“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「食べない子」の給食対策〜食べない子が変わる魔法の言葉〜その4

2025年02月01日 15時26分32秒 | 子どもの心の問題
食べない子が変わる魔法の言葉」の備忘録メモ、その4です。

給食が原因で集団生活(園・小中学校など)が楽しめない子どもが一定数います。
私の長男も偏食で、小学校ではパンと牛乳しか食べず、おかずには手をつけない日々が続きました。
あれから20年、現在は料理好きな青年になっているから、人生不思議です。

さて「食べない子」が給食を食べられるようになるためにはどうしたらよいでしょうか。
食べない理由を根気強く探り、それがわかったら対策を練る、
ときには担任の先生とコミュニケーションを取り、
環境を整備する、といったところでしょうか。

いや、先生や学校側が原因を作っている場合も想定されますね。

私のおぼろげな記憶ですが、
約50年前の小学2年生の時、「給食全員完食」が目標に掲げられ、
肉が苦手だった私は苦労しました。
私よりもっと肉が苦手だった友だちは、がんばって食べたけど吐き出してしまいました。
なんだか、軍隊みたいですね。
今でもその空気感は残っているのでしょうか?

さて、備忘録としてのメモを残しておきます。
担任からの過剰な完食指導等により給食を食べられなくなった場合の対応方法が書かれています。

▶ 学校への3つのお手紙


2.文部科学省発行の「食に関する指導の手引き(第二次改訂版)」内の「第6章 個別的な相談指導の進め方」の「指導上の留意点」の部分(P234~)

① 対象児童生徒の過大な重荷にならないようにすること。 
② 対象児童生徒以外からのいじめのきっかけになったりしないように、対象児童生徒の周囲の実態を踏まえた指導を行うこと。
③ 指導者として、高い倫理観とスキルをもって指導を行うこと。
④ 指導上得られた個人情報の保護を徹底すること。
⑤ 指導者側のプライバシーや個人情報の提供についても、十分注意して指導を行うこと。
⑥ 保護者を始め関係者の理解を得て、密に連携を取りながら指導を進めること。
⑦ 成果にとらわれ、対象児童生徒に過度なプレッシャーをかけないこと。
⑧ 確実に行動変容を促すことができるよう計画的に指導すること。
⑨ 安易な計画での指導は、心身の発育に支障をきたす重大な事態になる可能性があることを認識すること。
・・・基本的には上記9点が守られていれば、給食が原因で不登校や会食恐怖症を含めた大きな問題には発展しないはず。

3.「我が子のトリセツ」
・うちの子はこうすると食べられます、こうすると食べられなくなります、といった取扱説明書。
(例)「食べなさい」ではなく「無理しなくていいよ」と伝えてください。
(例)「どれくらい食べられたか」について聞かないでください。
(例)「環境に変化(席替え、クラス替え、長期休暇明け等)があると慣れるまでに時間がかかり食欲が落ちます。
・これを担任の先生宛に提出し、反応がない場合は園長・校長に相談する。上手くいかない場合は保健室の先生やスクールカウンセラーなどに相談する。

▶ 友だちへの対応
・お友達から「なんで食べないの?」と言われるのがイヤで不登校傾向の子ども。こういう場合は「給食だと緊張して一杯食べられないんだよね」と返答する練習を家族と一緒に繰り返すとよい。

▶ 給食の代わりにお弁当を持たせる場合
・苦痛だった給食時間が解消されて最初はよいかもしれないが、ずっと続けていると「給食が食べられない」状況から抜け出せなくなる。
・次のスモールステップは、「給食の一部を少し、子どもの机の上に並べてもらう」ことを親から担任の先生にお願いする。そうすることで、少しずつ給食に慣れて、食べられるようになる可能性がアップする。
・ただ、周囲から「食べてみたら?」の声がけはプレッシャーになるので、そっとしておいて欲しいことも付け加える。
・これで上手くいかなくても子どもや先生を責めることはしない。食べられるようになったらラッキーというスタンスで、あせらずゆっくりと。


「会食恐怖症」への対応〜食べない子が変わる魔法の言葉〜その3

2025年02月01日 14時58分11秒 | 子どもの心の問題
食べない子が変わる魔法の言葉」の抜粋メモ、その3です。
著者自身が「会食恐怖症」であり、その克服体験を元に同じ病態の人たちの相談に乗る事業をしている、
“当事者&支援者”です。

会食恐怖症へのアドバイスとして以下のように述べています。

▶ 克服につながる適切な行動をする
▶ 前向きな考え方を身につける
▶ 習慣や環境を整える

なんだかどれも抽象的でイメージしにくいですね。
こちらの本「会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと」に詳しく書いてあるそうです。
購入して読んでみたいと思います。

基本は「不安を認めてあげて、自分から動き出すのをじっと待ち、アドバイスを求めてきたらスモールステップを意識しながら提案する」こと。
求められていないのにアドバイスを連発したり、無理矢理変えようとしても解決しないとのこと。

声かけとして例示されていることを列挙します。

「そうなんだ、他の人と一緒に食べることが不安なんだね」
「何か協力できることはある?」

「一杯食べなくても大丈夫だよ」
「食べられない分は、残してもいいんだよ」
「どれくらい食べられたかじゃなくて、美味しく食べることや、楽しんで食べることが大切なんだよ」

等々。

食べないのにはワケがある〜食べない子が変わる魔法の言葉〜その2

2025年01月30日 09時24分41秒 | 子どもの心の問題
長くなったので二部構成に切り替えました。
「食べない子が変わる魔法の言葉」の要約の続きです。
前回は問題点の分析が中心でしたが、
今回は実際の声かけの説明が中心になります。

昔々、虐待関係の本を読みあさったことがありました。
図らずも、自分の育児、さらに自分が育てられた状況・環境などを振り返る機会にもなりました。

その時感じた“育児の極意”とは・・・
「安心する場所を用意し、あとは自由にさせる」
ことだと思いました。

好き嫌い・偏食の子どもを育てる際にも、
その底流にこの原則が流れてると思います。

それから、親が思っている子どもの発達レベルに子どもが追いついていないギャップ、
の存在も大きいですね。
親の文句の定番「ちゃんとしなさい!」って子どもにはなかなか理解できないようです。

それがなくても食べない場合は、なぜ食べないのかの理由があるはず。
観察して突き止める努力をしましょう。
コミュニケーションを取って、何が苦手なのか理解しましょう。
それがわかれば対応可能です。


<前回の復習>

▶ 「食べない子」が変わる5つのステップ
(ステップ1)この食べ物、知らないよ
(ステップ2)この食べ物を知ってもらう
(ステップ3)この食べ物に興味を持ってもらう
(ステップ4)この食べ物に触れてもらう
(ステップ5)この食べ物を食べてもらう

▶ 食べない子が食べるまでのスモールステップ
見たことのない食べ物が食卓に並んでいる?
 → パパとママが食べている
 → 「これ、なんだろう?」とその食べ物が気になり始める
 → その食べ物についての情報を得る
 → 食べ物に興味が湧く
 → 試しにニオイを嗅いでみる
 → ペロッと味見をしてみる
 → ひとくち食べてみる
 → 自分用として食べる

上記を頭に思い浮かべながら、今回の内容へ。

▶ 子どもの「自己肯定感」を意識する
・自己肯定感とは「どんな自分でも価値があるという感覚」。
・自己肯定感を上げるためには「無条件で受け入れられること」「無条件で高く評価してもらえること」が大切。
・否定的なことを言われたり、“条件付”で評価されると自己肯定感は下がる。
・食べられるか、食べられないか、で善悪の判断をする必要はない。

▶ 魔法の言葉その1「〇〇って知ってる?」
・初めて出会う食材や料理に対して有効な声がけ。
(例)「お魚もちゃんと食べようね」 → 「お魚を食べるとどうなるか知ってる?」

▶ 魔法の言葉その2「いつもと違う!」
・ふだんから見慣れている食材や料理に対して有効な声がけ。クイズにするとさらに盛り上がる。
・子どもが興味をもつことと食を結びつける。
・食べてもらう以前に、食材や料理に対してのポジティブな情報量を増やす。
(例)
✓ 「このキュウリ、いつものよりトゲトゲがいっぱいなんだよ」
✓ 「このお魚、いつもよりも新鮮なんだよ」
✓ 「お肉を食べると筋肉がついて足が速くなるんだよ」
✓ 「このお味噌汁はいつもと違うところが2つあります、わかるかな?」
(大人の例)
✓ 居酒屋へ行ったときメニューに「ポテトサラダ」と書いてあるだけと「自家製ポテトサラダ」ではどちらが美味しそう?

▶ 魔法の言葉その2応用編「認めて打ち消すコミュニケーション」
・子どもの不安を認めた上で、それを打ち消す提案をするスキル。
(例)トマトが苦手な子どもに調理を工夫した料理を出したとき
「トマトのどんなところが嫌い?」
「食感が気持ち悪い!」
「食感が気持ち悪いんだね。」(認める)
「でもこのトマト料理は食感が気持ち悪くないように作ってみたよ。」(打ち消す)
「感想を聞かせてね。」

▶ 魔法の言葉その3「同じものだよ」
・見た目がちょっと違う場合に躊躇している子どもに「同じものだよ!」と伝える。
(例)鶏の唐揚げは食べられるけど鶏肉の煮物は食べられない子どもに、「同じお肉なんだよ」と教える。スマホ写真でも可。

▶ 魔法の言葉その4「同じものだよ」ほのめかし編
・調理の前後の食材の姿を見せて「同じものだよ」と気づかせる。
(例)お好み焼きは食べるけど千切りキャベツは食べない子どもに、
まず千切りキャベツを食卓に出し(案の定食べない)、
それを台所へ持っていきお好み焼きにして再度食卓へ。
 → 生のキャベツも食べられるかもしれない、と子どもが思い始める。

▶ 魔法の言葉その5「同じものだよ」分解編
・食材が混ざっていると食べられない子どもには、食材ごとにお皿に分けて出す。
・最初はふつうの形で出してみて、案の定、食べないことを確認後に食材を分けて出すのがポイント。
(例)味噌汁:具材と汁を分けて出す。
(例)カレー:ご飯と具とルーを分けて出す。
(例)焼きそば:麺とキャベツとピーマンとタマネギを分けて出す。

▶ 魔法の言葉その6「匂いを嗅いでみる?」
・「興味を持たせる」と「食べてもらう」の間のステップで使う。
(例)「匂いを嗅いでみる?」「ちょっと触ってみる?」「ペロッとなめてみる?」「ひとくち食べてみる?」

▶ 「ひとくち食べてみる?」の上手な使い方
・連発すると子どもは萎縮する。早すぎる提案、食事のたびに言うのは逆効果になることがある。
・この一言の前に、子どもが自分から「食べてみたい」と言い出すくらい「興味を引き出すこと」が肝心。
・ひとくちが大きすぎると受け付けないので、「小さすぎる」と思うくらいのひとくちでかまわない。目安は大人のひとくちの1/4以下。

