かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 181

2021-03-08 18:13:56 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究22(2014年12月) 【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
      参加者:石井彩子、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:石井 彩子  司会と記録:鹿取 未放


181 夕闇に真闇ひたひた寄せてきて孤独というは橋杙に似る

      (レポート)
 橋杙というのは橋を支える橋脚のことをいうが、昼間でも薄暗い雰囲気が漂っている、夕闇はそのあたりの闇を一層濃く、深くしてゆくのである。一方、暗闇迫る暮れ時、氏は、人間存在の闇―虚無を思い、「人間は宇宙の中で、孤独に打ち震え、たったひとりで死に行く存在」『パンセ』と、パスカルにも似た孤独にじっと対峙している。そのような人間存在の根源にある孤独を橋杙に重ねている。(石井)


     (意見)
★人間は水から生まれてきたというのに橋杙、水の中に立っているものの孤独を言っているところ
 が面白いと思いました。(真帆)
★橋杙という言葉が憎いところ、私なんかだと橋脚とか言っちゃうけど橋脚だとこの感じは出てこ
 ないですね。杙というと刺さってくる感じがする。(鈴木)
★橋桁とは違うんですね。橋杙という濁ってくぐもった音が、この孤独の一筋縄ではいかない感じ
 によく合ってますよね。ただ、パスカルの考える孤独と通じるとは思わないですけど。直接関係
 ないけど、辰巳泰子の「橋桁(はしげた)にもんどりうてるこの水はくるしむみづと決めて見て
 ゐる」(『紅い花』)を思い出しました。場面は似ているけど。松男さんのは橋杙が対象で辰巳さ
 んのは苦しんでいるのは水そのもので違いますけど。辰巳さんのはもっと具体的でどろどろした
 人生上の苦を見つめている歌ですね。(鹿取)

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