線で学ぶ
では、代わりになんと言えばよいのでしょうか。ここでも「その話、教えてほしいな」と、子どもに教えてもらう姿勢で声をかけるのが私のおすすめです。この言葉は、子どもの話を前のめりに聞こうとする大人がいるというポジティブな事実を伝えることができる上に、子どもが大人に教える機会を自然につくり出すことができる、まさに一石二鳥の言葉です。
大人である私たちが、子どもの話を適当に聞いてしまうことがあるのは事実でしょう。しかし、あなたに向けて子どもが熱心に話しているときこそ、子どもの興味・関心を、子どもの目線から学ぶことができるチャンスです。何かを一生懸命話している子どもに、「その話、教えてほしいな」と伝えたら、きっとその子は目を輝かせて、あなたがまったく知らない世界を力強く語ってくれるはずです。


<参考>
・『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(こど看著、KADOKAWA)

生きるためにリストカットをする

2025年02月19日 07時07分55秒 | 子どもの心の問題
「リストカットは自殺未遂ではない、生きるためにしている」
と某番組で耳にしました。
でも自殺者のデータを見ると「自傷歴あり」という言葉も目につきます。
・・・どう考えればいいのか、わかりません。

リストカットを繰り返す中学生、
ココロの問題を相談しようと精神科を受診しても、
「ここは高校生から」と門前払いされるという話も聞きました。

彷徨う思春期の自傷行為を止められない子どもたちに、処方箋はあるのでしょうか。

精神科医の松本俊彦先生を取材した記事が目に留まりましたので紹介します。
親がリストカットに気づいたとき、
「やめなさい!」
ではなく、
「何があったの?」
と声をかけるのがよいと書いてあります。
・・・あれ、このフレーズ、どこかで聞いたことがあるような・・・

そうそう、幼児の兄弟ゲンカの際、上の子に
「やめなさい!」
ではなく、
「何があったの?」
と声をかけましょう。
と育児本に繰り返し書いてあるのですね。

その行為に至った子どものココロを見つめることが大切、ということ。

また、自傷行為は“悩みを痛みで解消する”という面があり、
例えていえば、オーバードーズ、過食・拒食、仏教の厳しい修行にもその要素がある、
という説明に一部頷きました。

そして気になったキーワードは「解離状態」。
人間はあまりにもつらい体験をするとそれから逃れるために“意識を飛ばす”ことがあります。
もう1人の自分を作り、そこに逃げ込むことで本能的に自分を守る。
小説や映画でよく扱われる「多重人格」は、
幼児期に受けた虐待の記憶から逃れるための解離という説もあります。

子どもたちの「声にならないSOS」が自傷行為につながっていくようです。
そんなトラウマを抱えた子ども達に、周囲の大人は何ができるのでしょうか?

<ポイント>
・女子中高生の12.1%はリストカットの経験がある。一度でもリストカットをしたことのある人のうちの6割が、10回以上繰り返していた。
・彼女たちの多くは、怒りの感情をストレートにぶつけられず、つらい記憶や感情を打ち消すために自傷してしまう。自分では手に負えない感情に対処するため、つらい感情を一時的に緩和するための行為、それがリストカットだ。
・歴史を遡っても、人間は耐え難い心の痛みや困難を克服するのに身体の痛みを使ってきた。1980年代には、居場所のない子どもたちが煙草の火を腕に押し付け合う“根性焼き”という現象が見られた。根性焼きもリストカットも自傷行為。細かく考えれば、聖書にも自傷と思しき描写があり、禅宗では僧侶が過酷な修行をする、あれも自傷的である。
・歌舞伎町を居場所とする中高生を「トー横キッズ」と呼ぶ。家に安全な居場所がなく、人の繋がりを求めて歌舞伎町に集まってくる女の子たちの多くが、カミソリやカッターナイフで自らの腕を傷つけるリストカットをしている。
・本人ははっきりと言葉で説明することができないが、われわれ精神科医が整理すると、それは、怒りや恐怖、緊張がごちゃまぜになった、名前をつけることのできない強烈な感情。生きているのか死んでいるのかさえわからない不気味な感じ。その感情が心に渦巻いている状態から回復するために、本人は解離状態になる。自分自身から解離することによって、言葉にならない強烈で不気味な感情をリアルに感じないで済む。でも、つらい感情が去ったあとも解離状態が続いていると気持ちが悪い。それで腕を切る。すると最初は痛みを感じないのが、ザクザク切っているうちにだんだん痛みを感じるようになってきてそこで現実を取り戻す。
死ぬことを目的として行為の結果を予測して自分の体を傷つける自殺に対し、非致死的な結果を予測して傷をつけるリストカットは、生き延びるための行為なのだ。
・一方で、10代での自傷行為経験者の10年内自殺既遂リスクは400~700倍にもなる。長期的に見ると自殺の危険因子でもある。生き延びるために自傷を繰り返す少女たちだが、初めての自傷の際には死のうと思っていたというケースが実は多い。死にたいと思いつめて自傷したけれど、失敗した。ところが、死にたいくらいつらい状況を一時的に生き延びるのに自傷は役立つと発見してしまう。リストカットによる苦痛の緩和が報酬となって、自傷が常習化していく。依存性があるため効き目が弱くなっていって、当時と同じ効果を維持するために頻度や程度がエスカレートする、また、手段や方法が過激になっていく。
市販薬や睡眠薬を過剰服用するオーバードーズや、過食・拒食も、自分を傷つける行為だ。オーバードーズは、つらい記憶や感情がフラッシュバックした際に、死にたい、消えたい、怖いといった意識をシャットダウンすることができる。だがだんだん効きが悪くなるため致死量を超えて服用してしまう危険がある。
・自傷行為は子ども時代に体験した家族ドラマを象徴的に再現しているという説がある。切る自分と切られる自分とその一部始終を無力感を持って眺めている自分、それは暴力を振るうお父さん、殴られているお母さん、両親がこんなに中が悪いのは、私が生まれたからこうなったんだと勝手に意味付けしてしまう子ども自身という三者をリストカットによって再現している。
風俗も自傷行為と捉えることができる。外来で診ているリストカットする女の子たちの多くが、風俗でバイトしている。風俗をする子たちの多くが子ども時代に性的な虐待や身体的な虐待を受けていて、自分は大事じゃない存在なんだという意識が染み込んでいる風俗で見知らぬ男性に抱きしめられているとこの世にいていいんだという感情を持つことができると松本氏に話したある女の子は、その繰り返しによって少しずつ自己愛をためていき生き延びられている
・もしリストカットに気づいたら「何があったの?」と言葉をかけてほしい。頭ごなしに「やめなさい」と言うのは意味がない。最も苦しいのは本人だ。周囲の大人にできることは、感情的にならずに、自傷について話せる関係をつくること。