▶ 絶対に言ってはいけないNGワード
① 「じゃあ、もうひとくち!」
・やっとひとくち食べた後の「もうひとくち!」は子どもには重すぎて、親子の信頼関係が崩れるキッカケになる。
・がんばった後の「もうひとくち!」はNG。
② 兄弟との比較
・兄弟はそれぞれ得意と苦手があって当然、食べられることが偉いと考えない、食べられない子を否定しない。
③ 罰を与える言葉
・全部食べなきゃもう作らない!自分で作りなさい。
・食べてくれたらうれしいな、というスタンスで。 

▶ 魔法の言葉その7「〇〇食べたね〜!」
・食べてくれたときのリアクションとしてお勧めなのが「食べたことをそのまま声に出して言う」こと。
・大げさではなく、日常会話より少し明るめのトーンで、子どもの目を見て言う。
・大げさに喜んだりする必要はない。
・大げさにほめることは「食べたからほめられた」という“条件付き”の評価になり、条件付きの評価は自己肯定感が下がりやすい。
・伝えたいのは「食べられたからあなたは偉い」ではなく「あなたの成長をお母さんはいつもしっかり見ているからね」という姿勢。

▶ 魔法の言葉その8「どこが美味しくない?」
・子どもが食べたものを吐き出したときに言う言葉。子どもは「自分の気持ちに寄り添ってくれた」と感じる。
・吐き出すことは「まだぼくの体には早いよ」ということを口で上手く説明できないときのサイン。
・子どもの苦手な傾向、「苦い」「固い」「ザラザラがイヤ」を知るキッカケになることも。

▶ 魔法の言葉その9「どんな味がする?」
・「おいしい?」という問いはプレッシャーが強いので、シンプルに料理の感想を聞くにとどめる。
・聞かれた子どもにも「味わって食べる」という意識が生まれる。

▶ 魔法の言葉その10「味わって食べてみて」
・「残さず食べようね」 → 「味わって食べてみて」「どんな味がする?」
・残さず食べたことをほめたいときは、結果ではなく姿勢や過程を評価しましょう。
(例)「残さず食べられたね」 → 「がんばって食べたんだね」

<Q&A集>

Q1.  給食は食べているようなのですが、家ではあまり食べません。何がいけないのでしょうか?
A.  心配ありません。外ではがんばっているお子さんが、家ではありのままの姿を見せているということ。親を信頼している証拠です。
 給食をモリモリ食べているなら、問題ありません。
 給食をなんとか食べられているレベルなら「先生に状況を聞いてみる」のも選択枝の一つです。“食べさせ上手”な先生もいるので、そのテクニックを盗むことができるかもしれません。また、ふだんから先生とコミュニケーションを取っておくことで「先生が無理強いすることで給食が嫌いになる」等のトラブル防止にもなります。

Q2.  食事に集中できません。食事中の立ち歩きがひどいです。スマホで動画を見せると落ちつくのですが、今度はスマホに集中してしまい、食事時間が長くなりがちで疲れます。
A.  まず「なぜ立ち歩きがひどいのか?」を考えましょう。
 何か理由があれば、叱る前にそれを取り除けばいいのです。まず、乳幼児期の子どもは1つの間隔にしか集中できないことを押さえておきましょう。
(例)
・食卓の周りに物が多くて食事に集中できない。
・座っている椅子やテーブルの高さが体に合っておらず、居心地が悪い。
・食事中にテレビがついている(大人のように「見ながら食べる」は無理、小学生以上なら可能になるがお勧めはしない)。
・スマホde注意を引く方法も解決には至らず、早くやめるべし。

Q3.  食べるのが遅くて食事時間が長くなりがち。イライラしてしまい、子どもの食事につき合うのが苦痛です。
A.  まず「なぜ食べるのが遅いのか?」を考えましょう。
・食事に集中できない環境だから。
・発達の問題(咀しゃくや嚥下がうまくできない)。
理由がわかれば対策が取れます。その上で、
時計がわかる年齢であれば、
「何分までに食べられそう?」
「時計の長い張りが6の数字までにごちそうさましようか?」
などとコミュニケーションを取り、食べる時間を意識させてから、
「時間になったよ。まだ食べる?」
と聞きます。子どもがまだ食べたいのであれば、1回延長します。
「10分だけね。」
それ以上はなしで、食事を下げましょう。
食べ物で遊び始めた場合は、怒るのではなく「今日はおしまいね」と片付けましょう。
食べ物で遊ぶのは「触れて遊ぶ」大切な発達段階でもあるので、その行為自体は問題ありません。
食事時間は30分で十分です。
もし、毎回の食事に1時間以上かかっているのであれば、少しずつ時間を短くしていきます。
1週間ごとに5分ずつ短縮するイメージで、スモールステップを守りましょう。

Q4.  食べはじめるまでが大変。遊ぶのをやめずになかなか食べはじめようとしません。
A.  子どもに食べはじめる時間をあらかじめ決めてもらいましょう。
子どもにとっての遊びは、大人にとっての仕事のようなもの。
「すぐにやめてこっちに来て」と言われてもそういうわけにはいきません。
食事の時間のしばらく前に「何時からご飯にする?」と聞いておき、その時間になったら、
「〇〇君が言った、6時になったからご飯にしよう」
と呼びかけるのがお勧めです。

Q5.  子どもにサプリメントはOK?
A.  本当に栄養が足りていないのであれば使用可です。
(例)子ども向け総合栄養サプリメント「mog

Q6.  苦手な食材が入っている料理はあらかじめ教えておいた方がよい?
A.  必ず先に伝えましょう。
もし知らずに食べた場合、苦手な食材が入っているとわかると、子どもはだまされた気分になり、警戒して他の料理も食べなくなるかもしれません。
苦手な食材が入っていることを認めて教え、その上で「味がしないように料理したから」とコミュニケーションを取りましょう。

Q7.  食の広がりがゆっくりすぎて発達の遅れが心配です。
A.  個人差があります。
周りの子より半年くらい遅れる子もいますし、少しずつステップアップしましょう。
程度がひどいときは「なぜ食べられないのか」理由を探しましょう。
(例)口に入れた感覚が気持ち悪い、好みの硬さではない、匂いが苦手、咀しゃくがうまくできない・・・
(例)スプーンやフォークを使いこなせない。
 → 子どもの機嫌のよいときに練習し、目の前で大人が実際に使う姿を見せましょう(二人羽織より効果的)。
(例)スプーンの持ち手の感触が嫌い。
 → 一緒にスプーンを買いに行って自分で選んでもらいましょう。
(例)自分で食べようとしない。
 → 食べ物と口の遠近感覚がわからず恐い、ことがあります。

Q8.  「ダイエットしたい」といって食べません。
A.  その気持ちを受け止めた上で、健康的でキレイにやせていくためには、適切な栄養バランスが必要なことを説明しましょう。
「そんなこといってないで食べなさい!」では解決しません。


食べないのにはワケがある〜食べない子が変わる魔法の言葉〜その1

2025年01月27日 08時49分50秒 | 育児
・・・「食べない子が変わる魔法の言葉」という本を読んでみました。
著者は山口健太氏(日本会食恐怖症克服支援協会理事)という方です。

内容は好き嫌い>発達障害(感覚過敏)でしょうか。
料理法より親子のコミュニケーションに重きを置き、
子どもが楽しく食事をできる環境を演出するさまざまな方法が提案されており、参考になります。

食べない子が置かれた環境の構図には、
(親)お腹が空けば食べるだろう、なぜ食べないの?
(子)初めて見る食べ物はちょっと恐い、まだ上手く飲み込めないからこれは食べられないよ・・・
というギャップが存在します。

親が強引に進めると子どもは萎縮して食べなくなってしまう、
それを子どもの発達を観察しながら上手に誘導するのがよい方法、
といったところでしょうか。

今までいろいろ調べてきた私にとって、
この本の内容は「相談と指導で何とかなった」事例レベル、と感じました。
それでもよくならない子どもたちは医療機関に逃げ込みますので、
著者はその世界に触れていません。
だからこの本を読むとすべて解決する、とは思わない方がよいと思います。

備忘録としてメモを残しておきます。

▶ 調理の工夫は好き嫌い・偏食の根本的な解決にはならない
・「食べない子」が「楽しく食べられる子」に変わるために一番大切なのは「コミュニケーション」。
・「食べろ!」と言われると食べられず、「無理して食べなくていいよ」と言われると食べられる。

▶ 「食べない子」に関するよくある間違い

Q1.  食欲は空腹だから湧き上がるもの?
A1.  ❌️ 
 人はストレスを感じたり、不安や緊張状態にあったりすると、空腹でも食欲が出ないことがある。緊張によってのどの筋肉が動かしにくくなるので、食べ物が飲み込みにくくなり、消化器官の働きも悪くなる。

Q2.  好き嫌い・偏食は子どものわがまま?
A2.  ❌️ 
 好き嫌い・偏食は生理学的な問題で、そもそも食に対する見え方の問題や、口に入れた感じ、中には上手く咀嚼ができなかったり、飲み込みが困難な子どもがいて、そういった特性や身体的な問題が、食の困難・偏食を大きく規定している。
 乳幼児の場合、好き嫌い・偏食は「感覚の問題」に起因することが少なくない。

Q3.  好き嫌いをしていると栄養失調になる?
A3.  ❌️ 
 好き嫌い・偏食があっても栄養失調にはならない。不安な方は成長曲線を利用し、身長と体重のSD値が2.0以上ある場合は栄養面に問題がある可能性があり、病院を受診すべし。
 推定エネルギー必要量(日本人の食事摂取基準2015年版)の7割以上で、元気に過ごせていれば、基本的に栄養失調の心配はない。

Q4. 苦手な食材は年齢とともになくなっていく?
A4.  ❌️ 
 一般的には、苦手な食材は年齢とともになくなる傾向がある。それは年齢が上がるにつれて味覚を感じる細胞(味蕾)が減少し、味をマイルドに感じやすくなるため。また、人は初めてのモノや初体験の事柄を本能的に拒絶するが、生きていくうちにいろいろな食べ物に触れる機会があり、慣れていく。
 しかし2歳前後の偏食には要注意。2歳前後は味覚芽発達する時期なので、さまざまな種類の味覚を強く感じやすくなり、食に偏りが出る傾向がある。

Q5.  食べないものは食卓に並べない方がいい?
A5.  ❌️ 
 子どもが嫌いなモノは避けて、好きな食材の料理だけを並べがち・・・が一般的ですが、そのような生活を続けると食生活が広がらないという弊害もあるようです。
 ただ、苦手なモノにひたすら挑戦させるだけでは、イヤな記憶として残ってしまう可能性もあり、要は「正しい提案」を行うことです。

