かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 117

2020-11-03 19:01:04 | 短歌の鑑賞
   ブログ版 渡辺松男研究13【寒気氾濫】(14年3月)まとめ
      『寒気氾濫』(1997年)48頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:崎尾廣子 司会と記録:鹿取 未放
          


117 芒万波落日に揺れ狩猟鳥非狩猟鳥混じれるひかり

     (レポート抄)
 日本の狩猟行政の幹となっているのは〈鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律〉である。この法に定められている狩猟鳥はカモ類11種を含む29種。(世界大百科事典・平凡社)この法とは鳥は無縁である。鳥を「芒」の原に見ている。「落日」と詠っている。鳥たちは眠る場を捜し求めているのであろう。鳥の今を慈しんでいるのであろう。(崎尾)

                                  
      (発言)
★芒が幾重にも重なって揺れている、その中に狩猟鳥や非狩猟鳥が混じっていて夕暮れの中でなお
 光っている。芒のひかりとその中で光っているいろんな鳥の情景を詠っている分かりやすい歌だ
 と思いました。(藤本)
★人間が狩猟鳥、非狩猟鳥と分けようとも鳥たちはいっしょになってお日様の光の中にいるってこ
 と。(慧子)
★「この法とは鳥は無縁である。」とレポーターが書いていることがそれですよね。狩猟鳥、非狩
 猟鳥ごっちゃになって光っている。そこに生き物の自然の有り様を見ている。芒も波となって落
 日に揺れているのだから当然光っているでしょうけれど、結句の「混じれるひかり」はあくまで
 鳥たちのことで、ごちゃ混ぜになってひかってる一塊のようにとらえることで生きてる命の温み
 というか尊さのようなものを出してるんじゃないでしょうか。渡辺さんは野鳥の会に所属されて
 いたそうですが、狩猟鳥というお役所的な固い言葉が生きていますよね。またこの作者は、狩猟
 鳥、非狩猟鳥というような対立概念を並べる書き方をよくされますよね。(鹿取)
★道元の言葉に「ひかりは万象を呑む」というのがあって、それを具体的にいったような歌だと思
 いました。渡辺さんは意識はしていないでしょけれど、道元と同じことだなあと。(鈴木)


          (後日意見)
 芒が万の波をなして揺れている情景は、かそかで美しい。とても日本的でもある。でもそれが古風な歌になっていないのは、「狩猟鳥や非狩猟鳥」の言葉とその概念。動きがあるけれど全体が静謐で、鈴木さんが道元と同じと指摘しているが、宗教的な感じがする。(鹿取)

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