風俗嬢の下り、悲しすぎます。
では、記事本文を。

▢ 決して好きで痛い思いをしているわけではない…「リストカットを繰り返す少女たち」の悲しい共通点自傷行為を「やめなさい」と否定してはいけない
三宅 玲子:ノンフィクションライター
2023/08/11:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 女子中高生の12.1%は「リストカットの経験がある」という調査結果がある。調査した精神科医の松本俊彦氏は「彼女たちの多くは、怒りの感情をストレートにぶつけられず、つらい記憶や感情を打ち消すために自傷してしまう。親など周囲の人は、頭ごなしに否定するのではなく『何があったの?』と声をかけてほしい」という。ノンフィクションライターの三宅玲子さんが聞いた――。

▶ なぜ少女たちは自分の腕を傷つけるのか
 新宿・歌舞伎町で警視庁が「トー横キッズ」の一斉補導を実施し、26人が補導されたと報じられたのは、夏休み直前の7月16日だった。歌舞伎町を居場所とする中高生をトー横キッズと呼ぶ。ここ数年は低年齢化が進み、文字通り、小学生のキッズも紛れ込んでいる。
 家に安全な居場所がなく、人の繋がりを求めて歌舞伎町に集まってくる女の子たちの多くが、カミソリやカッターナイフで自らの腕を傷つけるリストカットをしている。援助交際やデリヘルなどに入り込む女の子もいて、彼女たちのリストカット率は極めて高い。
 彼女たちがリストカットをせずにいられないのはなぜなのか。そのわけを依存症の研究者で精神科医の松本俊彦氏(国立精神・神経医療研究センター)に聞いた。
 女子中高生の12.1%。これは松本氏が行ったリストカットに関する調査結果だ。さらに、一度でもリストカットをしたことのある人のうちの6割が、10回以上繰り返していた。実は女の子たちにとってリストカットは遠いものではないのだ。

▶ 心の痛みを克服するために身体の痛みを使う
 自分では手に負えない感情に対処するため、つらい感情を一時的に緩和するための行為、それがリストカットだと、松本氏は語り始めた。
 「居場所のない子どもたちが煙草の火を腕に押し付け合う根性焼きという現象が見られたのが80年代でした。根性焼きもリストカットも自傷行為です。細かく考えれば、聖書にも自傷と思しき描写がありますし、禅宗では僧侶が過酷な修行をする、あれも自傷的です歴史を遡っても、人間は耐え難い心の痛みや困難を克服するのに身体の痛みを使うというのがあったと思います」
 松本氏は薬物依存症をはじめ依存症を30年にわたり研究している。リストカットは2000年代に入ってその数が目立ってきたという。女の子がリストカットをする際、心の中ではどのようなことが起きているのか。

▶ 生き延びるために自傷を繰り返すのだが…
 「本人ははっきりと言葉で説明することができないのですが、われわれ精神科医が整理すると、それは、怒りや恐怖、緊張がごちゃまぜになった、名前をつけることのできない強烈な感情です。生きているのか死んでいるのかさえわからない不気味な感じです。その感情が心に渦巻いている状態から回復するために、本人は解離状態になります。自分自身から解離することによって、言葉にならない強烈で不気味な感情をリアルに感じないで済むのです。でも、つらい感情が去ったあとも解離状態が続いていると気持ちが悪い。それで腕を切るわけです。すると最初は痛みを感じないのが、ザクザク切っているうちにだんだん痛みを感じるようになってきてそこで現実を取り戻すのです
 死ぬことを目的として行為の結果を予測して自分の体を傷つける自殺に対し、非致死的な結果を予測して傷をつけるリストカットは、生き延びるための行為なのだという。それでも、10代での自傷行為経験者の10年内自殺既遂リスクは400~700倍にもなる。長期的に見ると自殺の危険因子でもある
また、生き延びるために自傷を繰り返す少女たちだが、初めての自傷の際には死のうと思っていたというケースが実は多い