▶ 「食べない子」が出すSOSサイン
以下の6つのサインがみられる場合は「この子は食事で苦しんでいる」と理解すべし。
「ちゃんと食べなさい!」とプレッシャーをかけると逆効果になるので要注意。
1.吐き出す:
「食べてみないと、自分に合うかどうかわからない」
  ⇩
 食べてみたが・・・
  ⇩
「今の自分の感覚には合わない」ので吐き出す。
2.泣き出す:
・「理由があって食べられないけど、それを自分では説明できない」という気持ちの表現。
3.水をよく飲む:
・緊張により嚥下機能が低下して食事を上手く飲み込めないために水で流し込んでいる状態。
4.ゲップをよくする(呑気症・空気嚥下症):
・緊張などの精神的な理由により無意識に空気を飲み込んでしまい、ゲップという症状として現れる。
5.オナラをよくする:
・呑気症の症状の一つ、緊張などで空気を飲み込んだり、腸の機能が低下することからオナラをしやすくなる。
・よくオナラをする子どもは、食事の時にストレスを感じて空気を多く飲み込んでいる可能性がある。
6.口数が減る(場面緘黙):
・いつもはふつうに話せるのに、特定の緊張を感じる環境ではほとんど話せなくなることを場面緘黙という。
・心理的な要因が大きく、食事の時だけ極端に口数が減るなら、食べられないサインと捉えるべき。

▶ 「食べない子」が変わる5つのステップ
(ステップ1)この食べ物、知らないよ
(ステップ2)この食べ物を知ってもらう
(ステップ3)この食べ物に興味を持ってもらう
(ステップ4)この食べ物に触れてもらう
(ステップ5)この食べ物を食べてもらう
・・・このステップをショートカットせずに進めばスムーズなはず、
でも親はせかしがち。

▶ 食べないのにはワケがある
多くの場合、以下に挙げた7つのうち、複数が当てはまる:
1.見た目
2.味覚鈍麻
3.刺激
4.食感
5.香り・風味
6.飲み込みやすさ
7.精神的な理由
・・・自分の子どもにはどれが当てはまるのか把握することで、子どもの感覚を理解して受け入れ、その上でコミュニケーションを取りながら対策を考える。7の「精神的な理由」を除き、子どもが成長して行くにつれ、次第に1の「見た目」が一番の理由になっていく。

▶ 食べない理由その1「見た目」
・初めて目にする食材には大人でも抵抗がある。
・子どもも「いつもと見た目が違う」「ちょっと変な見た目」で食べる意欲が減退してしまうことがある。
(例)
✓ 白米は好きだが、炊き込みご飯は苦手。
✓ 同じ食材でも料理や形が変わると食べない。
✓ 同じ食器や容器にこだわる。

▶ 食べない理由その2「味覚鈍麻」
・もともと味を感じにくい子どももいますが、はじめから濃い味に慣れてしまうと味覚が麻痺し、特定の味付けや調味料を多く使った濃い味を好みがちです。
(例)
・白米が苦手で必ずふりかけをかける。
・しょうゆやソースをつけすぎる。
・カレーや丼ものを好んだり、濃い味のおかずばかりを食べる。

▶ 食べない理由その3「刺激」
・2の逆で味に敏感な子どもがいます。味を強く感じるため濃い味付けが苦手です。
・甘い味を“やさしい味”と感じて好む傾向があったり、果物やマヨネーズなどの酸味だけを極端に強く感じてしまい食べられなかったりします。
・2歳前後の自然な味覚の発達に伴って味を強く感じてしまうケースもあり、「これまで食べていたのに、おかしいな?」という現象が経験されます。
(例)
✓ 甘い味付け以外は薄味を好む。
✓ ジュースより水やお茶を好む。
✓ 酸味か辛味、スパイスなどが苦手。

▶ 食べない理由その4「食感」
・「特定の食感」を好む子どもがいます。
・濡れたもの、ねっとりしたものなど、柔らかい食感のモノを受け付けない子どもがいます。
・カリカリしたモノやパリパリしたものを好む子どもがいます。

▶ 食べない理由その5「香り・風味」
・ニオイに敏感な子どもがいます。
・生魚を食べられなかったり、ダシの風味が強い味噌汁やお吸い物が苦手な子どもがいます。

▶ 食べない理由その6「飲み込みやすさ」
・トロトロした飲み込みやすいものは食べられるけど、パサパサした食感のものを飲み込みづらいと感じる子どもがいます。
・固い肉や生野菜などの繊維質のモノをかみ切れずに吐き出す子どもがいます。吐き出したことを責めると、それがトラウマとなり「嘔吐恐怖症」を発症したり、偏食がひどくなることがあります。

▶ 食べない理由その7「精神的な理由」
・聴覚過敏などが原因で周りが気になり食事に集中できなかったり、親しい関係以外の人には緊張してしまったりして、ストレス状態に陥ることで食事が進まない子どもがいます。

▶ 「おやつを食べ過ぎてしまう」「好きなものだけ食べすぎてしまう」ことへの対策
・お菓子なら袋で出すのではなく、最初から個別の器に入れて出すようにする。
・好きな料理・食べ物は、大皿から自由に取り分けるスタイルではなく、最初から小皿に1人分を盛り付ける。
・ルールを作る:
(例1)好きなモノのおかわりは、苦手なモノに少しでも挑戦してからにする。
(例2)おかわりは2回までにする。

▶ 魔法のルールその1「費やす時間は1日1分」
・食べないことへの対策に何時間もかけると親子共々疲弊します。
・対策に費やす時間は「1日1分」と短時間で切り上げ、毎日の積み重ねで。

▶ 魔法のルールその2「4つの“しすぎ”を手放す」
1.イライラしすぎ:食べてくれないことで親がイライラしてしまい、食卓がギスギスした雰囲気になり、子どもがさらに食べなくなるという悪循環を形成。
2.不安になりすぎ:必要以上に心配すると、大人の不安が子どもにうつり、余計に食べなくなる悪循環を形成。
3.プレッシャーのかけすぎ:プレッシャーをかけすぎると食事のトラウマから精神障害(会食恐怖症など)を起こすことがあります。
4.放置しすぎ:「好きなモノしか出さない」のもこの一つ。

▶ 魔法のルールその3「ガッカリした姿を見せない」
・期待が大きいとガッカリも大きい。
・期待しなければガッカリもしない。

▶ 魔法のルールその4「お母さんにかける魔法の言葉」
・子どもが食べてくれないとき、つい「なんで食べないの!」といってしまいそうなときには「そうきたか!」とつぶやくと感情的になるのを防げることがある。

▶ 魔法のルールその5「子どもに決めさせる」
・人は自分で決めたことを守りたがる(社会心理学)。
(例)「しっかりたべようね!」 → 「どれくらい食べる?」
(例)「7時になったらご飯よ!」 → 「何時からご飯を食べたい?」

▶ 魔法のルールその6「苦手なモノは25%まで」
・苦手なモノでも食卓に並べた方がよい、でもその比率は25%までにしないとハードルが高すぎる。
・苦手なモノが一切並ばない食卓にしてしまうと、その子の食は広がらず、偏食のまま大人になってしまう可能性がある。

▶ 魔法のルールその7「食材にポジティブイメージを」
・初めて見る食材・料理は子どもにとって恐い存在(大人でも海外旅行へ行き見たことのない料理が出てくると不安になります)。
・子どもは思考力が未熟なため、抽象的な発想ができないことを知ろう。
(例)リンゴを知っている子が初めて梨を見たときに「同じようなもの」と認識するのは難しい。
 → 「これはりんごのお友達で甘くて美味しいよ!」とアドバイス。
(例)お母さんが作ったカレーとおばあちゃんが作ったカレーを同じ料理と認識できない。
・だから苦手なモノでも初めてのモノでも“食べなくても”食卓に並べた方がよい。知ってもらい、慣れてもらい、興味を持ってもらう目的で。
 → するとある日、「食べた!」というサプライズがあるかも。
・お弁当は例外で、子どもの好きなもの・子どもが食べられるものを優先すべし。食事が楽しくなくなってしまうかもしれない。家である程度食べられるようになってからお弁当に入れる方がよい。

▶ 魔法のルール8「好き嫌いは“悪”ではない」
・目標を「好き嫌いなく何でも残さず食べる」に設定すると窮屈になるので「楽しく食べる」ことに設定すべし。
・「野菜を残すと農家さんが悲しむからちゃんと食べなさい」という押しつけで子どもが野菜を嫌いになったら・・・農家さんはもっと悲しむかもしれない。

▶ 魔法のルールその9「スモールステップを大切に」
・ある食材を食べるまでに踏むステップに対する親子のイメージには大きなギャップがある。
(大人)苦手なものがある → ひとくち食べさせてみる、こども用に取り分けてみる、程度
(子ども)苦手なものがある → 見たことのない食べ物が食卓に並んでいる → パパとママが食べている → 「これ、なんだろう?」とその食べ物が気になり始める → その食べ物についての情報を得る → 食べ物に興味が湧 → 試しにニオイを嗅いでみる → ペロッと味見をしてみる → ひとくち食べてみる → 自分用として食べる
・食べていない状態でも、食べるための準備は着々と進んでいる。1か月に1つステップアップしたら順調、くらいの気持ちで見守るとよい。

▶ 魔法のルールその10「心の状態を見る」
・特殊なシチュエーションだと食べられることがある。
(例)こどもが行きたがっていたレストランで食べた。
(例)仲のよい友だちと並んで座ったら食べた。

▶ 魔法のルールその11「迷ったら“自分(親)が楽しい方”を選択」
・食卓を囲んだとき、子どもの楽しさばかりを優先すると、親の心の充実はおろそかになり、結果的に雰囲気が悪くなりがち。
・自分(親)がしんどくなる前にあきらめて気持ちを切り替えることも必要。
・メニューは自分(親)が食べたいものにしてよい。
・子どもにお菓子を制限する際に、自分(親)も制限する必要はない。時には親子で楽しく食べたり、こっそり一人で食べてもよい(なんだかサザエさん的)。


<参考>
食べない子が変わる魔法の言葉(山口健太著、辰巳出版)

子どもの肥満はなぜいけないの?

