かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の鑑賞  66,67 

2022-04-26 11:49:01 | 短歌の鑑賞

  研究2の9(2018年2月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白鳥】P44~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放
     

66 白鳥から視線そらせば土色の田雲雀(たひばり)がいる枯草の上

    (レポート)
大きなものと小さなもの、白と土色と枯草の色。作者の見るところの色に命が息づく。(慧子)


     (当日意見)
★雲雀だけを詠むのじゃなくて、白鳥から目を逸らせて、スターから脇役を見た。(T・S)
★枯れ草の上に土色の鳥がいるんだからほとんど目立たないですね。そういう目立たない鳥に対し
 ても、作者は親しみの目を向けているのですね。(鹿取)
★雲雀よりちょっと太った感じの鳥ですね。(真帆)

  
67 白鳥は鉛中毒にて死せり麻の袋に入れられている

       (レポート)
 白鳥が不如意なことで死ぬ。死因は鉛中毒だと判じられ、その死に時代や社会の負の面のあることが示され、そののち、麻の袋に入れられてむなしいものになる。この麻の袋も地方や郷土性が感じられる。ダンボール箱ではない。(慧子)


      (当日意見)
★人間の流した鉛で死ぬってことよね。松男さんはなんか野鳥関係の仕事をしていらしたこともあ
 るようですね。これは仕事の場面だと思います。麻の袋は地方色というのではなく、鉛中毒だか
 ら特別に麻の袋にしたのでもなく、昔はどこにでもあるもので一般的な扱いだと思います。うち
 の田舎では「どんごろす」と呼んでいました。(鹿取)
★今の時代だったらビニール袋だったかもしれない、そういう無造作な扱いということ。(T・S)


      (後日意見)
 『寒気氾濫』に次のような歌がある。(鹿取)
  冷凍庫から剥製に出す大鷹の死にて久しき血はしたたらず
  臓も腑も捨てられしなり白鳥の剥製抱けば風花のなか


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