▶ オーバードーズや摂食障害も「死」と隣り合わせ
死にたいと思いつめて自傷したけれど、失敗した。ところが、死にたいくらいつらい状況を一時的に生き延びるのに自傷は役立つと発見してしまうわけです。リストカットによる苦痛の緩和が報酬となって、自傷が常習化していく。依存性があるため効き目が弱くなっていって、当時と同じ効果を維持するために頻度や程度がエスカレートする、また、手段や方法が過激になっていきます
 市販薬や睡眠薬を過剰服用するオーバードーズや、過食・拒食も、自分を傷つける行為だ。オーバードーズは、つらい記憶や感情がフラッシュバックした際に、死にたい、消えたい、怖いといった意識をシャットダウンすることができる。
 だがだんだん効きが悪くなるため致死量を超えて服用してしまう危険がある。昏睡こんすいするほどに効かず酩酊めいてい状態になった場合、衝動のコントロールが悪くなり、つらいという感情から自殺念慮が生じて飛び降り自殺や首吊り自殺の衝動に突き進んでしまうこともある。

▶ 「何があったの?」から始まる関係がある
 頭ごなしに「やめなさい」と言うのは意味がない、そして、もしリストカットに気づいたら、「何があったの?」と言葉をかけるよう松本氏は勧めた。
 「親はショックかもしれません。でも、感情的に反応すると余計にエスカレートしたり隠すだけになったりします。何かあったの? と尋ねてみても、本人は言葉にすることはできないと思うのですが、次、切ったらちゃんと教えて、と親御さんは娘さんに語りかけてほしい。自傷について親子で話せるようにして、ひどく切ってしまったときや切っても効き目がなくなったときに、早めに教えてもらえるような関わりをつくった方がいいです」
 だが、親との間にそのような対話が成立していれば、そもそも女の子たちは自傷しないのではないか。ところが、松本氏は、そこから対話が始まった家庭があると、次のケースを話した。
 その家庭では、母親に過干渉の傾向があった。娘がリストカットをするのに気づいた母はしばらく気づかないふりをして時期を過ごしたが、不安になり松本氏の勤務する病院に相談に訪れた。そこで母親はリストカットとはどういう行動なのか説明を受け、感情的にならずに娘のリストカットに向き合う方法を学んだ。

▶ 親が「育て方が悪かった」と自責する必要はない
 「リストカットが少なくともすぐに死ぬ行動ではないこと、今すぐ死ぬのを延命している行動でもあること、でも上から押さえつけると、リストカットの背景を話せなくなってしまう、というメカニズムを、お母さんに説明しました。その結果、親が感情をコントロールして向き合えるようになったのがよかったのでしょう」
 親に対してのアドバイスを求めると、松本氏はこう話した。
 「自分の育て方が悪かったんじゃないかと言うお母さんもいらっしゃいますが、自責するのはおかしい。どの家にも問題はあるわけですから。年をとってから子どもに爆発されるのではなくて、今、たまっていたものが出た、ということで、それをきっかけに、自分たちの家庭のあり方について、修正すべき点はどこなんだということを早めに言葉にして話し合う。そして自傷について子供と会話できる関係をつくっていったほうが良い」
 自傷行為の背景や言葉にできないつらい感情の程度には、女の子一人ひとり、グラデーションがある。複合的な自傷行為へと進んでしまった末に自殺念慮が強まった結果、自死してしまった患者も残念ながらいるという。

▶ 「自分は大事じゃない存在だ」という悲しい意識
 「例えば僕が外来で診ているリストカットする女の子たちの多くが、風俗でバイトしています。風俗をする子たちの多くが子ども時代に性的な虐待や身体的な虐待を受けていて、自分は大事じゃない存在なんだという意識が染み込んでいます。僕の調査では、精神科外来に来る10代の女の子の67%が深刻なトラウマを抱えていました。人生のどこかで暴力の持つパワーを体験している人たちです。
 精神分析の専門家の中には、自傷行為は子ども時代に体験した家族ドラマを象徴的に再現しているという説を述べる人もいます。つまり、切る自分と切られる自分とその一部始終を無力感を持って眺めている自分、それは暴力を振るうお父さん、殴られているお母さん、両親がこんなに中が悪いのは、私が生まれたからこうなったんだと勝手に意味付けしてしまう子ども自身という三者をリストカットによって再現しているというのです。そういうセルフイメージを持っている女の子たちが、風俗やAV出演の誘いに敷居が低くなっているのは間違いありません」
 風俗も自傷行為と捉えることができる。風俗で見知らぬ男性に抱きしめられているとこの世にいていいんだという感情を持つことができると松本氏に話したある女の子は、その繰り返しによって少しずつ自己愛をためていき生き延びられている。一方で、風俗で働くうちに自傷がエスカレートして性的なトラウマの蓋が開き、覚醒剤に手を出してしまった女の子もいる
「物事にはポジティブとネガティブの両面がある、その最たるものが自傷行為だと思います。だから、自傷を頭ごなしに否定するのは意味のないこと」