2025年01月26日 08時58分58秒 | 健診
学校健診で「肥満があるので医療機関を受診してください」と通知を出しても、実際に受診する生徒は少数派です。
時間をやりくりして学校健診に出かける小児科医の立場として、残念でなりません。
以前、教育委員会にも「受診率を上げる努力をしてください」と意見しましたが、のらりくらりと建前を述べられて終わりました。

なぜ受診しないのでしょう?
理由は簡単です。
1.症状がないから
2.困っていないから
等々。

一方、医療者が「肥満は健康上の問題がある」とする理由は何でしょう?
こちらも理由は簡単です。
ア)生活習慣病のリスクがあるから
イ)身体・精神健康上の問題があるから
等々。

問題は生徒と医師の頭の中のギャップです;
「現在困っていないし、何十年も先のリスクがあると言われてもピンときません」

しかしここであきらめるわけには生きません。
この項目ではアの生活習慣病のリスクを具体的なデータで示し、理解することにより、生徒自身が肥満対策に取り組める方法を探ってみたいと思います。

<ポイント>
・幼児期以降の肥満は成人肥満につながる確率が高い。
・小児期に肥満である場合、成人期に心筋梗塞を含む心血管疾患を発症するリスクが2倍以上になる。

上の2点に尽きます。つまり、
学校健診の場で肥満と評価されたら病気の予備軍であることを意識し、将来の心筋梗塞・脳卒中のリスクが2倍になると考え、その日からリスクを減らすために取り組む必要がある
ということ。

現在困っていなくても、すでに病気の種を抱えている肥満の生徒に、
将来を想像する能力があれば行動は変わる可能性があります。

以下に調べた内容を備忘録として残しておきます。
肥満について調べる際にいつも感じることですが、
まず小児と成人では評価方法が違うこと、用語の混乱、病気のリスク評価がバラバラで、
単純化することが難しいですね。
それを築いつ拾っているとわかりにくい説明になりがちです。


▶ 用語解説
肥満:身長に比べ体重が大きい状態を指す。病気を意味するものではない。体格指数 (BMI = 体重[㎏]/身長[m]2) が18.5以上25未満であれば普通体重。18.5未満なら低体重、25以上なら肥満に分類される。
肥満症:肥満(BMI ≥25)であって、肥満による11種の健康障害(合併症:耐糖能障害[2型糖尿病など]、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風など)が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に診断される。減量による医学的治療の対象となる。
メタボリックシンドローム:別名「内臓脂肪症候群」。「肥満」か否かによらず、内臓脂肪の蓄積および血圧、血糖値、血清脂質値のうち2つ以上が基準値から外れている場合に診断される。
 
▶ 肥満の評価方法は小児と成人では異なる
・成人の場合はBMI(注1)、6~18歳の子どもは肥満度(注2)を使って肥満かどうかを計算する。
・BMIは25.0以上で肥満。
・子どもの場合は、
 ✓ 男児なら肥満度が25%以上、
 ✓ 女児なら11歳未満で30%以上、11歳以上で35%以上になると肥満。

注1)BMI = 体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}
 18.5未満    → 低体重
 18.5-25.0  → 普通体重(22が標準)
 25.0-30.0  → 1度肥満
 30.0-35.0  → 2度肥満
 35.0-40.0  → 3度肥満
 40.0以上    → 4度肥満
注2)肥満度 =[100×(現在の体重‐標準体重)/標準体重]

肥満の増加傾向は日本に限らず全世界的な現象であり、WHOは「男性の18%と女性の21%が2025年までに肥満になる」と推定しており、これは個人の40%がBMI≥25に達することを意味する。

▶ 他の幼児期・学童期の肥満評価方法
・幼児にはカウプ指数、学童にはローレル指数が用いられる。生後3ケ月未満の乳児には使用できない。
✓ 幼児 (3ヶ月〜5歳) → カウプ指数 = 体重(kg) ÷ 身長(m)2
✓ 児童・生徒(小・中学生) → ローレル指数 = 体重(kg) ÷ 身長(m)3 × 10


・成人(高校生以上)は「ボディマス指数(BMIと適正体重)」を使う。

▶ 小児肥満が成人肥満につながる確率
・幼児期肥満の25%
・学童期肥満の40%
・思春期肥満の70〜80%

 → 乳児期肥満の多くは幼児期には自然に解消していく生理的な肥満であり、将来の肥満との関連は少ない。一方、幼児期肥満は学童期肥満、思春期肥満と関連し、さらにその後の成人肥満~生活習慣病へとつながっていく。したがって、幼児期に肥満にならないことが大切。幼児期に健康的な生活習慣を身につけることが、その後の肥満予防においてとても重要。

▶ 思春期肥満とつながる生活習慣
・朝食を食べない
・時間を決めずにおやつを食べる、ジュースの摂取が多い
・夜食頻度が多い
・就寝時間が遅い、睡眠時間が短い
・テレビ視聴時間が長い
・室内での一人遊びが多い

▶ 日本人小児の肥満頻度
・11歳男児の13.31%、女児の9.36%が肥満度 20%以上(注1)の肥満傾向児(2020年)
・福島県の調査では、小児健診受診者の3~4%がBMI 2SD以上(注2)の肥満

注1:2005年度まで、性別・年齢別に身長別平均体重を求め、その平均体重の120%以上の体重の者を肥満傾向児としていたが、2006年度から、性別、年齢別、身長別標準体重から肥満度(過体重度)を算出し、肥満度が20%以上の者を肥満傾向児としている。肥満度の求め方は次のとおり。
肥満度(過体重度)=〔実測体重(kg)-身長別標準体重(kg)〕/身長別標準体重(kg)×100(%)
注2:BMI(体重(kg)/身長(m)2)≧ SD(年齢別に算出された標準偏差)× 2

▶ 肥満が健康に及ぼす影響
・成人肥満は、高血圧症脂質異常症糖尿病などの生活習慣病につながる。
・生活習慣病は動脈硬化を促進するため、将来的に心筋梗塞脳卒中となる危険性が高まる。
・生活習慣病は、大人だけでなく子どもでも発症し、子どもの頃から動脈硬化が進行することがある。
脂肪肝睡眠時無呼吸をおこすこともある。

▶ 肥満と生活習慣病リスクの具体的なデータ
(negative)
・小児期に肥満である場合、成人期に心筋梗塞を含む心血管疾患を発症するリスクが2倍以上になる。
・肥満のある65歳未満の男性と50歳未満の女性では、10年間に心筋梗塞や脳卒中のリスクが25~60%上昇する。
・14歳の時点で肥満だった女性は、脳卒中を発症する可能性が87%高く、31歳の時点で肥満だった女性は、脳卒中を発症する可能性が167%高い。肥満は、たとえ一時的なものであったとしても、長期的に健康に大きな影響を与える可能性がある。
・心血管疾患による死亡の相対危険度は,BMIの増加とともにJ字型を示す(下のグラフ)
 

→ 心血管疾患による死亡相対危険度は、男性ではBMI25を超える(1度・2度肥満)となだらかに上昇し、30を超える(3度肥満)と急激に増加し2倍を超える。

(positive)
・女性では、果物をよく食べているグループでは、あまり食べていないグループに比べ、心血管疾患による死亡のリスクが10%減少し、心血管疾患による死亡のリスクは13%減少した。
・糖尿病予防プログラムでは、7%の体重減少が、4年間の追跡調査で糖尿病を発症するリスクが58%低いことに関連していた。

▶ 具体的な肥満対策
・早寝・早起き・朝ごはんの規則正しい生活リズムを身につける。
・1日3回の食事と1回の間食(おやつ)を基本とし、カロリーや塩分の多い加工品や外食、甘い飲み物は減らす。
・ゲームやスマホ、テレビを利用する時間を減らし、その時間で体を動かす。


<参考>
子どもの肥満について詳しく知ろう(福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター)
・日本小児科学会ホームページ 「幼児肥満ガイド2019
・小児内分泌学会ホームページ 「病気の解説 肥満
肥満症と血管合併症、岸田 堅〔日内会誌 100:958~965,2011〕
子どもの肥満(ke!san)


BLW(BabyLedWeaning)のリスクとデメリット

2025年01月13日 12時00分00秒 | 育児
前項で紹介したBLW(BabyLedWeaning)はいいことずくめのように聞こえますが、
果たしてそうでしょうか?

今回はその“影”の部分として、リスクとデメリットを扱います。
これを知った上で導入を考えた方が安全・安心です。

まずは前項目の最後の方で触れたリスクについて。
こちらの本によくまとまっていました。
なお、「従来法」とは離乳食を保護者がスプーンであげる方法を指します。

周囲の理解を含めた環境整備も大切ですが、
窒息事故に直結するリスクとして食材と調理法が大きなポイントだと感じました。

内閣府のガイドラインでは「果物は生ではなく加熱して柔らかくして与えましょう」と書いてあるそうです。
すりおろしても大きめの破片が残っていれば、のどに詰まる可能性はあります。
また、ブドウやミニトマトも与えていいことになっていますが、「四等分」するように書かれています。

「この食材は安全、この食材は危険」だけではなく、
「安全な形で出す」まで気をつかう必要があるということ。

では本の要約を備忘録として残しておきます。

Q.  BLWと従来法でアレルギーの発症率に違いがありますか?
A.  ありません。
〜BLWは初めから固形食なので、大量のアレルゲン食材が一気に胃の中に入ることはありません。だからアレルギーを引き起こす可能性は少ないと言えます。

Q.  BLWでは初期から固形物を与えますが、のどに詰まりませんか?
〜BLW中には「オエッ」とえずいたり、「ゴホッ」と咳き込んだりすることはあります。これは窒息を防ぐ防御反応(※ 咽頭反射、咳反射)で窒息そのものではありませんので、不安になったり過度に心配する必要はありません。
 本当に窒息すると、胃気ができず声が出なくなります。つまり赤ちゃんは静かになってしまいます。ちょっと目を離したとき「妙に静かだなあ・・・」というパターンで発見されることがあります。このため、BLW中は保護者が見守る必要があります。離乳食を与えているときは保護者が側にいる必要があることは従来法と変わりません。

咽頭反射:飲み込めないくらい大きな食べ物を前方に押し出して吐き出そうとする動き。窒息しないための安全装置。
 窒息ではなく正常な防御反応です。大人の咽頭反射は舌の奥の方で起きますが、赤ちゃんでは大人に比べて舌の前の方でこの反射が引き起こされる傾向があります。そのため、生後6〜7か月に食事を始めたばかりの赤ちゃんにはよく見られることです。咽頭反射を繰り返すことで、赤ちゃんは安全に食べるスキルを学習していきます。
・しっかり噛むこと
・詰め込みすぎないこと
・奥まで入れすぎないこと
月齢が進めば起こりにくくなっていきます。

咳反射:何かの拍子で食べ物などが気道に入ってきたり、詰まりそうになったとき、侵入を防ぐために起こる反射。
 赤ちゃんがむせているとき、それが咳反射かどうかは、
✓ 顔が赤くなっている
✓ ゲホゲホッと何かを吐き出そうとしている
✓ 涙目になっている
などで見分けることができます。咳反射は咽頭反射同様、窒息を防ぐための自然な反射です。
咳反射が起きているときは、赤ちゃんの口に指を入れて無理に取り出そうとする必要はありません、見守ってください。

Q.  窒息の判断とその対応方法を教えてください。
A.  「オエッ」「ゲホゲホッ」などのえずきや咳込みはなく、赤ちゃんが静かになってみるみる顔色が青くなったときは窒息の可能性大です。119番に電話して救急車を呼び、背部叩打法胸部突き上げ法で詰まっているものを吐き出させる必要があります。これを吐き出すまで何回も繰り返します。
 吐き出せず、途中で赤ちゃんの意識がなくなった場合は心肺蘇生法に切り替えます。



