渡辺松男研究49(2017年5月実施)『寒気氾濫』(1997年)
【睫はうごく】P164~
参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取未放
413 やわらかき座布団に尾骨沈めつつちちとちちの子われとまむかう
(レポート)
尾骨が沈んでしまうほど柔らかい座布団というのだから、日常使い古したものではなく、ここは客間か、法事の場か、日本旅館かもしれない。下句の「ちち」と「ちちの子われ」と、くどくどと血脈を意識して詠うところにこの歌の眼目があり、父と真向かう息苦しさ、確執が漂う。客体化しようとすれば一層そうできない愛憎のもつれが見え、緊張した気配を生む。尾骨を独楽の軸のようにして双方とも背筋を正しているように見える。(真帆)
(当日意見)
★私は父と父の子とわれと3人いるのだと思っていました。やわらかき座布団だから正に客間で、
何か緊張した場面、その居心地の悪い感じを「尾骨沈めつつ」で表している。でも、そう取ると
なぜこの一連に唐突にこういう確執のような、ある意味通俗的な歌が挿入されているのか分から
なくなりますから、違うのかな。(鹿取)
★鹿取さんの解釈だと次の炎天に投げ出される歌とうまく繋がりますね。(真帆)
★3人いるとすると「ちちとちちの子われ」ではなく「ちちとちちの子とわれ」というふうに「子」
の次に「と」が入らないとおかしいと思います。3人だと平凡になってしまうと思います。2人
で充分確執があるし。(T・S)
★なるほどね、松男さんはこういう時、助詞の「と」を抜かすうたい方を良くされますけど、この
歌に関しては確かに父とわれ2人で向かい合っていてもフロイトの闇のような緊張感や確執はあ
りますものね。私の読みだと、父が再婚してもうけた子供がもう座布団に座るような年齢かなあ
と妙な疑問を持っていたのですが、3人だとどろどろして通俗的になるけど、2人だと哲学的な
深い意味をもちますね。(鹿取)
★「やわらかき座布団に尾骨沈めつつ」のところに生殖関係のことがらを連想しました。(慧子)
★生殖関係ってセックスですか。なるほど、ますますフロイトに繋がりますね。(鹿取)
★松男さんのお父さんの歌は魅力的でどれも好きです。自分はもの考えてボーとっしているけど、
お父さんは世間的な智恵をしっかり持っていて実務的で勤勉と造型されています。でも内面はわ
けのわからない闇を抱え持っていて、存在とか生死とかいう地平では自分と同じように苦悩して
いる。(鹿取)
【睫はうごく】P164~
参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取未放
413 やわらかき座布団に尾骨沈めつつちちとちちの子われとまむかう
(レポート)
尾骨が沈んでしまうほど柔らかい座布団というのだから、日常使い古したものではなく、ここは客間か、法事の場か、日本旅館かもしれない。下句の「ちち」と「ちちの子われ」と、くどくどと血脈を意識して詠うところにこの歌の眼目があり、父と真向かう息苦しさ、確執が漂う。客体化しようとすれば一層そうできない愛憎のもつれが見え、緊張した気配を生む。尾骨を独楽の軸のようにして双方とも背筋を正しているように見える。(真帆)
(当日意見)
★私は父と父の子とわれと3人いるのだと思っていました。やわらかき座布団だから正に客間で、
何か緊張した場面、その居心地の悪い感じを「尾骨沈めつつ」で表している。でも、そう取ると
なぜこの一連に唐突にこういう確執のような、ある意味通俗的な歌が挿入されているのか分から
なくなりますから、違うのかな。(鹿取)
★鹿取さんの解釈だと次の炎天に投げ出される歌とうまく繋がりますね。(真帆)
★3人いるとすると「ちちとちちの子われ」ではなく「ちちとちちの子とわれ」というふうに「子」
の次に「と」が入らないとおかしいと思います。3人だと平凡になってしまうと思います。2人
で充分確執があるし。(T・S)
★なるほどね、松男さんはこういう時、助詞の「と」を抜かすうたい方を良くされますけど、この
歌に関しては確かに父とわれ2人で向かい合っていてもフロイトの闇のような緊張感や確執はあ
りますものね。私の読みだと、父が再婚してもうけた子供がもう座布団に座るような年齢かなあ
と妙な疑問を持っていたのですが、3人だとどろどろして通俗的になるけど、2人だと哲学的な
深い意味をもちますね。(鹿取)
★「やわらかき座布団に尾骨沈めつつ」のところに生殖関係のことがらを連想しました。(慧子)
★生殖関係ってセックスですか。なるほど、ますますフロイトに繋がりますね。(鹿取)
★松男さんのお父さんの歌は魅力的でどれも好きです。自分はもの考えてボーとっしているけど、
お父さんは世間的な智恵をしっかり持っていて実務的で勤勉と造型されています。でも内面はわ
けのわからない闇を抱え持っていて、存在とか生死とかいう地平では自分と同じように苦悩して
いる。(鹿取)
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