▶ 精神科医が「話を聞くことしかできない」と言う理由
 親との関係をはじめ、人によって傷ついた女の子たちが、必要な出会いを得て、回復していく可能性もあるという。その土台を整える大切な場となるのが診察なのだ。だが、松本氏は意図的に女の子に期待させないようにしている。
 「そもそも人を信じることのできない子たちですから、変に期待を持たせてがっかりさせることは避けなくてはなりません。ですから僕に任せてなどとは決して言いません。『できることは話を聞くことだけなんだよねー、しかも5分だけ』(笑)と最初に限界を明示して、『でも、応援しているからね』と」
 そうしてなんとか嵐をしのいでいくうちに、恋愛や友達との出会いによって、女の子たちが自分から変わっていくこともあるという。
 嵐が吹き荒れる間、最も苦しいのは女の子本人だ。周囲の大人にできることは、感情的にならずに、自傷について話せる関係をつくること。このスタンスを大人が心得て初めて、リストカットをせずにいられない心のうちを知る一歩が始まるようだ。



ゴールデンチャイルド症候群

2025年02月18日 06時13分58秒 | 家族
ゴールデンチャイルド?
初めて耳にする単語です。
どうやら「親の期待に応える“いい子”」を意味するらしい。

記事を読んでみると、まさに自分のことを言われているような気がしてきました。
紹介します。

▢ 親の期待に応える「いい子」でいることに苦しむゴールデンチャイルド症候群の兆候と救い
Mark Travers | Contributor 
2025.2.15:Forbes Japan)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 彼らのことは、あちこちで耳にする。彼らはしばしば、映画に出てくるような完璧な悪役であり、Reddit(レディット)には、彼らを痛烈に批判するスレッドが数え切れないほどある。
 「ゴールデンチャイルド(黄金の子/自慢の子)」はしばしば、家族の中の「ブラックシープ(厄介者)」と対照を成す。彼らは通常、両親にとって最大の誇りであり、喜びであり、そして、ほかの全員が見習うことを期待される輝かしい基準だ。
 これは、完璧な子ども時代を送るための公式に思えるかもしれないが、驚くことに、ゴールデンチャイルド自身も苦しんでいる家族のブラックシープと同じように、彼らは、貼られたレッテルに対して何も言うことができず、多くの場合は、とてつもなく高い期待に応えなければならないというプレッシャーを感じているのだ。
 俗説とは裏腹に、ゴールデンチャイルドは恵まれているわけではない世界は、彼らにとっても、やはり残酷な場所であり得る。彼らはしばしば、愛情を得るためには体面を保たなければならない、と教え込まれている。研究によれば、あなたがゴールデンチャイルド症候群かもしれないことの兆候は以下の3つだ。

1. 兄弟姉妹と緊張関係にある
 ゴールデンチャイルドとして育つと、兄弟姉妹とのあいだに暗黙の緊張感が生まれることがある。あなた自身は気づかなかったかもしれないが、おそらく兄弟姉妹はえこひいきの存在を感じており、それが不満や対抗心につながる。
 こうした力学は必ずしも、あなたの行動に原因があるわけではない。多くの場合は、両親が家族構造の中で、あなたをどのように位置づけていたかが原因だ。
 学術誌『Family Journal』に発表された研究によれば、機能不全家族において子どもたちは、さまざまな役割を押し付けられることがある。例えば、ヒーロー、スケープゴート(身代わり)、ロストチャイルド(忘れ去られた子ども)、マスコット、ケアテイカー(世話役)、マスターマインド(黒幕)などだ。
 ゴールデンチャイルドの場合、大人になってから、兄弟姉妹との関係がぎこちない、あるいは複雑だと気づくことになるかもしれない。兄弟姉妹はおそらく、あなたを両親の「お気に入り」として見ているが、あなたは内心、重荷を背負っている無理な期待に応え続けない限り安心することはできない、という重荷だ。
 こうした緊張関係は、単なる嫉妬によるものではない。両親のえこひいきによって、1人の子どもが称賛され、ほかの子どもが悪者扱いされることで、兄弟姉妹で対立するようになったときに生じる感情的な溝の表れだ。
 例えば、家族のスケープゴートにされた子どもはしばしば、自分を「完璧な」兄弟姉妹と比較して、劣等感にさいなまれる。一方、ゴールデンチャイルドの方は、両親の言いなりになり、家族の問題をスケープゴートのせいにすることがある。こうした力学によって、どちらの子どもも真実を見失う。どちらの子どもも、家族の物語を演じているだけなのだ。
 さらに、家族における役割が、「完璧なイメージを維持すること」だった場合、弱さを見せたり、あるいは、「あまり好まれていない」兄弟に同調したりすれば、両親を失望させるのではないかと恐れることの結果として、感情的に距離を置いていた可能性がある。こうした力学が、大人になっても持続し、生涯にわたる亀裂が生じることもある。

