かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 182

2021-03-09 18:41:20 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究22(2014年12月) 【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
      参加者:石井彩子、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:石井 彩子  司会と記録:鹿取 未放


182 白骨樹四五本があり月の夜の月のもたらす閻浮の暗さ

       (レポート)
 その昔、閻浮には大きな森があり、閻浮樹が茂っていた。人々はそのような自然に恵まれ、豊かな生活を営んでいたが、今や人類は滅び、白骨樹四五本だけが残っているだけだ。月が煌々と白骨樹を照らしているが、落とす影は不気味で、闇のように暗い。氏の鋭い感性は人間の居なくなった世界を見据えているのかもしれない。閻浮樹は白骨樹となって生を保ち続けているが、人類は生命体としては弱く、真っ先に絶滅する種族なのかもしれない。(石井)
※「白骨樹」―(台風などで)皮が剥がれ、白くなっている木のことをいう。
※「閻浮」―閻浮堤( えんぶだい)のことで、古代インド世界観における人間世界を意味する。
   『広辞苑』


      (意見)
★白骨樹は辞書に出てこないですね。(鈴木)
★ネットで引いたら、登山する人などがたくさん写真を公開していて立ち枯れしている木を白骨樹
 と呼んでいるようです。松男さんも山歩きしていた人なので同じ感覚じゃないかなあ。「皮が剥
 がれ、白くなっている木」も狭い意味の白骨樹なんでしょうけれど。人間がいなくなった世界を
 歌っている歌最近けっこうありますが、この歌はそういう世界とは思わないです。白骨樹ってけ
 っこう標高の高い所にあるようで、皓々とだか、ぼんやりだか、月が白骨のようになった木を照
 らしてるんですね。その月光によってかえってこの世の暗さが際だつということだと思います。
 「人間世界」とか「この世」ではなく「閻浮」と言ったところが暗さのはかりしれなさを表して
 いると思います。(鹿取)
★石井さんはこの歌のどの部分から人類が滅んだ後とお感じになったのですか?(真帆)
★「閻浮」ですね、それから白骨樹を月が照らす故に影が濃いという連想に進みました。人類は樹
 木などより寿命が短いので死に絶えた後も木は白骨樹として残っているんじゃないかと。(石井)
★僕はこの歌あんまりぴんと来ないです。(鈴木)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男の一首鑑賞 181 | トップ | 渡辺松男の一首鑑賞 183 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事