かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 172

2021-04-04 17:34:58 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究 21 二〇一四年十一月 【音符】『寒気氾濫』(1997年)72頁~
  参加者:石井彩子、渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
      レポーター:渡部 慧子 司会と記録:鹿取 未放
            

※20回→22回→23回と21回を飛ばして鑑賞をアップしていました。
 21回に戻ります。

172 価格破壊激しき街へ迷い込みフライパンひとつぶら下げていつ

      (レポート)
 街は儲けんがための価格破壊とまでいえる売りをしている。そこに迷い込んだように来て、フライパンを買ったということだろう。この街へ来るには来たが、作者には何か場違いな感じがぬぐえなかったはず。それが「迷い込み」にも「フライパンひとつぶら下げていつ」にもみえる。その道具立て、さらに「ぶら下げていつ」という姿には、時代に在りながら飄逸味をただよわせる作者が見える。(慧子)


    (紙上意見)
 欲しい物を買いたいというより、価格破壊で安いからとにかく街に出てみたのである。そして、あれやこれや煽られ迷い込んだあげく、気が付いたら「フライパンひとつぶら下げて」いた。それまでの喧騒が嘘のように、はっとわれに帰った瞬間である。(鈴木)


      (意見)
★時代の雰囲気がよく分かるお歌ですね。(石井)
★安いから街に出たって鈴木さんは書いているけど、たまたま街に出たら、価格破壊がものすごい
 状態だった、人々にもみくちゃになっているうちに気がついたら自分もフライパンを一つぶら下げて
 いた。別に買うはずでもなかったのに、途方に暮れているというか苦笑いしているかんっじかな。そ
 れとも、ちょっとした痛みがあるのかな。(鹿取)
★確かに安いから買おうと意識して出ていったのでは面白くないですよね。(石井)


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