2. 他者を喜ばせなければいけないと感じる
 世間が彼らをどう見るかは別にして、「ゴールデンチャイルドであること」は、生き抜くためのメカニズムでもある。ほとんどのゴールデンチャイルドは子どものころに、もし自分が親の「お気に入り」でない場合は、「スケープゴート」の代わりに犠牲になる可能性がある、とすぐに気がつく。
 利己的に見えるかもしれないが、実際のところ、これは自己防衛だ。愛する人からより良く扱われるためであれば、ほとんどの人はどんなことでもする。家族のような、容易に逃げ出すことができない環境ではなおさらだ。
 問題は、この好意を維持するために、ゴールデンチャイルドは、たとえ自身の不利益になるとしても、そのレッテルを貼った両親を喜ばせ続けなければならないことだ。多くの場合、これは人を喜ばせるような行動を強化し、それが大人になっても続く。ゴールデンチャイルドは、許容され、期待される特定の物語を演じた場合のみ、世界は自分を受け入れると教え込まれている
 『International Journal of Society Reviews』誌に発表された2024年の研究によれば、自己受容のレベルが低いことも、両親を喜ばせようとする行動の一因になっているという。
 ゴールデンチャイルドはおそらく、すでに問題を抱えている家族においては、自分が「模範的な子ども」でいることが、最も波風を立てない方法だと気づいているのだろう。しかし、者を喜ばせるために自分の感情を抑え続けることは、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす。過度の不安、さらにはうつ病につながる可能性もある。

3. 失敗をひどく恐れる
 多くの育児専門家は、子どもの健全な自尊心を育むには、「正の強化」が重要だと強調している。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしだ。子どもを理想化することは、特に非現実的な期待をかけた場合、逆効果となり、自信ではなく重圧を与えることになる。
 「人は完璧ではなく、人生には失敗もある」と子どもに教えることは、子どもの成功を褒めることと同じくらい重要だ。「失敗は恥だ」と考える両親は、子どもに対して、何が何でも勝たなければならないという固定観念を植え付けてしまう。これは、挫折したときに立ち直る力を教える「成長マインドセット」とは正反対の考え方だ。
 家族において「ゴールデンな存在」であるとは、失敗の余地はほとんどなく、ひいては、成長の余地もほとんどないということを意味する。完璧な子どもなど存在しないが、ゴールデンチャイルドは、それが自分に投影されているがために、自分に完璧さを求めるようになる。このような姿勢でいると、人生が計画通りに進まなかった時に、打ちのめされてしまう可能性がある。
 もしこのような経験があり、何より、ゴールデンチャイルドというレッテルを貼られたことがあるのなら、まずは、これらのことはすべて、あなたのせいではないと認識してほしい。あなたは、理想化されることを求めてきたわけではないし、あなたに貼られたレッテルはあなたの責任ではない。
 このような力学によって兄弟姉妹や家族との関係が悪化している場合、関係の修復には、正直さと共感、時間が必要だ。えこひいきがあなたの対人関係をどのように形成したかを認識することは、体験の相互理解に基づく真のつながりを育む助けになる。
 最後に、ゴールデンチャイルドというレッテルから自由になるには、まず、成果や評価を超えた「自分の価値」を再定義する必要がある。あなたは、家族の物語で強制されてきた役割以上の存在なのだ。大人になった今、あなたはその役割から進み出て、自分自身の言葉で自分を定義する力を持っている。本物の感情、自分への思いやり、そして、新たな解放感とともに。


・・・この記事を読んで、私の人生はまさに“ゴールデンチャイルド症候群”に当てはまると頷きました。

 勉強嫌いの姉と比較して私はコツコツ努力するタイプで負けず嫌いでもあったので、成績はそこそこよく、両親の期待を一身に背負うことになりました。
 それが思春期はイヤでイヤでたまらなかった。
 よい成績を取ると褒められるけど、そうでないときはガッカリした表情を見せる両親。
 それが繰り返され、私は「よい成績を取り続けなければ自分に価値はない」と思い込まされました。
 一方でよい成績を取って両親が喜ぶと、
「努力したのは私であって、あなたたちではない」
 という反抗心も芽生えていました。

 高校時代、私は民俗学や文化人類学に興味を持ち、文系に進もうと考えました。
 しかし進路を決定する3年生の時、父親から、
「医学部以外は学費を出さない」
 と言われて夢が砕かれました。

 その当時は、親の夢を叶えて親をガッカリさせないことと、自分の夢を天秤にかけ、前者を選択しました。
 まだ「家族の幸せ」を優先する気持ちが残っていたのでしょう。

 それは、自分の人生ではなく、親の夢を辿る人生。
 還暦を過ぎた今になって、後悔しています。
 心のどこかに「これは自分の人生じゃない」という気持ちがつきまとうのです。

 そして現在、両親と同居し彼らの面倒を見て看取る生活をしています。
 そんなストレスを知ってか知らずか、家を出た姉からは、
 「お前は親の面倒をちゃんと見ていない」
 と文句を言われたりして、心が荒れます。