Q.  窒息のリスクが高くなる状況・食べ物はありますか?
A.  あります。
(赤ちゃんが窒息しやすい状況)
✓ 椅子にもたれて座っている(背筋が伸びていない)
✓ 気が散っている(TVや動画を見ている)
✓ のどに詰まらせやすい食べ物を与えられる
✓ 息を吸って食べる
(窒息しやすい食べ物)
✓ 小さくて固いもの
✓ 丸くて小さいもの(ミニトマト、ブドウ
✓ 皮付きのもの(サツマイモ、バナナなど)
✓ 気道の中で圧縮されやすいもの(食パンなど
✓ 粘着性のあるもの
(窒息の基本的な安全対策)
✓ 背筋が伸びるよう真っ直ぐ座らせる
✓ 絶対に赤ちゃんを一人にしない
✓ 小さくて丸いものは与えない
✓ 赤ちゃんの口に突然食べ物を入れない

日本BLW協会HPより;
(窒息の危険性がある食材)

(窒息の危険性がある食材の工夫の仕方)


Q.  初めから固形物を与えて赤ちゃんは消化できるんですか?
A. はい、できます。
 生後5か月になる頃には、赤ちゃんの消化機能・腎臓機能は食事を受け入れられるまでに成熟するとされており、問題ありません。
 赤ちゃんのウンチに食べ物のかたまりが出てくることがありますが、消化しきれなかったものが出てきているだけで、すでに栄養分は吸収されており、心配する必要はありません。

Q.  自宅でBLWをしている赤ちゃんを保育園に預けるときはどうすればいいですか?
A.  保育園側にBLWをしていることを伝えましょう。園の規模や方針により、どこまで受け入れてもらえるかはケースバイケースです。言葉だけではわかってもらえないときは、実際にどのようなものをどのように食べているかの写真や動画を見てもらうのも理解を助けます。
★ 日本BLW協会のHPからBLWのリーフレットが無料でダウンロードできますので、これを利用するのも一つの方法です。

さて次にこちらの動画からBLWのデメリットを拾ってみました。

1.片付け&洗濯が超大変
・きれい好きのお母さん、汚れる・散らかるとイライラするお母さんには向いていないかも。
・毎食後、着替えが必要になる。
・床の汚れは掃除機で済むレベルではなく、毎日(毎食後?)ぞうきんがけ。
(対策)
・食事と着替え(とシャワー)はセットと開き直る。
・袖付きエプロンの使用もあり(本人が嫌がらなければ)。
・床には新聞紙を敷いたりで対応は可能ですが・・・。

2.正解がわからず不安
・日本ではまだ普及しきっていないので情報収集に限界あり。
・食材選び、硬さや大きさ、量、出し方などで悩むことが多い。
( → 加熱してピューレ一択、っていうのはかなり楽!)
・予想外の反応も楽しいので「当たったらラッキー」くらいのスタンスがよい。

3.最初の数ヶ月のメニューが難しい
・野菜や肉類は柔らかくしてなんとかできた。
・でも主食(ごはん)と汁物が悩みの種。ごはん粒はとにかく散らばるし、散らばると赤ちゃんの気が散る。汁物はスプーン以外でどうやって食べる?

4.外出先での食事が難しい
・散らかし放題の初期は難しい。
・玄米パンとか干し芋はお勧め。

5.周囲に理解されにくい
・生後6か月の赤ちゃんに固形物をあげることにたいていの人はビックリする。
・「ヤバい母親」と思われる可能性あり。
・初めてBLWを実践する場合、不安になる時期が必ず来るが、そうなったとき一人で悩むのは厳しい。
 「片付け面倒〜」「食べないな〜」「栄養足りてるかな〜」
・子育てに口出ししがちな姑と同居とか、理解のない旦那だったら従来食(ペースト離乳食)の方がいいかも。
 → 動画や本を見せて説明して理解してもらうことをお勧めします。


<参考>
BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう! (日本BLW協会 著、原書房、2020発行) 
子どもの窒息対応(日本BLW協会)
気道異物除去(乳児・幼児)(日本赤十字社)


BLW(baby led weaning)≠ 手づかみ食べ、=赤ちゃん主導の離乳食

2025年01月12日 12時00分00秒 | 育児
好き嫌い・偏食について調べていたら、
離乳食を食べない赤ちゃん問題が立ちはだかり、
その解決法としてBLWにたどり着きました。

こちらの動画元祖提唱者の著作のポイントが説明されていましたの視聴してみました。

印象・ポイントは、
・赤ちゃんの離乳を親のしつけではなく“赤ちゃんが主役”に置き換える方法。
・赤ちゃんが“食べるスキル”を獲得していく過程を親が腹をくくって見守る方法であり、赤ちゃんが試行錯誤する様子を楽しく見守ることでもある。
・BLWを経験した赤ちゃんは食べることが好きになり、自分で食べたという達成感を経験できる。
・昔の日本では普通だった「親の食べているものから取り分ける」が入っており、親の手間が減る。
等々、“子どもの成長・発達を見守る”という子育てのエッセンスを凝縮したものと感じました。

メモを残しておきます。

前編〜基礎知識〜

▶ BLWとは何か?
・ジル・ラプレイ氏(助産師&保育士)が提唱した離乳方法
・子どもの自主性や手先の器用さが身につく
・取り分けスタイルで親も楽
 ✓ 裏ごしの手間なし
 ✓ 食べるべき量の基準なし
  → 親のストレスほとんどなし

▶ BLW=手づかみ食べ、ではない!
・Baby Led Weaning=赤ちゃん主導の離乳食
・赤ちゃんが自分で食べる、赤ちゃん主体の方法
・手助けしたい気持ちをグッと抑えて赤ちゃんにすべてを委ねる
 → 我が子を助けたい気持ちをどう抑えるかが重要ポイント
・目の前の食材を選ぶところから飲み込むまで赤ちゃんが自分でコントロールするため、
自尊心・自立心が養われる。

▶ 親のすべきこと
1.いつから離乳食を始めるかを決める。
2.赤ちゃんが食事の練習をする環境を整える。
3.どんな食べ物を提供するかを決める。

▶ BLWの基本ルール
1.赤ちゃんと一緒に食卓に着き、親も食事をする。
2.赤ちゃんが食べ物に興味を示したら、それで遊ぶよう促す。
3.食べ物は、赤ちゃんがつかみやすい形で提供する。
 〜裏ごしした食材は使わない。いきなり固形物を与える。
4.最初から赤ちゃん自身が自分で食べる。
 〜準備だけして、あとは赤ちゃんにお任せ。
5.食べる量や何を食べるかは、赤ちゃんに決めさせる。
6.赤ちゃんが欲しがる間は授乳を続ける。

▶ BLWが安心な理由
・“食べる”ことは“歩く”こと同様、発達過程で自然に獲得していくこと。
・その過程を親が過剰に干渉しない、阻害しないことが大切。

▶ 素朴な疑問集
Q.  いきなり固形物を与えて食べられるの?
 → 離乳食初期は、たべられなくてもいい、食べる練習をする時間と考える。
 歯がなくても食べる練習はできる(歯ぐきでカミカミ、あごや舌を使う練習)。
 生後9ヶ月頃までは赤ちゃんのメインの栄養源は母乳・ミルク(離乳食は“補完食”)、
 母乳・ミルクを欲しがるだけあげていれば問題ない。
Q.  のどに詰まらないのかな?
 → 安全装置(咽頭反射、咳反射)が作動するので大丈夫。
 のどに詰まりそうになると“咽頭反射”“咳反射”が起こり「オエッ」「ゲホッ」となる。
 これを繰り返すことで「この大きさは今は食べられない」と学習する。
 本当に窒息すると声が出せなくなる( → 応急処置はこちら)。
Q.  赤ちゃんが食べたいものだけ食べたら、栄養バランスが崩れない?
 → 1日単位ではばらつきがあるが1週間単位で見るとバランスが取れることが多い(検証不十分です)

▶ BLWを赤ちゃんの視点から見てみると・・・
・赤ちゃんにとって“食べる”ことは初体験!ドキドキ、ワクワク。
・“赤ちゃん視線”で考えてみましょう。
Q.  人から見知らぬ物体を手渡されたら、あなたはどうする?
 ✓ 眺める
 ✓ 触る
 ✓ 手に取る
 ✓ ニオイを嗅ぐ
 ✓ これはおもちゃ?もしかしたら食べものかも?と思う
 ✓ 口に入れてみる
 ✓ 舐めたりカミカミしてみる
 〜BLWでは赤ちゃんが初めてこれを行うことになります。
  初期は“食べる時間”にならなくても仕方ない、
  慣れる時間、練習する時間です。
Q.  初めてあなたが自転車にまたがったとき、乗れましたか?
 ✓ 初めは乗りこなせない
 ✓ 何日も練習して乗れるようになる
 ✓ その後、乗り方を忘れていない・・・ですよね。
・練習していないことはできない、最初からうまくはできない
〜これは自転車にも食事にも当てはまる。
・赤ちゃんは「未知の物体の調査」と「新しいからだの使い方の練習」を同時に行っているのです。
・「親が手伝わない」ことって難しい・・・つい手助け、口出しをしたくなりがち。
 ✓ 赤ちゃんの食事のサポート
 ✓ はやく食べるようせかす
 ✓ 完食するよう促す
 ✓ マナー違反を注意する
〜これらはすべて“親目線”の余計なお節介かもしれません。

後編〜実践〜

▶ 離乳食を始める時期:生後6か月頃
・赤ちゃんの準備が整ったかどうかのチェックポイント
✓ からだの発達:抱っこやハイチェアの支えがあれば背筋を真っ直ぐ伸ばした状態で座れる。
✓ 赤ちゃんのモチベーション:家族の食事の様子を観察したり、テーブルの上の食べ物をつかもうとする。

▶ 基本的安全対策
1.食べ物を手でつかみやすいように、赤ちゃんを真っ直ぐ座らせる
〜ベビーカーに寄りかかっている姿勢は❌️ 、ハイチェアがお勧め。
2.のどに詰まる可能性のある食べ物など、危険な食べ物は与えない。
〜赤ちゃんがつかめないモノ=安全に食べる準備ができていない。
3.大人が赤ちゃんの口に食べ物を入れない。
4.赤ちゃんが食べ物を扱っている間、邪魔をしない。
〜テレビなどを見ていると注意散漫となり誤飲・誤嚥リスクが高くなる。
5.食べ物のあるところで、赤ちゃんを一人にしない。
6.食後は食べ物が口の中に残っていないかチェックする。

▶ 危険な食べ物・気をつけるべき食材(イギリスの例)
(危険な食べ物)
・食塩が必要以上に含まれている(食塩は1日1g以下に抑える)
・砂糖が必要以上に含まれている
・食品添加物
・十分に火が通っていない生のシーフード(感染症のリスク)
・はちみつ(ボツリヌス菌のリスク)
・サメ、メカジキ、マカジキ(水銀リスク)
・低温殺菌していないチーズ(リステリア菌リスク)
・ブラン食品、生のブラン(食物線維が多すぎる)
・紅茶・コーヒーなどカフェインを含む飲み物
・ライスミルク(無機とヒ素のリスク)
・豆乳(アルミニウムと植物性エストロゲンリスク)
・炭酸飲料と希釈していないフルーツジュース(虫歯リスク)
・のどに詰まりそうな食べ物(小さくて丸いもの、固い果物、魚の骨など)
(気をつけるべき食材)
・青魚
・アレルギーの恐れのある食べ物

