かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 95

2022-06-29 09:40:26 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の13(2018年7月実施)
    【すこし哲学】『泡宇宙の蛙』(1999年)P65~
     参加者:K・O、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放


95 乱視われ三十個ほどの月の下三十個ほどの配偶者といる

    (レポート)
 乱視の作者は三十個ほどの月を見て、その下にいる。誇張された数かもしれないが地球に一つの筈の衛生が三十個になっているなら作者に一人のはずの配偶者も三十個ほど存在するということになる。三十人としていないのは歌の調べのためでもあろうし、配偶者との関係の良さがにじんでいるのだろう。ユーモラスだ。そしてまた、配偶者のさまざまを知る作者は三十個ぐらい簡単にその性質、傾向を数えられるのだろう。(慧子)


      (当日意見)
★私も乱視があるのでこの感覚はよく分かる。三十個には見えないけれど5.6個ならそん
 な感じがある。だから現実から発想したかもしれないけれど。なぜ三十個かというと1ヶ
 月の月の満ち欠けの暗示。だから1ヶ月分の配偶者。しかも乱視だから見えているのは虚
 像。いろんな暗喩が入っているのだろう。「ほど」があるから。現実的な発想なんだけ
 ど、宇宙観のようなものが出ている。世界に対してのメタファーがあるような。でも、普
 通は暗喩をかける時って読者も構えたりするんだけど、それを感じさせないところが却っ
 てテクニカルだなって。作者の身体時間の ようなものが宇宙に直結しているのかもし
 れない。(K・O)
★テクニカルな暗喩って、何を暗喩しているんですか?それを知りたい。(A・K)
★世界に対する喩です。こういう世界に住んでいるんだという。喩がまずいなら世界に対す
 るイメージですね。テクニカルって言ったけど作者は自然にやっていらっしゃるのかもし
 れない。(K・O)
★松男さんの歌、平行宇宙だとかいろんな世界が複雑に絡みあっていて、何次元かわからな
 いような世界像なんですが。K・Oさんが最初におっしゃった1ヶ月の月の満ち欠けが三
 十個ほどの月に暗示されているって、重層的でそれだけで美しいし楽しい。魅力的に見え
 る。自分だったら一生分かかって作る歌の全部がこの一首に凝縮されているようで、もう
 みんな言われてしまったような気がする。(鹿取)



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