 私には記事の最後にあるような「自分への思いやり」「新たな開放感」は存在しません。


子どもに「遊んでばかりいないで勉強しなさい!」と言うのは「いずれ自発的に勉強するようになる」と信じていないから

2025年02月17日 04時50分10秒 | 育児
スマホ、ゲーム、SNS・・・デジタル機器は子どもに良いのか悪いのか?
この問いには小児科医の中でも賛否両論があり、結論は出ていません。

一方通行の情報なのでコミュニケーション能力が育たないとか、
神経発達症傾向のある子どもには必須のアイテムだとか、
喧々顎学です。

そんな中で「デジタル機器を子どもから取りあげてはならない」
という記事が目に留まりましたので、紹介します。

ポイントは「前頭葉を働かせて鍛える」ことらしい。
そのためには字面を追うだけの読書ではなく、考えさせる、想像させることが重要。
インプットだけでは脳は活性化しない、アウトプットして初めて活性化する。
・・・このことは私も実感しています。本を読んだだけ、セミナーを聴いただけでは、わかったようでいて十分理解できていないことが多く、それを反芻して自分でまとめてみて初めて記憶に残り、他人へも説明できるようになる経験をしてきましたので。

<ポイント>
・「本を読みなさい」とうるさく言うのは逆効果。本に触れさせたいなら、親自身が読書を楽しみ、家のなかに自然に本がある環境をつくるのがベター。
・親が読み聞かせるにせよ、子供がひとりで黙読するにせよ、読書中には前頭葉は働かない。読書は「ただ読む」だけではなく、書かれたことについて思考を巡らせることに意義がある。読書中、文字を追っている間は働かない前頭葉も、ふと本から目を上げて反芻したり、本を閉じた後に内容を振り返って考えをまとめようとするときには急激に活性化する。
・前頭葉を育てるには、「考えさせる」ことと、その考えを言葉にして「外に出させる」ことが不可欠。
・大事なのは、子供の自由な発想を促すこと、そのために忘れてはならないのが「否定しないこと」。正解か否かは重要ではない。言葉を出そうとするときに前頭葉が著じるしく活性化することに意味がある。否定されない安心感のある場で、思いつきをどこまでも言葉にしながら、子供のこころの脳はぐんぐん育っていく。
・前頭葉の発達という観点からも、子供の思いやりを育てるためにも、まずは家庭内の発言の安全と自由を保証することが大事。
・学んだ知識は、最終的には言語化して「外に出す」ことでこそ生かされる。
・「映像を言語化するのは難しい」が、それをあえて言語化しようと努力するとき、前頭葉を思い切り働かせることになる。子供たちを対象としたある実験で、簡単なゲームをさせた後に「どんなゲームだったの?」と口頭による説明を求めると、言葉を出そうとしている子供たちの前頭葉が、非常に活性化することが判明。ゲームをプレイするだけでは全く働かない前頭葉も、それを誰かに伝えようとすると一転、フル活動を始める。
・言葉を引き出す際、間違っても否定せずに受け入れるべし。主目的を「引き出す」ではなく、「正答を伝える」に置いていて、これは子どもにとって窮屈である。「勉強はしておいたほうがいいよ、あとあと役に立つよ」といった優しい言い方でも同じ。自分がうるさく言わないと、この子は勉強しないから」と思ってやることが、実は逆効果になっているのですから皮肉としかいいようがない。

子どもが情報をインプットし、アウトプットしやすい環境を整え、それを見守ることが育児の極意!と理解しました。


▢ ゲームやYouTubeを取り上げてはいけない…「頭のいい子」を育てるために親が子に繰り返すべきフレーズ「本を読みなさい」とうるさく言うのは逆効果
成田 奈緒子:文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表
2024.5.26:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

「頭のいい子」を育てるには、どうすればいいのか。小児科医の成田奈緒子さんは「読書や勉強させればいいわけではない。子供の自由な発想を否定せず、親が受け入れることが重要だ」という――。

▶ 「読み聞かせ」や「読書」に対する誤解
「国語能力を高めたいなら、本を読ませるのが一番だろう」
 このように考える方は多いでしょう。確かに、本は子供の言語能力を発達させます。小さいときからぜひ、たくさんの本に触れさせたいものです。
 ただし、その方法を誤らないように注意してください。「本を読みなさい」とうるさく言うのは逆効果です。義務だと思ったとたん、子供は読書を苦行だと誤解し、本を敬遠するでしょう。
 本に触れさせたいなら、親自身が読書を楽しみ、家のなかに自然に本がある環境をつくるのがベターです。
そしてもう一つ、読書にまつわる「誤解」があります。
 親が読み聞かせるにせよ、子供がひとりで黙読するにせよ、読書中には前頭葉は働きません。読書中の子供の脳波を測ると、活性化するのは視覚を司る後頭葉、言語能力を司る側頭葉、そして「からだの脳」に相当する大脳辺縁系のみです。
 読書は「ただ読む」だけではなく、書かれたことについて思考を巡らせることに意義があります。子供の思考を促す言葉がけを工夫しましょう。
 読書中、文字を追っている間は働かない前頭葉も、ふと本から目を上げて反芻したり、本を閉じた後に内容を振り返って考えをまとめようとするときには急激に活性化します。ですからこの場面でも、親が子供の思考を「引き出す」働きかけが有効です。その具体的な方法をお話しします。