▶ 食材・料理の(マイ)ルール
・自然食材が使われている家庭料理、大人にとってもバランスのよい食事を心がける。
・野菜あるいは果物は毎食、炭水化物・たんぱく質はそいれぞれ2食に1回以上提供する。
・前述の「危険な食べ物」は控える、輸入物のチーズも避ける。
・味の濃い料理を取り分けるときは一度お湯ですすぐ。
・ジュースは与えない。

▶ お勧めの食材
(6〜8か月)スティック状の食べ物
(7〜9ヶ月)小粒の柔らかいもの、ツルツルしたもの ・・・丸くてのどに詰まりそうなものはカットして
 ✓ この時期には“中休み”をする赤ちゃんがいるそうです。
(8〜10ヶ月)レーズンなどの小粒な食べ物、ディップ
 ✓ 食べ物に対する姿勢が“興味” → “食事”に切り替わる時期。
(9〜12ヶ月)様々な形や舌触りの食べ物

★ ちなみに赤ちゃんの発達を対応させると・・・
(6〜8か月)手づかみ、手からはみ出た食べ物を歯ぐきで噛んだりしゃぶったり
(7〜9ヶ月)手の扱い・噛むのが上手になる、柔らかいモノを口に押し込める
(8〜10ヶ月)指でつまめる、両手を同時に使える
(9〜12ヶ月)米などの小さいモノもつまめる
(11〜14か月)フォークやスプーンを使いたがる

▶ お勧め周辺グッズ
・Babybyorn製ハイチェア(品番067021)・・・廃盤
 ✓ プラスチック製
 ✓ テーブル取り外し可能で丸洗いできる
 ✓ 赤ちゃんの上体をしっかり固定してくれる
・マスカー(W1100mm×D25M)・・・床の汚れ対策、ホームセンターで売ってます
・袖付きエプロン(西松屋で726円)・・・首回りが緩むのが玉に瑕


小児科医の私としては、のどに詰まらせたときの対処法をしっかり学んでから行う方が安全・安心かなとも感じました。
日本BLW協会でも注意喚起をしています。

窒息について(日本BLW協会)

なお、医師の立場からは直径4cm未満(トイレットペーパーの芯の穴の大きさ)は乳幼児ののどに詰まる可能性があるため「与えてはいけない・周りに置いてもいけない」と指導しているのですが、この点だけ整合性がとれません。



<参考>
「自分で食べる! 」が食べる力を育てる:赤ちゃん主導の離乳(BLW)入門(ジル・ラプレイ著、2019年発行、原書房)
子どもの窒息対応(日本BLW協会)

“離乳食の悩み“を解決!

2025年01月08日 07時26分14秒 | 子どもの心の問題
乳幼児健診では離乳食の悩みを訴える親御さんがたくさんいます。
しかし小児科の教科書には主に病気のことしか書いてないので、
実は小児科医はお母さん・お父さん方の悩みに十分対応できないのが現状です。

YouTubeで「離乳食の悩み解決」という動画集を見つけました。
小児科の教科書に載っていないことを勉強するため、視聴してみました。
解説は子育て経験あり女性小児科医(提供:the kindest channel)です。

すると、単なる好き嫌いのレベルではなく、
その拝啓には発達レベルの理解や食事環境の調整など、
スキルとして身につける必要のあることがわかりました。

▶ 離乳食の悩みベスト3
1.作るのが大変
2.丸呑みをする・噛まない
3.食べない

▶ 離乳食の悩み解決に向けてのキーワード
1.姿勢
2.生活リズム
3.母の圧
4.口の中の発達と味覚
5.筋トレ
6.むせ込み対策
7.手づかみ食べ
8.作らなくていい?



▶ 食べるときの姿勢が大事
・テーブルと椅子の位置:
 ✓ テーブルに手が乗る(肘の角度は90度)
 ✓ 足が床につく(膝の角度は90度)
 ✓ 背筋を真っ直ぐ〜やや前傾(後ろに反り返ると誤嚥の原因になる)
 ✓ 体が椅子に密着するように調整する:椅子と体の間にすき間ができてしまうときはクッションやタオルですき間を埋める。立ち上がるクセのある子どもはテーブルと足(大腿部)の間にクッションを入れる、など。
※ 膝を立てて食べる子ども:テーブルと足(大腿部)のすき間が大きくて食べづらいためにできたクセ
・バウンサーは揺れるため食事には不向き。
姿勢が安定すると噛む力が5倍に、噛む回数が4倍に増える。噛む回数が増えることであごの発達も促される、唾液もしっかり出る。

▢ 離乳食の悩み #2生活リズムを見直そう

・早く寝る・早く起きる習慣をつける。
 ✓ ちゃんと寝る → ちゃんと食べる
 ✓ お風呂の時間が遅くなると夜型生活になりがち
 → お風呂の時間を早くする
・・・(お父さんがお風呂担当の場合)お風呂の時間が遅れると寝る時間も遅くなり、離乳食を食べる時間も遅れがちになる。
 ✓ お風呂はぬるめにして体を温めすぎない(湯船の適温は38-39℃、5分程度がベスト)
・・・温まりすぎると深部体温が下がるまで時間がかかり寝付きが悪くなる
・夜帰宅が遅いお父さんとの時間を確保するには「朝に時間を作る」「週末に時間を作る」がお勧め。
 ✓ 朝シャワー
 ✓ その日の1回目の離乳食(授乳)をお父さんが担当、など。


・離乳食を食べさせるときのお母さんの表情・態度が威圧感を与えがち・・・お母さんは一生懸命&真剣、でもそれが赤ちゃんにとっては“恐い”?
 → 赤ちゃんがリラックスできる環境作り&ご飯を食べさせる側も楽しく過ごせることが必要。
(例)
 ✓ お母さんではないヒト(兄姉とか)がご飯を食べさせる。
 ✓ 場所を変える(※)とリラックスして食べられることがある。
 ✓ 周りが食べていると食べてくれることもある。
 ✓ 食卓を楽しく囲むことで圧を感じにくくなる。
※ )食事にふさわしい場所がオススメ、汚れを気にしてお風呂場にするのはNG。


・口の中の発達と味覚
 → 何度もあげましょう。
・離乳食開始の目安
 ✓ 首がしっかり据わっている
 ✓ 座ることができる
 ✓ 食べ物に興味を示す
・口の発達具合の確認
 ✓ スプーンを口に入れてた際、押し出してくるかどうか
 ✓ 食べる練習を始め出すと哺乳反射がなくなってくる(4〜5か月頃)が、その頃はまだ口周囲が過敏になっていて、ミルク以外のものは吐き出そうとする。
 → 過敏な状態を軽減する方法として、お母さんの指(抵抗があれば清潔なガーゼで指を覆って)で歯ぐきを刺激する、頬の内側を刺激する。
・新規恐怖:食べたことのない味を拒否する反応
・基本味覚:
 ✓ 甘み ・・・受け入れられやすい
 ✓ うま味・・・受け入れられやすい
 ✓ 塩味
 ✓ 酸味 ・・・腐
 ✓ 苦味 ・・・毒
 → 酸味・苦味を吐き出す・拒否するのは自然の反応
・8〜12回食べると新規恐怖が軽減してくるので、嫌がっていてもまずは慣れるまであきらめずに食べさせてみる。


・口の周りの筋肉や体幹も離乳食には重要。
・姿勢がしっかりすると、噛む力が5倍、噛む回数が4倍になる(前出)。
・遊びを取り入れて筋肉を鍛えよう。

▶ 体幹を鍛える方法
・おもちゃやボール遊びで体幹を鍛える。向かい合って座っている赤ちゃんに向けてボールを転がすと、それを受け止めようとして少し前傾になる。
・抱っこ(しっかりしがみつく)や肩車(しっかりしがみつく)でもトレーニング可能。

▶ 口周りを鍛える方法
・ティッシュを吹く遊び(フーフー、ブーブー)で口周りのトレーニング。


▶ 4つのポイント(奈良栄養士会);
① 環境:映像、椅子、スピード
② 口腔機能:とろみ、フーフー、声がけ
③ 感覚:遊び、マッサージ
④ 認知:会話

<説明>
① 環境:映像、椅子、スピード
・食べている時に集中できていない
 ✓ 映像を見せながらだと「食べる」ことに集中できない
 ✓ 周りに好きなおもちゃがあると集中できない
・椅子が体に合っていないとむせやすい
・スプーンを口に運ぶスピードが速すぎると、まだ飲み込めていないのに食べさせることになりむせてしまう。

② 口腔機能:とろみ、フーフー声がけ
・食べ物を飲み込むとき、ヒトは一つのかたまりにして飲み込んでいる
 → かたまりになりにくい食べ物は赤ちゃんにとって飲み込みにくい。
(例)そうめんなどは口の中でバラバラになって飲み込めない。
・とろみをつけて飲み込みやすい状態にするとよい。
・舌がうまく動いていない場合もむせ込む
 → 舌を動かす訓練:ティッシュをフーフー吹いて遊ぶ、歯ぐきを刺激する、など。
・赤ちゃんは飲み込むタイミングがわからないことがある
 → 「アムアムアム・・・はい、ゴックン!」と声がけをして飲み込むタイミングを教える。

③ 感覚:遊び、マッサージ
・口周りの感覚が過敏だとチクチクしたものを嫌がって吐き出したりしがち。
・逆に口の中にたくさん入れて強い刺激を好む子もいる。
 → 口の中に入れても安全なおもちゃで存分に遊ばせる。
 → お母さんの指で口周り・歯ぐき・ほっぺの内側をマッサージで刺激するのも有効。

④ 認知:会話
・食べる・飲み込むというイメージができないため、飲み込むことができない。
 → 一緒に食事をして食べるイメージを教えてあげる。
・手づかみ食べで口に詰め込むスピードが速い場合は、会話をはさんでスピード調節をする。

▶ むせてしまったときの対処法
・(飲める状態なら)水を飲ませる。
・それでものどに詰まって顔色が悪くなるようなら救急車を呼ぶ。


・手づかみ食べを始める時期は育児書には「9ヶ月頃」と書いてあるが、
実際に9ヶ月齢で手づかみ食べができる赤ちゃんはほとんどおらず、
平均で1歳頃にできるようになる。
・手づかみ食べをすると、それ以降の食具への移行がスムーズに進むようになる。自分の“ひとくち”の量を学んでくれる。それがわからないと食具をうまく使えず、丸呑みや“むせ込み”につながる。

▶ 手づかみ食べをするための4つのポイント(奈良栄養士会)
① 環境:汚れるのが苦手(親・子)
② 運動機能:ビリビリ遊び、積み木
③ 感覚:砂、粘土、食具の素材
④ 認知:ほめる、まねる

