かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  55

2020-10-12 18:56:18 | 短歌の鑑賞
ブログ版 清見糺鑑賞  9    かりん鎌倉なぎさの会

55 弱年のわが知売り買いせし古書肆みねるばの女主人(あるじ) 春眠す
                     「かりん」95年4月号

 ミネルバはローマ神話で、技術・職人を司る女神。古来、ギリシャ神話のアテナと同一視されてきた。アテナはゼウスの頭から生まれたと伝えられ、学問・工芸・知恵・戦争を司る。
だからこの古本屋の主は女性がふさわしい。学生時代のことであろうか。よく通った古本屋の前を、後年通りすがりに覗いてみると、見覚えのある女主人がかなり老けて、折から春とてうつらうつらしていたという図である。おそらく作者の頭も近頃春眠状態にあるようだといいたいのだろう。うらうらと春の気候のように暖かい雰囲気の歌である。
 「わが本」ではなく「わが知」であるところ、「古書店」ではなく「古書肆」であるところなど、言葉の選びも巧妙である。


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