▶ 子供の言葉を引き出す働きかけ
 前頭葉を育てるには、「考えさせる」ことと、その考えを言葉にして「外に出させる」ことが不可欠です。
子供の言葉を引き出すことは、親にできる最大のサポートです。
 こう言うと、よく親御さんからは「もちろん心得てます! 私、子供にしょっちゅう問いかけています」という答えが返ってきます。しかしその問いかけが、本当に子供自身の言葉をひき出せているかどうかには疑問符がつきます。教育熱心な親御さんは確かに、「お勉強的」な問いかけはさかんにされています。例えば、「お空はなんで青いんだと思う?」など。
 それ自体はもちろん、悪いことではありません。しかし親のなかの「学んでほしい」「賢く育ってほしい」という願望が強すぎると、子供に「いい答えを出さなくては」という、無言のプレッシャーを与えてしまいます。実際、期待に沿わない答えだったときに、それを正そうとする親御さんもいます。
 それでは前頭葉は育ちません。大事なのは、子供の自由な発想を促すことです。そのために忘れてはならないのが、「否定しないこと」

▶ 否定されない安心感が大事
 たとえば、昔話の「桃太郎」のお話を聞かせた後に、その内容について問うとします。このとき子供は「正答」を言うとは限りません。「おばあさんはどこに行ったんだったかな?」と聞いて、「鬼ヶ島に行った」などと答える子はいくらでもいます。そんなとき「違うでしょ」と言ってはいけません。間違ってもいいから、とにかく言葉を出させること。特に乳幼児の場合は、それが鉄則です。正解か否かは重要ではありません。言葉を出そうとするときに前頭葉が著いちじるしく活性化することに意味があるのです。
 ですから「そうかぁ、おばあちゃん、鬼ヶ島行ったんだ~」「面白いねえ」という風に、楽しくあいづちを打てばいいのです。ほかの場面も同じように自由に話させて、原型をとどめない「新しい桃太郎」が創出されていくのも面白いのではないでしょうか。誤りを正さず、かといって「素晴らしいわね」などと褒めそやす必要もなく、ただ「それが君の発想なんだね」と受け止めましょう。否定されない安心感のある場で、思いつきをどこまでも言葉にしながら、子供のこころの脳はぐんぐん育っていきます

▶ 家の中は、好きにものを言える場所に
 一方、子供どうしの社会では、大人から与えられるのとはまた違うプレッシャーがあるようです。
 おしゃべりし、ふざけ合う子供たちの間にはしばしば、「さあ、面白いことを言ってくれよ」「どうしよう、面白いことを言わなくちゃ」といった、無言の圧力が働いています。同年代の子が集まる場で、面白く楽しい子であることを求められるのは、ある程度仕方のないことです。
 しかし、家の中でまでそれを求められるのは非常に窮屈です。ですから家の中は、何を言っても良い場にしましょう。好きなことを言っていいし、つまらないことも無意味なことも言っていい、という「自由と安心」を与えましょう。子供の発想はユニークなので、どんな子でも多かれ少なかれ面白いことを言いますし、笑わせてもくれます。クリエイティブな視点に感服させられることもあります。
 しかし、親がそれらを「期待」するのは良くありません。大人から見て中身がないと思える言葉も、思う存分、出させてあげましょう。

▶ 家で「発想を広げ」学校や社会で「調整する」
 これは前頭葉の発達の観点からも、理にかなっています。家という完全な安全地帯で、いったん自由に、すべて出す。その後、学校などの外の社会では、ある程度の制限が課される。その認識のもと、「これは言わないでおこう」「これは言おう」と判断していく。このように、まず大きく広げてから調整していくのが、適切な発達プロセスです。
 最初に大きく広げる段階から制限をかけてしまうと、出てくるはずの発想も出てこなくなります。もしくは、四六時中制限をかけられることでストレスが溜まり、外で「言葉を選べない」――誰かに悪意を向けたり、意地悪をしたりする子になる危険もあります。子供の思いやりを育てるためにも、まずは家庭内の発言の安全と自由を保証することが大事です。

▶ 動画で勉強すると語彙が育たない
 ここ10年で、YouTubeやTikTokなどの動画プラットフォームは若い人たちの中で必要不可欠なものになりました。大学生の間でも、知識を文字からではなく動画で得る傾向が強くなっています。小中学生も、動画を勉強に活用している子が多いようです。
 しかしこれは「前頭葉を育てる」という観点からいうと、ベストな方法とは言い難いと思います。これまで幾度となく述べてきたように、学んだ知識は、最終的には言語化して「外に出す」ことでこそ生かされるものです。この点、動画は文字情報に比べると分が悪いのです。
 試しに、動画で学んだ内容を人に口頭で教えるのと、本で読んだ内容を教えるのと、どちらがたやすいか想像してみてください。当然、本という文字媒体で入れた情報のほうがスムーズでしょう。動画で見た視覚情報を正確に文字情報だけで伝えるのは至難の業わざです。
 「こんなでっかいのがバーンと出てきて、次にドーンってなって」、というような説明になってしまいがちです。相手に伝わるように説明できる語彙ごいがないため、そこを擬音ぎおんで埋めているのです。映像を言語に変換できる語彙――色彩、大きさや、形などを表現する言葉を持たないと、相手に伝わるアウトプットはできません。これらの語彙は、映像やSNSの短文を流し見しているだけでは培つちかわれません。ですので、本を読んだり、大人と会話を交わすことで、多くの言葉を知ることが必要です。「おりこうさんの脳」でインプットを積む過程では、映像だけに偏かたよらず、文字に触れる機会を多く持つことを意識したいところです。