<説明>
① 環境:汚れるのが苦手(親・子)
(汚れが苦手な親)
・汚れてしまうことで煩わしさを感じてきてしまう。
・汚れたてを毎回ふき取ると「手についちゃいけないんだ」というイメージをすり込んでしまい、
手づかみ食べをやめてしまう。
 → そういうもの、と寛容に受け止めましょう。
・床汚れ対策はレジャーシートを敷く、などで対応。
(汚れが苦手な赤ちゃん)
・サラサラして手につきにくい食べ物を選ぶ。汚れにくく持ちやすいクッキーなどがオススメ。

② 運動機能:ビリビリ遊び、積み木
・モノを三本指でつかめるようになるのは9〜10ヶ月頃(下図)。

・指先の運動をする遊びで食べ物をつかめるように練習する。
(例)紙をビリビリ破く、積み木

③ 感覚:砂、粘土、食具の素材
・食べ物が手につくことを嫌がる赤ちゃんは、遊びでその感覚に慣れさせる。
(例)屋内用の砂、粘土
・ステンレス製の食具のカチッとした感覚を嫌がる赤ちゃんもいる。
 → 他の素材のものに替える(木製など)。

④ 認知:ほめる、まねる
・食べられたらポジティブな反応(やった〜食べられたね、おいしいね、など)で安心させる。
・お母さんが食べる様子を見せてまねをさせると覚えやすくなる。

・市販のベビーフードの活用を活用すべし。
・お母さんの体と心が一番疲れているときに離乳食が始まる。
・品数・栄養バランス・食材の安全性・作る手間など、数ある問題点も市販のものであれば解決しやすい。
・手作り料理でもベビーフード活用でも、どちらも子どものためにという愛情であることには変わりない。


<参考>
・「離乳食は作らなくていいんです」(工藤紀子 著、時事通信社、2019年発行)

子どもの“偏食”対策

2025年01月05日 09時27分21秒 | 育児
以前“子どもの好き嫌い”を取りあげましたが、
「苦手な食べ物があるけど、体格も普通で元気に過ごせている」
子どもが対象でした。

今回は、
「苦手な食べ物があり、健康に支障をきたしている」
という、グレーゾーンから病的な状態までカバーする内容です。

子どもが食べられない理由・原因を医学的に評価し、
それを解消する方法を紹介します。


▶ 子どもが食べない3つの理由
1.かめない、飲みこめない
2.感覚が過敏か、鈍感
3.知らないから

(解説)
1.かめない、飲みこめない
食べるまでの動作は、
①食べ物を目で見て確認する、手を使い、箸を動かし、食べ物をつかむ
②口に入れる、前歯でかじりとる
③舌を使って奥歯へ食べ物を移動させる、奥歯で食べ物をすり潰す
④舌を使ってのど元へ送り込む、嚥下する(飲み込む)
の過程があるが、各段階が未発達の子どもはうまくできない。
うまくできない子どもは以下のものが苦手になる。
・硬すぎるもの・繊維が多すぎて噛み切れないもの
(例)繊維質の野菜、お肉、きのこ、魚介(タコ・イカ)など
・水分量が少なすぎてパサパサしているモノ
(例)パン、カステラ、焼き魚など
・のどや口腔内に張り付きやすいもの
(例)のり、海藻類、キュウリ(薄切り)、ウエハース、モナカの皮など
・粘りが強すぎてのどに詰まりやすいモノ
(例)お餅、お団子、イモ類など
・水分量が多く、口の中でばらけてまとまりにくいモノ
(例)かまぼこ、コンニャク、リンゴなどの果物など
・細かすぎて気管に入ってしまいやすいモノ
(例)みじん切りの野菜、ひき肉など

食べる動作の発達レベルは以下でチェック可能です。


 → 口を閉じることができない子どもの練習方法
・ストローを使って、好きな形に切った折り紙を吸い上げる
・おもちゃの笛を思いっきり吹く
 → 舌をうまく動かせない場合
・くちびるにジャムなどを塗り、それを舐め取る

2.感覚が過敏か、鈍感
感覚過敏、感覚鈍麻などは発達障害(神経発達症)の一種である自閉スペクトラム症(ASD、対人関係が苦手で強いこだわりがあるとされる)の傾向がある子に多く見られ、ASD児には偏食が多い。ただし、五感には個人差が大きい。
(例)
・人より味を強く・薄く感じる。
・天ぷら・揚げ物の衣が口の中に刺さる感じがして痛い。
・もっちりした食感が気持ち悪い。
・料理の見た目がグロテスクに見える。
・少しの音が気になって集中して食べられない。
・哺乳瓶、スプーンなど、食器類の触った感じが気持ち悪い。
・口周りを触られることに強い嫌悪感がある。
・内臓の感覚が鈍感で空腹を感じない。

3.知らないから
子どもがある食材を食べるようになるまでの道程は、
1知らない → 2知る → 3興味を持つ → 4触れる → 5食べる
という壁を乗り越えて達成します。
対策は、食材に触れる機会を増やすこと。具体的には、
① 食材当てゲーム(目隠ししてニオイで当てる、触って当てる)
② お買い物で食材をかごに入れてもらう。
③ 食育関連の絵本を読む。
④ 家庭菜園や果物狩り
⑤ 釣り、魚のつかみ取り

▶ 好き嫌い・偏食を加速させるNG行動3つ
1.緊張感のある食卓
2.子ども主体のメニューになりすぎる
3.おやつの時間、食べ終わる時間に一貫性がない

(解説)
1.緊張感のある食卓
・食べないと怒られるかもしれない(ビクビク・ピリピリ)。
・「残さず食べなさい」はNG → 「食べきれなかったら残してもいいよ」
・まず親が「食事は楽しい」ことを見せる、親のイライラや焦りはマイナスポイント。

2.子ども主体のメニューになりすぎる。
・“子どもの言いなりメニュー“はNG、子どもの食が広がらない。
・“特別な日”ならOK、でも日常的にはNG。
・メニュー決めの主導権は大人が握るべし。毎回子どもの言いなりメニューでは、大人側の疲弊と不満が溜まりがち。

3.おやつの時間、食べ終わる時間に一貫性がない。
① 食べたいときに食べられるおやつでは、1日3回の主食を食べられなくなる。対策として、
・おやつをあげるときのポイント;
✓ 袋出しは避け、お皿に出してからあげる。
✓ エネルギー量が少ないモノに置き換える
・小さい子の場合には;
✓ お菓子はできるだけ子どもの手に届かないところに置く。
✓ 必要以上に回おきをしない。
・ある程度子どもが大きくなってきたら;
✓ お菓子の食べ過ぎが体の成長にはよくないことなどを伝える。
✓ お菓子はどれくらいまでにするか、親子でルールを決める。
②ダラダラ食べをやめる。対策として、
・食事の時間は30分が目安。
・子どもに「まだ食べたい?」と聞いて頷くなら延長OK(ただし1回まで)。
・食べるのが極端に遅い子どもは食べる機能(口腔機能)を要チェック。

以上に問題がなくても食べてくれない場合は「すでに好きなモノでお腹いっぱい」になっている可能性あり。
好きなモノだけ平らげて、他の食材にたどり着く前にお腹いっぱいなので箸が止まる。
 → 今食べられるものの提供量を減らす。食事内容の割合は「好きなモノ:苦手なモノ:ふつう=1:1:2」が目安。


<参考書籍>
・「偏食の教科書」(山口健太著、藤井葉子監修、青春出版社)

子どもの“好き嫌い”への対応

2025年01月01日 19時48分23秒 | 育児
乳児検診に出かけていって、
お母さんの心配事のビッグ2が「かんしゃく」と「偏食」です。

偏食について深めたいと考え、現在情報収集中です。
まずはYouTube動画のレクチャーから拾ってみました。

(注意)発達障害系の特性がある子どもは、「感覚過敏」「こだわり」「食感が苦手」「ニオイが苦手」などが前面に出てくることがあり、紹介する方法では解決できない場合があります。主治医にご相談ください。

<ポイント>
・ヒトは甘み・うま味・塩辛い味は脳が本能的に「おいしいもの」と認識し、苦みと酸味(すっぱい)は脳が本能的に「危険なもの(毒・腐敗物)」と認識する(⑫)。
・2歳児の50%が偏食とされているが、これは異常ではなく本能であり、発達段階における“自己防衛行動”である。「この食べ物は危険ではない」ことがわかると口にするようになる(①)。
・食べる以前に“その食べ物に慣れさせる”ことが大切、聴覚・視覚・嗅覚に訴えて興味を持たせる工夫をする(①②)。
・調理を工夫して食べさせる試みは、5回以内であきらめてはいけない、10〜20回(①)出し続けると成功率が上がる(⑬では30-50回と紹介)。
・苦手な食材の価値を下げる行為は避ける;“ご褒美形式“は、その食べ物の価値を下げるイメージを植え付けてしまう(①)、子どもの偏食に関する親の会話を子どもに聞かせない・・・“自分は〇〇がキライ”というイメージを植え付けてしまう(②)。
・苦手な食材克服その1“選択ボード作戦”・・・調理法を書き並べたボードを用意し、子どもに選ばせると興味が湧いて食べる確率上昇(⑥)。
・苦手な食材克服その2“お手伝いエプロン作戦”・・・こども用のエプロンを用意し、調理(無理な場合は配膳でも可)に参加させると興味が湧いて食べてくれる確率上昇(⑦)。
・実際に食べさせる際に「食べやすいかどうか?」という視点も必要(②)、味ではなく調理法(バラバラになりやすいか?)や食感(例:固い食べ物、ヌルッとした食べ物、パサパサした食べ物)が嫌いな場合もある。
・「一口だけ食べて」は賛否両論・・・ハードルが高い(①)、繰り返して安全であることを保障する(⑬)。
・“ささくれ作戦”・・・食材を指先のささくれより小さくカットし、それを1個食べられたらほめる(③)。
・食卓・椅子に座ろうとしない子ども対策その1“食券作戦”・・・その子用の特別な食券を作りお店屋さんごっこを演出する(④)。
・食卓・椅子に座ろうとさえしない子ども対策その2;“お手伝い作戦”・・・ちょっとしたお手伝い(箸を並べる、ソース・ドレッシングを置く)をさせて参加させると俄然興味が湧く(⑤)。
・自分で食べようとしない子ども(食べさせて〜)対策は“くじ引き作戦”・・・食べ物の絵や名前を書いた紙を箱に入れ、くじを引かせると「自分で選んだ」感が生じて食べてくれる確率上昇、子どもが使う食器を一緒に買いに行き選んでもらうだけでも効果あり(⑧)。

