“子ども”を取り巻く諸問題

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発達期のセロトニン減少が自閉症発症メカニズムに関与する可能性

2017年07月16日 08時34分13秒 | 発達障害
 自閉症の科学的解析記事です。
 セロトニン減少は、果たして原因なのか、結果なのか・・・・

■ 発達期のセロトニン減少が自閉症発症メカニズムに関与する可能性-理研
QLifePro:2017年06月26日
◇ 15番染色体において重複異常が頻出
 理化学研究所は6月22日、モデルマウスを使った実験で、発達期のセロトニンが自閉症発症メカニズムに関与する可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同脳科学総合研究センターの内匠透シニアチームリーダー、日本医科大学大学院医学研究科の鈴木秀典教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は「Science Advances」に6月21日付けで掲載されている。
 自閉症(自閉スペクトラム症)は、社会的コミュニケーション能力の欠如や繰り返し行動が特徴的な発達障害のひとつであり、症状は生涯にわたり表出する。また、自閉症の罹患率は年々増加しており、2010年の米国の調査では、約68人に1人が自閉症だとされている。そのため自閉症の症状を緩和させる療法の発見に向けて、原因解明が社会的に強く求められているが、その発症メカニズムはほとんどわかっていない。
 自閉症患者の中には、ゲノム異常を持つ人が見つかっており、なかでも15番染色体において重複異常が頻出することが知られている。また、過去の研究で、自閉症患者の脳内において神経伝達物質のセロトニンが減少していることが示されていた。

◇ セロトニン療法が自閉症に効果的である可能性
 研究グループは、ヒトの15番染色体重複と同じゲノム異常を持つモデルマウス(15番染色体重複モデルマウス)を解析したところ、脳内セロトニンの減少に関連して、セロトニンの供給元である中脳の縫線核の働きが低下していることや、セロトニン神経の投射先である大脳皮質(体性感覚皮質バレル野)での感覚刺激の応答異常を発見。また、発達期に重点をおいた選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による薬理学的なアプローチでモデルマウスの脳内セロトニン量を回復させることにより、縫線核と大脳皮質の電気生理学的異常を改善させることに成功。さらに、15番染色体重複モデルマウスの成長後にセロトニン量を回復させることで、社会性行動異常も改善することがわかったという。
 抗うつ薬として使用されているSSRIは、過去にも自閉症患者に対して投与されてきた実績があるものの、その効果について結論が出ていなかった。今回の研究成果は、セロトニン療法が自閉症に効果的である可能性を示すもの。今回の研究による知見は今後、自閉症の適切な治療法の開発にも貢献するものと期待できる、と研究グループは述べている。


理化学研究所 プレスリリース

自閉症の人が他人と目を合わせない理由

2017年07月16日 06時36分49秒 | 発達障害
 自閉症児の行動には意味があることを東田直樹君から教わりました。
 目を合わせないことを脳の過敏性から説明した記事です;

■ 自閉症の人が他人と目を合わせない理由
HealthDay News:2017/07/12:ケアネット
 自閉症の人が他人の目をほとんど見ようとしない理由を追究した研究の結果が、「Scientific Reports」6月9日オンライン版に掲載された。
 研究を実施した米マサチューセッツ総合病院のNouchine Hadjikhani氏は、「自閉症の人は一見、他人との対話に興味がないように見えるが、そうではないことが分かった。目を合わせないのは、脳の特定部位が過剰反応することに由来する過剰な覚醒状態(excessive arousal)の不快感を低減させるための手段であることが明らかにされた」と述べている。
 アイコンタクトを避けることは、社会や個人に対する無関心を示すサインだとみなされることが多い。しかし、自閉症の人は「他人と目を合わせると不快感やストレスを覚える」と話すことが多いと、同氏らは指摘する。
 今回の研究ではこの問題を検討し、皮質下系(subcortical system)と呼ばれる脳の経路が関与していることを突き止めた。この経路は、乳児期には人間の顔に関心を示すように促し、後には他人の感情を理解することを助ける働きがあり、アイコンタクトをしたときに活性化される。
 同氏らは自閉症の人(23人)と定型発達の対照群(20人)に人間の顔の映像を見せ、自由に見てもらった場合と、目の領域だけを見てもらった場合の脳の活動を観察した。その結果、自由に見てもらった場合は両群で同様の脳の活動がみられたのに対し、目の領域だけを見た場合、自閉症の人では脳の皮質下系が過剰に活性化することが分かった。この傾向は特に怖がっている表情の顔を見たときに強くみられたが、楽しそうな顔や怒った顔、普通の顔でも同じ結果が得られた。
 Hadjikhani氏は、この知見が自閉症の人の関心を引くための有効な方法につながる可能性があると述べている。「自閉症児に対する行動療法では、他人の目を見ることを強制すると大きな不安を与える可能性がある。アイコンタクトを少しずつ習慣化する方法を取ることで、自閉症児はこの過剰反応を克服し、長期的にみればアイコンタクトをできるようになるかもしれない。それにより、人と目を合わせないことが社会脳の発達に及ぼす連鎖的な影響も回避できる」との見方を同氏は示している。


<原著論文>
・Hadjikhani N, et al. Sci Rep. 2017 Jun 9.