かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 412

2022-01-22 13:21:13 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究49(2017年5月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【睫はうごく】P164~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取未放


412 真空へそよろそよろと切られたるひかりの髪は落ちてゆくなり

     (レポート)
 散髪の場面だろうか。「そよろそよろ」という表現から、愛しい君が長い髪をカットしている場面のようにも感じられる。カットされた髪ははらりはらりと柔らかく真空状態のなかへ散ってゆく。君を想う心が、君の髪までも輝かせるのだろう。君をまえにすると「真空」になってしまう、そんな恋心なのではないだろうか。(真帆)


    (当日発言)
★松男さんの初期の相聞歌だと思いました。(真帆)
★レポーターは相聞歌ととられましたが、誰の髪かは歌では言われていない。相聞歌ととっても、
 切られてつやつやとした髪が光りを帯びて落ちていく先が「真空へ」だとはとは松男さん以外言
 わないでしょうね。リアルな相聞歌として読めば真空は絶対あり得ない想定で、その場合は何か
 の比喩と読むのでしょうか。広辞苑を引くと「真空」は①仏教用語で真実の空、大乗の究極。小
 乗の涅槃。②物理的に、物質のない空間。圧力の低い空間についてもいう等々と出てきます。前
 の歌(花蕎麦のしずもれる日よ天体の外側へ消えゆきしはたれか)の関連からいうと、「天体の
外側へ消えゆきしはたれか」をもう少し具体的にしたのがこの歌で、光る髪が落ちていくのはや
はりあちら側の世界のように私には読めます。(鹿取)

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