・・・要するに、
・食材になれさせる。
・子どもが主役の食卓(食事環境)を提供する。
ことに尽きるようですね。

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・2歳児の50%が偏食とされており、これは異常ではなく本能である。
・偏食が始まる時期は1歳〜1歳半であり、行動範囲が広がる時期に一致する、何でも食べてしまうと危険であるから、自分の身を守るために食べるものを子どもなりに取捨選択する行動が、大人から見ると“偏食”になってしまう傾向がある。
・本能的に避けている場合、その食べ物が危険でないことがわかれば、子どもは食べるはず。
・ある食材を食べなくなった2歳児に対して、母親はあの手この手で工夫して食べさせようとする、しかし5回程度であきらめてしまう。某研究ではめげずに10〜20回出し続けると「その食材は危なくない」と認識が変わり食べる確率が上がると報告されている。
・偏食は大人の忍耐力と粘りで解決することがままある。「この子は〇〇は食べないんだ・・・」とあきらめないことが大切。
・「〇〇(苦手なもの)を食べたらおやつを食べていいよ」というご褒美形式は子どもの偏食を悪化させる可能性がある。〇〇という食材が価値が低いものというイメージを植え付けてしまい、食べたくなくなってしまう。
・食卓以外の日常生活の中で、苦手な食材と接触する機会を増やす。買い物に行って子どもに選んでもらう、買ってきた食材の絵を一緒に描く、など。すると子どもはその食材に慣れてきて危険でないと思うようになる。

(例)ピーマン
・ピーマンが苦手な子どもにピーマンの肉詰めを出すが子どもは食べない・・・親はピーマンの味が嫌いだと思いがちだが、実はピーマンの肉詰めの食べにくさが苦手だったりする。ピーマンの肉詰めを食べているとピーマンと肉がずれてしまい、落としたりしてしまいがち。この場合の解決法は、調理法を変えること、細かく刻んだり、ミキサーにかけたり・・・すると単純に“食べやすくなる”から食べるようになる。
・「一口食べてごらん」は結構ハードルが高い言葉。絶対に食べたくないものを「一口」と言われても、それは恐怖以外の何者でもない。
・苦手な食材を勧めるときは、聴覚・視覚・嗅覚に訴えて興味を持たせる工夫をする。例えば料理前のピーマンの形を子どもと一緒に触って観察する、ニオイを嗅ぐ、調理後のピーマンのニオイをまた嗅いで違いに気づいてもらう、ピーマンを食べるときの音を聞いてもらう、など。子どもがピーマンに興味を持てば、「舐めてみる?一口食べてみる?」のハードルが低くなるはず。
・両親が子どもの前で「この子最近、ピーマンを食べないのよ」という内容の話はタブー。大人の会話は子どもにとって重いもので、それを聞いた子どもに「あ、僕はピーマンが苦手なんだ」とダメ押しをしてしまう。ネガティブな会話ではなくポジティブな会話を聞かせよう。

・苦手な食べ物をムリして克服する必要はない(他の食材で栄養が補充可能、子どもの食事は楽しさ・うれしさが大事)。
・(ささくれ作戦)指先の“ささくれ”より小さくカットし、それを真っ白なお皿の上に一粒だけのせ、「こんなに小さいねえ〜」と声がけしながら大人と一緒に食べる、食べられたら褒める、おかわりできるなら同じ事をもう一度くりかえす、食べられたら褒める、成功体験になり子どもに「自分は苦手な〇〇が食べられた!」と自信がつく、次のステップは少しずつ大きくカットして出していくと食べてくれる確率が上がる。

食券を使い、“お店屋さんごっこ”を演出する。
・「食券を渡すとご飯が出てくるから使ってね」と事前に用意する。丁寧に作るのがコツ。
・食券には「〇〇くんのカレーライス」など、名前を入れると「自分だけのための特別なチケット」になり、子どもの興味を引く。
・食券依存が心配になるかもしれないが、繰り返すと食券にはいずれ飽きて卒業する、その頃には“ご飯の時は食卓に座る”習慣が自然に身についているはず。

・子どもが席に着かない理由:自分に関係なく用意された環境なので興味が湧かない。過程に係わると俄然興味が湧くので、ちょっとだけ手伝ってもらう。
・お手伝いの種類は、料理を手伝うのはハードルが高いので、お箸を出して並べてもらう、調味料(ソース、ドレッシング)を置いてもらう、などが入りやすい。

・食べる・食べないの前段階として、まず興味を持ってもらうことが大切。
・苦手な野菜の味を嫌がっていることが多いが、食感や調理法など“なんとなくイヤ”と避けている場合もある。
・(選択ボード作戦)自分の好みの調理法を選択できるようにボードを作り(あつく・うすく、こいめ・うすめ、やわらかい・かたい、フォーク・スプーン、小さい・おおきい、やく・ゆでる等)、選んでもらうと料理自体に興味を持つとともに“自分が主役”になるので食べてくれる率が上がる。

・ポイントは、苦手な食材に親しみを持ってもらうこと。
・(お手伝いエプロン作戦)子どもの“手伝いたい”気持ちを上げる効果がある。エプロンをして料理のお手伝いをしてもらう。
・低年齢で料理が危なかったら、配膳を手伝ってもらうだけでも十分。
・料理に参加してつくる体験をすることで、苦手な食材に親しみ・愛着が湧く。

・自分で食べようとしないとき、「食べなさい」という指示や命令ではなく、子どもに「自分で決めた」という意識を持ってもらうことが大切。
・(くじ引き作戦)食事のメニューを書いた紙を箱の中に入れ、くじ引きで自分が引いたものを食べるルールを作ると、「自分で決めた」という意識を持ちやすくなるため、自ら進んで食べてくれる確率上昇。
・子どもがつ書く食器(箸、スプーン、お皿など)を一緒に買いに行き選んでもらうだけでも効果あり。

・スプーンやフォークが苦手な子どもには“遊び感覚の練習“がお勧め。
・(スプーン・フォークで運びごっこ)スプーン、フォーク、2cm角にカットしたスポンジを用意し、親子で皿から皿へ運ぶ遊びをして、楽しみながら練習すると苦手を克服できる。ていねいに運ぶとか、はやく運ぶとか、設定しても良い。
・うまくできたらたくさんほめて、うまくできなくてもがんばった姿をほめてあげましょう。
・成功体験を積み重ねることで、自信がついて自然と身につきます。

・食べることに対する集中力が続かないことが原因であることも多い。
・集中力を切らさずに食事を続けれもらう“どんぶり作戦”・・・残してしまったご飯類を別の器に移し替えて“どんぶり”を作りましょう。
・器を買えることで気持ちがリセットされ、食事に対する集中力が戻ります。

前提として、「全部食べなくても大丈夫」というスタンスでないと親の余裕がなくなって「食べる楽しみ」がなくなり親子ともどもストレスが生まれがち。
・「食べる」「食べない」の前においしさやどんな味かを話す → 「〇〇、おいし〜い!」
・あ〜ん、をして食べさせるときは、口に入れるまでの動きにいろいろなバリエーションを用意する → 「次は飛行機?車?」
・子どもが好きなキャラクターの話題で食事の時間も楽しく → 「ア〜ン、パンチ!でバイキンマンをやっつけよう!」
・少しでも多く食べて欲しい場合は、量を減らした上で、自分で選べるようにする → 「半分この、どっちを食べる?」
・ただ食べなければならない、というわけではなく、「自分のために言ってくれているんだ・・・と思わせる → 「おいしいから、ちょっとだけ食べてみる?」
・「ほめる」というより、食べられたという「事実」を伝えて次の自信につなげていく → 「お!食べられたね!」
・苦手だとわかっているものは最初から少ししか入れない、ハードルを下げて上げる → 「これで最後!!」
・あまり量を食べない場合は、最初から少な目に盛り付けて、全部食べる達成感を味わえるようにする → 「おかわりしよっか?」

・甘み・うま味・塩辛い味は脳が本能的に「おいしいもの」と認知し、苦みと酸味(すっぱい)は脳が本能的に「危険なもの(毒・腐敗物)」と認知する。
・思春期になれば食べる食材の種類が自然に増えるので、元気にしていればあせることはない。


1.「ひとくち食べてね」を30〜50回繰り返し続ける(この食べ物は安全と認識させる)。
 → 苦手な食べ物を出さないようにする、見えないように調理するのはNG。
2.嫌いな食べ物の価値を上げる。
 → 嫌いな食べ物の悪口を言うとさらに嫌いになるのでNG。
 → 嫌いな食べ物を食べたら好きな食べ物をご褒美にあげるのもNG。
 → 価値を上げる言葉の例;
「ニンジンを食べたらカゼを引かないよ」
「ピーマンはバイ菌をやっつけるパワーをくれるよ」
「お肉を食べたら髪がつやつやになるよ」
「ご飯を食べたらしっかり元気に走れるよ」
 → 子どもにとって神レベルの食べ物になったら食べてくれます。
3.たんぱく質をコツコツ摂取
・偏食の原因のひとつに“たんぱく質不足”がある。たんぱく質が不足してくると、消化酵素の作られる量が減ってしまうので「お肉が嫌い」「魚や卵が苦手」となりがち。また、肝臓の機能も低下して、臭いに敏感になる( → 魚の臭いがキライ)。
・肉・魚・卵・乳製品・大豆を積極的に摂りましょう。乳製品しか食べない子どもはカルシウム・マグネシウムのバランスが悪くマグネシウム不足になりがちなので海藻類・種実類・青菜類を一緒に食べさせましょう。
4.「あいうべ体操」をする。
・偏食の原因の一つに「食感がキライ」がある(例:固い食べ物、ヌルッとした食べ物、パサパサした食べ物)。
 → 味が苦手なのではなく、食感が苦手で食べられないパターン。
・赤ちゃんの時にあって成長とともに消えていく原始反射(柔らかいものだけ食べる)があるが、その中の「探索反射」が残っていると口の周りが敏感になり上記の食べ物が苦手になる。原始反射を消すための訓練が「あいうべ体操」。
(あいうべ体操)
 大きく「あ」 → 横に「い」 → 前に突き出して「う」 → 下にベロを出して「べ」
 ・・・これを3-5回で1セット、1日3セットが理想。
★ あいうべ体操は表情筋が鍛えられるので、ほうれい線予防、肌のハリを与える、等のメリットがあり、親子で行うことをお勧めします。

・食育専門モンテッソーリ教師、いしづか かな先生
・「子どもを知って受け止める、そして安心させて上げる」
・まずは3つの生活習慣に注目して子どもを観察しましょう。
 ✓ 睡眠は十分か
 ✓ おなかが空いているか
 ✓ 体の調子(便秘など)は悪くないか
 上記+「食事に集中できる環境か」も大切。
・解決しない場合は他に原因がないか考えるが、子どもの“食べない理由”はたくさんあり、“子どもの個性”という側面も;
 ✓ 感覚過敏;臭いを強く感じたり、口の中に入れたときの味が刺激的に感じたり。
 ✓ 発達の問題;噛む力が未熟、うまく飲み込むことができない等。
 ✓ 胃が小さい;ヒトはストレスがかかると胃が小さくなる。
・“子どもの気持ち“を考える。食べられない、食べたくない子どもに「食べて」と言われるのはつらい。
・食卓を楽しい雰囲気にして、子どもの「食べてみたいな」という気持ちを育みましょう。
・子どもと食べ物をつなぐ工夫として、一緒に買い物をする、一緒に料理をする、など工夫をしてみましょう。


<番外編>