▶ 映像を言葉で説明させてみる
 さて、今の話は逆手に取ると「前頭葉を鍛えるチャンス」にもなりえます。「映像を言語化するのは難しい」ということは、それをあえて言語化しようと努力するとき、前頭葉を思い切り働かせることになるからです。実際、子供たちを対象としたある実験で、簡単なゲームをさせた後に「どんなゲームだったの?」と口頭による説明を求めると、言葉を出そうとしている子供たちの前頭葉が、非常に活性化することが判明しました。
 これは、一定程度の語彙が備わっていないと難しいかもしれないので、はじめは「絵にして説明させてみる」ことからはじめてもいいかもしれません。家庭内でも折に触れ、子供に「教えて」と聞いてみてはいかがでしょうか。

▶ アニメやゲームの内容を聞く
 動画の内容でもいいですし、ドラマやアニメも格好の材料です。「昨日のあれ、どんなお話だった?」「見逃しちゃったから教えて」と問いかけて説明してもらいましょう。ストーリー性のあるものは「あらすじ」を話すことになるので、大事なポイントを押さえつつ要旨を伝える「要約力」も鍛えられます。
もちろん、小さい間はうまくできなくて当たり前。ここも「桃太郎方式」で、正解を強いずに、前頭葉を働かせている様子を見守りつつ楽しみましょう。
 日ごろ子供がいそいそと楽しんでいるゲームの説明をしてもらうのも、大いにおすすめです。多くの家庭では、ゲーム三昧ざんまいの子供を叱ることはあっても、ゲームに夢中になっている様子に関心を持ち、内容を聞き出すことはほぼ皆無。これは非常にもったいないことです。
 関心のあることについて語らせてもらえるとなると、子供は俄然乗り気になります。「○○っていうキャラがいてね」「それが冒険に出てね」と一生懸命話そうとしてくれます。大人からすると稚拙ちせつな説明に聞こえるかもしれませんが、それもまたよし。子供自身は、何度も繰り返しやっているゲームだけに「話しやすい」感覚を持てているはずです。
 ゲームをプレイするだけでは全く働かない前頭葉も、それを誰かに伝えようとすると一転、フル活動を始めるのです。このチャンスを生かさない手はありません。

▶ 「正論」は前頭葉の成長を妨げる
 言葉を引き出す際、間違っても否定せずに受け入れるべし、という話に意外な印象を持たれた方も多いでしょう。たいていの親御さんは、こうした場面でしょっちゅう否定をしてしまいます。それは主目的を「引き出す」ではなく、「正答を伝える」に置いているせいです。
 親が、そこに注力する必要はありません。こころの脳が成長すれば、いずれ子供が自分で見つけ出せるようになるからです。親はそれを信じること、つまりは子供を信頼することが大事です。
日ごろの行動に関しても同じです。子供に「遊んでばかりいないで勉強しなさい!」と言うのは、子供が「いずれ自発的に勉強するようになる」と信じていないからです。信じていないから、うるさく言う。これを続けていると、困ったことに「いずれ」が遠ざかります。この手の正論が、前頭葉を鍛える機会を奪うことになるからです。

▶ 信頼して待つことが大事
 「勉強はしておいたほうがいいよ、あとあと役に立つよ」といった優しい言い方でも同じです。正論を言われると、子供は自分で考えなくなるのです。
 「はーい、ママ」と従順に勉強する子もいれば、「うざいなあ」と不貞腐ふてくされてますますゴロゴロする子もいるでしょうが、いずれも親の言葉に反射的に対応しているだけで、「今、勉強しなければどうなるだろう?」と、自らの思考を働かせることにはなっていません。その結果、前頭葉の発達が妨げられて「言われないと勉強しない」「言っても勉強しない」というフェーズがいつまでも続いてしまうのです。
 「自分がうるさく言わないと、この子は勉強しないから」と思ってやることが、実は逆効果になっているのですから皮肉ですね。ですから、言いたくなってもぐっとこらえて、子供に考えさせましょう。そうしてこころの脳を鍛えていくと、あるときから子供の行動が変わります。
 こころの脳がきちんと備わった子は、「漫画を読みたいな、ゲームしたいな、でも明日はテストだから今から勉強しないと」という風に、自制心や思考力を使って行動に移せるようになるのです。そのときをじっくり待つのも、親に必要な「自制心」かもしれませんね。


<参考>
・成田奈緒子『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP研究所、2024年発行)